特集 地域保健活動の焦点—21世紀を目前に
III章 地域保健活動21世紀の焦点
事前対応型危機管理—緊急時における医療対応と事前対応のあり方
貞本 晃一
1
1北海道保健福祉部地域医療課
pp.1035-1039
発行日 1999年11月25日
Published Date 1999/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902971
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最近,「危機管理」という言葉を読んだり耳にすることが非常に多くなりました。一国の防衛から世紀末終末パニック映画に至るまで,「危機管理」が出てきます。「危機管理」が注目されるようになった契機としては平成7年1月17日に発生した阪神淡路大震災や,同年3月20日の地下鉄サリン事件,そして平成8年5月以降,岡山県邑久町から始まり堺市では史上空前の規模となった腸管出血性大腸菌O157集団感染事件,さらには昨年の和歌山砒素カレー事件などでしょう。特に,腸管出血性大腸菌O157集団感染事件や和歌山砒素カレー事件では保健所の対応も大きくクローズアップされ,その後の地域保健と健康危機管理の関係に大きな影響を与えたのではないでしょうか。
危機管理の基本的な概念は保険理論では「危険の集団化」であるといわれています。個人では支えきれない偶然の出来事による損失に対して個人をうまく集団化することにより危険に対処する仕組みが保険です。保険理論に限らず危機管理の原則は「危険の集団化・社会化」であることは明白です。個人では対処することのできない大規模な地震や津波,洪水に対して予防策を講じることは知識や技術,施策,政策の時系列的集合であり,危機発生時に対処するそれぞれの組織の連携は空間的横の集合であるともいえます。危機管理の基本は知識,技術などの縦の集合とさまざまな社会的組織間の連携という横の集合を組み立てることにあると思います。
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