助産婦雑誌 56巻1号 (2002年1月)

特集 もっともっと助産婦に

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 2001年冬,私は全国各地のお母さん方から助産婦に対する思いを綴った作文を募集し,『だから日本に助産婦さんが必要です』という冊子を作りました。一人一人の原稿を読んだとき,改めて,「ああ,やっぱり助産婦ってすごい」と思いました。きめ細かい心のケア,五感が冴えわたっているかのような手技,家族を包み込む包容力,地域の女性たちのよりどころ,母のように尊くて,医療の枠を越えた日本の貴重な文化だと感じました。絶対に大事にされて繁栄しなければならない職業だと思います。

 ケアを受ける人たちの願いはさまざまですが,たくさんの女性の気持ちに共通していることといえば,それは一つ,「できるかぎり優しくして」ということだと思います。裏を返せば,優しくないことはしてほしくありません。ただそれだけです。妊産婦さんとその家族と,そしてなにより赤ちゃんを,おびえさすような事はしてほしくありません。緊張も恐怖も孤独も不信感も一方的な対応もほしくありません。まちがった情報はもちろんいりません。

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 「助産婦」という言葉は知っていても,どれくらいの人が,助産婦に親近感を持っているだろうか。自分自身がお産をしなければ縁のない存在だと思う人が多いのではないか。お産のときですら,影しか見えないと感じる人もいるようだ。病院以外で助産婦さんにお目にかかると,会ったというより,遭遇したという感じさえある。日本ではかつて助産婦さんは,女たちにとっても家族にとっても重要な存在であった。今は病院の奥深く姿をかくしてしまったように思われる。現代でも,本当はその活動の場は,もっともっと広いものではないだろうか。

 本稿では,まず私の周辺のいく人かの女性たちから聞いた話を再構築してみたい。

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はじめに

 昨年のNHK朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』で,看護婦であるヒロインが自宅出産を選び,家族に見守られながら産婆さん(助産婦さんというより,こちらがピッタリ)に赤ちゃんを取り上げてもらった場面をご覧になった方も多いのではないでしょうか。産婦人科医のための『産科と婦人科』誌68巻7号(2001年)では“自然分娩—多様なニーズへの対応”が特集されていました。

 いつの頃からか医療者のものとなってしまっていたお産が,最近では少しずつ妊産婦自身のもとに取り戻されつつあるような手ごたえを感じます。その動きをさらにしっかりとしたものにするために,現代に求められる助産婦の役割を,自分の出産体験と私たちの「自宅出産ねっとわーく」に寄せられる声をもとに考えてみたいと思います。

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私たちと助産婦さんの間の見えないバリア

母親,そして広告人の視点から

 タイトルで助産婦とブランドという2つの言葉の唐突な組み合わせに,違和感や興味を持ってくださった助産婦さん,ありがとう。そう感じてくださった方は,21世紀のお産を担う助産婦のお一人であろうとうれしく思います。

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 私たちのサークル「ラズベリーリーフ」は,母乳育児・自然育児を楽しみながら推進することをテーマにしています。発足してそろそろ2年がたとうとしています。現在,会員は52名。企画・運営をする会員を「ママスタッフ」と称し19名,一般会員は「リーフちゃん」と称し33名います。

 こんな私たちの原点は,大宮助産婦会実行委員会による「まざーずくらす」という活動にあります。

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はじめに

 私たち夫婦は一人目の子どもを,地元の市民病院において不必要な陣痛促進剤による被害で誕生のときに失った。産科医か,助産婦かが分娩時に妻の訴えを聞き入れてくれていたなら避けられていた事故だった。しかし妻の訴えは最初から聞き入れられるわけがなかったのである。なぜなら,市民病院は赤字解消のために最初からすべての産婦に対し陣痛促進剤を投与し,お産を自分たちの都合のよいように誘導しようとしていたからだ。

 お産の現場にはさまざまな問題が存在するが,そのお産の現場を変えるために最も重要な鍵を握っている「助産婦」への期待を込めて,私の妻子の被害経験を報告し,いくつかの提言をしたい。

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 熊手 今日は,お産とおっぱいをテーマに,自主グループで活動なさっている皆様にお集まりいただき,「助産婦に望む」ということで話し合いたいと思います。

 本題に入る前に,自己紹介からお願いします。

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『だから日本に助産婦さんか必要です』からもらったパワーと課題

 2001年4月に私は看護大学の教員になった。着任したのは開学7年目の県立の看護大学であるが,助産婦課程設置について検討中のところであった。ここ愛知県では,これまで県立の助産婦養成課程をもったことがなく,着任以来「出産が減っている時代に,なんで助産婦が必要なのか」という県担当者の疑問にどんな回答をすれば納得してもらえるのかと,考える日々が続いていた。

