助産婦雑誌 55巻12号 (2001年12月)

特集 周産期の記録

記録とは何か 坂本 すが
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悩み解消のための成果重視の医療・成果重視の記録

 以前からわれわれ助産婦や看護婦は「良い記録」とはどういうものかを考えながら,日々看護の質向上を目指してきた。しかしながら,いまだに到達点に行き着いていない。看護職はいつまで記録に悩まされるのだろうか。

 私の考えであるが,いつまでたっても記録に悩まされる原因は,どうも記録ではなく,「看護」そのものにあるような気がする。私見であるが,まず,看護はロジックがはっきりしていないことが多いようだ。科学的な見地に看護が立ちにくい面も関係するだろうが,その理由として,

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はじめに

 日本看護協会は,1999年2月の医療審議会で,「記録の開示は患者の権利の保障として位置付けられるものである。現在,医療現場において患者のおかれている立場を考えれば,法律に記録の開示を明示し,患者の自己決定の権利を保証する必要がある」との見解を表明し,「看護記録の開示に関するガイドライン」を作成しました1)

 当院では診療情報開示は本年4月から行なわれており,診療情報開示の対象にはもちろん,看護記録も含まれています。看護記録を医療従事者以外の誰かがみるということを,これまで多くの看護者は意識してこなかったのではないでしょうか。もちろん,私自身も意識していませんでした。患者さんやご家族の方に読んでいただけるカルテの記載になっているだろうか,と改めてカルテを広げたときに,第三者が読む記録になっていないことに気づかされました。それは,略語が多用されていたり,看護者間では理解できていても,第三者が理解できないと思われる文章があることです。看護者一人ひとりが,記録の内容を見直しながら,同僚監査を行ない,患者さんやご家族の方に読んでいただける記録を目指しています。

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はじめに

 NTT東日本関東病院(以下当院とする)では,2000年12月の新病院開院に伴い,ペーパーレスによる診療記録の電子化がほぼ実現した。「電子診療録システム」を中核として,約30の部門システムを集めた総合医療情報システムを採用している。その総合的なシステムをKHIS-21(新・関東病院ホスピタルインフォメーションシステム)と名づけて運用している。その中で看護部では,看護計画を中心とした入院患者のケアシステムを開発した。他で言われるところの「看護情報システム」,「看護業務支援システム」と同様の内容だが,多職種が共有する部分も多いことから,当院では「入院患者ケアシステム」と名づけている。

 「入院患者ケアシステム」の看護計画においては,北米看護診断協会(NANDA)の看護診断を用いている。その理由は以下の3つである。

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はじめに

 看護記録は客観性があり,簡潔で記入に費やす時間が少なくて済み,関係者が素早く患者の問題点を把握できるような効率性も考慮する必要がある1)とされている。

 当杏林大学病院では看護部管轄の委員会として記録委員会を設け,必要事項を,簡単にかつわかりやすく統一して記録できるように,記録用紙の見直しなどを行なっている。

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はじめに

 当院は,電子カルテの開発過程にあるが,看護部門もオリジナルソフト「看護支援システム」を開発し使用している。このシステムは病棟単位の試用期間を経て,2000年3月より全病棟で本格的にスタートした。

 アセスメントデータベース,経時ケア記録(体温表含む),看護診断は電子化されている。病棟差をなくすため委員会活動にて記録の基準化・看護診断の浸透など,看護記録の充実に取り組んでいる。産科病棟においては,分娩経過図記録(パルトグラム),分娩台帳など一部の記録が電子化されていない。各々の記録には改善しなければならない点も多々あり,未だ検討の途上である。

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福井 私と記録との関わりですが,記録用紙を変更したりシステム化したときに,実際の記録をどうするかなどを検討する「記録委員会」が看護部の委員会にあるんですが,その責任者をやっています。

 インシデントレポートが提出されたときに,その記録を必ず見るという作業も行なっています。また,記録の内容が充実するように,院内での記録の基準づくりを行なっています。

特別寄稿

美術の中のこどもたち 長岡 由美子
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 こどもを取り巻く環境は,昔と今とで格段に変化した。医学の進歩と生活の向上のおかげで,生まれたこどもは多くの場合,無事に成長するようになり,疫病や天災,飢饉などでたくさんの小さな命が天に召された事実は,少なくとも日本では過去の歴史となった。その反面,いじめ,虐待,悪質ないたずらや殺人など,日々,こどもをめぐる深刻な事件が次々と報道される。その多くが,物質的に豊かな現代社会の醜く歪んだ一面を浮き彫りにしている。また,海外では戦争によって身も心も傷つき,命まで奪われるこどもたちが何百万人もいて,弱い立場のこどもたちに犠牲を強いることを悔いない大人のエゴが蠢いている。次々と沸き起こる災難に,こどもたちの将来は決して穏やかではない。

