看護教育 53巻11号 (2012年11月)

特集 「複数受け持ち」実習をより効果的に

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 「臨床現場により近い環境での実習を」と設けられた統合実習。そのなかで,夜間実習,管理実習と並んで取り組まれている複数受け持ち実習は,統合実習がカリキュラム化される前から,さまざまな工夫をもって取り組む学校が少なくありませんでした。しかし,夜間や管理に比較するとやりやすい実習ですが,効果を上げるには工夫が必要です。

 今回は,複数受け持ち実習に関して,より興味深く,効果的な取り組みを行っている学校にその準備や経過,結果などを報告していただき,他校での一層の工夫の参考となることを期待した内容になっています。

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 本校では統合カリキュラム以前の2004(平成16)年度から「複数受け持ち実習」を行い,チーム調整力や多重課題への取り組み方など学生の学びの成果を上げている。

 本稿では,「複数受け持ち実習」に取り組むことになった背景や実習導入までの学校の取り組み,導入時と現在の実習内容や方法などから,「複数受け持ち実習」による成果と課題について,筆者である私の視点から紹介していきたい。

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 2009(平成21)年度に新カリキュラムでの教育が始まり,本年2012(平成24)年3月,新カリキュラムで学習した学生が,本校を卒業した。

 そんな新カリ第1期生の卒業を前に,2011(平成23)年度2月,厚生労働省は「看護教育の内容と方法に関する検討会報告書」を出した。これにより,看護教育の現状と課題が整理され,看護師に求められる実践能力と卒業時の到達目標,看護師教育における教育内容と方法,看護基礎教育における効果的教育方法,今後の課題等が明らかにされた。

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はじめに

 3年課程看護師養成所では,今年3月に新カリキュラムによる入学生が卒業を迎えた。当校では,新カリキュラムの趣旨をふまえ,新たに設定された統合実習をどのように構築しようか検討を重ねた。そして,さまざまな状況下で変化し続ける臨床現場で,学生自身が自らの体験を教材化し学びにつなげ,行動変容に結びつけられるようにしたいと考え「プロジェクト学習・ポートフォリオ」を導入した。

 この実習において複数受け持ちの実習は,看護チームのなかで受け持ち患者をもっている看護師と行動を共にしながら実施することとした。本稿では初めての統合実習を振り返り,プロジェクト学習を導入した経緯と準備,実習の実際について紹介する。

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総合実習「チームチャレンジ」実施の経緯

 聖路加看護大学(以下,本学)では,実習科目群を3つのレベルに分け段階的に実習を行っている。

 レベルIの実習は基礎実習にあたり,学生は1人の患者を受け持ち,日常生活援助を実施しながら看護過程を展開する実習がその主なものであり,2年次後期に履修する。レベルIIの実習は3年次後期に実施され,各領域(小児,母性,成人急性期・慢性期,老年,精神,地域)にて実習を行う。そして,レベルIIIの実習が,4年生前期に行われる「総合実習」である。総合実習は,これまでのレベルI,レベルIIの実習を含む既習の学習内容を統合して行う実習であり,各看護領域が担当する9つの実習科目からなる。学生はこの9つの実習から,自分の興味ある領域を2つ選択し,そのいずれかを履修することができる。総合実習「チームチャレンジ」(以下,チームチャレンジ)はこの9つの総合実習科目の1つであり,他には,「家族発達看護」「地域看護」「国際看護」「老年看護」「精神看護」「急性期看護」「ターミナルケア」「小児看護」がある。

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パートナーシップ・ナーシング・システムとは

 パートナーシップ・ナーシング・システム(Partnership Nursing System,以下PNS)は,2009年に福井大学附属病院の看護師長の上山香代子氏が独自に開発し,同院副院長・看護部長の橘幸子氏が導入発展させた新しい看護体制である。質の高い看護を提供することを目的に,看護師が対等な立場でお互いの特性を活かし,良きパートナーとして相互に補完し合うものである。より具体的に述べるならば,PNSは,副看護師長をコアとしたチームのなかで,看護師同士が経験の違いや特性を活かしてパートナーとして対等な立場で相互に補完・協力し合い,日々の看護ケアをはじめ委員会活動,病棟内の係の仕事に至るまで,1年を通して活動し,その成果と責任を共有するシステムである。

