看護教育 61巻2号 (2020年2月)

特集 カリキュラム編成のヒント 臨床判断能力を育む取り組み

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看護基礎教育検討会において、基礎教育における「臨床判断能力」の養成が課題にあげられました。

「臨床判断能力」については、オレゴン健康科学大学に在籍していたタナー氏が開発した臨床判断モデルがあります。このモデルは、「現場で熟達した看護師がどのように考えているか」を図式化したものであり、すでにアメリカでは、このモデルに基づいた教育実践が進んでいます。

なぜ、臨床判断能力か 池西 静江
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指定規則改正と「臨床判断能力」

 厚生労働省は2019年10月15日に「看護基礎教育検討会報告書」(以下、報告書)を公開しました。2018年4月から始まった看護基礎教育検討会(以下、検討会)および看護師ワーキンググループの検討のなかで、これからの看護師に求められる能力の1つとして、「臨床推論」や「臨床判断」が取り上げられました。報告書のなかでは「臨床判断の基礎的能力」と表記されました。そして、保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下、指定規則)及び看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン(以下、指導ガイドライン)の第5次改正案では、専門基礎分野は「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」を合わせて15単位だったところが、1単位増えて16単位に、基礎看護学も、臨床判断能力を含めた能力強化のために10単位を11単位に増やしました。看護の統合と実践では単位数は増えませんでしたが、指導ガイドラインの留意点に臨床判断能力について明記されました。このように第5次改正においては「臨床判断能力」が注目されています。

 そこで、本稿では、なぜ臨床判断能力か、臨床判断とは何か、臨床判断の基礎的能力をどう育成するか、について考えてみたいと思います。

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 看護基礎教育で臨床判断の基礎的能力を育む意義について、看護基礎教育検討会(以下検討会)報告書1)では「専門基礎分野」で解剖生理学や薬理学などを充実させ、臨床判断の基盤を強化するための講義・演習の充実を図ること、「専門分野」の基礎看護学でも、臨床判断の基礎的能力や倫理的判断・行動に必要な基礎的能力を養うことが明記された。

 筆者(真砂)は、2019年7月、日本看護学校協議会主催の教務主任養成講習会(以下、講習会)において、看護教育方法・評価演習(1単位30時間)を受講した。「臨床判断の基礎的能力を強化するための教育方法・評価」について、逆向き設計の視点から構築し、効果的な教育実践について学ぶ機会となった。そこで本稿では講習会でのグループワーク演習の成果を報告するとともに、実践における今後の課題を明確にする。

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 第5次カリキュラム改正に向けた「看護基礎教育検討会報告書」において、「臨床判断能力等に必要な基礎的能力」の強化が示された。これは看護を科学的根拠に基づいて判断し実践するために必要となる能力である1)。現行のカリキュラムにおいては、科学的根拠に基づいた実践に必要な能力は、看護過程を用いて教育している。しかし、多くの場合学生は、対象にとって意味ある情報の収集が困難な状況にあり、看護計画立案までの思考プロセスの記述に追われ、対象の全体をとらえた実践につながっていない現状がある。今後は、療養の場も多様化し、対象の状況に合わせた即興的な判断と実践が求められており、「臨床判断能力等に必要な基礎的能力」とは何か、看護過程との違いなどを理解したうえで教育内容や方法についての検討が必要である。

 今回、教務主任養成講習会「看護学教育方法と評価」(以下、講習会)において、カリキュラム改正の主旨を踏まえ「臨床判断を育む学習支援」の検討に取り組んだ。グループワーク(表1)のなかで、臨床判断を育むためには臨床判断プロセスの第一段階である「気づき」がもっとも重要と考え、「気づき」を育むための教育方法および評価について、具体的な内容と今後の課題を検討したので報告する。

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臨床判断能力への着目

本学のカリキュラムの流れ

 同志社女子大学看護学部(以下、本学)の開設は今から5年前に遡る。開学と同時に学生の看護実践力を育むことを目的として、各専門の教員がともに担当する科目「看護実践総合演習(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ)」が始まった。本科目は各学年に設置され、「シミュレーション学習(以下、SIM学習)」や「OSCE:Objective Structured Clinical Examination(客観的臨床技能試験)」などの授業が組まれていた。そのため、担当教員は、SIM学習やOSCEで学生にどのような課題を出すのがよいかを専門領域を超えて検討を重ねた。

