臨床眼科 71巻4号 (2017年4月)

特集 第70回日本臨床眼科学会講演集[2]

特別講演

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日常臨床で感じる素朴な疑問を出発点とし,筆者らが過去に行ってきた網膜硝子体疾患に関する病態研究のうち,特発性黄斑円孔,特発性黄斑上膜,糖尿病網膜症,加齢黄斑変性,テルソン症候群の5疾患について述べた。本講演内容は,今後さらなる検討を要するが,いずれも新しい病態論であり,今後の網膜硝子体疾患における病態解明の糸口となる可能性がある。

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要約 目的:ラタノプロスト(LAT)からタフルプロスト・チモロールマレイン酸塩(TTFC)への切り替え時の自覚症状と治療満足度を検討した。

対象と方法:原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症で,LAT単剤で治療されている65例を対象とした。LATからTTFCに切り替えた時の,眼自覚症状と治療満足度のアンケート調査を実施した。

結果:自覚症状はすべての質問項目で改善傾向を示し,眼不快感,羞明感はTTFC切り替え後に有意に改善した。治療満足度はTTFCのほうが有意に高かった。

結論:TTFCはLATから切り替えると自覚症状を改善し,治療満足度が向上することが示唆された。

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要約 目的:初発翼状片に対する術式による術後成績を比較する。

対象と方法:過去8年間に初発翼状片に手術を施行し6か月以上経過を追えた49例65眼を対象とした。術式は①翼状片切除+有茎弁移植術(TF群):36例51眼,②無切除Z形成術(Z群):13例14眼の2群に分けて後ろ向きに検討した。再発は,術後に結膜が角膜輪部を越えて少しでも侵入したものとした。

結果:有茎弁移植術を施行した群では再発は7例(13.7%)。再手術は4(7.8%)例であった。無切除Z形成術を施行した群では再発は3例(21.4%)。再手術は1例(7.1%)であった。再発までの期間はすべての症例において術後1年以内であった。

結論:有茎弁移植術と無切除Z形成術で再発率に差はなかった。

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要約 目的:硝子体手術を受けた糖尿病患者の網膜硝子体病変の頻度を検討した。

対象と方法:204例227眼の網膜硝子体病変を,1群:糖尿病網膜症(網膜症)に関連するものと,2群:関連しないものに分けて調査した。1群の病態は硝子体出血,黄斑浮腫,その他に,2群は網膜裂孔/網膜剝離,網膜/黄斑前膜,黄斑円孔,網膜静脈閉塞症,加齢黄斑変性,その他の亜群に分けた。

結果:1群は111眼(48.9%),2群は116眼(51.1%)で過半数を占めた。1群の硝子体出血が35.7%で最も多く,2群では網膜剝離/網膜裂孔が14.5%で多かった。2群の網膜症は軽症であった。

結論:糖尿病患者は半数以上が網膜症に関連しない網膜硝子体疾患で手術を受けた。

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要約 目的:抗VEGF治療中に発症した脳卒中(脳梗塞,脳出血)と心筋梗塞について検討する。

対象と方法:2009年1月〜2015年12月に,富山大学眼科で抗VEGF薬注射を受けた患者を対象とし,診療録を後ろ向きに検討した。抗VEGF治療を開始時の年齢,性別,既往歴,治療疾患,注射回数,注射薬の種類について検討を行った。

結果:対象者は960例(男性593例,女性367例)で,初回注射時平均年齢は70.9歳であった。脳卒中は1.2%(11/960例),心筋梗塞は0.3%(3/960例)で発生した。直前の注射から1か月以内に5名に発生し,全例アフリベルセプト注射後であった。

結論:脳卒中,心筋梗塞は全体の1.4%に発生した。注射後1か月以内の発症はアフリベルセプト注射後に多かった。

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要約 目的:ラニビズマブ抵抗性の滲出型加齢黄斑変性に対するアフリベルセプト切り替え治療導入後に滲出が残存した例について検討する。