 PNSでは,立場の異なる組織や人々が明確な目的のもとに対等な関係を結ぶが,得意分野の異なる者がパートナーを組むことで,それぞれの持ち味を生かし合理的な課題解決の枠組みを作ることが可能である。したがって,PNSを成功させるためには,それぞれの違いを活かすこと,対等・平等であること,活動目的を合理化・共有化すること,信頼関係と緊張感のある関係であること,特性や能力を生かした役割分担をすること,情報を開示することが要件となる。

Scramble Zone

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精神障がい者に関連した学習経験

 大学生は,大学入学に至るまでの小学校・中学校の義務教育,および高等学校のカリキュラムで,心の病気(精神疾患)に関する内容を学んできていない。また,精神障がい者との関わりの経験について聞くと,例えば「駅のホームで精神障がい者を見かけたことがある」というような間接的な出会いの経験をあげる学生が多く,直接的な関わりの経験は少ない。また,精神障がい者に関連する情報の入手経路は,テレビやインターネット,新聞などのマスメディアによる受動的なものが主で,その内容も身近な者からの否定的なコメントや事件報道に関連した否定的な色合いの情報も少なくないという現状にある。

 看護系の大学生であっても,精神看護学の臨地実習に臨むと「精神障がい者の方と接したことが今までにないので怖い気持があります」「どのように接してよいのかわからず不安と緊張でいっぱいです」という言葉を口にする。しかし,2週間後の実習終了日には「今までの実習のなかで一番楽しかった」「はじめは非常に緊張したが,自己開示や傾聴の大切さを学ぶことができた」と語る。その学生自身の言葉で語る姿勢や実習記録の記述内容からは,多くの学びと新たな自分自身への気づきが感じられる。

連載 「交流」を通して教育力を高める広島県専任教員継続研修の試み・1【新連載】

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はじめに

 広島県では,2010(平成22)年2月に公表された「今後の看護教員のあり方に関する検討会報告書」や「第七次広島県看護職員需給見通し」の策定を受けて,県内の専任教員の養成力向上に向け,2011(平成23)年度に「看護師等養成所機能強化事業」を立ち上げ,看護師等養成所専任教員の継続教育の充実に向けた取り組みの検討を3年計画で行っている。初年度は,県内の全養成所で活用できる専任教員の経験段階に応じた成長の指針を示し,それをふまえた成長過程に合わせた研修計画を策定した。研修計画には,県内の看護師等養成所の専任教員が相互に交流して学びを深める内容も盛り込んだ。

 本連載ではその具体的な内容について紹介するが,今回はまず,広島県の専任教員の現状や県の事業としてこの取り組みを始めた経緯などを紹介する。

連載 学生の目 教員のまなざし・23

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 1年生が入学してから数か月。高校生時代と違い,毎日課題が出され,文字を書く時間が必然的に増えていきます。そして,文字を書く量が増えると,腱鞘炎を起こす学生が毎年2,3名出てきます。そこで,今年はクラスのなかで「健康促進係」を決め,この係が中心となり,手の運動(両手を伸ばしてグーパーを30回以上)を毎日放課後に行うこととしました。実際どのくらい効果があるかはわかりませんが,学生は照れながらかつ楽しみながら,学習するための基礎トレーニングとして取り組んでいます。担任としては,1日の実施回数を増やして,このまま持続してほしいと思っているところです。

 さらには,みんなで「握力を測ろう」ということにもなり,3か月に1回は握力測定しその効果を見ていこうと計画しています。さて,運動の効果はいかほどか,楽しみです。

連載 「看護」を一生ものの仕事に 基礎教育で学ばせたい医療現場のリスクとその対策・2

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医療現場にあるさまざまな危険有害要因(リスク要因)を知る

