保健婦雑誌 55巻12号 (1999年11月)

特集 地域保健活動の焦点—21世紀を目前に

I章 現代社会とヘルス

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 すべての社会問題はつながっている

平野 今日の日本では不登校の子どもの増加や,学校崩壊,またリストラなどによる中高年の自殺者の増加などが問題となっています。これらは単に保健や公衆衛生だけでは,とても解決できない大きな問題です。

 でもこれからは,こうした問題に大きく声を出して,公衆衛生分野では何ができるのだろうかということを考えていくことが必要になってくるのではないでしょうか。

II章 保健所は強化されたか—地域保健法施行後の活動総括

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 はじめに

 「地域保健法施行後の保健所は強化されたか?」と問われれば,正直なところ戸惑いの色を隠すことができない。全国的には,基本指針に示された保健所の機能強化より,むしろ福祉事務所との一体化や支所化によるリストラ(人員削減)の方が進んだように思われる。そんななか,O157の集団発生をはじめとする健康危機管理に関する国民の期待が,一時的に保健所にとってカンフル剤となった。国の地域保健問題検討会でも保健所の活路として大きく扱われている。確かにヘルスプロテクションは保健所の重要な役割であり理解されやすいが,ヘルスプロモーションの理念にそった機能強化も忘れてはならない。

 戦後半世紀の間に構築されてきた我が国の行政システムと社会保障制度は,21世紀を目前にして,今,大きな曲がり角にある。その起爆剤は,少子高齢化とともに深刻化しつつあるパーソナルサービスとしての医療保険や障害者福祉サービスに関する社会保障負担の増大であろう。

 振り返ってみるに,「身近なところで保健医療福祉の連携がとれた一体的なサービスを提供するために」という地域保健法の基本理念は,地域保健をパブリックヘルス(公衆衛生)ではなく医療や福祉と同一次元のパーソナルヘルスサービスに矮小化されてしまい,個人の努力では対応できない地域住民による組織的な取り組みや健康を守るための社会環境づくりといったパブリックヘルス固有の役割機能に関する充実強化の議論を希薄化させてしまったように思う。

 行財政改革や社会保障制度改革など歴史的な転換期にあって,今後は契約に基づくパーソナルサービスに関する公平性,公正さなどの質の確保,地域ぐるみの予防や自立支援・支え合いの仕組みづくりに関する期待がますます高まってくると考えられる。地域保健の役割は,措置や契約に基づくサービスとは一線を画しながら,個への関わりを通して集団や環境に対してアプローチする本来の役割強化を図らねばならない。

 高知県は,全国で最も少子高齢化が進み,小規模自治体が多く,長年の駐在保健婦制度の影響もあって市町村保健行政の自立が遅れてきた。また,病院病床数が全国で最も多く1人あたりの医療費も高いなど,我が国が直面している問題の縮図的な県であるとも言えよう。高知県における経験から,これまでの地域保健の見直しと保健所機能強化を総括するとともに,マクロ的な視点から今後の保健所に期待される役割機能について私見を述べてみたい。

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 都市とは何か

 M.ウェーバーは,都市について次の3つの定義を示している1)。第1に,都市は住民相互間の人的な相識関係に欠けた巨大な集落である。第2に,都市とは市場がある集落である。第3に,都市とは政治的・行政的に定義される。

 自己流に解釈すれば,第1については,都市とはそもそも他人の集まりであるいうことになる。ここで言う「他人」とは見ず知らずの人ということではない。同じ共同体,地縁,血縁に属さないという意味での他人である。

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 はじめに

 政令市の場合,保健所法から地域保健法への移行はどのような影響があるだろうか。保健所の数が半減したことや,保健業務の分担や役割が保健所と市町村間で変更があったことなどにより,県型の保健所の事業は大きく影響を受けた。これと比較すると,機構上はそれほどの変更がないように見えるのが政令市の保健所である。

