臨床眼科 40巻5号 (1986年5月)

特集 第39回日本臨床眼科学会講演集 (4)

特別講演

緑内障の視神経乳頭 難波 克彦
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 緑内障眼において眼圧上昇による視神経障害のメカニズムは未だ謎につつまれている.ここ数年間の研究で視神経乳頭の解剖学的構造の重要性や易障害性のある部位の存在,眼圧上昇による軸索流の障害などが解明されてきた.ここでは現在までに行われた研究を要約して述べる.

 視神経は網膜内の神経節細胞層から発する.神経節細胞は内顆粒層にあるミューラー細胞に取囲まれ,おそらくそれから栄養されていると考えられる.近接する内網状層由来の軸索は深層の視細胞が光刺激に対しておこす複雑な心理物理的な反応の中間過程として網膜神経節細胞の興奮を調整している.神経節細胞の軸索突起はこの細胞を通りぬけて網膜の最内層を走り,網膜神経線維層を形成する.ここでは個々のニューロンでは軸索と軸索との直接接触が通常みられるが,個々の軸索はグリアに取り囲まれ,それと相互に作用している.このレベルでは各線維の間では電気的に,化学的には完全には分離していないらしい.この神経線維層内に網膜動脈,毛細血管が存在し,網膜内層およびミューラー細胞突起を栄養し,このミューラー細胞突起は神経線維束を各々取囲みその後,樹枝状となって内境界膜を形成している.

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 ぶどう膜炎による併発白内障手術時に切除された虹彩を用いて,この組織に浸潤するTリンパ球のサブセットの解析をOKT4,OKT8,OKT11の各モノクローナル抗体を使用した免疫酵素抗体法で行い,ぶどう膜炎の局所における免疫学的機構の解明を試みた.その結果,老人性白内障より得た正常虹彩組織には検索したTリンパ球サブセットはほとんど認められなかった.一方,対象とした種々のぶどう膜炎ではOKT8陽性Tリンパ球がOKT4陽性Tリンパ球に比べて数の上で優位であり,また,OKT4/OKT8比は13例中12例が1.0以下であった.このことは,ぶどう膜炎寛解期または遷延期の虹彩組織において,OKT8すなわちサプレッサー・キラーTリンパ球のうち,サプレッサーTリンパ球が主に眼局所の炎症抑制に関与しているのではないかと考えられた.

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 後部ぶどう膜炎を初発症状とした眼・中枢神経系原発悪性リンパ腫(type 1)の4例を報告した.臨床的特徴としては50歳以上で前房,硝子体内に細胞が存在し,網膜深層に黄白色円形の病巣が多発性に赤道部から後極に存在し,病巣部の網膜色素上皮の異常を伴った.螢光眼底撮影では,初期脈絡膜背景螢光のblock, late stageでの過螢光を呈した.診断方法として経強膜的網脈絡膜生検を4例中3例に行い,重篤な合併症なく3例全例で病理組織学的診断が得られたことより,経強膜的網脈絡膜生検が比較的安全で有用であると考えられた.これまで報告されている眼内悪性リンパ腫を再検討し,type 1:眼・中枢神経系原発悪性リンパ腫,type 2:全身の悪性リンパ腫の経過中に発症する眼内悪性リンパ腫の二つのtypeが存在することを報告し,type 1眼内悪性リンパ腫腰の眼科的臨床的特徴をまとめた.

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 原田病のステロイド大量療法の評価を再検討することを目的とし,ステロイド大量投与例(A群)と非投与例(B群)を対象として,その視機能の予後について検討した.初診より6カ月以上観察できた症例30例59眼(A群13例26眼,B群17例33眼)を対象とし,次の各視機能につき検査を行った.検査成績:1)視力:1.0以上はA群76%,B群94%.0.5以下はA群16%,B群0.2)色覚;a)40色相配列検査,総偏差点25以下はA群81%,B群70%.26以上はA群19%,B群30%.b) SPP II,青黄異常はA群23%,B群31%.赤緑異常はA群12%,B群13%.3)視野:異常はA,B群とも27%.4) CFF:異常値を示したものA,B群とも27%.5) ERG:低下したものA群38%,B群33%.6)暗順応:低下したものA群39%,B群12%であった.A群,B群の視機能の予後にはほとんど差がなく,また良好な経過をとった.このことから画一的なステロイド大量療法は行われるべきでないと考える.

