medicina 8巻8号 (1971年7月)

Editorial

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 わが国常在の代表的伝染病として,明治以来長い歴史をもつ腸チフスと赤痢が近年にわかに激減したことは,とりもなおさず腸管感染症の分野に大きい様相の変動をもたらしたことを意味する.

 腸チフスの減少傾向は,昭和25年のクロラムフェニコール登場以前に兆しをみせ,長く50を越し続けた人口10万対罹患率は終戦翌年を最後として終わって,昭和22年以降は減少の一途をたどり,最近はそれが0.4に低下して遭遇の稀な疾患と化した.かくて現在はこれに遭遇することがあれば,とかくロイマと誤診されることの多い時代である.発生減少に伴っていわれることの多い腸チフス病像の変貌は,無計画的な治療が行なわれない限りは現在といえども当たらない表現である.

今月の主題

急性下痢症の治療 柳下 徳雄
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 急性下痢症は,病原微生物による腸管感染に原因するものが多く,また,感染性下痢には化学療法剤が卓効を示すことも事実である.しかし,急性の下痢といえば直ちに,化学療法剤の投与が考慮される近年の傾向は反省を要する.非感染性の下痢で,抗生剤が効かないだけであればまだしも,抗生剤を与えたために下痢が増悪する症例も少なくないし,また,菌交代症など医原性の疾患にまで発展することもまれでない.

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 下痢には,感染性,食事によるもの,潰瘍性大腸炎,過敏性大腸によるものなど種々ある.ここでは,まず下痢患者をみたとき,どこに注意して病歴をとってゆくべきかについて考え,以下治療に直結する鑑別のポイントについて,各専門の立場から述べていただいた.

Leading Article

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 人間の健康を破壊する企業は断じて許されないと主張する医師は,1960年代わが国においてごく少数ではあったが存在した.彼らの果敢な闘いの結果,徐々にその主張が世間に広まるにつれ,企業の側から反論が起こって来た.「経済活動を停止して原始の世界に帰れというのか,電気,水道を停めてもいいのか」という主張である.

 この主張には多くの医師も惑わされた.多くの開業医は,「医師は人間の健康を守るたあに存在しており,公害問題の解決の社会的責任は重く,当然その先頭にたつべきである」という考え方に賛成されたにもかかわらず,現実のなかで公害問題の当事者の立場に立たされた場合,企業と行政の束になった前述の主張のまえには,具体的な解決策を提示し得ず,もろくも崩れてしまった医師が数多くある.この理想と現実のくい違いをどのように解決すべきであろうか.

図解対症検査 消化器シリーズ・3

上腹部痛(その2) 石井 兼央
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痛みの表現

 腹部臓器の痛みは,前回述べたように交感神経に含まれている求心性知覚神経線維によって伝達される内臓痛(visceral pain)であり,その局在性がはっきりしないことが多い.またこのような内臓痛は客観的にあらわすことができないので,痛みの有無やつよさは患者自身の訴えによるしか知ることはできない.しかも患者によって痛みの感覚,その表現に個人差が大きいものである.

カラーグラフフ

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 粘液水腫(myxedema)は,甲状腺ホルモンが長い期間欠乏した時に生ずる病態で,本来は組織組成の変化—ムチン様物質の貯留—を意味する.しかし一般には,成人に発症した甲状腺機能低下症と同義語に用いられている.それというのも甲状腺機能低下症患者のphysical examinationに際して,粘液水腫性組織変化を反映する所見が,徴候のもっとも前面に現われるからである.粘液水腫は,下垂体不全によるTSH欠乏の結果としてもおこってくる—二次性甲状腺機能低下症—が,その程度は甲状腺自体の病変によるもの—一次性甲状腺機能低下症—ほど顕著ではない.一次性甲状腺機能低下症のもっとも多い原因は,慢性甲状腺炎(橋本病)で,そのほか前頸部の手術,131I投与などに続発するものがある.一次性甲状腺機能低下症が乳幼児期におこればクレチンの病態をとる.以下に示す諸変化はいずれも可逆的で,適正な甲状腺ホルモン補充により,すべて消失する.