 現在,政令指定都市では,各区に1保健所を確保している都市と,全体を管轄する1保健所を置き各区に保健センターを置くというタイプがある。今回事例を取り上げる仙台市は前者のタイプで,各区に1保健所という体制は従来どおりであり,福祉と保健との統合がなされた体制で保健行政が行われている。機構の変更や役割分担の変化は,言わば外から見える変化である。仙台市の場合はそれほど大きな外見上の変化がないように見える。

 しかし,保健所法から地域保健法への移行の影響は,機構や業務分担に限るわけではない。そこで,ここでは,地域保健法成立後にスタートした事業を例にとってそれまでの保健所法の時代とどのような相違があるかを検討しながら,今後の展望と課題を明らかにしていくことにする。

特別区保健所再編,その後 細川 えみ子
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 筆者は本誌1998年5月号の「大都市における保健所」という小論で,地域保健法施行後の特別区と政令市における保健所の組織改正の動きについて考察した。今回特別区の保健所について書く機会を得たので,その後のさらなる再編について再度概観してみたい。

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 はじめに

 地方自治法の改正により誕生した中核市制度を筆者が初めて知ったのは,保健所法の改正のために公衆衛生審議会総合部会の下に設置された地域保健基本問題検討会においてであった。一定規模以上の市で,自ら地方の中核的な都市として独自に役割を果たそうという意欲のある市に対し,政令指定都市に準ずる権限委譲を行い,地方分権を進めるための制度と理解した。

 保健所設置を義務づけることの是非についての議論は,地域保健基本問題検討会ではなされなかったと記憶しているが,保健所政令市制度に新たな枠組みの市が加わることについて,全国保健所長会が以前から指摘してきた保健所政令市制度の諸問題の解決が必要であるとの発言をさせていただいたと思う。筆者は愛知県職員であり,現在,中核市である豊田市への派遣の身分でもある。中核市保健所長として中核市における現状と今後の展望について,豊田市における経験をもとに述べる。

中核市・政令市保健所の活動 西牧 謙吾
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 はじめに

 平成11年4月1日現在の中核市・その他政令市は35都市43保健所である。来年にはほとんどすべて1市1保健所体制となる予定である。中核市に移行した市が着実に増加し,地方分権は少しずつ進んでいる。地域保健法改正から5年経過し,都道府県だけでなく政令市においても,当初の予測に反して本庁部門を巻き込んだ形で保健所の統合再編が進み,結果的に政令市の方が行政改革や介護保険の影響をより多く受けたといえるかもしれない。

 健康危機管理体制を考えるとき,保健所政令市制度は十分機能するのか。地方分権推進という考えが,広域的対応を求められる公衆衛生活動と保健所政令市制度の中でうまく両立するのだろうか。直接サービスの比重の高い政令市で,保健福祉の連携を担保しながら保健所の機能強化が可能なのか。中核市最大の堺市が,地域保健法まで複数保健所体制下で歩んできた歴史をふまえて,平成12年からの1保健所・6保健センター体制下でどのように強化されるのかを検証することで,その答えを見つけたい。

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 中国地方では,全国に先駆けて,保健と福祉の連携が,保健所と福祉事務所の組織統合という形で進められてきました(平成10年までに全国的には13の県で統合)。

 島根県でも,平成4年度の新行政システム検討委員会からの提言を受けて,平成5年度に本庁レベルで環境保健部と福祉部が統合され,「健康福祉部」となり,翌平成6年度には保健所と福祉事務所が「健康福祉センター」として統合され,7健康福祉センター(10保健所+7福祉事務所)となりました。さらにその後,機能強化をめざして,平成10年度,再度の組織改正を行い,11年度に若干の修正を加え,一連の組織改正が終了した状況です。

III章 地域保健活動21世紀の焦点

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 最近,「危機管理」という言葉を読んだり耳にすることが非常に多くなりました。一国の防衛から世紀末終末パニック映画に至るまで,「危機管理」が出てきます。「危機管理」が注目されるようになった契機としては平成7年1月17日に発生した阪神淡路大震災や,同年3月20日の地下鉄サリン事件,そして平成8年5月以降,岡山県邑久町から始まり堺市では史上空前の規模となった腸管出血性大腸菌O157集団感染事件,さらには昨年の和歌山砒素カレー事件などでしょう。特に,腸管出血性大腸菌O157集団感染事件や和歌山砒素カレー事件では保健所の対応も大きくクローズアップされ,その後の地域保健と健康危機管理の関係に大きな影響を与えたのではないでしょうか。

