看護教育 61巻1号 (2020年1月)

特集 のばすべきコミュニケーション能力とは

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看護基礎教育検討会の報告書にて、新たな「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン」のなかの「看護師教育の基本的考え方」に、「対象を中心とした看護を提供するために、看護師としての人間関係を形成するコミュニケーション能力を養う」という項目が追加されました。その理由の1つに、地域医療や多職種連携を推進するなかで、看護師の活躍が強く求められるようになったことがあるといえるでしょう。

コミュニケーション能力を身につけることは、これまでの看護教育においても求められ続けてきました。特集では、ベッドサイドでの患者-看護師関係に着目しがちなコミュニケーション教育について、新たな視点から見つめ直すとともに、看護学生や看護師、特に新人看護師に必要とされるコミュニケーション能力についても考えます。

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 2019年10月15日の『看護基礎教育検討会報告書』(厚生労働省)1)では、看護職員のコミュニケーション能力の不足に鑑みて、看護基礎教育におけるコミュニケーション能力向上のための教育がより一層強化される必要があると述べられています。看護基礎教育におけるコミュニケーション教育は、従来から変わらずに求められてきました。しかし、今回の厚生労働省の報告では、特に看護実践の場でその能力の不足が課題として挙げられています。

 この現状をふまえ、本稿では看護基礎教育におけるコミュニケーション教育について、科目の位置づけと、その教授方法について紹介します。またさらに、看護教員自身のコミュニケーションの課題と解決方法についても紹介します。

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あなたは、コミュニケーション能力がありますか?

 この質問を受けたとき、どれだけの人が自信をもって「はい」と言えるでしょうか。そして、「はい」(または「いいえ」)と判断するときに、あなたは“どのような”コミュニケーション能力があるから(またはないから)、そう答えたのでしょうか。

 コミュニケーション能力は、どんな職場でも必要かつ重要なものとして位置づけられており、教育現場でもその傾向はますます高まっています。学生にとっても、コミュニケーション能力は学生生活を楽しむ、もしくはサバイブするための必須事項として認識されていると言っても過言ではないかもしれません。

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看護の場に応じた患者・家族とのコミュニケーション

 これまでの看護基礎教育は、病院志向の教育を、臨床の視点で、ほとんどの看護学領域が行ってきました。しかし本来、看護の対象である患者は、健康・不健康を問わず地域で暮らす人々です。患者の健康な生活を支えるという点においては、教育が十分でなかったといっても過言ではないでしょう。さらに近年の人口構造・疾病構造の変化は、人々が健康障害をもったときに行く先を、病院だけではなく施設・在宅などへと転換させました。日常生活圏すべてを包括したさまざまな場所が療養環境となり、利用者が「場」を選択する時代になったのです。つまり、これからの看護は、病院のみならず健康支援サービスを提供する「場」が地域のなかにあることを大前提として考えていくことが必要となります。

 その一方で、人は健康を損なえば病院を訪れ、治療のために通院、入院を余儀なくされます。したがってこれからは、「場に応じた看護」を提供できること、健康障害の程度、療養環境に合わせて対応できること、そのような看護師を育成することが要求されるでしょう。

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わるい知らせは毎日やってくる

 病院で働いていると、患者のうち誰かしらに検査結果や治療経過などを知らせる場面に遭遇します。それらは、程度の差はあれ、患者にとってわるい知らせであることが多く、看護師は経験にかかわらず患者を支えることが求められます。

 病気に関連したわるい知らせを告知するのは主には医師の役割ですが、告知のあとのフォローは看護師の役割といえるでしょう。特に、がんの場合には告知の場に看護師が同席することで「がん患者管理指導料」という診療報酬がつくようになっています。

