特集 変貌する農村社会と農民の健康
農村保健管理体制の現状
西 三郎
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.23-26,31
発行日 1968年6月10日
Published Date 1968/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204201
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はじめに
最近,地域における「健康管理」「保健管理」「疾病管理」等の用語が使用されているが,それらの意図するところが必ずしも明確でないし,また概念も固定しているとは言い難い。この報告に用いる農村保健管理体制という言葉は,農村地域に住んでる人びとが健康な生活を営むための保健事業のしくみ一般というように解釈しておこう。一般に管理とは,事業主体による「なにをなすべきか」という決定に従って管理者が被管理者から必要で十分な情報,資料を集めながら,その事業を「いかになすべきか」を定め実行することである。衛生行政における保健管理は,主体は,健康な生活を営み,営もうとする地域の住民であり,管理者が行政担当者であるといえる。この場合主体が一方では被管理者となっている。なお,日本医師会では「管理医学」1)を提唱している。ここでの「管理」はAdministrationということでManagementでもControlでもなく,この2者を包括する立場のものであるとし,管理医学とは,"医学の社会的適用のための科学"であり,医師がその主体性を失うことなく,広範囲な視野のもとに医学の社会的適用のために一つのシステムを形成すべきであろうと述べている。この場合でも当然医師の専門家としての主体性はシステムの中でのことであり,国民または地域住民の主体性は,そこなわれるものではない。
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