 そんな5月の月曜日,学長から電話があった。電話は「助産婦さんを応援する本が出版されたと東京版の朝日新聞に出ているのを見たけど,愛知県でもその記事が出ましたか」というもので,学長の電話で『だから日本に助産婦さんが必要です』という冊子の発行を知ることができた。愛知県版の朝日新聞にはまだ載っておらず,学長から渡された切り抜きでこの冊子に対面ができたのだった。3月の時点ではまだ原稿募集中と聞いていたが,5月には早,立派な本にしてしまった若いお母さん達のパワーが輝かしく思われた。

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 左古 あゆみ助産院での研修について話し合う前に,わたしが研修を受け入れるようになった経緯を簡単に説明させていただきます。

 わたしは未熟児で生まれ,生死も危うい状態だったのですが,取り上げてくださった産婆さんが,生後2か月まで手元に引き取って大切に育ててくださいました。そして,成長してからも事ある毎に見守り続けてくださいました。そういうことで,いのちの恩人とも言える産婆さんに感謝すると同時に,子どもの頃から自分も助産婦になり,あの産婆さんのようになりたいと思っていました。ですから,わたしにとって助産婦になることは,開業助産婦になることだったと言えます。

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はじめに

 前号(55巻12号)でご紹介させていただいた3つのバースセンターは,正常分娩のみを扱うことができる出産施設で,分娩経過が正常を逸脱した場合には病院へ母体搬送するか,同一施設内の医師のいる産科病棟へ移送しなければなりませんでした。では,英国内において,ハイリスク母子を受け入れる施設や,医療施設が少なく救急医療機関へのアクセスが困難である地域では,どのような対応がなされているのでしょうか。

 本稿の後編では,ロンドン中心部の歴史ある総合病院と,医療施設の少ない地域で単独で運営されているマタニティ・ユニットの2施設をご紹介します。

ケースレポート

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はじめに

 近年,交通事故やスポーツ事故等の増加にともない青年の脊髄損傷が増加傾向にある。女性が受傷した場合,妊娠期や分娩時に流早産・尿路感染・分娩予知困難・褥瘡等の様々な問題が生じる。育児上も困難な問題が起こりうる。

 なかでも分娩時は自律神経過反射(Autonomic-hyperreflexia:以下AHと略す)の予防が最も重要となる。AHはTh5-6以上の脊髄損傷患者の約85%に起こるといわれ,その発生機序であるが,損傷部位より下部の場所で刺激を受けた交感神経の反射を,上位の視床下部でコントロールできなくなることから起きる。発作性高血圧,頭痛,顔面紅潮,発汗,鳥肌,胸内苦悶,徐脈,散瞳等の多彩な症状を呈するのが特徴である1)

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 徐々にではありますが,開業をめざす人が増えつつあります。開業と一口に言っても,大小のノウハウと助産実践能力が要求されます。本人にとっては,やれるという自信も絶対に欲しいところでしょう。

 中堅開業助産婦を代表する一人,あゆみ助産院(京都市)の左古かず子さんが16年前に開業を決意した時には,具体的な開業の方法がわからなかったとのこと。しかし,それでも順調なスタートをきり,充実した活動を続けてくることができました。そこで,開業10周年を迎えた4年前に,後輩育てを決意しました。具体的にはやる気のある開業希望者を助産院に迎え,自主性100パーセントの研修を積んでもらうという方法です。

連載 新生児医療最新トピックス・12

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サイトカインによる新生児感染症の早期診断

 多くのサイトカインが感染などの生体への刺激に反応して産生されることはすでに述べた。それらが発熱や発赤などの炎症の病態も作り出すのだが,TNF-αやIL-1およびIL-6などは,肝細胞を刺激してCRP(C反応性蛋白)などの急性反応物質を産生する。それ故,CRPなどの急性反応物質の上昇を見て感染の有無を判断する方法に比べれば,それを作り出す刺激物質となるサイトカインの上昇をとらえれば,より早く感染を兄つけることができると考えられる。感染のみならず,CRPなどは,手術や特に新生児の場合は,出生というストレスによって生理的な上昇をすることが知られている。図1,2は,分娩に伴うCRPとIL-6の生理的上昇が分娩時のストレスによることを示したデータである1)。IL-6がCRPよりも12時間早期にピークを作っていることは,IL-6がCRP産生を刺激していることの証明である。それによって,より早く児の異常を発兄できることを示している。