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 難治性ベーチェット病15例26眼に対し,免疫抑制剤シクロスポリン(CYA)治療開始後1年以上経過観察した結果を報告する.CYA10mg/kg/日より開始し眼症状および副作用に応じて量を増減した.

 眼発作頻度はCYA治療前1.1±0.8回/月であったが,CYA投与開始後,0.4±0.3回/月と有意に減少した(p<0.005).視力は改善または不変が26眼中22眼にみられた.眼外症状(口腔内アフタや皮膚症状)の発生頻度はCYA治療前後で有意差はなかった.

 眼発作とCYA最低血清中濃度および臨床免疫検査とに相関はなく,CYA有効性の指標はみいだせなかった.

 副作用としては腎機能低下が全例にみられ,肝機能ではGOTまたはGPTが正常上限をこえた例が9例みられたが投与量を漸減するにつれて改善した.CYA投与中神経ベーチェット病2例,腸管ベーチェット病2例がみられ,今後十分な注意を要する.悪性腫瘍の発生は現在までのところみられない.

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 ベーチェット病患者540例の眼病変の左右差について検討し,以下の結果を得た.

(1)1眼発症後2年以内に他眼に病変を発症した例は94.0%,5年以内では98.1%であった.性差については有意差はみられなかった.

(2)眼発症後2年間経過した後の虹彩毛様体炎型に留まる頻度は男性16.8%,女性35.7%であり,女性では虹彩毛様体炎型に留まる頻度は男性の2倍であった.全症例の約6%は1眼が虹彩毛様体炎型,他眼が網膜ぶどう膜炎型を呈した.

(3)予後不良とされている網膜ぶどう膜炎型を両眼に持つ症例の左右差について,視力と年間発作回数で新しい基準で検討した.視力に左右差の認められるのは眼発症後2年目で23,8%,5年目で28.5%,発作回数に左右差が認められるのは2年目で35.1%,5年目で15.8%であった.

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 Behçet病患者87名を対象として,赤血球C3b receptor活性を免疫粘着凝集反応を用いて測定し,以下の結果を得た.

(1) Behget病患者87名中28名(32.3%)に赤血球C3b receptorの活性低下を認めた.これは健常成人29名中2名(6.8%)にくらべて有意(p<0.01)の低下であった.

(2) C3b receptor活性の低下は,眼底型より前眼部型患者に出現率が高かった(p<0.001).

(3)眼外症状の活動性は,陽性例にくらべて低下例で高く(p<0.05),白血球数,血沈値も高値を示し,CRP陽性率には有意の増加がみられた(p<0.01).

(4)赤血球C3b receptorは,Behçet病の発症,経過,予後に重要な役割を果たしていると思われた.

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 未熟児網膜症国際分類の成立の経過と厚生省未熟児網膜症研究班分類改正の経緯を述べ,活動期病期分類についてこの両者を対比して検討した.病期については国際分類のStage 1は厚生省新分類のStage 2に,Stage 2はStage 3初期に,Stage 3はStage 3中期および後期に,Stage4はStage 4および5にそれぞれ相当するので厚生省分類の病期を国際分類に書き替えることは容易であるが,逆は必ずしも可能ではない.

 国際分類では厚生省新分類のII型を特殊な病型と認めず,"+"diseaseという概念を採用したが,"+"diseaseはそのままII型と同一視することはできない.

 国際分類で最も大切でしかも有用なことは,病変の位置と範囲を予め定義された三つのzoneと時計の時刻で明確に記載することを規定したことである.これは今後未熟児網膜症診療に従事するすべての眼科医が必ず励行するようにしたいことであり,この規約に従った詳細な眼底所見の記載があれば,厚生省新分類,国際分類いずれを用いても客観的評価が可能である.

 日本では現在1984年1月より12施設が協力して未熟児網膜症のprospective studyを行っているが,1984年末までに集積された記録を厚生省新分類と国際分類の両者を用いて予備的に集計してみた.その結果厚生省新分類で記録されたデータを国際分類に置き換えることはほとんど問題はなかった.今後の本症の臨床的記録特に外国語による記載には上記の問題点を考慮しつつこの国際分類を積極的に用いるべきであると考える。

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 糖尿病性網膜症患者と健常者の血小板凝集能を測定したところ,以下の結果を得た.

(1)単純型網膜症(SDR)群において,Adenosine diphosphate (ADP)1μM,3μM付加の最大凝集率が統計学的有意義差をもって上昇していることが確認された(P<0.01).

(2)コラーゲン0.5μg/ml付加で正常群は全例2次凝集を示さなかった.