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はじめに

 私は、長年大手グループ病院で総務、教育、人事採用に携わってきました。現在は、研修講師や人財育成・組織開発コンサルタントを行う「ヒキダシスト」(引き出す+アシスト)として、医療介護現場のさまざまなお悩みや、問題解決の糸口を引き出すお手伝いをしています。また、病院勤務時から現在に至るまで継続して、高校生の医療・介護系への進学・就職などのアドバイザーとして進路指導を行っており、医療・介護職種の入職前から退職まで、また医療・介護現場の内側と外側から、さまざまな視点で医療介護業界の組織や人財育成の問題に携わっています。

 全国各地の医療介護現場に伺うと、院長・看護部長・事務長などの管理者、また人事・教育担当者から、組織のさまざまな問題について相談をいただきます。リーダーシップや役職者研修など、マネジメントの課題もありますが、組織の問題は、つきつめていくと必ず共通して「コミュニケーション」の問題に行き当たります。

 相談される皆さんもその点については、すでに気づいておられるようで、「コミュニケーション研修」や「モチベーション研修」「怒りの感情コントロールセミナー」などの教育研修が積極的に行われています。しかしながら、いくらこれらを実施しても組織の問題が改善したという声が聞こえてこないのはなぜでしょうか。

 現在の教育研修は、とかく「手法やスキル」、またそのレベルアップにばかり目が向いているようです。もちろんそれも必要ではありますが、私は、もっと根底に取り組むべき本質的な問題があると考えています。それは、組織内の「コミュニケーションのあり方」そのものについての認識です。

 そこで、本稿では、医療・介護現場でのコミュニケーションの概念をあらためて取り上げ、そこからさらに一歩進めて「組織が必要とするコミュニケーション」と「組織で必要とされるコミュニケーション能力」について考察してみたいと思います。

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コミュニケーション能力が求められる背景

―看護師養成の新カリキュラムでは、教育の基本的な考え方の1つとして、「看護師としての人間関係を形成するコミュニケーション能力を養う」という項目が追加されました。

 平田先生は、大阪大学で、演劇やダンスを通じたコミュニケーション教育を行っていらっしゃいますが、今、医療職にコミュニケーション能力が、より一層強く求められる背景にはどのようなものがあると思われますか。

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「必要性の理解」からの進化

池西 このたび、一般社団法人日本看護学校協議会から、厚生労働省の看護職員確保対策特別事業に基づき渡辺美保子先生を検討委員長として、「専門職連携教育ガイドライン」(以下、ガイドライン)*1を刊行しました(表1)。この分野について、学問的に、かつ実践的に長く追究されてきた酒井郁子先生にご協力いただきました。

 専門職連携実践の重要性は、以前から言われています。しかし、特に看護師養成所の場合、単科の学校が多いこともあり、専門職連携についての教育をどのように進めるのかがよくわからなくて、教育の目標には掲げていても教育内容にうまく取り入れられていない現状もあると思います。そこでもう少し踏み込んで、「じゃあ、どうやって連携するの?」という具体的なヒントを示して、養成所がしっかりと専門職連携教育に取り組むことを推進する意図で、このガイドラインを作成しました。

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はじめに

 これから3回にわたって、教育実践報告の書き方についての連載をいたします。連載を始めるにあたり、自己紹介をしたいと思います。私の専門は教育工学であり、高等教育を対象に授業や学習環境をよりよくするための活動、いわゆるFD(Faculty Development)活動に従事しています。大学では授業設計に関する相談を受けたり、日本教育工学会SIG01「高等教育・FD」、SIG07「インストラクショナルデザイン」が主催する大学教員のためのFD研修会「大学授業デザインの方法―1コマの授業からシラバスまで」の実施に携わったりしています(この研修はお薦めです!)。

 また私は、大学でライティングセンターの運営を担っています。ライティングセンターでは、レポート課題や卒業論文に課題をかかえた学生や「文章をよりよくしたい」と考えている学生を対象に、大学院生やPD(Postdoctoral Fellow)であるチューターと相談をしながら、よりよい文章作成をめざす学習支援に取り組んでいます。教育実践における質の向上を支える立場、ならびに書くことをサポートする組織に携わる経験を活かせればと思います。連載を通じて読者の「教育実践報告(以下、実践報告)を書きたい!」という気持ちが高まれば幸いです。