 本学のカリキュラムの流れは、入学後すぐの春セメスター「ヘルスアセスメント」に始まり、秋セメスターには「フィジカルアセスメント」、さらに、2年次春セメスターには「看護過程論」というように、学生の思考を重視する科目をつなげながら、9月の「基礎看護学実習Ⅱ」に続く。「基礎看護学実習Ⅱ」では、学生が1人の療養患者を受け持ち、看護過程を展開しながら基礎的な看護技術を実践する。

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臨床判断能力に着目したきっかけ:老年看護学における従来の課題

 日本は、2007年に内閣府に少子化担当大臣が設置されるなど、毎年のように少子化の記録を更新する一方、高齢者人口は年々増加傾向にある。総人口が減少するなか、65歳以上の人口が増加することで高齢化率は上昇している。令和元年度版高齢社会白書1)によると、現在は国民の約4人に1人が65歳以上であり、すでに超高齢社会を迎えている。その対策として、ベビーブーマーの団塊世代が75歳を迎える2025年までに、高齢者が要介護となっても尊厳を保ち、住み慣れた地域で最期まで自分らしく生活できるよう「住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築」が進められてきた2)

 こうした時代背景をふまえ、静岡県立大学看護学部(以下、本学)の老年看護学領域においては、地域包括ケアシステムのどの段階においても高齢者像をとらえることができるよう、特に地域の高齢者の状態に合わせ彼らが「自分らしく」生活できるようなケアを計画実施できることを目標に授業を組み立ててきた。

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はじめに

 前回は、「教育実践報告(以下、実践報告)の意義を説明できる」「実践報告を執筆するにあたり、アウトラインを作成できる」「授業の背景・授業目的を具体的に書くことができる」ことをめざしました。これは、表1の「1.教育実践の背景」にあたる箇所です。続く第2回では、授業実践を読者に伝えるための書き方を解説します。具体的には「実践報告の目的を明らかにできる」「教育実践の概要をわかりやすく説明できる」「目標を達成するための授業内容・方法を具体的に書ける」ことをめざします。表1のうち、「2.教育実践報告の目的」「3.教育実践の概要」「4.授業内容・授業方法」に該当する部分です。授業目標を達成するために、どのような授業内容・方法を採用しているのか、読者に具体的に伝わる文章を書くことができるように取り組んでいきましょう。

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学生の実情に則したツールの活用

 看護学生が自身のメンタルヘルスに関心を向けるには、どのような方法が効果的だろうか。授業の開始直前までスマートフォンを見つめ、授業中にはウトウトと疲れた様子の学生を見ていて、教員として意欲がそがれる思いがした。こんな思いをもったのは、当時私自身が学生のことをよく知らなかったからだと、今は思う。

 2017年度初頭に、筆者は静岡県立大学看護学部(以下、本学)の精神看護学演習でウェアラブル端末を活用した授業を担当することになった。精神看護において、検査データやバイタルサインなどのように客観的データをもとにアセスメントできることは少ない。しかし、ウェアラブル端末を活用することで睡眠状態を主観データと合わせて活用することができるのではないかと考え、その導入を決めた。なお、ウェアラブル端末とは、wearable、すなわち腕時計型やリストバンド型で身につけることができる機器のことであり、ライフログ(生活行動記録)を数値化できる。脈拍や睡眠状態、歩数の測定など、活動状況に関する生活行動が数値化され、記録される。数値化されることにより客観的に生活の様子を確認でき、また医療現場で用いられるようなポリソムノグラフィなどを用いずに、睡眠の状態が簡易な方法で負担なく記録できることが特徴である。最近では、連動したスマートフォンのアプリを使用して、生活行動記録、ライフログを簡単に作成できるようになっており、ライフログは健康管理の方法として浸透しつつある。特にスマートフォンを活用する学生にとって、ライフログの作成は健康を保つための身近な手段となる可能性があると考えた。

連載 今日から使えるアイスブレイク・2

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ねらい

口頭指示の難しさと危うさを体験する

推奨科目:コミュニケーション論、看護過程、医療安全

推奨場面:授業の前・途中、実習前、シミュレーションなど

適正規模:何人でも可

所要時間:5分

準備物品:筆記用具、紙(資料の余白でもOK)