 危機管理の基本的な概念は保険理論では「危険の集団化」であるといわれています。個人では支えきれない偶然の出来事による損失に対して個人をうまく集団化することにより危険に対処する仕組みが保険です。保険理論に限らず危機管理の原則は「危険の集団化・社会化」であることは明白です。個人では対処することのできない大規模な地震や津波,洪水に対して予防策を講じることは知識や技術,施策,政策の時系列的集合であり,危機発生時に対処するそれぞれの組織の連携は空間的横の集合であるともいえます。危機管理の基本は知識,技術などの縦の集合とさまざまな社会的組織間の連携という横の集合を組み立てることにあると思います。

少子化 加藤 則子
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 はじめに

 現在わが国では出生率の低下に伴い少子化が進行しており,さまざまな方面から危機感が持たれている。そして,これに対しては,包括的な対策が必要と考えられ,さまざまな検討が行われている。本稿では少子化を保健の立場からどう見るか,また保健サイドからの対応をどのように考えてゆくかについて論じてみたい。

高齢化 渡辺 修一郎
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 国際高齢者年と高齢者のための国連原則 1999年は国際高齢者年である。その目的は,1991年の国連総会で採択された「高齢者のための国連原則」を促進し,世界各国の政策および実際の計画・活動をさらに具体化することである。この「高齢者のための国連原則」は,高齢者の,①自立,②参加,③ケア,④自己実現,⑤尊厳,の実現を目指している。国際高齢者年の「すべての世代のための社会をめざして」というテーマも示すように,高齢化問題は,社会状況,個人の一生涯の発達,世代間の関係,社会発展との関係など,多くの次元や分野,世代に関わる問題である。ここでは,わが国の高齢化とその問題,今後の課題について,「高齢者のための国連原則」のわが国の実態を中心に,地域保健活動との関わりから考えてみる。

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 はじめに

 地域保健法の制定に伴い,高知県では新たな体制のもとで保健所職員並びに市町村職員を対象として,地域保健全般に関わる教育研修を体系的に実施してきた。

 研修体系の基本方針は,地域保健充実強化計画・職員研修計画により平成9年4月に示された(図1)。この計画は,新たな地域保健の役割機能をふまえ,市町村および県の地域保健関係職員を対象とした各種の研修が計画的かつ効果的,効率的に実施できるよう実施体制を整備し,住民の多様かつ高度な健康ニーズに的確に応えることができる職員の資質向上と組織の力量を充実強化することを目的としている。

 そのために,業務担当課が業務形態に応じて実施していた研修を,中核的専門機関に集合化,体系化し実施する体制を整えた。

 また,本庁,中核的専門機関,保健所の役割分担を明確にし,本庁は保健・福祉部門の研修計画全体を企画・予算化し,中核的専門機関が具体の研修を企画・実施し,保健所は地域の実情に応じて管内市町村職員に研修を実施することになった。中核的専門機関が実施する研修のうち,精神保健分野は精神保健福祉センターが,その他の分野を衛生研究所(以下,当所)が担当することになった。

 こうして,平成9年度に当所に企画研修部が設置され,教育研修業務に取り組むこととなった。

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 はじめに

 経済学では,消費者と生産者が市場において財・サービスを取り引きすることによって効率的(パレート最適)な資源配分が可能になるとされている1)。しかし,なかには,市場機構に依存すると社会的に必要な消費量・供給量を確保できない財・サービスが存在する。これは「市場の失敗」2,3)と呼ばれ,このような財・サービスに関しては,政府が「公的責任」において市場に介入する必要がある。このことは,政府が財・サービスの社会的必要量を確保するために,市場機構によって達成可能な効率性を犠牲にしていることを意味する。