 医療機関には,さまざまな危険有害要因(リスク要因)が存在する。そのうち基礎教育のなかで重視されているのが感染症である。しかしながら,この他にも表1のように,化学的要因,物理的要因,エルゴノミクス的要因,社会心理的要因といったリスク要因があり,医療現場で働く以上は,医療従事者自らが,リスクの存在を十分に認識し,リスクを軽減する,リスク要因から身を守る,回避する,事故を予防するための知識,技術を身につけておかなければならない。

 1999年に日本看護協会が実施した「病院看護基礎調査」において,「業務上の危険」に対する調査を実施している。調査では,「対処が必要な課題であることを認識しているか」「今までに組織的な対策を講じているか」に対して,表2のように病院の看護管理者が回答している。この調査結果をみても,感染症の多くが,「認識」「対策」ともにパーセンテージが高い傾向にあるものの,腰痛,シフトワーク,暴力等に関しては,「認識」は高いが「対策」にまで至っていないことが明らかにされている。

連載 「魅力ある学校をアピールする!」プロジェクト・4【最終回】

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 全教職員と学生の力を借りて,チャーミーが探った都立荏原看護専門学校(以下,荏原)の魅力……。それは,ナーシングバイオメカニクスに基づく生活支援技術やフィジカルアセスメントなどをじっくり学べる授業内容,学年や年齢を越えて交流できるイベントやユニークなクラブ活動,伝統と機能性を兼ね備えた個性的なユニホームなどでした。そういった荏原の魅力を教職員も学生も共通認識したことによって,入学生獲得に向けて一致協力し,一丸となった広報活動ができるようになったのだと思います。

連載 「書く力」で“ステキな看護師”をつくろう 初年次から始められること・8

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はじめに

 今回は,学生のレジュメ作成と質疑応答の指導を取り上げ,「書く力」の指導におけるポイントを紹介する。

 なお,学生が書くレジュメの問題点も,レポート同様に,課題に対して主体的に分析・探求するという姿勢が欠けていることと,書くことを読み手とのコミュニケーションと学生が認識していないことと想定している。

連載 九州・沖縄からの風 学生が綴る看護への想い・11

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3つの「葡萄」

 私が所属するサークル「葡萄」(大学の校章にちなんだネーミングです)は,大学のある福岡県古賀市を拠点に,施設からの依頼に基づき,学生が連絡係となって直接やり取りをしながら参加者などを集めるという方法で,地域活動を行っています。サークル活動は大きく3つの部門に分かれ,それぞれ「星ぶどう」「産み葡萄」「マスカット」と呼ばれています。

 「星ぶどう」では,主に病院や施設に出向いてのボランティア活動を行っています。今年度は,福岡市内の病院内小児施設で運動会やクリスマス会に参加したり,古賀市にある公民館での催しや,青少年課の主催する子ども体験教室など,各行事に参加し,そこで主催者側のお手伝いをしたり,一緒に子どもたちと遊んだりして,対象者に楽しい時間を過ごしてもらうためのお手伝いをしました。地域が高齢化している分,私たちの世代が手伝いに来ることで少しでも役に立てたらと思っています。

連載 実習の経験知 育ちの支援で師は育つ・15

躓きを促す 新納 美美
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専門職魂を燃えさせるために

 2週間の実習も折り返し地点を迎えると,学生たちはフィールドに慣れ,対象理解も進み,学生なりに考えた支援計画が提出されます。記録用紙には,援助によって期待される結果や評価の方法なども記述されています。にもかかわらず,その援助が対象者にとって何をもたらすのかと問いかけると,答えられなくなる学生がほとんどでした。これでは,ケアを客観的に評価することなどできないだけでなく,びっしり記述してあるアセスメントもあやしいということになります。はじめは少々がっかりだったのですが,学生と関わるうちに,これが底力を引き出すポイントになるということに気づかされたのでした。