診断のポイント

急性虫垂炎と白血球増加 四方 淳一
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白血球数の正常域

 白血球数はいくつをもって正常域とするべきか? それは個人差もあるであろうし,また同一人にしても食事,運動,月経,痛み,薬剤投与などの影響をうけるであろう.通常行なわれているメランジュールと計算機による方法では20%の誤差がある,ともいわれる8).しかし,急性虫垂炎のような救急疾患の取扱いに際しては簡単・迅速な検査方法が推奨されるので,得られた情報をそれなりに有効に応用しなければならない.Hardisonは,健康人の白血球数は95%までが5,000-10,00/mm3にあるとしているし3),一般に10,000/mm3以上を白血球増加と考えてよいと思う.以下,/mm3を省略する.

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動悸を正当に評価するには

 健康人であると病人であるとを問わず,心拍動を意識する場合は数限りなく,したがって動悸を主訴として来院する者もきわめて多い.一般的にいって動悸はそれぞれの個人に心臓の存在を意識させる端緒となり,もし頻回に動悸を感ずれば,それはおのずと心臓の病気を連想させ,さらには心疾患があるのではないかとの恐怖心へと発展して受診の動機となることは当然考えられるところである.

イレウス 佐分利 六郎
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患者をみたときの注意点

 イレウスにも腸狭窄症に属するものから完全な腸不通症まであり,多くは術前に一応イレウスと診断を下し手術するが,絞扼症のように一刻を争ってとにかく開腹しなければならない症例もある.年齢的にも未熟児から高齢者までを含み,術前処置も異なっている.分類して記述すれば筆者は楽であるが,教科書的となりスペースも不足する.臨床家の立場から患者をみながら必要な考え方を主として述べることにした.イレウスらしい患者をみた時に次の諸点の検討が大切である.

 1)まずイレウスか否か?

治療のポイント

心筋硬塞後の安静と運動 土肥 豊
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安静・運動の判断に迷う実情

 「運動こそ最良の冠拡張剤である.」という名言ほど虚血性心疾患のリハビリテーションの本質を的確にあらわした言葉はない.およそ20年ほど前,P. D. White1),L. B. Newman2)らによって,心筋硬塞の治療にあたっての早期運動療法の効能が提唱されて以来,臨床的ならびに実験的成績の多くはこの考えを裏づけている.歴史的には,前記のDr. Whiteが心筋硬塞で倒れた当時のアメリカ大統領アイゼンハウアーを,積極的運動療法によって見事にカムバックさせた話はあまりにも有名である.英国のNational necropsy surveyによるMorris(1958)の報告3)でも,肉体労働従事者には虚血性心疾患の発生率が少ないことが認められている.このように,身体運動が心筋硬塞を含む冠動脈疾患の発生予防および発症後の回復にとって有用な好結果をもたらすことは,すでに定説となったと考えられる.

 しかし,一方において筆者らは,初期の安静が十分に守られなかったために症状の改善が非常におくれたり,思わぬ併発症をおこしたりする症例も日常ときとして経験している.したがって1人の心筋硬塞の患者を前にした場合,安静と運動との功罪をどのようにして取捨選択してゆくかが臨床家にとっての大きな悩みになるわけである.筆者自身,経験も浅く,新しい硬塞の患者を目の前にするたびにこの悩みをひしひしと感ずるのが実情であるが,いくつかの文献をもとにして筆者なりにまとめた,ひとつの原則のようなものを記して責を果たしたいと思う.

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 近年,合成Penicillin(PC)の開発は,一方ではDicloxacillin,Flucloxacillinなどの耐性ブ菌用PC剤に,他方ではAmpiciliin(AB-PC)に代表される広域PC剤にむけられている.

 1963年Beecham研究所で開発されたCarbenicillin(CB-PC)は後者に属し,その構造式はAB-PCのamino基がcarboxyl基に置換されたものである.抗菌spectrumはAB-PCに類似するが,緑膿菌,変形菌にはAB-PCよりもすぐれた抗菌力を示すといわれている.

坐骨神経痛 若杉 文吉
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 神経痛とはその神経の走行および支配領域に一致して激烈な疼痛が発作的に起こり,かつ器質的変化の認められないものをさす.このように厳密に定義するとこれにあてはまるものは三叉神経痛,舌咽神経痛ぐらいになる.