 第1回目は、「実践報告の意義を説明できる」「実践報告を執筆するにあたり、アウトラインを作成できる」「授業の背景・授業目的を具体的に書くことができる」ことをめざします。

連載 今日から使えるアイスブレイク・1【新連載】

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ねらい

質問する力と共感する力のトレーニング

推奨科目:コミュニケーション論、フィジカルアセスメント

推奨場面:シミュレーションの導入、朝の授業、実習前の説明

適正規模:2人ペアあるいは3人組

所要時間:5分

準備物品:とくになし

連載 看護教育×法律相談 知っておきたいトラブル対応のポイント・1【新連載】

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はじめに

 はじめまして。私は大学で法律を教えています。この連載では、看護師養成機関の運営・教務のなかで起こるトラブルについて、教員の皆さんへ法律的な側面からアドバイスや注意喚起などを行っていきます。

 読者の皆さんは、これまで似たような記事や書籍を目にされたことがあるかもしれませんが、それらは裁判例を取り上げて、そこでの問題点を解説するものではなかったでしょうか。しかし、当事者間の信頼関係が壊れきって訴訟に至った事例ばかりを見ても、実務でどこまで参考にできるかは定かではありません。

 そこで、この連載ではトラブルになるのを避けたり、トラブルが起こった場合に当事者間の信頼関係を損なわないようにして、問題を本当の意味で「解決」することをめざします。あらかじめ決めておかなければいけないことや、すぐに対処しなければいけないこと、事態を悪化させないために注意することなど、現実的なリスクマネジメントを基本として、知っているようでじつはよく知らない事柄の説明までしていきたいと思います。ここで学んだことを、学内規則の策定や職員会議での提案の参考にしたり、学生への指導の根拠にして、教務に役立てていただければ幸いです。

連載 〈教育〉を哲学してみよう・6

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マトリックスで描かれる教育の理想?

 『マトリックス』というSF映画をご存じだろうか。キアヌ・リーブスが扮する主人公トーマス・アンダーソンは、ある日、自分が生きてきた日常が実は仮想空間であることを知らされ、「本当の世界」に目覚めることになる。そこはコンピュータによって人間の世界が侵食された別空間であり、トーマスは人間の世界を守るため仲間とともに抵抗運動に加わっていく、というストーリーである。そのなかで、トーマスが脳に直接電極を接続し、敵と闘うための知識や技能をインストールする場面がある。驚くべきことにトーマスは、あっという間に別世界のさまざまな事情を熟知し、戦闘のわざを身につけることができる。

 さて、トーマスの「学習」を見て、みなさんはどのように感じるだろうか。労なく必要な知識や技能を習得できれば、学習につまずくことなく楽しい学校生活を送れるかもしれない。学習者のさまざまな抵抗に遭遇することなく、快適な教師生活を送れるかもしれない。将来の看護師に必要な知識や技能を多くの学生や実習生が身につければ、医療は一層充実し、優れた専門職者を養成することができるだろう。いや、そのような社会が実現したら、教師の役割が失われてしまうではないか。さまざまな意見があるだろう。

連載 専門看護師とともに考える 実習指導のポイント 昭和大学の臨床教員の立場から・10

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 本連載では、臨床教員である専門看護師が、自分の担当する実習科目について、看護スペシャリストとしての視点をふまえた実習指導の「概要・ポイント」と「実践」に分けて説明する。「概要・ポイント」回では、実習領域の特徴を説明したうえで学生への指導ポイントや臨床との連携について紹介し、「実践」回では、実践例を具体的に説明する。また連載とは別に、昭和大学の臨床教員制度の詳細について毎回異なるテーマのコラムを掲載する。

大﨑千恵子(昭和大学保健医療学部 同学統括看護部)