 いま,大人たちはこどもに対して何ができるか,何をすべきか。答えを探すのは難しいが,祖先が,長い歴史の中で,こどもという存在をどう捉え,どう育んできたのか,ということを改めて振り返る時,そこには,私たちが忘れてはならない何か,があるような気がする。

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はじめに

 私は助産婦として4年間の臨床を経て,現在大学院で緊急帝王切開を余儀なくされた母子のケアに関する研究に取り組んでいます。今年5月から2か月間,マタニティ・サービスの「先進国」とも言える英国でどのようなケアが行なわれているかを学ぶために,5か所のマタニティ・ケア施設で短期研修をさせていただきました。

 英国で子どもを産む女性は様々な選択肢を持っています。NHS(National Health Service)による無料のマタニティ・サービスにおいても,ローリスクの場合には妊娠中のケアを誰から受けるか,どこで出産するかを女性が選ぶことができます。しかし,妊娠中はローリスクでも,分娩時に突如異常に移行する母子もいます。このような母子に対しては,どのようなケアが行なわれているのでしょうか。

研究・調査・報告

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はじめに

 筆者が助産婦学校卒業後,助産婦として病院に勤務していたのは十数年前になる。戦後から今日まで,助産婦をとりまく環境は産婆から助産婦への名称の変更や,出産の形態等,激変した。助産婦数の減少,また,開業助産婦数の顕著な減少に,助産婦が独自にもつ開業という既得権の存続にも関心が高まっている。このような変化の最中に身を置く私たち助産婦は,今一度,助産婦としてのあり方を問い直さなければならないと考える。

 そこで筆者は,勤務先の大分県の戦後から現在までの母子保健資料を見直すことで,助産婦の現在の問題を明らかにし,未来への展望を考察することにした。

クローズ・アップ

美術の中の子どもたち
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 子どもの姿には,泣いても笑っても私たちの心を解いてしまう魅力があります。縄文時代の昔から,表現することを知った私たちの祖先は,愛らしい子どもの姿を形に表してきました。

 この秋,そうした子どもたちの姿を表現した作品180点が全国から集められ,東京・上野公園の東京国立博物館で「美術の中のこどもたち」展として公開され,好評を博しました。一堂に集められた美術品群からは,あたかも人間賛歌が聞こえてくるようでした。

連載 新生児医療最新トピックス・11

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はじめに

 みなさんは,癌やC型肝炎の治療に使用されるインターフェロンや,貧血の治療に利用されるエリスロポエチンの名前はご存じと思います。しかし,それらがサイトカインの一種であると言われると「なんだろう」と思う人が少なくないのではないでしょうか。実は,筆者もつい最近まで,リンフォカイン(リンパ球から出る物質の意味)やモノカイン(マクロファージから出る物質)の名前に加えて,インターロイキン(白血球間の伝達物質の意味)や先程のインターフェロンなどの名前が出ると,頭が混乱していました。

 しかし,サイトカインという言葉は,文献を開けば至るところに出ておりますし,少し勉強してみると,サイトカインが生態の免疫系や炎症に関係するのみならず,種々の疾患の病態の中心的な役割を果たしていること,また発育などにも関係している極めて重要なものであることを理解するようになりました。さらに新生児領域においても,古くから知られている壊死性腸炎や慢性肺疾患,さらには,私共が未熟児医療で一番頭を悩ませている脳室周囲白質軟化症の病態にまで深く関与しているのです。

連載 いのちの響き・35【最終回】

聖なる出産 宮崎 雅子
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 いのちを産み出した女性の静かな眼差し。

 柔らかな乳房を子に含ませながら,幸福そうな笑みを浮かべている姿は,まるで女神のよう。

連載 とらうべ

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 3か月だけの英語研修と思った北米への旅立ち。それが11年にも及んだのだが,様々な人種,宗教が異なる人達との出会いの中で考えさせられたのは,自立ということ。なかでも感心させられた,高齢者の自立についてふれてみたい。

 帰国前カリフォルニア州バークレーでアパートをシェア(共同生活)したのは89歳のユダヤ系女性で,彼女の名前はモリといった。2歳の時ロシアから移民してきたが,幼児期に父母がなくなり,祖父母に育てられた。結婚してデトロイトに住んでいたが,夫と気があわず,子供たちのいるカリフォルニア州へと移ってきた。