(3)コラーゲン0.5μ9/ml付加でSDR群において1部,増進型網膜症(PDR)群において全例が2次凝集を示した.

 従来の糖尿病における血小板凝集能に関する報告では,中,高濃度ADP付加によるものが広く行われていたが,今回我々が設定した低濃度ADPおよびコラーゲン付加による検査も,今後十分に検討されるべき価値があると思われた.

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 1982年1月から1984年12月までに名市大未熟児病棟で管理された出生体重1,500g以下の極小未熟児96例の院内出生児と院外出生児を対象として,死亡率と網膜症の発生・進行について比較検討し,次の結果を得た.

(1)院内出生児は33例,院外出生児は63例で死亡率の差はない.

(2)網膜症は院外出生児に有意に多く発生し,重症例も院内出生児よりも院外出生児に多い.

(3)出生体重750〜1,249gの院外出生児とその3期以上の発生は院内出生児よりも多い.

(4)網膜症の発生と進行は出生体重の増大に伴い院内出生児では急激に減少し,院外出生児では徐々に減少する傾向がある.

(5)死亡率と網膜症の発生,進行について出生体重,在胎期間,唐木らの未熟指数Pを比較すると出生体重と最も高い相関があり,P値とは院外出生児でわずかに相関するが,院内出生児では相関がない.これはP値が院外出生児のみから算出された値であるためと推測される.

(6)院内,院外共に新生児仮死や入院時チアノーゼの強いものは死亡しやすく,院外出生児で入院時に低体温のあったものは3期以上の網膜症を生じやすい.

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 糖尿病患者88例164眼について硝子体の観察とvitreous fluorophotometry (VF)値を測定し,また正常眼31例57眼および片眼性網膜剥離患者の反対眼で後部硝子体剥離(PVD)を有する14例14眼のVF値を対照として検討し次の結果を得た.(1)正常眼および網膜剥離反対眼,糖尿病眼の各平均年齢はほぼ同様で,これらの平均VF値を比較すると正常眼に比し,反対眼,またScott 0-IIIa期の糖尿病眼ともに有意の高値を示した.また網膜剥離反対眼のPVDを有するものよりScott IIIa期の糖尿病眼ではより高値の傾向を認めた.(2)糖尿病眼を病期別にPVDの有無より検討するとScott 0期,Ia期ではPVDを有するものが有意に高いVF値を示すが,Scott IIおよびIIIa期ではPVDとの相関はみられなかった.(3)以上の結果より糖尿病患者のVF値は網膜症を認めない時期や単純型網膜症の初期では硝子体の状態すなわちPVDの有無に影響されやすいが,網膜症の進行に伴いPVDのVF値への関与は減少すると考える.

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 緒言 老人性円板状黄斑変性症には,本邦と欧米との間に,その発生頻度,性差などにおいて差異がみられる.欧米では喫煙が発症の危険因子であることを示唆した報告があるが1,2),本邦では喫煙と本症の関係に関する報告はない.そこで我々は,喫煙が本症にいかなる影響を及ぼしているかについて統計学的に検討し,喫煙が発症と予後に関して危険因子である可能性が強く示唆されたので,報告する.

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 後部強膜炎は病巣自体を直接観察することができないから診断が困難である.Bensonら1)は滲出性網膜剥離を伴う後部強膜炎の螢光眼底所見として,初期のmottled background fluorescence,中期のpinpointspots of leakage,後期のintense staining of sub-retinal fluidをあげている.我々は22歳の生来健康な女子に後部強膜炎を再発したところ,眼底に異なった部位に色素上皮下剥離を呈した1症例を経験した.まれな症例と思われ報告する.

 症例  鄭○○,22歳,女性.

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 緒言 クリスタリン網膜症は主に後極部の色素上皮層と脈絡膜毛細管板を病変とする変性疾患であり,変性病巣内に散在する閃輝性の結晶様黄白色の小斑を特徴とする.1937年にBiettiが1家系の報告1)をして以来,角膜所見のない症例も含めると世界中で10数例の報告がなされている2,3).しかし,その視機能および電気生理学的機能については十分には研究されていないのが現状である.今回,我々はクリスタリン網膜症を5例経験し,その視機能および電気生理学的機能について検討し,若干の知見を得たので報告する.