 わが国や多くの諸外国では,公衆衛生サービスや保健サービスが公的責任において供給されているにもかかわらず,効率的なサービス供給が求められているのが現実である。この矛盾をどのように捉えればよいのか,そしてこれは本当に矛盾しているのか。本稿は,保健サービスの「公的責任」と「効率性」との関係を経済学的に分析し,地域保健活動の実践のための理論的根拠を付与することを目的とする。

精度管理機能 渋谷 いづみ
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 はじめに

 地域保健活動の現場では,この数年間は大きな変革期である。地域保健法や母子保健法改正の意義は,住民の視点での行政の展開を重視していることであり,行政側も意識改革しつつある。

 このような現状での地域保健活動と精度管理機能の重要性について,事例を取り上げながら今一度見直すこととしたい。

住民参加とNGO 松田 正己
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 自立の潮流といのちへの自覚

 女性の社会参画や障害者の参加を例にとるまでもなく,住民参加は,民主主義の根幹であり,20世紀から21世紀へと脈々と発展しつつある歴史的な潮流である。世界では,わが国の戦後の経済発展も参加的経営として位置づけられている。日本の風土・文化から見ても,住民参加は決して異質なものではない。地域保健領域においても,この潮流は21世紀に激しくなることはあっても,衰退することはないであろう。

 注意すべきは,住民の自立や住民参加を阻害するような専門家の言動(父権的:パタナリスティックと称される)が,20世紀的な公衆衛生活動(感染者の隔離など)や,疾病の予防活動(一方的な健康教育など)に潜んでいることである。20世紀の終わりを迎えるにあたり,地域保健に従事する方にとっては,本企画は自己を振り返るいい機会ではなかろうか。

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 はじめに

 地方公共団体においては行政施策評価,事業評価の必要性が近年とみに指摘され,事業の効率的・効果的運用や民間へ委託などを含めた事業の見直しなどのため,自治体も独自に評価指標を設定し,行政施策・事業評価を導入するための検討が行われている。

 行政に働く保健婦もその渦中にあると思う。保健婦の保健活動にも目標設定し,事業を評価する必要性は認識されてきているものの,「事業の実施だけで忙しく目標設定し,評価するまでは手が回らない」「事業を実施しながら評価できるような簡便な評価指標がない」などの理由で,日常業務の中で目標を設定し,評価を位置づけているところはそう多くはないのではないだろうか。

 評価を事業として位置づけるために大きなきっかけとなったのは,市町村保健事業の多くを占めている老人保健事業の評価事業として,平成8年12月27日に老人保健福祉局長名で通知が発出された「保健サービス評価支援事業」であろう。市町村が老人保健事業に対して自ら行う評価について都道府県が支援するという事業である。この事業に伴って各事業ごとに評価指標が提示されたことで,事業評価の目安となったのではないかと思う。

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 はじめに

 近年,情報化社会が進み,プライバシーの保護に関する住民意識の高まりがみられ,行政側の取り組みも進められている。一方,地域ケアの発展により,保健・医療・福祉の各関係機関が連携して,複雑な問題を抱える事例に関わる必要性が増加した。多数の関係者間で連携して取り組む場合に,プライバシーの保護と情報の共有化は大きな課題となっている。各機関が連携して支援を行うためには,共通の目的を持って統一した関わりが重要である。そして,そのためには各関係者が事例に関する情報を共有することが必要と考えられる。しかし,共有する情報は個人情報であるため,いかに当事者のプライバシーを守るかが問題となる。

 関係機関と情報を共有し,連携して支援を行うにあたっては,そのことに関して当事者本人へ説明したうえで,本人の同意を得ることが原則である。本人へのインフォームドコンセントはもちろん,自己決定権を尊重した支援は大前提であるが,緊急時や対応困難事例,自己決定能力が低下している事例などでは,必ずしも同意が得られないうちに,関係者が情報を共有していく必要性が生じる場合もある。

 配慮なく情報を流し,当事者のプライバシーが守られない状況が生じるおそれもある。また,プライバシーを重視するあまり,当事者にとって必要十分な支援が行われないこともあり得る。

