連載 判例にみるジェンダー・11
妻の「エホバの証人」宗教活動と婚姻関係
石井 トク
1
1岩手県立大学看護学部
pp.1098-1099
発行日 2001年12月25日
Published Date 2001/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902785
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「エホバの証人」入信者にまつわる問題
「エホバの証入」入信者が社会的問題になったのは,某大学病院で,6歳児に必要な輸血が親の意思で拒否され,子どもが死亡したというショッキングな出来事が表面化したことによる。このケースは子どもであったが,成人であれば,自己決定権の侵害として批判される。判例では平成12年2月29日の最高裁判決がある。宗教上の信念に基づく患者の自己決定権と医師の救命義務のどちらを優先するか注目されたが,本質的問題は同意のないまま輸血した点に医師の過失が問われたものである。産婦人科領域では事前に,「エホバの証人」の信者を“門前払い”しているところがある。その事由は,産科領域の出血は突如,数分で多景出血という特徴によって,即,母子の生死に直結する。したがって救命のために輸血の決定を早急に行なう必要があるからである。また,個人の意思だけではなく,子,夫の意思も無視できない。
しかし,「エホバの証人」の教義も多種多様であり,輸血に代用する各種の定めもある。「エホバの証人」信者の産婦,または子どもの治療場面において,医療者との葛藤は常にある。
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