看護教育 3巻6号 (1962年6月)

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 新館が竣工した時に,繁雑な看護業務をより能率的に,看護用具もアイディアを生かして,どう作ったらよいかを考えました。そのいくつかをご紹介いたします。

Guide for Teachers 小特集・私は精神科看護法をこう教えている

精神病看護法の理念 浦野 シマ
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 人間は尊敬,慈愛,献身,奉仕という高邁な精神をもっている反面に侮蔑,憎悪,利貪,搾取という低劣な精神をもっております。その後者の具体例を歴史的に観察しますと黄色・黒色人種への侮辱,病魔への憎悪,未開人や下層階級への圧迫,搾取などかずかずの場合が展開して,いわゆる「世界暗黒史」または「世界惨酷物語」を形成してきていることをしるのであります。しかしながら理想世界の実現を究極の目的とする人間の進歩的な精神はこの両極の相剋を止揚して奮斗努力してゆくのが使命でなければならないと思うのであります。

 未開時代から数千年間,精神病の本態は悪魔が人間についたものだと解釈されてまいりました。

精神分裂病の看護 徳永 美津子
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まえがき

 精神分裂病の問題は精神医学上いろいろな意味で最も重要な位置を占めている。

 分裂病は四大精神病の中でも最も多く,主として思春期以後の青年時代に発病して,特有の人格的統一の喪失(すなわち精神機能の分裂)のを来たす疾患である。その特徴としては病前の個性が失われ,各種の精神症状の出現と共に社会的連繋が断たれる内因性の精神疾患である。本病は精神病院に入院してくる患者の15〜20%を占め,しかも治癒が困難で終生入院を必要とする状態に陥りやすい。どこの精神病院てもその収容数は60%前後を占めている。私たちはこうした患者の社会復帰を前提として治療し看護しているにもかかわらず,中には痴呆化,荒廃化しで慢性の経過をたどる場合が非常に多い現状である。このような患者にとって病院生活は,治療と看護を受けると同時に日常生活の場につながっているそれを考えるとき,精神科勤務者に望まれることは,特に人間的なあたたかい愛情と理解を根底とする人間関係である。各個の現象的症状を示す患者全体に対して,特にその症状を現わすようになった,患者の深層心理を理解し,その理解のもとに患者を指導し看護しなければならない。精神病看護法を教えるにあたっては,open door system,閉鎖病棟で症状,治療別に収容している場合,あるいは各種疾患を混合している場合など,その看護の方法,あるいは患者管理の方法は異なってくる。私はそれらの一つ一つの例をあげながら疾患の看護,特殊治療とその看護法に約20時間を使っている。

連載講座 基礎看護実習についての一つの試み

VI.病室環境測定 小玉 香津子
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 ここでいう病室環境とは,屋内空気条件(空気の汚染および臭気),屋内気候条件(気温,気湿,気流),騒音および照明を主な因子とする。空気汚染のうち細菌によるものは感染予防の項で扱いここでは含まない。また人間関係も含んでいない。なお,精神的,感覚的な環境条件,たとえば,病室の色彩,物の配置,庭などについては,実習方法としてまとめられていないがこの実習で扱っている。

 ところで病室環境測定の実習が,基礎看護の内容として必要なものであるかどうかは次のような理由で議論の的となったところであった。

Inside Training

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 看護婦の再教育,院内教育は,看護業務内容が日進月歩している現状からその必要性が痛感されています。大阪赤十字病院では卒業生担当の婦長が設置され,現在著者がその任に当っておられます。その豊富な体験は必ず読者の参考になることと思います。

病棟管理

結核病棟管理の実際 松本 利江
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はしがき

 私たちが実際に結核病棟を管理していて痛切に感ずることは,設備が十分に完備されていて,そこで働く人たちと患者とが互いに和衷協力し,それぞれの任務の遂行が円滑に行なわれて行くことであります。ところが,設備の面で不十分なところがあると,思うように管理が行き届かない点がでてくるし,病棟勤務者相互間や患者どうしあるいは患者対勤務者間の人間関係がしっくりいかないと,管理の面で円滑さを欠くことになります。つまり他の病棟と異なって,扱う患者が結核患者であるという特殊事情も加わって,患者の心理的な面を特にしっかりと把握しなければなりません。治療面以外での問題にまで意を注がないと,思わぬところで管理の欠陥を赤裸々に出す結果になりかねないのであります。

