看護教育 61巻4号 (2020年4月)

特集 あらためて学ぶ、なぜリフレクションか

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リフレクションという言葉自体は広く看護で知られるようになりました。しかし、言葉だけの知識にとどまっていたり、単なる振り返りとなってしまっている現状も見受けられます。看護におけるリフレクションの第一人者であるクリス・バルマン先生は、プロフェッショナルである専門職として、看護師を省察的実践家(リフレクティブ・プラクティショナー)と定義づけています。学生が卒後、省察的実践者として学び、働き続けていくためには、看護基礎教育の段階でリフレクションの思考がめばえる必要があります。

本特集では、2019年11月に東京と神戸にて開催されたバルマン先生の講演録を軸として、さまざまなお立場でリフレクションに取り組んでいらっしゃる方々に、ご自身の実践とリフレクションのつながりをご紹介いただきます。そして、学生が省察的実践家に育っていくために教員のできるかかわり、あり方について論考いただきます。

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 看護基礎教育において、近年極めて重要とされるリフレクションだが、リフレクションという言葉がもつ印象からなのか、「リフレクションは難しい」「リフレクションって振り返ることだからいつもやっている」などの受け止め方が多いと感じる。

 本稿では、看護におけるリフレクションの第1人者であるクリス・バルマン先生とスー・シュッツ先生の講演とワークショップの内容*1を概説し、看護におけるリフレクションの意味や意義、リフレクション学習を再確認する。そして、看護基礎教育のなかで学生のリフレクションの思考を育む教授学習方略について考えたい。(田村由美)

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はじめに

 筆者は、授業研究・教師教育を専門として、主に小・中学校の教育改善に資するための研究に取り組んできた。子どもの成長において特に教師の果たす役割は大きいとされ、教師に求められる専門性のあり方について探究している。

 今日ではめざすべき教師像として省察的実践家が掲げられ、「リフレクション」が教師教育や授業研究での鍵として考えられるようになった。しかしながら、リフレクションの本質を誤解することによって、教師の学びに役立つどころか、悪影響を与えうることに警鐘を鳴らす研究者がいるほど、本来の意味ではないリフレクションが実践されていることも少なくない。

 かかる現状に対して、本稿では省察的実践家の提唱者であるショーンに立ち返り、省察的実践家やリフレクション概念の定義を概説するとともに、省察的実践家に求められるリフレクションとはどのようなものか考えたい。

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 最終的に、そして重要なことに、私は、看護におけるリフレクションとは、経験から学び、「自身」を批判的に見つめ、実践の中で「考えが変化」し、「よりよく行う」ためのプロフェッショナルな動機づけにつながっていると提案したい。

クリス・バルマン1)

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 昨年の日本教師学学会の国際カンファレンス“How People Learn ‘WAZA’ From the Education Field of Teaching and Nursing”において、看護学生に看護の“わざ“をどう教えるかについて講演する機会をもった。

 ドナルド・ショーンは、前例がなく不確定で価値葛藤をはらむ実践状況のなかで発揮される専門家の技を、professional artistryと表現し、これは講義や授業といったteachingの様式では教えることができないと明言し、「行為の中の省察」をとおして獲得されるとした1)。artistryとは、辞書的には芸術的手腕(技巧)、芸術的営み、芸道という意味である。看護実践の場は、ショーンのいう、前例がなく不確定で価値葛藤をはらむ実践状況に遭遇することが多く、その状況のなかで判断し行為し続けるartistryが求められている。そのため、学生がartistryの獲得をめざして成長するための省察的実践の力をつけることが必要と考えている。

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「実習振り返りノート」

 私は大学卒業後に3年間の看護師経験を経て、助手として就職した。看護教員の役割や看護基礎教育については知らないことばかりで、何事も一から先生方に教えていただいた。「実習振り返りノート」(以下、ノート)は、そのなかの工夫の1つである。ノートを始めたのは、初めての実習指導となった1年生の基礎看護学実習Ⅰ(1週間)の前に、先輩教員から「実習の振り返りをするためにノートを用意してね」と言われたことがきっかけだった。教員1年目からずっと書き続けて、丸10年になる。