対象と方法:導入期毎月3回連続投与,維持期treat and extend投与した75眼を対象とし,導入期終了時に滲出性変化が残存した抵抗群,消失した反応群の背景因子,1年経過を後ろ向きに検討した。

結果:背景因子に両群の差はなかった。視力はlogMARで抵抗群は維持,反応群では0.089改善した(p<0.001)。中心窩網膜厚は抵抗群で68μm(P<0.01),反応群で140μm改善した(p<0.001)。中心窩脈絡膜厚は抵抗群で維持,反応群で28μm菲薄化した(p<0.001)。投与回数は抵抗群10.95回,反応群8.89回と差があった(p<0.001)。

結論:切り替え導入期終了時の滲出性変化の有無は1年成績に有意に関連した。

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要約 目的:硝子体出血に対する硝子体手術後に感染性眼内炎を発症した症例の報告。

症例:55歳の女性が左眼視力低下で受診した。矯正視力は右1.2,左20cm指数弁で,左眼に硝子体出血があった。1週後に3ポート25Gシステムでの硝子体手術を行った。網膜周辺部2時の部位に網膜裂孔があり,光凝固で処理した。漏出のある強膜創1か所を縫合した。手術時間は48分であった。翌日の眼圧は4mmHgで,翌々日に眼痛と霧視が生じ,前房蓄膿があった。術後眼内炎と診断し,硝子体切除と水晶体乳化吸引を行い,眼内レンズは挿入しなかった。前回無縫合の強膜創1か所に付着物があった。複数の抗菌薬を局所と全身投与し,14日後に視力は0.9に改善した。

結論:小切開であっても硝子体手術後に眼内感染が生じることがあり,縫合または液空気置換が推奨される。

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要約 目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するトリアムシノロンアセトニド(4mg/0.1ml)硝子体内注射(IVTA)の効果報告は少ない。今回筆者らはDMEに対してIVTAを行い,短期治療成績について検討した。

方法と対象:DMEに対してTA(20mg/0.5ml)テノン囊下投与後もDMEが改善せず,IVTAを行った14例21眼〔平均年齢63.2±7.8歳,男性10例,女性4例,汎網膜光凝固術(PRR)全例施行済み〕。方法として,IVTA前とIVTA施行1か月後の視力とCRTを比較検討し,また副作用の有無を検討した。

結果:IVTA前のlogMAR視力は平均0.62±0.37,中心窩網膜厚は平均584±228μmであった。IVTA施行1か月後のlogMAR視力は平均0.50±0.39で有意な差はなかったが,中心窩網膜厚は平均293±168μm(p=0.01)で有意に改善した。眼圧上昇は2例あったが,点眼でのコントロールが可能であった。白内障の進行はなかった。

結論:DMEに対してIVTAを施行した症例の短期成績は良好であったが視力の改善に有意差はなかった。

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要約 目的:副鼻腔炎手術により軽快した片眼性慢性結膜炎を経験したので報告する。

症例:73歳,女性。2012年より右眼違和感を自覚し,近医で抗菌薬点眼を処方されたが軽快せず,2014年11月当院受診。右眼の眼瞼腫脹,眼脂が強く,眼瞼結膜に濾胞・乳頭形成,角膜に混濁がみられ,右視力(0.2)。右眼のみ通水検査で逆流があった。

結果:右鼻涙管にチューブを留置し症状は軽快したが,再燃を繰り返した。頭部MRIで副鼻腔炎がみられ耳鼻科併診。2015年5月に両側汎副鼻腔炎根治術施行。術直後より眼脂が消失,術後1か月には右(0.8)まで改善。術後3か月には角膜・結膜所見も改善。

結論:副鼻腔炎に結膜炎を合併することがあり注意が必要である。

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要約 目的:重度の羞明が角膜移植により改善した金柑型膠様滴状角膜ジストロフィ(GDLD)の症例の報告。