 急性反応物質を産生させるサイトカインとしては,IL-1,IL-6,TNF-αがよく知られており,感染のバロメータとして,多くの研究がなされてきた。最近IL-8も子宮内感染の児で上昇することや,院内感染の早期発兄に利用できることなどが示されている2)。サイトカインを測定することの迅速性に加え,従来のCRPなどの組合せにより,その特異性を高めることが,ひとつの方法として試みられている3)。いずれにしろ,サイトカインへの知識が高まり,より迅速に簡便に測定できるようになれば,新生児感染の対策は,さらに一歩前進するであろう。

連載 誕生の詩—滝沢助産院物語・1

生まれてきたよ 川野 裕子
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 ぼく、生まれてきたよ。見えるか見えてないかなんて聞かないで。ぼくを見て。ずっと見ていて。ぼくの瞳の先に映るもの、ぼくはそっと残していくから。お母さんとお父さん、おばあちゃんとおじいちゃん、いろーんな人たちからもらったぼくのいのちの力、信じてね。

 ぼく、生まれてきたんだ。

連載 とらうべ

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 オーストラリアに移り住んで,今年で21年目。住みやすいので,すっかり腰を据えてしまった。国家としての縛りがゆるい。その存在が軽い。なにしろ前首相のキーティングという人は,国歌の歌詞を知らなかったのだ(したがって,歌うことはなかった)。それで通ってしまう。

 最近やたらと日本で目立つようになった国家主義者たちからの反発を買うかもしれないが,これは,明らかに美徳であるとわたしは心得る。

連載 判例にみるジェンダー・12

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虚偽の嫡出子出生届

 児が出生すると分娩に立ち会った医師あるいは助産婦がその児の出生を証明するために出生証明書を書く。親は,その証明書を14日以内に届けることが戸籍法第49条に定められている。

 ところが,届けの際に実子ではないが,実の子として養育したいと希望,戸籍もそのようにするために嫡出子として届け出ることがある。そのような対応についてみていくと,次の4パターンに分類することができよう。①夫が妾に産ませた児を本妻が産んだ嫡出子とする出生届,②未婚の娘が出産した児を父母の嫡出子とする出生届,③他の夫妻が産んだ児を引き取り,自らの夫妻間の嫡出子とする出生届,さらに,新たなパターンとして,④非配偶者間人工授精によって出生した児を夫婦間の摘出子とする出生届がある。

連載 りれー随筆・206

役に立ちたい 上條 智恵
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 助産婦学校卒業後,12年間働いた産婦人科病院を退職して4か月が過ぎました。結婚して住む場所や同居する家族も変わり,仕事も休止中です。今までとは全く異なる生活にもようやく慣れてきたところです(料理作りには悪戦皆闘しています)。振り返ると,助産婦として働いた間にはいろんなことがありました。そのなかで,「援助」について考える機会もありました。

連載 英国助産婦学生日記・13

2年目の始まり 日方 圭子
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 夏休みはひと月近く帰省して日本の夏を楽しんだ。9月になって寮に戻ったら,なんと上階のお風呂からの水漏れで部屋はカビだらけ,あんまりな状況になっていた。思い切りホームシックになって,フィリピン人看護婦のジェレンにお夕飯をご馳走になって慰めてもらって,とりあえず空き部屋に避難した。2年目の始まりは,なんとも不幸だった。

 今学期の予定は,6週間実習,4週間授業,6週間実習,2週間冬休み,となっている。最初の2週間の実習は東サリー病院産後棟に配置になった。この病棟で働くのは初めてだった上にとにかく忙しい。ここの助産婦とはほとんど初対面だったし,その中で毎回一緒に働く人を見つけるのは大変だった。夏休みぼけが抜けきらないまま2週間は過ぎていって,実習ごとに記入していく「記録ノート」に担当者のサインをもらい損ねてしまうくらい,頭の切り替えができていなかった。

今月のニュース診断

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さまざまな言い換え

 「ターミナルホテル」がなくなってきているという。「ターミナル」という言葉が終末期をイメージさせて印象が良くないということで,ホテル側が名前を変えたり,新しいホテルにターミナルの文字が使われなくなっているらしい。

 ターミナルには,もともと終着駅・始発駅という意味があり,さまざまな出会いや別れを演出するドラマティックな言葉でもあるが,ビジネスとして考えれば,お客さんが負のイメージをいだく要素は,少しでも払拭しておきたいのだろう。ターミナルホテル,ターミナルビルの消失は,「ターミナル・ケア」などの言葉が定着していることのあかしと喜ぶ人もいるかもしれない。

基本情報

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助産婦雑誌
56巻1号 (2002年1月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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