 先輩が教えてくれたノートの使用方法は、①見開きで使うこと、見開きの左ページには、②その日の実習での学生の状況とそれに対する自分の指導を対応させる形で書くこと、右のページは、③書き出した②を振り返って気づいたことを書くこと、④ノートは1日の実習指導後、その日のうちに書き、気づいたことは翌日の指導に活かすこと、である。

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はじめに

 東京都立看護専門学校(以下、都立看学)7校では、これまでも看護教育充実に向けた取り組みを継続して行ってきた。今回、第5次カリキュラム改正を見越して、2015(平成27)年度から「看護基礎教育の充実プロジェクトチーム」(以下、PT)を立ち上げた。変化する社会の現状をふまえたうえで、次世代の看護を担う学生を育成するカリキュラムの編成をめざして活動を始めた。

 まず、社会から求められる看護師像および都立看学で育成したい看護師像をもとに、教育理念、教育目的、教育目標、卒業生像を検討した。2018(平成30)年度から開始された厚生労働省「看護基礎教育検討会」の進捗状況に鑑みながら、現行の指定規則の枠組みをもとに、「育てたい力」ごとに教育内容を抽出・選択し、教育内容の組織化を中心に議論を進めた。

 厚生労働省「看護基礎教育検討会」の報告書を受け、保健師助産師看護師学校養成所指定規則および看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン第5次改正案との整合性を確認し、カリキュラムの骨子を作成した。そこで本稿では、これまで取り組んできた都立看学におけるカリキュラム編成過程の概要と試案を報告する。

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はじめに

 看護学部で使用される「看護理論」のテキストでは、19世紀のナイチンゲール(1820―1920)が最初の看護理論家として登場する。このナイチンゲールの思想は19世紀に突如として現れたのだろうか。医療・医学は古代から連綿と続いており、それに付随して看護に類する行為も並行して行われていたのではないだろうか。

 40年ほど前に筆者は日本看護協会看護研修学校で、細菌学者で医学史研究者の川喜田愛郎先生(1909―1996)の講演「医学史からみたナイチンゲール―健康の意味をめぐって」1)を聴き、医学史上の「non-naturals」という概念とナイチンゲールが『看護覚え書き』で主張している内容とが類似していることを初めて知った。「non-naturals」は古代ローマのギリシア人医学者ガレノスの医学思想の重要概念の1つで、今日の衛生学に相当する2)。川喜田先生は、病人を中心とした場合にはケアしかなく、キュアはケアの特殊な形であるととらえている。この視点こそ、筆者が看護職でありながら医学史を研究する糸口となった。また、川喜田先生は、「はじめに病人ありき」であって、学問上の単なる枠組みとしての医学と看護学がそれに先行するものではない。医学も看護学も、患者の治癒という共通の目的に仕える広義の技術学で、近代科学の本性と社会・制度の変貌とが医師と看護師という2つの独立したプロフェッションを生んだのは歴史的な必然であり、それは本質的に1つの技術(アート、テクネー)とみるのが妥当であるとも述べている3)

 広義の医学には看護も含まれると考える。筆者は順天堂大学医史学研究室に約30年在籍するとともに、ナイチンゲール研究学会に20数年所属し、医学史とナイチンゲールの両方を研究してきた。理論の理解にはその源泉となった体験や学問を探究する必要があるが、ナイチンゲールの時代には諸科学が未発達のため、人とケアの歴史、医学史から考える必要がある。

 加えて、看護は長い間言語化されず、実践知、暗黙知、経験知で伝えられてきた。ナイチンゲールはドイツで受けた看護の教育、ロンドンの病院やクリミア戦争での看護体験などをもとに、初めて看護を言葉にし、『看護覚え書き』に著した。

 本年(2020年)は、ナイチンゲール生誕から200年となる。本稿では、前編・後編の2回にわたって、「看護の創始者」として語られがちなナイチンゲールを、あらためて“医学史”からとらえてみたい。

 今回は『看護覚え書き』の序章で論じられている自然の治癒力、自然の治癒力を高める外的条件、健康の法則と看護の法則を、さらに同書の本論より換気、小管理について考察する。なお本稿で取り扱う『看護覚え書き』4)は1859年の初版とし、『ナイチンゲール著作集』(全3巻)も補足的に活用した。