症例:34歳,女性。幼少時より両眼の視力低下と羞明があり,GDLDを指摘されていた。

所見と経過:初診時の視力は右手動弁,左光覚弁であった。両眼とも角膜全体に血管侵入を伴う黄色の膠様隆起物を認めた。右眼の全層角膜移植を行い,切除した角膜にアミロイドを認め,金柑型GDLDと診断した。術後3か月より羞明が改善し,開瞼が可能となった。術後6か月で右眼矯正視力は(0.4)となり,QOL(quality of life)が向上した。

結論:GDLDに対する角膜移植で羞明が劇的に改善しQOLが向上した。

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要約 目的:クリプトコッカス視神経炎の1症例の報告。

症例:35歳,男性。頭痛・食欲不振などの全身症状および変視症を認めた。

所見:矯正視力右0.6左0.8。感冒様症状・項部痛・視神経乳頭腫脹および漿液性網膜剝離(SRD)といった原田病に類似する所見でありながら,SRDの光干渉断層計での所見の違い,また前房内炎症を認めないことから原田病とは異なると考えられた。髄液検査で細胞数・蛋白高値,採血でクリプトネオ抗体高値を認めクリプトコッカス髄膜炎と診断された。

結論:本症例は臨床所見が原田病に類似したが,クリプトコッカス髄膜炎であった。

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要約 目的:両側の涙囊に結石が生じたシェーグレン症候群2例の報告。

症例と所見:それぞれ71歳と75歳の女性が眼瞼と涙囊部の腫脹で受診した。いずれにも関節リウマチとシェーグレン症候群があり,レバミピドを含む複数の点眼液を使用中であった。両症例とも片側の涙囊炎と眼窩蜂窩織炎を発症し,抗菌薬投与で治癒した。両症例ともMRIで両側の涙囊に涙石があり,摘出した。摘出物は白色おから状で,病理検査で結晶状異物,炎症細胞浸潤,細菌塊がみられた。摘出後に病状は改善した。

結論:シェーグレン症候群の両症例とも,レバミピドを点眼中であったことから,レバミピドの涙囊内貯留が涙石形成に関与した可能性がある。

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要約 目的:ベバシズマブ硝子体注射(IVB)既往のある網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に対するラニビズマブ硝子体注射(IVR)の長期成績の報告。

対象と方法:黄斑浮腫(ME)を伴うBRVOに対してIVBの既往があり,MEの再発のためにIVRを施行し12か月以上経過観察できた13例13眼(男性5眼,女性8眼,平均年齢64.7歳)を対象とした。初回投与以降は必要に応じて再投与を行った。視力,中心窩網膜厚(CRT)について検討した。視力はlogMARで評価し,0.2以上の変化を改善または悪化とした。

結果:視力,CRTのいずれもIVR後1か月から24か月の期間で有意に改善した。IVR回数は平均4.6回で,最終視力は改善5眼,不変8眼であった。

結論:IVB既往があるBRVOに対しIVRは長期的な視力維持に有効であるが,多くの症例で再投与を要した。

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要約 目的:無硝子体眼に対して経扁平部挿入型バルベルト®緑内障インプラントを用いたチューブシャント手術の成績の報告。

方法:チューブシャント手術を施行し1年以上経過観察できた11例13眼(男8,女3名)を対象とした。原因疾患は血管新生緑内障が12眼および外傷後の続発性緑内障が1眼であった。眼圧および点眼・内服スコアを術前および術後で評価した。

結果:眼圧は術後経過に伴って安定した。術前および術後1年の眼圧は,それぞれ40.1±14.6mmHgおよび17.1±5.5mmHgであった。点眼・内服スコアは,術前および術後1年でそれぞれ4.4±1.3および2.2±1.6であった。

結論:術後に眼圧は低下し,経過に伴い安定した。点眼および内服量を術前に比較して減少できた。

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要約 目的:リパスジル点眼液の眼圧下降効果と,効果に関与する因子の検討。

