小児科 59巻7号 (2018年6月)

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本稿では,神経発達障害等の精神疾患の生物学的な基盤に関する研究のなかでも,脳機能計測技術の一つである機能的磁気共鳴画像法を用いた脳研究の最近の動向に焦点を当てる.神経発達障害の注意欠如多動症や自閉スペクトラム症,類似した症候を示すトラウマ関連の愛着障害の病態に関する脳研究,また,子どもの発達が養育者や周囲の人々との関係性のなかで導き支えられるという観点に基づき,子どもとの関係性の維持に関わる養育者の社会脳機能に関する脳研究について紹介する.今後,脳研究や関連研究分野の知見が積み重なることで,生物学的根拠のある指標が確立され,精神疾患体系の再構築や治療法開発につながっていくことが期待される.

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磁化率強調画像法(susceptibility-weighted imaging:SWI)は従来の2D gradient echo(GRE)法によるT2強調画像に位相情報を加えて組織の磁化率の差異をより鋭敏に画像的に強調した3D GRE法で撮像されるMR画像であり,脳静脈血(デオキシヘモグロビン),出血(ヘモジデリン等),鉄(フェリチン),石灰化(カルシウム)等を低信号として高精細に描出する.本稿では小児中枢神経領域におけるSWIの有用性について解説する.

3.関節超音波検査 土田 聡子
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超音波検査は,被曝・鎮静・拘束の必要がなく,小児にとって好ましい検査方法である.外傷や炎症から発育性股関節形成不全まで適応は広く,骨化前の関節評価が可能である反面,施術者には,成長による各部の変化を加味した判断と検査技術が求められる.なお,小児の超音波所見の標準化はまだ完全ではなく,引き続き検討を要する.今後,小児整形外科領域における超音波検査のさらなる利用が期待されるが,子どもの関節痛は,急性白血病・神経芽細胞腫・悪性リンパ腫等の初期の単独症状であることもあり,診察・詳細な病歴聴取はもとより,経時的変化の確認や,他の画像評価等を併せて行い,確定診断に至るよう留意すべきである.

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胎児心臓超音波検査においても,STIC法,さらに立体情報を収集できる新しいプローブの開発により,3Dおよび4D画像診断が発展してきた.立体的な超音波画像データは,平行多断面表示,直行3断面表示やbi-plane表示,さらにはvolume renderingによる立体構築等の実用的な表示方法が開発され,臨床的に使用しやすくなっている.この新しい手法により,より正確な診断や,医療スタッフや家族へのわかりやすい情報提供が可能となり,さらに胎児心臓病医療に重要なスクリーニング率の向上にもつながるものと期待されている.

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本稿では超音波検査法の新しい技術であるSuperb Micro-vascular Imaging(SMI)の概略を紹介し自験例を供覧する.ドプラ技術の応用であるSMIは,造影剤を用いずに微細な低流速血流をリアルタイムに観察することが可能である.SMIはキヤノンメディカルシステムズ社製の中級機種以上の超音波装置に標準装備されており,特別な前処置なしに行うことができる.大分こども病院ではさまざまな小児疾患に対して337回のSMI検査を施行している.対象臓器として肝臓,小腸・結腸,虫垂,リンパ節,腎臓の大半で,何らかの陽性所見を得ることができた.実質臓器では組織内の微細低流速血流を良好に描出することができた.病変部における微細血管数の減少,血管陰影の形状変化・走行異常等を鋭敏に捉えることができた.管腔臓器では壁内の微細血管の描出が容易であり,各種病態の治療方針決定に有用であった.本文中で診断や治療に有用であった画像を供覧する.低流速血流を高分解能・高フレームレートで捉えるSMIは,モーションアーチファクトの少ない微細低流速血流を正確に描出できるという点で優れている.SMIは前処置なしに,通常の超音波検査の延長線上で手軽に行える検査であり,日常診療で遭遇する小児疾患の診断・治療においても,幅広く行うことができる有用な検査法である.

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周産期医療での画像診断には主に超音波断層法が汎用されるが,その精査においてはMRIも使用することも多い.MRIは骨以外の組織に対してコントラストおよび分解能が優れており,骨系統疾患等を除く胎児疾患や癒着胎盤等の診断に有用である.電離放射線も使用せず,また超音波と比較して術者による差も少ないといった利点も存在する.本稿ではMRIの原理,安全性,一部の胎児疾患や癒着胎盤を疑う所見について概説する.

