特集 地域保健活動の焦点—21世紀を目前に
III章 地域保健活動21世紀の焦点
プライバシーの保護と情報の共有化—虐待ケースを通して
谷 里江
1
,
佐藤 郁子
2
,
矢野 一枝
3
1東京都母子保健サービスセンター
2東京都多摩東村山保健所
3東京都三鷹武蔵野保健所
pp.1082-1090
発行日 1999年11月25日
Published Date 1999/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902979
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はじめに
近年,情報化社会が進み,プライバシーの保護に関する住民意識の高まりがみられ,行政側の取り組みも進められている。一方,地域ケアの発展により,保健・医療・福祉の各関係機関が連携して,複雑な問題を抱える事例に関わる必要性が増加した。多数の関係者間で連携して取り組む場合に,プライバシーの保護と情報の共有化は大きな課題となっている。各機関が連携して支援を行うためには,共通の目的を持って統一した関わりが重要である。そして,そのためには各関係者が事例に関する情報を共有することが必要と考えられる。しかし,共有する情報は個人情報であるため,いかに当事者のプライバシーを守るかが問題となる。
関係機関と情報を共有し,連携して支援を行うにあたっては,そのことに関して当事者本人へ説明したうえで,本人の同意を得ることが原則である。本人へのインフォームドコンセントはもちろん,自己決定権を尊重した支援は大前提であるが,緊急時や対応困難事例,自己決定能力が低下している事例などでは,必ずしも同意が得られないうちに,関係者が情報を共有していく必要性が生じる場合もある。
配慮なく情報を流し,当事者のプライバシーが守られない状況が生じるおそれもある。また,プライバシーを重視するあまり,当事者にとって必要十分な支援が行われないこともあり得る。
このような状況で,関係機関と連携するにあたって,いかにプライバシーを配慮し保護するかが問われている。
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