内科専門医のための診断学・19

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 アレルギー性疾患には,花粉病,気管支喘息,血清病,薬物アレルギー,蕁麻疹,湿疹,血管神経性浮腫,胃腸管アレルギーなどの古くからアレルギー性疾患と呼ばれていたもの,いわば古典的アレルギー性疾患(筆者のいう第一群アレルギー性疾患)と,臨床家の間では比較的近年になって,アレルギー的見地から考えられるようになったリウマチ性疾患ないし膠原病あるいは自己免疫疾患とがある.さらに後者は溶連菌感染と密接に関係し,疾患自体の経過は一過性と考えられるもの(筆者はこれを一応第二群アレルギー性疾患と称している)と,原因は十分にわかっていないが,抗原抗体反応と密接に関連し,疾患の経過は慢性ないし進行性であるもの(第三群アレルギー性疾患)とに分けることができる.ここでは,これらのうち気管支喘息をとりあげ,その診断の要点について述べたいと思う.

臨床家の遺伝学入門・7

常染色体性遺伝 大倉 興司
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優性遺伝

 いまさらいうまでもないことだが,優性とか劣性ということは,知能指数が高いとか,音楽的才能があるとかいったように,表現された形質がいささか他の人より優れているとか,反対に,さまざまな異常や疾患があるとか,学業の成績が劣っているとかいった価値をさすものでは決してない.あくまでも,遺伝子のはたらきを示す言葉なのである.

 遺伝子型と表現型の関係,すなわち優劣関係についての基本的な問題はすでに述べたとおりである(本誌Vol. 8, No. 3参照).しかしながら,メンデルの法則で教えられるような,すなわち教科書に書かれているような規則正しい分離segregationを示す場合だけでなく,実際に多くの家系調査をしてみると,しばしばこの法則では理解できないような例,いいかえれば不規則な場合に遭遇するのである.このような不規則性も,多くの詳細な観察と,実験的ならびに理論的な分析の結果,それらがメンデルの法則を否定するものでもなければ,特に新しい法則というのでもなく,メンデルの法則の中で十分理解できる現象であることが明らかにされている.この不規則性について述べることにするが,まず基礎となる問題を整理しておくことにする.

ベクトル心電図入門・1

ベクトル心電図のなりたち 戸嶋 裕徳
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ベクトル心電図とは

 心電図が心臓の興奮に伴う体表面の2点間の電位変化を記録したものであるのに対し,ベクトル心電図は2組の2点間の電位変化をそれぞれ直交する形で同時に記録したものである.従って装置としては,ブラウン管によるか,あるいはXYrecorderのように左右,上下の変化を同時に記録できるものが用いられることになる(図1).

 このようにして得られたものは,結局は2組の心電図を組み合わせたものにすぎないことになるが,ベクトル心電図の利点の1つは心臓の電気的変化を空間的にひろがりを持った図形化することで,その形なり回転方向なり,心電図から得ることの困難な情報を容易に判別できることにある.

日本人の病気

食中毒 辺野喜 正夫
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食中毒とその分類

 食中毒の定義は国によって違うが,わが国では食品衛生法の定めるところによっておおむね次のように広く解釈して処理されている.すなわち,食品のほか,保存・着色・漂白・調味などの目的で食品に加えられる化学物質および食品に関係のある器具や容器包装などによって経口的に起こる急激な衛生上の障害のうち,伝染病,寄生虫症,栄養障害,異物,外筋などを除いたものをいう.

 食中毒は表1のように原因別に,細菌性食中毒,化学性食中毒および自然毒食中毒に分類することができる.細菌性食中毒には,食品とともに摂取した細菌が体内で増殖し,または食品内で著しく増殖した細菌が直接腸管に作用しておこる感染型と,細菌が食品内で増殖する際に生じた毒索でおこる毒素型がある.この中には,特殊なタイプとして,主にモルガン菌の作り出す腐敗産物ヒスタミンの蓄積した食品を摂取しておこるアレルギー様食中毒も含まれる.

日常検査のすすめかた

血尿 大谷 英樹
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 血尿は,肉眼で明らかに尿中に血液が認められる肉眼的血尿と,顕微鏡的に赤血球の増加がみられる顕微鏡的血尿に分けられる.

 血尿は腎・尿路系のすべての疾患に起こる可能性があり,また全身性疾患の一徴候として,あるいは腎・尿路系に隣接する病変に起因することもあり,血尿の原因はきわめて多彩である(図)

内科医のための小児診療の手引き

腸重積症 嶋田 和正
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 腸重積症はおもに乳児にみられる非常に特色のある疾患である.それまで健康であった小児が一転突然激烈な症状に見舞われ.しかも発病から12時間,おそくも24時間以内に適切な治療を受ければ予後が良いが,それよりも処置が遅れるか,誤った治療を受けるなら.ほとんどが急速に死の転帰をとるというように,その明暗が極めて際立っているのである.したがって本症は小児の診療に当たって,第一線医師が常に念頭におくべき疾患の1つといえよう.

