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はじめに
私は、長年大手グループ病院で総務、教育、人事採用に携わってきました。現在は、研修講師や人財育成・組織開発コンサルタントを行う「ヒキダシスト」(引き出す+アシスト)として、医療介護現場のさまざまなお悩みや、問題解決の糸口を引き出すお手伝いをしています。また、病院勤務時から現在に至るまで継続して、高校生の医療・介護系への進学・就職などのアドバイザーとして進路指導を行っており、医療・介護職種の入職前から退職まで、また医療・介護現場の内側と外側から、さまざまな視点で医療介護業界の組織や人財育成の問題に携わっています。
全国各地の医療介護現場に伺うと、院長・看護部長・事務長などの管理者、また人事・教育担当者から、組織のさまざまな問題について相談をいただきます。リーダーシップや役職者研修など、マネジメントの課題もありますが、組織の問題は、つきつめていくと必ず共通して「コミュニケーション」の問題に行き当たります。
相談される皆さんもその点については、すでに気づいておられるようで、「コミュニケーション研修」や「モチベーション研修」「怒りの感情コントロールセミナー」などの教育研修が積極的に行われています。しかしながら、いくらこれらを実施しても組織の問題が改善したという声が聞こえてこないのはなぜでしょうか。
現在の教育研修は、とかく「手法やスキル」、またそのレベルアップにばかり目が向いているようです。もちろんそれも必要ではありますが、私は、もっと根底に取り組むべき本質的な問題があると考えています。それは、組織内の「コミュニケーションのあり方」そのものについての認識です。
そこで、本稿では、医療・介護現場でのコミュニケーションの概念をあらためて取り上げ、そこからさらに一歩進めて「組織が必要とするコミュニケーション」と「組織で必要とされるコミュニケーション能力」について考察してみたいと思います。
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