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 緒言 結節性硬化症に伴う網膜腫瘤の病理所見に関しては多くの報告がなされている.その浸潤部位については,網膜神経線維層にとどまるものが多いとされているが,脈絡膜および強膜にまで拡がった症例なども報告されている1).しかし,本腫瘤部位の視機能に関する報告は少ない.今回,本症の網膜腫瘤部位において,様々な視機能検査を行い,残存網膜視機能から腫瘤の局在部位が同定できるか否かについて検討したので報告する.

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 緒言 網膜格子状変性(Lattice degeneration以下L.D.)は片眼にのみ存在する症例と両眼性の症例とがほぼ1:1になるといわれている1)。両眼性の場合にはその位置が左右眼で対称的になることをしばしば経験するが,これに関する正確な統計は見当らない.そこで両眼性L.D.の対称性について検討を行った.

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 緒言 Tapetal-like reflexはX染色体性網膜色素変性症(XLPDと略す)の女性保因者に特有の眼底異常とされているが,保因者でもこの反射を有する例がすくない事が指摘されている1),わが国ではXLPDが稀な事もあって,著者らの調べえた範囲ではいまだこの反射に関する眼底報告は見られていない.今回我々は網膜色素変性症の兄弟例を経験し,弟例とその母親の眼底にtapetal-like reflexと思われる所見を認めたので報告する.

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 緒言 糖尿病性網膜症の視野に関する従来の報告の多くは,視野の全体像を病期別に検討したものである1,2).一方螢光眼底造影により糖尿病性網膜症は網膜毛細血管床閉塞が主な病態と考えられており,螢光眼底造影所見に応じた網膜機能障害すなわち視野障害が推測されるが,この点に関する報告は少ない3,4).今回はオクトパス視野計測と螢光眼底造影を行い,糖尿病性網膜症の血管障害のうち,毛細血管障害の程度および範囲による網膜感度について検討した.

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 Multiple evanescent white dot syndrome (多発性消失性網膜白点症候群,仮称)は1984年Jampolら1)が報告した新しい型の網膜色素上皮症である.本症の特徴として①APMPPEと眼底所見が似る,②若年者に多い,③片眼性である,④病状活動期にERGの減弱を示し,症状の改善と共にERGが正常化する,⑤螢光造影初期から眼底白斑病巣に一致して過螢光を示す等々が記載されている.その後Aabergら2)は本症に両眼性,再発性の傾向がある事を報告しており,本症が本来どの様な病態を有する疾患なのか関心がもたれている.今回著者らはJampolらが報告したmulti-ple evanescent white dot syndromeと病像が酷似する症例を経験したので報告する.multiple evanescentwhite dot syndromeとして報告される症例は本邦では初めてと思われる.

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 緒言 我々は約2年半,草津市保健所管内において,未熟児,低出生体重児に対して眼科的な3カ月検診を行っており,その方法論については前報で報告した.今回,更に本検診から未熟児の眼科受診状況はどの程度のものか,について検討したので報告する.

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 緒言 網膜動脈ループ形成症は,わが国においてもすでにいくつかの報告があり,Walker1),甲田ら1)は,網膜動脈閉塞症を伴った症例を報告をしている.今回我々は急激な左眼視力低下を自覚し,網膜動脈ループ形成症に網膜動脈閉塞症を合併し,光凝固が著効したと思われる症例を経験したので報告する.

 症例 :57歳男性.初診1984年6月16日.

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 緒言 網膜血管炎には,特発性のもの,uveitisに合併するもの,全身疾患に合併するもの,ウイルス性のもの,acute retinal necrosisなど数多くの報告がある.今回我々は,全身疾患のない16歳女子の動静脈両者に強い変化を認めた両側性閉塞性網膜血管炎の1例を経験した.本例は前眼部,硝子体の炎症所見を欠き,緩慢に進行する血管閉塞を特徴とし,周辺部に広範な無血管野を認めた.

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 家族性滲出性硝子体網膜症(familialexudative vitreoretinopathy,以下FEVR)は1969年CriswickとSchepensにより報告された疾患であり,成熟出産で酸素使用の既往が無にもかかわらず,未熟児網膜症類似の眼底所見を呈する事を特徴とし,未熟児網膜症,コーツ病,周辺性ぶどう膜炎とは類似するが独立した疾患であるとした1).その後新たな報告と,またVan Nou-huysやMiyakuboらの多数症例での集約的な検討により,現在では硝子体の病変は2次的な変化であり,本症の病変は網膜血管の発育不全が基調となって起こるものであるとする考え方で本症の病態は統一されつつある2).しかし遺伝関係については従来本症の診断根拠とされていた常染色体性優性遺伝のみで本症が発現するのでは無く,散発性の発現のしかたがある事が知られるようになり3),FEVRについては未だ未解決の部分がまだまだありそうである.今回我々は定型的なFEVRの症例に遭遇したので供覧する.