対象と方法:新規にリパスジル点眼液を追加(追加群),変更(変更群)投与し,3か月間経過観察可能であった緑内障108例162眼。両群の眼圧下降および下降率,病型および使用薬剤数別眼圧下降効果の比較,眼圧下降率に寄与する因子を検討した。

結果:両群で有意な眼圧下降を認めたが,病型および使用薬剤数別の下降率には差はなかった。有意な寄与因子は追加群では追加前眼圧高値,変更群では変更前眼圧高値,若い年齢,緑内障手術既往なしであった。

結論:リパスジル点眼液の追加・変更は有意な眼圧下降を認めた。追加・変更前眼圧が高いほど下降率が高い可能性がある。

Special Interest Group Meeting(SIG)報告

眼科再生医療研究会 万代 道子
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はじめに

 今回のSIGミーティングでは,近年より現実的となった再生医療の臨床研究に向けての各分野での取り組み,進捗とともに,再生医療の問題点や課題が具体的に取り上げられ,とても有意義な会であった。特に畠先生からは,わが国における再生医療の課題と現状につき経験に基づいた大変興味深いお話をいただいた。以下,今回行われた講演内容について,簡単にまとめさせていただく。

今月の表紙

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 症例は51歳,男性。23歳頃,バトミントンのシャトルが左眼に当たり,他院で隅角解離ならびに前房出血で加療された。

 2016年1月中旬に左眼白内障の手術目的で当院を受診した。初診時の視力は,右0.15(1.5×−7.50D()cyl−1.50D 180°),左0.02(0.8×−11.0D()cyl−2.50D 180°),眼圧は右12mmHg,左11mmHgであった。左眼は水晶体前面に花びら状の白濁,後面に星状の混濁が見られた。また,隅角解離を認めたが,網膜周辺に異常はなかった。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第15回

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今月の症例

【患者】27歳,女性

【主訴】精査加療希望

【現病歴】1歳時に両眼先天白内障に対して水晶体吸引術を受けた後,小学生以降は眼科への通院が途切れ,中学生時に右眼が見えなくなったが受診しなかった。その後,左眼の視力低下を自覚したため近医を受診し,左眼高眼圧(44mmHg)を指摘された。その後,投薬加療を行ったものの眼圧コントロールが不良のため紹介受診した。

【処方薬】プロスタグランジン関連薬:左眼1回,β遮断薬:左眼2回,炭酸脱水酵素阻害薬:左眼2回

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第16回

網膜細動脈瘤 寺尾 信宏
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疾患の概要

 網膜細動脈瘤は60〜80歳以上の高齢者,特に女性に好発する疾患である1)。全身合併症として,高血圧,動脈硬化,高脂血症,虚血性心疾患,脳血管性疾患を伴う症例が多い。

 第3分岐以内の網膜動脈に瘤状の拡張を生じるが,無破裂動脈瘤では自覚症状がないことが多い。通常,網膜細動脈瘤破裂による網膜下,内境界膜下および硝子体出血による急激な視力低下,または網膜細動脈瘤から黄斑部への滲出性変化による視力低下が受診契機となる2)

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緒言

 手術中に光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)を用いて眼組織の断層像を得ることは,外来検査でのOCTほど詳細で鮮明な像が得られない場合でも,術中の正確な状況判断の一助となる。手持ち型のOCT機器を手術室に持ち込み,第三者が断層像を撮影することも可能であるが,術者は手術操作を中断する必要があり,術野汚染の危険もある。第三者がタッチパネルモニターで操作するタイプのものは術野汚染の危険はないが,得られる断層像を確認するためには,術者はいったん鏡筒から視線を外さなければならない。