 私たちの病棟管理の実際について話を進めるにあたり,次のことを付言したいのであります。どこでも同じであるように,一つの病棟の中に互いに一日も早く全快したいという一つの目的のために種々雑多な階層の患者が生活しているのであり,それらの患者をいかにしたら一日も早く快方に向かわせるかに意を注ぐのが勤務者なのであるから,相互の対人関係を円滑にしたり,看護技術を向上させて初期の目的を達成させるためにも管理ということはきわめて大切なのであります。

臨床指導

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 小児科臨床指導の任を受けてからまだ日が浅く,知識も少なく,始めての経験でございますが,私の体験から小児科臨床指導の実際をここに書くことにいたします。

 まず看護学校の教育課程の中での臨床指導の重要性を考えてみますと,臨床実習は学生がクラスで学んだ知識を実際に生かして体験し,これを自分のものとして習得してゆくという非常に大切な部門をしめております。そこでこの臨床実習を学生にとって,より興味のあるものとし,学生が価値のある実習体験をすることができるようにと私は常に願って努力しております。

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婦人団体のうごき

 終戦いちはやく新日本婦人同盟(会長市川房枝)や日本婦人協力会(委員長宮城タマヨ)が結成され,婦人の政党参加が認められてからは,各政党にも「婦人部」が設けられた。

 戦前からあった婦人矯風会や新生活協会も戦時中は活動休止の状態であったが,こうした戦後のうごきの中で,新しい運動が開始し,まずキリスト教女子青年会(YWCA)は,46年3月「婦人新聞」を発刊していきをふきかえした。

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はじめに

 大学生あるいは成人に対して,どのような学習指導の方法を用うべきであるか,という問題に関しては,これまでのところ,とくにみるべき成果はあがっていない。すでにこの程度の年令に達した者は,みずからの能力や関心に応じた学習を,自発的におこなうべきであって,とくに一般的な学習指導法を考える必要はない,というような暗黙の前提があったために,この分野の研究が遅れてしまったものと一応は考えられる。

 しかし,学習指導と並んで問題にされる,いわゆる生活指導の領域では,カウンセリングの理論や技術をはじめとして,いくらかの信頼すべき業績が報告されている。

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 Human Relationがうまく行っているかどうかが管理が良くできているかどうかの根底をなすものです。H. R. をよくするためには人をよく理解することです。今回は理解をさまたげる要因ということで原稿をいただきました。

学院から病院へ

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はじめに

 学院の教務へ籍をおくようになってから,やっと11ヵ月たちました。それまでの10年あまりは臨床看護婦として都立病院勤務を続けておりました私ですので,突然に看護教育にたずさわる職員として当学院に転勤の命を受けたものの,今までの仕事とはまったく異なった教務の仕事にただこの11ヵ月を,夢中に過ごしてしまいました。

 そろそろ1年を迎えようとしている今日,私の現在の仕事を反省し,少しでも掘り下げて考える機会をもたなければと強く感じていた矢先に,この原稿の依頼を受けたのですが,今更のようにその時どきに処理した事柄を思い起こしてみても,いまだ現在の私には病院に何を望み,何を願い,そしてどのように学院が動くべきかがはっきりとわかりません。ただ学生の実習場である病院に各面から暖かい援助と協力をあおがなければ看護教育は成り立ち得ないということを身をもって経験し,当然のこととはいえ,その当り前のことを強く思い知らされましたことは事実です。

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 「……略……先輩のいわれたことが身にしみてわかるころとなってきました。学院に入学して2年生ですが,ときに休みで帰っても友だちがいないような気がして面白くないのですね。

 だって私のほうは病院という中に“井の中の蛙”のように育っているでしょう。だから外界のことがわからないのですね。またわかろうと努力もしてないのですけど………だから話題が全然異なるでしょう。とり残されたような気がして何か複雑な気持でわかりません…中略…毎朝ナイチンゲール誓詞を朗読しながら,いろいろなことを考えます。今の私にこんなことを朗読する価値があるのだろうかと思うと,朗読するのが苦しくなって黙っている時もあります。近ごろ自分自身に答を求めるのです。私にはたして,このクランケのためにこの処置をしているのだろうか……でも,その答は悲しいもの……クランケを治そうと思ってしているとは答えられそうにないのです。