 症例 (㋕3999)は20歳の男子である.1982年8月に軟式ボールが右眼に当たり,1カ月後から視力が低下したというので近医を受診した.当時の眼底検査で右眼底周辺部に血管瘤が認められ,光凝固の治療を受けた.

連載 今月の話題

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 角膜真菌症は,ステロイド点眼の普遍化,コンタクトレンズの普及に伴い増加している.しかし細菌性・ウイルス性に比し,遭遇する機会が少ないことから,つい見逃されて初期の診断・治療を誤り,重篤な視力障害を残すこともあり,治療に難渋することが多い.

最新海外文献情報

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Roberge FG et al : Long-term culture of Muller cells from adults rats in the presence of activated lymphocytes/monocytes products. Curr Eye Res 4 : 975-982, 1985 ミューラー細胞(M)は網膜色素上皮細胞とともに網膜の支持細胞として重大な機能を持つはずだが,それに関する研究は至って少ない.Mを単離して培養下に移すことはすでに可能であったが,増殖させて細胞機能の研究に用いることはできていなかった.彼らはラット網膜からカルシウムのキレーター,コラゲナーゼ,ピアルロニダーゼ,パパィン,DNAアーゼ処理,パーコール濃度勾配遠心によってMを分離し培養した.培養液にコンカナバリンAで活性化したラットまたはマウスの脾細胞,あるいはS抗原特異的Tヘルパー細胞の培養液を添加すると,Mは増殖して13回の継代,5カ月間の培養が可能となった.細胞は抗GFAP抗体およびMに対するモノクローナル抗体に染まり,Mの特徴を維持していた.炎症細胞からの分泌物質にMの増殖因子があることは,増殖性硝子体網膜症の発症にMが関与していることを示唆する.Mの機能研究が急速に進展することが期待される.

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 片眼に網膜出血,脈絡膜出血,脈絡膜剥離と多彩な病状を呈した新生児の1例を経験した.

 新生児の眼底血圧は,多くの因子により左右されるが,8例の平均では右眼61.0/48.2mmHg,左眼64.4/51.6mmHgであった.

 本症例では全身諸検査で特に異常なく,眼底血圧が脈絡膜剥離発生時には34.6/28.6mmHgと低値を示し,その消失時には59,4/44.4mmHgとほぼ正常値に復していたことより,その発生原因として,内頸動脈または眼動脈の一時的な狭窄あるいは発育遅延などの眼内への血液循環障害が推測された.

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 現在に至るまで,視覚障害児のための発達評価表はなく,既存の発達評価表では不満足の点が多かった.そこで今回,我々と当院総合診療部により,視覚障害児のための発達チェックリストを試作し,その実用性を確認しえたので報告した.

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 家族性滲出性網膜硝子体症(Familialexudative vitreoretinopathy-FEVR)のStage 1の7例8眼を4〜7年間観察した.8眼中,初診時に新生血管,滲出斑を認めた1眼は,観察中に牽引乳頭,黄斑偏位を合併し,Stage 2へと進行した.6眼では,硝子体網膜変性が著明に進行し,うち2眼に網膜裂孔を合併した.

 FEVRの軽症型を,新生血管の有無により,2型に分類した.新生血管のあるものは,Stage 2へ進行のおそれがあるので,光凝固などの治療を行なう必要があると思われた.新生血管のないものでは,経過観察を行い,網膜裂孔の合併に注意すべきである.

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 色覚検査だけで色覚異常の診断がどの程度可能であるかを検討するために,478例の色覚異常者において,石原表国際版,TMC表,SPP表ならびに石原大熊色覚異常程度表の4種類の色覚検査表を用いて色覚異常の型診断判定を行い,アノマロスコープ,パネルD−15ならびにランタンテスト結果との関連を検討した.

 色覚異常の型診断のためには,SPP分類表ならびに石原大熊程度表が最も適しており,いずれか1種類だけを使用するならばSPP分類表が最適であると判定された.一方,色覚異常の程度判定については,TMC程度表と石原大熊程度表の間に優劣はつけがたかった.TMC程度表は強度と判定される率が高すぎる欠点があり,石原大熊程度表は第一色覚異常を軽く判定しすぎる欠点があった.これらのことから,色覚異常の程度判定を色覚検査表を用いて行うことにはかなり無理があるが,それぞれの検査表の特徴を十分に認識して利用すればその利用価値はあると考えられた.