 Carl Zeiss Meditec社のRESCAN® 700は,同社の手術用顕微鏡のLumera® 700に搭載されており,術者がフットスイッチを操作することで,手術操作を中断することなく断層像が得られるシステムである。小さいものの接眼レンズにも断層像が映るため,術者は鏡筒から視線を外すことなく断層像を確認できる。同時に,第三者がタッチパネルモニターで操作できるようにもなっている。本稿では,筆者らの施設でRESCAN® 700で術中OCT像を得たいくつかの症例を紹介し,RESCAN® 700の可能性について言及する。

海外留学 不安とFUN・第16回

UCLAでの留学生活・2 鹿嶋 友敬
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生活環境

 ロサンゼルスはかつて日本人が多く住んでいた都市である。日本食のレストランもかなり多く現地の人々は日本食をよく食べる。研究会で出された食事が桶に入った寿司と枝豆であったことがあり,さらに白人がそれを器用に箸で食べていて驚いたことがあった。

 もっとも,それら日本食レストランのオーナーは韓国人や中国人になってしまっているようで,しっかりした日本食でないことも多い。UCLAの周辺には職員や学生が多く住み,治安は良い。そして家賃も高い。このため学生のほとんどはルームシェアで家賃を折半して住んでいるようである。

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要約 目的:外転神経麻痺発症をきっかけに胆管癌の脳転移が発見された1症例を報告する。

症例:73歳の女性が2か月前から突然生じた無痛の左眼の内斜視の精査のため当科を紹介され受診した。胆管癌の既往があり紹介元の当院外科で撮った直近のMRIでは異常がないと判定されたが,6週間後に造影MRIを施行したところ鞍上部に転移性腫瘍が見つかった。

初診時所見:左眼は60Δ以上の内斜視で外転制限があり,左眼の矯正視力は0.6であった。両眼とも眼底所見は正常で,対光反応正常,RAPD(−)で,眼球運動時痛はなかった。

経過:転移性脳腫瘍が見つかった後の1か月の間に左眼の眼瞼下垂,構語障害,頭痛が出現し,ガンマナイフ治療をしたが癌性髄膜炎により死亡に至った。

結論:急性の斜視においては眼球の神経麻痺症状をみたら脳腫瘍や脳動脈瘤を第一に疑って精査する必要がある。特に悪性腫瘍の既往がある場合には躊躇せずに造影MRI検査を選択すべきである。

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要約 目的:アクリル眼内レンズ(IOL)の挿入眼に生じた高次収差の増大の診断と治療法の報告。

症例:細隙灯顕微鏡で明らかな傾斜や偏位などの位置異常を伴わない白内障術後症例に,波面収差測定で強い眼球高次収差の発生を認めたアクリルIOL挿入8症例8眼。Nd-YAGによる放射状の前囊切開前後に,波面収差測定器(KR-1W-TOPCON)で眼球高次収差を比較した。

結果:アクリルIOL挿入眼に発症している眼球内部高次収差には,複雑なコマ収差,トリフォイル収差,テトラフォイル収差が認められた。アクリルIOL挿入眼8眼で観察された強い眼球高次収差は,Nd-YAGによる前囊切開術後,RMS(4mm)で術前平均0.673が術後0.374と有意に減少した(p=0.019)。

結論:アクリルIOL挿入眼に時に発症する眼球内部高次収差の増大は,IOL挿入術後合併症の1つであり,Nd-YAGによる前囊切開で治療できる可能性がある。

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 “眼科臨床エキスパート”シリーズの最新刊として『網膜変性疾患診療のすべて』が刊行された。本シリーズは,眼科診療の現場で知識・情報の更新が必要とされているテーマについて,その道のエキスパートが自らの経験・哲学とエビデンスに基づいた「新しいスタンダード」をわかりやすく解説し,明日からすぐに臨床に役立てるという編集方針であるが,この編集方針に沿った素晴らしい本が出版された。

 まず驚かされることは,著者のリストである。本当に研究の第一線で活躍されている研究者が執筆されている。第一人者による執筆により難しい内容をたくさんの図を用いて比較的平易に解説されているので,一般の眼科医にも理解しやすい記述となっている。一方で,「Topics」をはじめとした項目では,網膜硝子体が専門の自身にとっても初めて目にする内容も少なくなく,広い範囲の読者を対象とする一方,最近の知見を深く知りたい読者にも大変有用な本となっている。