連載 医療通訳inバンクーバー・10

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 以前に、カナダと日本の医療制度の違い、医療現場での文化や考え方の違いを紹介しました。今回は両国でとらえ方が大きく異なる「大麻」にふれたいと思います。カナダでは2017年に大麻が合法化されました(州によって細かな扱いは異なります)。

 日本では危険なものと認識している人が多いと思いますが、大麻の効果が見直されてきていること自体は皆さんもご存知かもしれません。カナダの研究者の多くは大麻を「薬草」と考えています。大麻には特有の化学物質(カンナビノイド)が60種類以上も含まれており、そのうち、THC、CBN、CBDが三大成分といわれます。THCは向精神作用を有し、CBDは精神作用をもたないとされます。

連載 核心に迫る授業改善 インストラクショナルデザインによる事例検討・10

定番を疑ってみよ 平岡 斉士
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 前回は「お悩み解決のまとめ」をしましたので、今回は「改善の方針のまとめ」をやってみましょう。先生方は改善の方針と聞いて、どのようなものを思い浮かべますか。

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目次

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「現場で活躍する人」を育てる方法を学ぶために

 本書は、安永悟氏が数多くの研修会で永年取り組んでこられた「LTD話し合い学習法」を、紙上研修として著した書である。著者が紙上研修とした意図は、時間的制約や物理的制約を越えて、誰もが参加できるからとしている。そして「伝えたい内容を体系的かつ系統的に伝えられ」、著者が研修中に「なにを手がかりに、なにを考え、なにを意図して、どのように振る舞っているのかをタイミングよく盛り込むことができる」と述べている。確かに、本書はすべて語り口調で記されており、対面研修とほぼ同様な感覚が得られ、著者を身近に感じることができる。また、常に手元に置いて、疑問に思うことはすぐに、あるいは読み手の時間があるときに何度でも確認ができる。読みやすく、「LTD話し合い学習」に関する本を初めて手にする人でも容易に理解ができる。

 本書の構成内容は、大きく、①学びの場づくり、②教育の目的と方法、③協同学習の考え方、④LTD話し合い学習法、⑤分割型LTDの体験、⑥LTD授業モデル、からなっている。そのなかで私が注目したのは、「教育の目的と方法」の章である。著者が教育研究活動の目的とした「『現場で活躍できる人』の育成」で述べている人材像は、私自身も共感することができ、厚生労働省「看護基礎教育検討会報告書」で示された、看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン改正案の「教育の基本的考え方」に通ずるものがある。これからの看護基礎教育は、著者が本書で述べている「常に変化成長できる人」を育てることに尽きると思う。「常に変化成長できる人」とはどのような人材か、ぜひ本書で確認していただきたい。

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ストーマケアに携わるすべての方の必読書

 本書は、2012年に刊行された『快適! ストーマ生活―日常のお手入れから旅行まで』の第2版である。著者が「はじめに」でも述べているように、「(看護)スタッフはもちろん、患者さん自身が術前から使える、実用的でわかりやすいストーマの本があったらいいのにな……」という思いをもとに、ストーマケアのポイントをイラストや写真をふんだんに取り入れながら、大変わかりやすく書かれた、ストーマを「つくった」方々にとっての「バイブル」的な書籍である。

 今回改訂された第2版では、付録②として海外旅行時用の携帯カードが紹介され、また、「パート2 ストーマのお手入れ」内の「ストーマ装具の選び方」の項目が大幅にアップデートされた。初版から第2版までのおよそ10年間にストーマ装具のコンセプトは大きく変わり、各メーカーからそれぞれ特徴的な装具が開発・販売されてきた。そのため第2版では、最新のストーマ装具の特徴や使用目的とその方法についても取り上げており、近年のストーマ装具の多様化にも十分に対応した内容となっている。

新刊紹介

INFORMATION

基本情報

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看護教育
61巻1号 (2020年1月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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