7.カプセル内視鏡 南部 隆亮
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カプセル内視鏡(capsule endoscopy:CE)検査は,カプセル型の内視鏡(26mm×11mm)を嚥下することで,非侵襲的に全小腸の消化管粘膜を観察することが可能な検査法である.2000年に初めて報告されて以降,急速に世界中に普及し進歩してきた.本検査の登場は,同時期に登場したバルーン内視鏡検査と並んで,これまで未開の地とされてきた小腸の数々の問題解決に寄与してきた.本邦では2015年に18歳未満の小児への適応が拡大され,小児の小腸疾患の診断・管理においても非常に重要な役割を果たしている.CEは,他の内視鏡検査と比較して “苦痛が少ない”,“鎮静の必要がない”,“検査の際に被曝がない” といったメリットがある.本稿ではCE検査の実際に関して包括的に説明する.

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悪性腫瘍の病期分類・治療効果判定において,全身検索が可能な18F-FDG-PET/CT(FDG-PET/CT)の有用性が認められ,さまざまな小児固形腫瘍に対して応用されるようになってきている.悪性リンパ腫と骨軟部腫瘍については,FDG-PET/CTは有用であり,推奨される検査といえるが,小児外科領域の固形腫瘍(神経芽腫,腎芽腫,肝芽腫)については報告が少なく,今後のさらなる検討を要する.

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FDG-PETおよびFDG-PET/CTは,不明熱や不明炎症の持続を示す患者の原因検索に有用であり,実臨床で用いられる機会が増えてきた.さまざまな診断技術の進歩に伴い,不明熱の原因としてリウマチ性疾患と類縁疾患の占める割合は相対的に増加している.そのため,それらの代表的疾患の臨床像とFDG-PET所見の理解は有意義である.実際,FDG-PETはしばしば診断に直接的な情報を与え,間接的には 内視鏡検査実施の契機や生検部位の特定に有用である.不明熱の原因精査において,適切な患者にFDG-PET,FDG-PET/CTを行うことは,早期診断や検査の侵襲を減らすことにつながり,診療の質の向上をもたらす.

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心筋血流を定量的に評価可能な13N-アンモニアPET検査が,2012年4月から保険適用となっている.心筋血流SPECTよりもガンマ線への感度や空間分解能が高く高精細な画像が得られ,かつ低被曝で検査を行えるため,小児における有用性が期待される.しかしながら,トレーサである13N-アンモニア合成には施設内にサイクロトロンが必要となる等,導入までの敷居は高い.本稿では13N-アンモニアPETの原理とその特徴,実際の検査方法を述べる.さらに,臨床での小児での症例を提示しつつ,13N-アンモニアPET検査の有用性と限界を概説する.

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既往歴:8カ月前に急性リウマチ熱に罹患し,体重増加や眼瞼浮腫,心嚢水貯留,一過性の僧帽弁逆流,左室駆出率低下等心炎症状があった.プレドニゾロン(PSL)2mg/kgで治療が開始され,症状は速やかに改善した.PSLは開始2週間後より漸減され,合計12週間投与された.PSL終了1カ月後の胸部単純X線写真で心胸郭比は50%であった(図1).

綜説

AYA世代の急性白血病 富澤 大輔
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急性白血病は,思春期・若年成人(AYA世代)の代表的な悪性腫瘍である.とくに急性リンパ性白血病(ALL)では小児型治療が優れていることが明らかにされているが,合併症による治療完遂率がAYA世代では小児患者と比較して低く,その最適化が課題である.急性骨髄性白血病(AML)では小児型と成人型治療との優劣は明らかでなく,治療自体の違いもALLと比較して少ない.近年の遺伝子解析技術の進歩によってAYA世代白血病の生物学的特性が次々と明らかになっている.最新の知見をもとにした今後の新規治療開発に向けて,これまで以上に小児科医と成人血液内科医との協働が重要になってきている.