 色覚検診で学校用石原表を1表以上誤読したとして検出されたもの657名のうち,色覚正常者は179名(男性568名中105名,女性89名中74名)であり,女性では色覚正常者の占める比率が圧倒的に高かった.この中には色覚異常の遺伝的保因者が多く含まれていると思われた。また,これらの色覚正常者は色覚検査表を誤読する傾向があったが,パネルD-15あるいはランタンテストはほとんどのものがpassしており,これらの検査を併用することによって,色覚異常と誤診される危険性を低下させることができると考えた。

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 数年来のシンナー吸入歴をもつ21歳男性が1日100mlという多量のシンナーを7日間吸入し続けた結果,意識障害,失調,構音障害を伴う急性シンナー中毒になり著明な視力低下を来し明暗の認識も不能になった.シンナー吸入中止により視力は1.0まで回復し視野の初期の中心暗点が消失したかにみえたが,その後も長期にわたってシンナー吸入をくりかえしたため,慢性シンナー中毒になり視力低下,視野で傍中心比較暗点の出現にくわえてUhthoff現象を呈するに至り,さらに眼底所見で視神経の萎縮を来した.

 これはシンナー中のトルエンにより視神経の髄鞘の変性と崩壊を生じた結果であろうと推論した.

臨床報告 カラー臨床報告

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 Goldmann-Favre病の2例を報告した.症例1は24歳女性,症例2は50歳女性である.両者とも両親が血族婚であり,症例2については兄がやはり夜盲を訴えていたことから常染色体性劣性遺伝形式が疑われた.生来の夜盲,ERG所見,硝子体所見,眼底所見,白内障の存在より本症と診断された.本症と網膜色素変性症との鑑別はときに困難であるが,報告した2例にみられた円形の黒色色素沈着および格子状変性様所見は両者の鑑別上重要と考えられた.

Group discussion

レーザー眼科学 野寄 喜美春
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レーザー眼治療の現況と展望

 レーザーによる眼科治療はレーザー光凝固として眼底疾患の治療に用いられ,アルゴンレーザー装置が導入されて以来,急速に普及し,その適応や凝固方法,レーザー光の選択など著しい進歩をみせている.近年は単に光凝固のみでなく,緑内障の治療にも応用され効果が見られている.

 最近はレーザーの種類も多種にわたり利用されるようになり,特にYAGレーザーは,嚢外摘出術の前嚢切開や後発白内障の切開,さらに硝子体内膜様物の切断にも用いられるようになった.

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 これら3書は各項目に従って,その症状(證候),起因(原由),治法あるいは手術について順次説明し,「西説眼科必読」にはさらに良斎の補足を[按],[補]の形で付け加えられている.また,この3書は訳文において多少の差異が認められるものの,内容的に同じであるところより蟄篤満原著「外科書」の福鳥杜蘭訳本を各別々に翻訳したものと解するが,その翻訳時期については明らかでなく,高良斎は文政11年(1828)9月(高於菟三,高壮吉著「高良斎」),永章は不明,箕作阮甫が翻訳したのは関場不二彦氏によれば天保10年(1839)以後のことと推定されている(阿知波五郎氏 日本医史学雑誌12:2)といわれ,何れも刊行はされず写本で伝えられている.

 この「西説眼科必読」はその後記によれば,小川剣三郎博士が大正5年11月10日,仙台の半沢良作氏が蔵する所のもの(天保14年7月5日校正,良斎の門人より借覧し転写したものならん—小川剣三郎氏談)を借りて複写した.次にそれを高於菟三氏が大正6年1月25日浄写して置いた.それをさらに,大正12年9月1日の大震災で小川剣三郎博士の複写したものが焼失してしまったため,大正15年5月17日(辛未11月28日起手 辛未12月29日写了)小川剣三郎博士が高於菟三氏蔵本より複写したものと識されてあり,松屋製300字詰原稿用紙190枚にペン書の全1冊 (25.5×17.5cm)和綴本である.

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原著論文の書き方について
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論文を書く上で一番大切なことは,何故この論文を書くに至ったのかという理由がはっきり示されることと,この研究によって新しくわかった知識は何であるかということを,はっきりと示すことであろうと思います。以下,具体的に順を追って述べてみたいと思います。

基本情報

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臨床眼科
40巻5号 (1986年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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