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 眼科臨床医が待ちに待った『今日の眼疾患治療指針』の第3版が世に送り出された。「最新の眼科診療情報を盛り込んだ実用書」という当初のコンセプトを受け継ぐ中,編集に数々の工夫を凝らしたニュー・バージョンが誕生したのである。

 本書の源流は1959年に刊行された『今日の治療指針』にある。同書は,発刊から既に60年近くを経たものの,全科の疾患を網羅し,幅広い対応が求められる日常診療のガイド役として今も好評を博している医学書院の代表的書籍である。ただその一方で,個々の専門領域におけるより詳細な治療指針のニーズも高まり,2000年には田野保雄先生(阪大),樋田哲男先生(杏林大)の編集によって記念すべき本書の初版が刊行されている。その後の2007年には,現在の編集陣(大路正人,後藤浩,山田昌和,野田徹の各先生)が中心となって第2版が上梓されたが,既に10年が経過し,眼科医療の進歩の中でその価値が薄れつつあるのを残念に思っていたところであった。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 魚の目
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 麦粒腫の患者を見なくなりました。原因は,中耳炎や慢性副鼻腔炎,すなわち蓄膿がなくなったのと同じではと思われます。すなわち,抗生物質のお蔭ではなく,子供たちの栄養状態が良くなったことがその背景にあるようです。

 疾患名としての「麦粒腫」は,200年前に造語されました。プレンキの『眼科書』のオランダ語訳が日本に到来し,これを杉田玄白の子である杉田立卿が『眼科新書』として翻訳したときに,hordeolumをこう命名したからです。オオムギの学名がHordeum vulgareなので,hordeolumは「小さな麦粒」になります。もちろん立卿がラテン語を知っていた筈はないのですが,プレンキの本にはオランダ語も併記してありました。Gerstengraenがそれで,ドイツ語のGerstenkornに相当します。Gersteはオオムギ,graenは英語のgrainのことです。

べらどんな 驚異の年
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 イギリス史には“Annus Mirabilis”という年がある。これはラテン語で,“annus”は「年」のこと。「驚異の年」がその意味で,1666年を指す。この年はペストが流行し,ロンドンでは大火があった。

 イギリスのエリザベス女王二世が,1992年の議会の開会式で“Annus Horribilis”という言葉を使った。「無残な年」とでも訳せようが,その少し前に王室のスキャンダルがあったことに言及したものである。

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次号予告

あとがき 稲谷 大
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 4月は新年度の始まりです。毎年この時期は,大学病院では,新しく入局してくる医局員がいたり,眼科を選択して新たに回ってくる初期研修医がいたりして,教授としては「ときめき」を感じる時期です。私の教室でもおかげさまで毎年1名は入局する医師がおり,今年の4月はめずらしく2名入局しました。全国的に眼科医の入局が少なかった時期がありましたが,やや持ち直したのかなという印象です。

 さて,今月号は『今月の話題』の代わりに第70回日本臨床眼科学会で大阪医科大学教授の池田恒彦先生が発表されました「特別講演」の原著が掲載されております。池田先生が網膜硝子体疾患の診療で感じられた「素朴な疑問」を出発点とした研究成果の講演内容を原著としてまとめていただきました。大変わかりやすいご講演でしたが原著を読むことでさらに網膜硝子体疾患の病態の理解を深めることが出来る内容になっています。また今月号の緑内障道場では,妊娠中の緑内障点眼薬がテーマで,どの点眼薬が安全なのか是非もう一度チェックしておいていただければと思います。妊娠すると眼圧が低くなりやすいとは私も知りませんでした。御指南ありがとうございます。

基本情報

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臨床眼科
71巻4号 (2017年4月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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