連載 看護教育×法律相談 知っておきたいトラブル対応のポイント・2

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事例

 本校では、日常の服装、髪型や髪の色、アルバイトなどについて、学生としての節度を保つための決まりを校則で定めています。実習施設に受け入れてもらったり、自宅学習の時間を確保したりするために、このような規制は必要であると考えています。ですが、今年になって、一部の学生から「授業中や実習中についてはともかく、それ以外での行動について縛るのは人権侵害です」「髪型や髪の色まで規制するのはブラック校則です」との意見が寄せられました。卒業後の進路や世間からの評価も考えて定めているつもりですが、校則では定められないことなのでしょうか。

連載 〈教育〉を哲学してみよう・7

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「行きて帰りし物語」と看護実習

 モーリス・センダックの絵本『かいじゅうたちのいるところ』を手に取ったことはあるだろうか。マックスという男の子がいたずらをして母親に部屋に閉じ込められるが、その部屋の壁や天井がなくなって森になり、怪獣たちの暮らす世界へと旅立つ。そこで怪獣たちの王様となり、「怪獣おどり」などをして楽しむが、やがてわが家が恋しくなって、目が覚めると自分の部屋に戻っている。部屋には温かな食事が用意されていて、母親のやさしさが垣間見える場面でストーリーは結ばれている。

 この絵本は、子どもが日常世界から離れて、非日常な世界へと行き、そこでの体験を経て帰ってくるという構造になっている。児童文学作家・瀬田貞二はこの構造を「行きて帰りし物語」と呼び、絵本や児童文学に多く見受けられると指摘している(瀬田貞二:幼い子の文学。中央公論新社、1980)。

連載 医療通訳inバンクーバー・11

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 私は現在、カナダにある医療通訳の会社を経営しています。私が事業のためにカナダで生活を送るなか、夫と子どもはアメリカで暮らしています。

 夫と出会ったのは10年ほど前のことです。ロサンゼルスに住む友人を訪ねたときに初めて出会い、数年後の再会を機に遠距離恋愛が始まりました。結婚してからも遠距離結婚を続けています。

連載 専門看護師とともに考える 実習指導のポイント 昭和大学の臨床教員の立場から・11【最終回】

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 本連載では、臨床教員である専門看護師が、自分の担当する実習科目について、看護スペシャリストとしての視点をふまえた実習指導の「概要・ポイント」と「実践」に分けて説明する。「概要・ポイント」回では、実習領域の特徴を説明したうえで学生への指導ポイントや臨床との連携について紹介し、「実践」回では、実践例を具体的に説明する。また連載とは別に、昭和大学の臨床教員制度の詳細について毎回異なるテーマのコラムを掲載する。

大﨑千恵子(昭和大学保健医療学部 同学統括看護部)

連載 核心に迫る授業改善 インストラクショナルデザインによる事例検討・11

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 いよいよこの連載も残り2回となりました。これまでは、授業に初めてインストラクショナルデザイン(ID)を導入するにあたっての事例検討を中心に行ってきましたが、最後の2回は実際にIDを用いた授業に組織として取り組んでいるケースを検討したいと思います。

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目次

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すべての大学院生と教員に薦める―看護系大学院のゼミの神髄と価値

 編著者である佐藤紀子さんとは、初めての出会いからかれこれ50年になろうとする年月がたっていることに感動を覚えながら読んだ。1970年代の安保闘争や沖縄返還の時代に、私たちは看護基礎教育を受け、看護師人生が始まった。そして、定年までの14年間に佐藤紀子さんは「看護生涯発達学」領域を創設し、多くの看護職と出会い、まさに劈くに至った看護のフィロソフィーをここに表現したといえる。本書は、彼女の生きられた体験の蓄積であり、経験化された証しであろう。43人の大学院生を輩出した佐藤ゼミが醸成した「臨床の知」をこのように具体的に書くことで、看護実践や教育の神髄を読み手に波及できていることを心から尊敬する。

 看護師が大学院で学ぼうとする動機はそれぞれであるが、その多くが現実の看護に悩み、もがき、もっと良い看護を実践したいと思ったとき、研究という手法で何とか切り拓きたいと進学してくる。ところが、いざ研究課題の絞り込みになると、自分が何をしたかったのか怪しくなる。研究を仕上げるには、この問いを避けては通れない。先行研究、自問自答、仲間や指導教員の助言……多くのプロセスを経て、自分の扉を開いていく。

INFORMATION

新刊紹介

基本情報

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看護教育
61巻2号 (2020年2月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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