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●【主な論文】「心の知能指数の高い看護臨床博士リーダーを養成する」より
アメリカでがん医療・看護の勉強がしたいと,期待と興奮で胸を膨らませて渡米してから早6年が経ちました。アメリカで看護を学んでみたい,という学生時代からの漠然とした夢が目標にかわったのは2005年,某がんセンターの治験病棟で働いていたときでした。多くの治験薬がアメリカやヨーロッパなど海外からきており,副作用も従来の抗がん剤とちがったものがでて,患者さんのQOLが下がっているのを目の当たりにしました。日本より先に臨床試験が行われている国では,どのように副作用対策をしているのだろうと思うようになりました。最先端のがん医療・看護を深く学びたい,そしてがん患者さんによりよいケアを提供したいという思いからアメリカの大学院に進学を決めました。カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校大学院のがん専門看護師のプログラムを2007年に開始後,数々の壁にぶちあたりましたが,学校の先生や,クラスメート,臨床のプリセプター,友人,家族等にたくさん助けていただき無事に修了することができました。その後一年カリフォルニア州のがんセンターで働いた後,ハワイに引っ越しました。現在はがん患者さんの臨床試験に携わるリサーチナースとして働いています。ハワイでの生活は私自身の心と体の健康源であるスポーツ(テニス・マラソン・アルティメット等)がたくさんできる環境で,それが仕事の効率を高めてくれ,仕事・プライベートともに充実した日々をすごしています。ハワイにきて生まれて初めてチャレンジし魅力にはまっているもののひとつにサーフィンがあります。何度もひっくり返りながらも,トライして波にのった瞬間は他のスポーツでは味わえない爽快感を楽しめます。
そのサーフィンですが,サーフィン中にサメに遭遇したら自分自身どのような状態になるでしょうか?どのように行動するでしょうか?そんな問いかけが途中にあり,大変興味深い論文が『JNE』の8月号に掲載されているのでご紹介します。Renaud氏の“心の知能指数(Emotional Inteligence:EI)”についての論文です。Golemanは“心の知能とは,自分自身や他者を認識し,自身に意欲をおこさせ,自分や他者の感情をマネージすることができる能力”と定義しています。大学院時代に上級看護師生徒(ナースプラクティショナー&専門看護師)全体のクラスで,このコンセプトについて学んだことを記憶しています。Golemanらの研究によると,心の知能指数(EI)は,知能指数(Inteligence quatience:IQ)よりもリーダーとして成功するかどうかの重要な指標になります。この心の知能指数という概念は,自己の認識・他者の認識・自己管理・他者との関係管理の4つの領域に分かれます。Renaud氏は,急激に変化する医療現場のなかでナースが高いリーダーシップ力を発揮するのにこのEIという概念は大切だと述べ,チームリーダーやロールモデルとして活躍が期待される看護臨床博士(Doctor of Nursing Practice:DNP)の学生向けのEIの基本を取り入れたリーダーシッププログラムを紹介しています。このコースは,EIの概念を紹介する講義・自分の行動評価・グループワークそして教材や資料の使用という4つの構成要素からなっています。今回の論文では,博士課程の生徒へのカリキュラムが紹介されていますが,博士課程以外の看護学生にも他職種と共同できるリーダーシップスキルを高めるためにも,同じようなプログラムを適用することは可能であるとRenaud氏は述べています。
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