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慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)は持続的な伝染性単核症様症状を特徴とし,末梢血や病変部組織にEBVが検出される疾患である.CAEBVとその類縁疾患である蚊刺過敏症,種痘様水疱症,EBV-HLHは,いまだにその発症機構や病態が解明されていない希少疾患である.一方,EBVが通常B細胞に感染して伝染性単核症を発症するのに対して,CAEBVとその類縁疾患では疾患に応じてB細胞以外の異なるリンパ球亜群へ選択的に感染することが知られている.これら,EBVの異所性(B細胞以外への)感染により発症する各疾患の病態,診断ならびに治療について,最近上梓された診療ガイドラインを踏まえて解説する.

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多彩な関連疾患を有するヘリコバクター・ピロリ感染症だが,多くの検討から皮膚病変を伴う疾患を合併することがわかってきた.そのなかでも特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病は成人領域で因果関係のエビデンスが明らかになり,小児においても除菌療法の有用性が認められつつある.しかし小児の感染率は成人にくらべて低く,小児領域の高いエビデンスを得ることは容易ではない.ヘリコバクター・ピロリ感染症が全身にもたらす症状を理解し鑑別疾患の一つとして想起することは,日々の診療だけではなく今後のエビデンス構築にも寄与する大変に重要な視点になると考える.

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現在の感染症法では届出対象の寄生虫疾患はエキノコックス症・マラリア・アメーバ赤痢・クリプトスポリジウム症・ジアルジア症の5疾患のみであり全寄生虫症の実数は不明である.そこで,医中誌による小児寄生虫疾患の文献検索を試みた.希少疾患では同一症例の複数の文献登録も含まれるが症例報告文献数の多い順に記載すると,日本海裂頭条虫症,先天性トキソプラズマ症,マラリア,肺吸虫症,アニサキス症,トキソカラ症,エキノコックス症,蟯虫症,広東住血線虫症,マンソン住血吸虫症,クリプトスポリジウム症,赤痢アメーバ症,ジアルジア症,回虫症,瓜実条虫症,無鉤条虫症であった.蟯虫症は,比較的日常的に遭遇するゆえに報告数は少ないが,現在のわが国の小児診療において登場する寄生虫疾病のおおよその種類と頻度が反映されていると思われる.代表的疾病について概説を加えた.

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喉頭軟化症は乳児期の吸気性喘鳴の原因として最も多い疾患であり,吸気時に喉頭の閉塞,狭窄をきたし,吸気性喘鳴,閉塞性無呼吸等を起こす.喉頭軟化症は1年くらいの経過で自然に治癒する場合が多いが,一部の重症例では保存的管理が困難で,積極的介入が必要となる場合もある.気管・気管支軟化症は,主に気道の膜性部/軟骨部の比率の増加により,気道の脆弱性が増し,dying spell等の重篤な症状を呈することもある気道病変である.咽頭軟化症は咽頭壁が吸気時に虚脱することによって起こる比較的新しい概念の疾患である.この稿では,小児の咽喉頭・気管・気管支軟化症の診断と治療について述べる.

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近年,ワクチンの普及によりHaemophilus influenzae type b(Hib)髄膜炎やワクチンに含まれる13価血清型の肺炎球菌髄膜炎の患者数は減少を認めている.一方で無莢膜型・b型以外の莢膜型のインフルエンザ菌髄膜炎やワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌髄膜炎の発生の報告は散見される1)2).さらに先天内耳奇形を認める場合は細菌性髄膜炎の発生リスクが高いとされている3)

今回われわれは先天性内耳奇形を認めたHaemophilus influenzae type f(Hif)による髄膜炎の1症例を経験したため報告する.

最近の外国業績より

免疫 日本医科大学小児科学教室
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背景:若年性特発性関節炎(JIA)は小児のリウマチ疾患において頻度の高い疾患であり,ぶどう膜炎を合併する.ぶどう膜炎はJIAの約12~38%でみられ,関節炎の発症から7年以内に発症する.定期的なスクリーニングや治療選択を行っても関節炎を伴うJIAのうち,最大15%で両眼視力障害から失明に至ることもある.また,実験的自己免疫性ぶどう膜炎マウスモデルにおいてTNF-αが重要な役割を担っていることが示され,完全ヒト化抗TNF-αモノクローナル抗体であるアダリムマブの有効性が示されている.多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験でアダリムマブ(ADA)は小児リウマチ性関節炎での有効性も示されていることから,今回われわれは,SYCAMORE trialとしてメトトレキサート(MTX)治療反応性の悪いJIA関連ぶどう膜炎に対するADAの有効性を評価した.

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小児科
59巻7号 (2018年6月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

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