諸外国の教育事情

イギリスの教育 松井 一麿
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 一般にイギリスの教育は,自由と多様性という観点から理解されている。これらは,学校の種類にも,教育の内容にも,教育行政の面にも見受けられる。

 元来,イギリスには二種類の学校制度が並存していた。ひとつは,一般大衆を相手に宗教団体が経営していた慈善学校の系統のもの,もうひとつは,中流以上の階層を対象にしたパブリック・スクール(私立学校)の系統のものである。今から100年ほど前は,これら2種類の学校は,お互いにほとんど関係なく経営されていたが,国民を富まし,国家を健全にするにはなんとしても教育を発展させなければならないし,これまでのようにばらばらでなく統一された教育制度をつくらなければならないという考えが強まってきて,ここにいろいろな問題をもちながらも,公立学校制度がしだいにかたちづくられていった。

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 下田,千葉方面を廻って,今東京についたばかりだという林塩協会長を,原宿の自宅におとずれた。自宅でお目にかかった先生は,看護協会総会の壇上に見る,りりしい林会長と違って,お料理を作ったり,整頓したりすることの好きなやさしい“おばさん”を感じさせられた。先生は,現任,ほとんどの時間を“地方を見ること,問題をつかむこと”に使っておられる様子である。「東京は看護の頂点であることを,地方を見て歩いていて感じますね。東京にいて考えていた地方と,実際にあるいて見た地方ではほんとうに違います。東京にいては想像もつかなかった問題があります」と地方と東京の違いについて感想をのべておられた。“看護協会の代表”として会員が全員で国会へ送り出そうとしている林塩先生に,最近の看護の動きとその意見を伺ってみよう。

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 麻疹は人類の全歴史にわたり幼児の生命をおびやかし,無数の生命を奪ってきた。これに対し全世界の医学者たちの真剣な努力も,麻疹の予防を十分に行なうには至らなかった。最近朝鮮民主主義人民共和国の医学者たちにより「麻疹の能動免疫」の成功したことが「朝鮮時報」に報道され(3月10日),上記の紹介記事は「新しい医師」(3月21日),医学界新聞(4月2日)に掲載された。以下は「朝鮮時報」の要約である。

編集デスク・16

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 森鷗外は,書籍については実にきちんとしていた。古本屋を歩くのが好きで,観潮楼を中心に本郷の古本屋街はよく歩いて本を求めた。本の値を値切るということは絶対になかった。買った本は製本のくずれているものは自分で補修をした。東大にある鷗外の旧蔵書には,鷗外が製本し直したものや,鷗外自身の手で書名を記したものなどが残されている。

 鷗外はこころよく人に本を貸したが,その本を返さない人には困ったようである。そのことをみずから述べている。本は,いつどの本が入用になるかわからない。だから一見必要でないように見える本でも,やはり手もとにおいてないと不便なのである。鷗外のように昼は軍務に服して実際に読書をしたり,ものを書いたりするのは夜や祭日の僅かな時間のみである人にとっては,必要で集めた本を貸し出してそれが返ってこないことは痛切に困ることであったであろう。私にもその体験があるので,その気持はよくわかる。

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学生の内心の声に耳を傾けて

 “私たちにも教養科目を”という看護学生の声の底にはそれだけではかたづけられない複離な問題がもつれあっている。看護教育の歴史的変遷とその所産ともいうべきその時代時代の看護を職業とした女性の生き方,それにからまる社会との関係などがよかれあしかれ現代に生きる彼女たちにもつながっているという意識,また現代社会の中で将来人生のある期間を(人によっては生涯看護婦として)人びとに迎えられ,生きがいのある,自分で納得のできる生き方をしたい欲求。この自分に責任のない(?)過去の遺産と,こうありたいという願望を背負って歩かねばならない現実—この場合は好ましくない面がやりきれないほどつみ重なり,その自覚によってにじみ出てきた痛切な内心の声だろうと思う。

 これを教育者がいかにうけとめいかに解決してゆくか—これは看護教育全体に課せられた重要な問題であるが,さて教養とは何かとひらきなおられると,辞典にあるような「知識や趣味が高く品格があること」のように,しかつめらしい概念がますますあいまいにかすんでうんざりしてしまい,はては何か弱よわしく上品なもの,人間くさくありたいのをがまんしてさとりすましたようなおしつけがましさを感じかねない。

基本情報

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看護教育
3巻6号 (1962年6月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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