 このような状況で,関係機関と連携するにあたって,いかにプライバシーを配慮し保護するかが問われている。

これからの感染症対策 尾崎 米厚
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 再び感染症の時代へ

 わが国では感染症の時代は終わり,これからは非感染性慢性疾患の時代であると,少なくともごく最近までは戦後の疾病構造の変化が解釈されていた。そして,公衆衛生活動の焦点もその方向へシフトしていった。しかし,HIV感染症の出現や腸管出血性大腸菌0157の大流行など社会問題化するような感染症の話題が次々と出てくるようになり,再び感染症を見直す必要性が叫ばれるようになった(新興再興感染症:emerging and re-emergingdiseases)。このような状況のなか,感染症対策も危機管理(リスクマネージメント〉の1つとして再認識されるようになり,これが保健所の機能の一部として期待されるようにもなった。

 現在は感染症の逆襲の時代であるとして世界的にも感染症対策が重視される状況になっている。この背景には,微生物学の進歩により従来より存在していた疾病の病原体が明らかにできるようになったという側面もあるが,南北問題の深刻化による貧富の拡大,飢餓および地域紛争などによる多数の難民,大規模な開発による自然破壊および生態系の変化,地球の温暖化,人間・動物・食品などの国際的な移動の増加と高速化,抗菌剤使用の急増による薬剤耐性菌の増加,医療技術の進歩やAIDSの登場などによる免疫能低下宿主(易感染性宿主)の増加,人畜共通感染症への認識の低下,医学教育における感染症教育の軽視(特に細菌学や寄生虫学が軽視され研究者が不足している)といった,現代社会,現代医学の問題点や感染症を相対的に軽視してきた公衆衛生の問題点が関係している。したがって,新しい感染症対策が求められている。

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 はじめに

 ヘルスプロモーションの目的は,人々が自らの健康をコントロールしてこれを改善できるようにすることであり,このプロセスで,「当事者の主体的な取り組み」「それを可能とする教育的,環境的支援」の重要性が強調されている。

 ここでは,ヘルスプロモーションの出発点でもある住民1人ひとりの「自己決定」,新しい地方自治制度下での自治体の「自律」,健康なまちづくりへ向けた「地域の合意」などについて述べ,ヘルスプロモーションを地域に根づかせるためのポイントについて考えてみたい。

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 上越市の現状(表1)

地理および環境

 新潟県の南西部に位置し,商工業を中心に上越地方の中核都市として発展。海岸・山間・農村・工業地域と区別され,1つの都市の中でも自然・社会環境に大きな違いが見られる。

21世紀の環境保健 湯田 真喜雄
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 はじめに

 平成6年に保健所法が地域保健法に改正されてからすでに6年目,全面施行から3年目を迎えた。この法改正では,基本的視点に「生活者個人の視点の重視」が取り上げられたが,保健所と保健所職員はどのように変わったのだろうか。

 保健所は管理の城,社会防衛の城といわれてきた。今回の法改正は,保健所という箱物法から,保健活動の基本的視点を定めた法体系へのシフトであり,社会防衛は必要だが,基本的人権を尊重し“生活者支援”を重要とする改正だった。もちろん,法改正とは関係なく,「生命,生活,生きる権利をみんなでまもる」という公衆衛生活動を展開してきた保健所もあったと思う。そして,法改正後,そのような視点で機能強化を図ってきた保健所もたくさんあるのだろう。

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 いま発想の転換が求められていること

疾病予防を中心に

丸山 地域保健法の実施,地方分権の推進などに伴い地域保健活動も地域特性に応じた活動が求められるようになってきました。特に2000年に介護保険が実施されることによって地域における保健・医療・福祉のシステム自体が大きく変化し,保健・医療・福祉の連携がますます求められると同時にサービスの考え方や利用者主体など住民の意識も変わっていくことが予測されます。さらに,『健康日本21』が示され,新たな方向をめざし保健婦活動も見直していかなければならないと思います。

 そこで,「21世紀の保健婦はどうあったらいいのか,求められる発想の転換」というテーマでご発言願いたいと思います。

基本情報

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保健婦雑誌
55巻12号 (1999年11月)
電子版ISSN:2185-4041 印刷版ISSN:0047-1844 医学書院

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