連載 判例にみるジェンダー・11

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「エホバの証人」入信者にまつわる問題

 「エホバの証入」入信者が社会的問題になったのは,某大学病院で,6歳児に必要な輸血が親の意思で拒否され,子どもが死亡したというショッキングな出来事が表面化したことによる。このケースは子どもであったが,成人であれば,自己決定権の侵害として批判される。判例では平成12年2月29日の最高裁判決がある。宗教上の信念に基づく患者の自己決定権と医師の救命義務のどちらを優先するか注目されたが,本質的問題は同意のないまま輸血した点に医師の過失が問われたものである。産婦人科領域では事前に,「エホバの証人」の信者を“門前払い”しているところがある。その事由は,産科領域の出血は突如,数分で多景出血という特徴によって,即,母子の生死に直結する。したがって救命のために輸血の決定を早急に行なう必要があるからである。また,個人の意思だけではなく,子,夫の意思も無視できない。

 しかし,「エホバの証人」の教義も多種多様であり,輸血に代用する各種の定めもある。「エホバの証人」信者の産婦,または子どもの治療場面において,医療者との葛藤は常にある。

連載 英国助産婦学生日記・12

充実した1年を終えて夏休みへ 日方 圭子
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もっと手を出そうと決意

 前回の実習では自信がつくのを待って手を出さずに見ていることがほとんどだったので,今回の「実習2」では自信のつくのを待っている時間はない,と手を出すことを決心した。コミュニティでメントーのパムも押してくれて,私主体で,パムは後ろでサポートするという体制で仕事ができるようにしてくれた。そのおかげでまだ自信がないながらも,初診,妊婦検診,産後の家庭訪問でどんどん手が出せるようになった。分娩室実習ではマンデイが第一ステージの産婦さんとパートナーと私を分娩室に残して,「じゃあお茶を飲んでくるから,何かあったらブザーを押してね」と出て行くことが増えた。先輩が同室にいるんじゃ自由に産婦さんに接することができないから,という助産婦歴2年のマンデイならではの配慮からだったし,確かに一人だと自分主導で産婦さんとの関係も作ろうと努力する。マンデイが横にいるのといないのとでは大きな違いがあると気づいた。

 この実習中に一度だけ,生まれてくる赤ちゃんの頭に手を添えて,そのまま生まれた赤ちゃんをお母さんのお腹の上に乗せるということをした。手を添える=「介助」と呼ぶのだとしたら介助した,ということになるけれど,実感はなかった。手はあったけれど,産婦を支えたのは私じゃないしメルだったから。次回9月の実習では分娩室が主なので,お産の介助をもっと経験できるんじゃないかと期待している。

連載 りれー随筆・205

フィリピンでの幸福 冨田 江里子
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 朝の家事を済ませ,2歳と4歳の子供を連れて,でこぼこでドロドロの坂道を傘をさしながら歩いて下る。熱帯の日差しは容赦せずに照るので,雨傘が役に立つ。勤務先のSt.バルナバマタニティークリニックまで歩いて5分。着いてみると,いろいろな大きさのグアバがいつくか置いてあった。「一昨日お産をした人の家族が,持ってきてくれたの」と,私の相棒のティナが言う。おいしそうなグアバ。申し訳ないような,それでいて幸せな気分にさせてもらえる。幸せは,みんなで分け合うのがここでのやり方。来ていた患者も近所の予供たちも,グアバにかじりついた。まだ青いグアバは種が多く固い。でも,馴れるとこれが美味しくなる。お腹にも幸せが入った。さあ,はじめよう。こんなふうに,私の1日はスタートする。

今月のニュース診断

「狂牛病」報道に思うこと 斎藤 有紀子
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ウシ海綿状脳症

 ウシ海綿状脳症(通称:狂牛病)が,この秋,大きな国内問題となっている。市場も大きく影響を受け,町の焼き肉店に「豚肉始めました」の貼り紙や,牛丼店に「チキンカレー」ののぼりが立ちはじめた。

 ウシ海綿状脳症は,「プリオン」というタンパク質により神経がおかされ,牛が死にいたる病気である。ヨーロッパなどで広がり,病気にかかった牛の肉を食べた人にも感染するおそれがあると指摘されている。ヒトへの感染経路が,まだはっきりしないところもあり,日本では,1406品目の医薬品や化粧品も,汚染された可能性がある原料が使われていたとして,製造業者によって自主回収された(時事通信10月29日)。感染の疑いのある乳牛の焼却処分も報じられている(朝日9月11日)。

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基本情報

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助産婦雑誌
55巻12号 (2001年12月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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