 それ以来,私自身が育ちの支援を続けるなかで探求し続けてきたこと,それは,学生を躓かせることです。ただ単に躓かせる*1のではなく,いかに“救いのある躓き”を提供するかが勝負どころです。救いのある躓きは心のなかに宿りはじめた専門職魂を燃えさせるきっかけとなり,学生は眼の色を変え腹の底から本気を出します。すると,まるで化学変化のように,バラバラに入っていた知識や技術が結びつきはじめるのです。これまでお伝えしてきた育ちの支援は,この介入を成功させるためにあったと言っても過言ではありません。

連載 ナイチンゲール伝・17

博愛 茨木 保

連載 Mail from USA 『JNE』を読み,世界の看護教育の流れを知る・43

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●【主な論文】「心の知能指数の高い看護臨床博士リーダーを養成する」より

 アメリカでがん医療・看護の勉強がしたいと,期待と興奮で胸を膨らませて渡米してから早6年が経ちました。アメリカで看護を学んでみたい,という学生時代からの漠然とした夢が目標にかわったのは2005年,某がんセンターの治験病棟で働いていたときでした。多くの治験薬がアメリカやヨーロッパなど海外からきており,副作用も従来の抗がん剤とちがったものがでて,患者さんのQOLが下がっているのを目の当たりにしました。日本より先に臨床試験が行われている国では,どのように副作用対策をしているのだろうと思うようになりました。最先端のがん医療・看護を深く学びたい,そしてがん患者さんによりよいケアを提供したいという思いからアメリカの大学院に進学を決めました。カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校大学院のがん専門看護師のプログラムを2007年に開始後,数々の壁にぶちあたりましたが,学校の先生や,クラスメート,臨床のプリセプター,友人,家族等にたくさん助けていただき無事に修了することができました。その後一年カリフォルニア州のがんセンターで働いた後,ハワイに引っ越しました。現在はがん患者さんの臨床試験に携わるリサーチナースとして働いています。ハワイでの生活は私自身の心と体の健康源であるスポーツ(テニス・マラソン・アルティメット等)がたくさんできる環境で,それが仕事の効率を高めてくれ,仕事・プライベートともに充実した日々をすごしています。ハワイにきて生まれて初めてチャレンジし魅力にはまっているもののひとつにサーフィンがあります。何度もひっくり返りながらも,トライして波にのった瞬間は他のスポーツでは味わえない爽快感を楽しめます。

 そのサーフィンですが,サーフィン中にサメに遭遇したら自分自身どのような状態になるでしょうか?どのように行動するでしょうか?そんな問いかけが途中にあり,大変興味深い論文が『JNE』の8月号に掲載されているのでご紹介します。Renaud氏の“心の知能指数(Emotional Inteligence:EI)”についての論文です。Golemanは“心の知能とは,自分自身や他者を認識し,自身に意欲をおこさせ,自分や他者の感情をマネージすることができる能力”と定義しています。大学院時代に上級看護師生徒(ナースプラクティショナー&専門看護師)全体のクラスで,このコンセプトについて学んだことを記憶しています。Golemanらの研究によると,心の知能指数(EI)は,知能指数(Inteligence quatience:IQ)よりもリーダーとして成功するかどうかの重要な指標になります。この心の知能指数という概念は,自己の認識・他者の認識・自己管理・他者との関係管理の4つの領域に分かれます。Renaud氏は,急激に変化する医療現場のなかでナースが高いリーダーシップ力を発揮するのにこのEIという概念は大切だと述べ,チームリーダーやロールモデルとして活躍が期待される看護臨床博士(Doctor of Nursing Practice:DNP)の学生向けのEIの基本を取り入れたリーダーシッププログラムを紹介しています。このコースは,EIの概念を紹介する講義・自分の行動評価・グループワークそして教材や資料の使用という4つの構成要素からなっています。今回の論文では,博士課程の生徒へのカリキュラムが紹介されていますが,博士課程以外の看護学生にも他職種と共同できるリーダーシップスキルを高めるためにも,同じようなプログラムを適用することは可能であるとRenaud氏は述べています。

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投稿規定

第11回看護学生論文募集

基本情報

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看護教育
53巻11号 (2012年11月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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