特集 地域保健活動の焦点—21世紀を目前に
III章 地域保健活動21世紀の焦点
保健サービスの公的責任と効率性
武村 真治
1
1国立公衆衛生院公衆衛生行政学部
pp.1059-1063
発行日 1999年11月25日
Published Date 1999/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902975
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はじめに
経済学では,消費者と生産者が市場において財・サービスを取り引きすることによって効率的(パレート最適)な資源配分が可能になるとされている1)。しかし,なかには,市場機構に依存すると社会的に必要な消費量・供給量を確保できない財・サービスが存在する。これは「市場の失敗」2,3)と呼ばれ,このような財・サービスに関しては,政府が「公的責任」において市場に介入する必要がある。このことは,政府が財・サービスの社会的必要量を確保するために,市場機構によって達成可能な効率性を犠牲にしていることを意味する。
わが国や多くの諸外国では,公衆衛生サービスや保健サービスが公的責任において供給されているにもかかわらず,効率的なサービス供給が求められているのが現実である。この矛盾をどのように捉えればよいのか,そしてこれは本当に矛盾しているのか。本稿は,保健サービスの「公的責任」と「効率性」との関係を経済学的に分析し,地域保健活動の実践のための理論的根拠を付与することを目的とする。
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