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「当事者研究」の導入

 看護基礎教育における臨地実習において、学生を支援するためのさまざまな教育的方法が研究されています。帯広看護専門学校(以下、本校)では、「当事者研究」が実習中の学習意欲を高めることに有効ではないかと考え、正課外教育で実践を始めました。これまでの実践のなかで得た、当事者研究の効果や学びについて報告します。

来た、見た、知った

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包括的コミュニケーション技法(ユマニチュード)の体系的導入

 真新しい建物の匂い漂う演習室で、おなじみのサロペットをはいたイヴ・ジネスト先生が、入学して半年ほどの学生たちに語りかける。「人を人として接する技術がユマニチュードです」。カリキュラム上、すでに早期体験実習には出ているものの、看護を学び始めたばかりの1年生たちの目に、ユマニチュードはどのように映るのだろうか。

 2019年9月24日から27日にかけて、富山県立大学看護学部にて、ジネスト先生、本田美和子先生を招聘し、多くの先生とともに1年生全員を対象にした授業「看護ケアとユマニチュードⅠ」が開催された。Ⅰという数字が示すように、この科目は4年生まで、そのつど、両先生を招聘しつつ、看護の学びと並行していく形で、継続されていく。カリキュラムのいわば大きな幹として、ユマニチュードがすえられている(表)。

連載 「食べたい」をめぐって・1【新連載】

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それぞれのタブー

 他人様の食生活に口を挟むという業の深い仕事柄、「食べる」ことについては人一倍、真剣に考えずにはいられない。

連載 コミュニケーションの「困った」をスキルで解決!・1【新連載】

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看護学部2年生のAさんから、2週間後に実習を控えたある日、教員にメールが届きました。「2年生のAです。先生にご相談があってメールさせて頂きました。もう少しで実習なのですが、気持ちがついていかなくて、不安が強く、どうしたらいいのかと落ち着かない状態です。このままではほとんど勉強できない状態での実習となってしまいそうです。どうやって勉強をすればいいでしょうか」

教員はメールを見て、Aさんと研究室で会うことにしました。

Aさんの気持ちに共感し、望む方向へ進むことを支援する動機づけ面接の一例を紹介します。

連載 今日から使えるアイスブレイク・4

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ねらい

ノンバーバルコミュニケーションで関係性をほぐす(職位を外す)

推奨科目:災害看護学(トリアージ)、グループワーク全般

推奨場面:授業の前、グループ分け

適正規模:12人以上(多いほどおもしろい)

所要時間:10分

準備物品:数種類の色または形のシール

連載 看護教育×法律相談 知っておきたいトラブル対応のポイント・4

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相談

 学校内の異動に伴い、新年度から看護学の概論の科目を担当することになりました。その授業のなかで「インフォームド・コンセント」について講義する時間があります。言葉の意味はわかりますし、患者の権利が成立してきた歴史的な経緯も教科書に載っているので、ある程度説明はできるのですが、看護師としての経験のなかでは実際に大きなトラブルになったことはありませんでした。法律的な観点からは、どのようなことが問題となるのでしょうか。

連載 〈教育〉を哲学してみよう・9

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「べてるの家」が提起する問い

 医学書院『シリーズ ケアをひらく』をはじめ、広くその活動が取り上げられている北海道・浦河べてるの家をご存じだろうか。

 べてるの家では、精神疾患のある「当事者」たちが自らの生きづらさを「研究」し、互いにその語りを共有し合うなかで、病いとつき合っていく実践がなされている。べてるの家が注目されているのは、専門家である医師が患者の抱える病気を治療できるという「医師―患者関係」を問いの俎上にあげているからである。

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目次

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医療者がExcelを使うときのノウハウを伝授する秘伝の書

 本書を手に取り、私はすぐにパソコンの電源を入れてExcelを操作したい衝動にかられました。

 私の書棚には、田久浩志先生の著作『統計解析なんかこわくない―データ整理から学会発表まで』『看護研究なんかこわくない―計画立案から文章作成まで』などが並んでいます。私は田久先生と先生が執筆された数々の書籍に、なんと20年ほどお世話になっているのです。初めて看護研究に真摯に取り組んだとき、多くの看護研究初心者がそうであるのと同じように、私も数字の扱いに悩み、書籍に手をのばしたのがきっかけでした。一端の研究者になった今でも、本書から新たな発見を得ています。

INFORMATION

新刊紹介

基本情報

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看護教育
61巻4号 (2020年4月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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