一般医のための救急診療のコツ

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 およそ20年前頃から米国ロスアンゼルス市で晴天にもかかわらず白く霧がかかり,眼に刺激感を覚えることが市民の日常生活となった.この現象は自動車数が増すにつれて次第にひどくなり,10年程以来いわゆるロスアンゼルスの酸化形光化学スモッグとして世界の名物となっている.

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超音波の血流への応用

 心臓・血管内における血流の状況を簡易に知ることができれば,循環器疾患における病態生理の解釈や臨床への応用に期待されるところは大きいであろう.この意味で超音波ドップラー法による血流パターンの観察は,ここ1両年来注目されるようになってきている.

 超音波ドップラー法は元来,微小運動検出を目的として,1955年頃阪大産業科学研究所・里村によって考案されたが,その生体応用の際,血流に基づいてもドップラー唸の得られることが見いだされた.さらにこれは金子・白石・加藤らによって臨床・基礎両面から検討され,ドップラー唸の周波数が各血流の流速に比例し,この周波数から流速を知ることができること,また脳動脈硬化などの際の著明な変化などが明らかとされている.米国でも1960年頃よりRushumer, Franklinらの研究が始まっており,テレメータなども開発されている.超音波の血流への応用は,なるべく非破壊的に血流の状況を観察せんとする方向と,露出血管も含め血流計として使用しようとする2つの方向があるといえる.ここでは前者について述べたい.

グラフ

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 肺癌は組織学的に扁平上皮癌・大細胞未分化癌・腺癌・小細胞未分化癌などに大別されるが,これは単に組織像が異なるというだけでなく進展・転移の仕方,治療に対する反応,予後などとも重大な関係がある.つまり臨床的な面からみても,肺癌は幾つかの異なった悪性腫瘍性の疾患から成っているとすら考えられる.

 胸部X線像の上でもこのような組織型による差をみつけることが望ましい.この場合腫瘤影の性質,肺門寄りか末梢寄りかなども参考となるが,最も重要なポイントは,肋膜・気管支・肺血管などの陰影がどのように変化しているかに注目することである.

胸部単純撮影でわかる心所見・2

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心臓に起因する疲労の発生機転

 心臓は,負荷に対して,みずからの予備力を動員し,生体の要求に応じられるように,

 ①心拍数の増加,

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 皮膚筋炎は‘膠原病の中でも比較的少ない疾患である.本症の発病期は各年齢層に広く分布しているが,70歳以上で発病したものは1970年までに数例を数えるにすぎないようである.筆者らは76歳の高齢男子に発症し,副腎皮質ホルモンが著効して4年後の現在,まったく再発のみられない症例を経験したので報告する.

心電図講座・5

房室ブロック・房室解離 町井 潔
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I.房室ブロック

房室ブロックの分類

 心電図Pの始まりからQRSの始まりまでの時間P-R(またはP-Q)の成人の正常値は0.13秒ないし0.21秒である.P-Rは心房筋の興奮の始まりから,興奮が房室結節の上端に達し(この間0.05秒),さらに房室結節を通過し(0.10秒)てHis束に至り心室の中隔筋の興奮が開始するまでの時間で,房室伝導時間とよばれる.房室結節,His束,あるいは左右両脚に同時に障害があると房室伝導時間は延長したり,連絡が完全に遮断される.この現象を房室ブロックと呼び,心電図上第1度,第2度,第3度に分類される.

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 Behçet病は各科の隣接領域にまたがる全身病として,高い関心を呼びはじめているが,診断はかならずしも容易ではない.またその病因も未だ明らかではない.臨床各科の立場から現時点における診断・治療のすすめ方についてお話合いいただいた.

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症例

61歳の女姓

初診:昭和44年1月23日

死亡:昭和44年3月7日

統計

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 肝硬変の死亡率が,訂正死亡率でみるとほとんど増加していないことは,肝硬変自体は人口の老齢化と密接な関係があると思われます.

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教授のプロフィール

 昭和42年9月,京都大学第3内科より着任された早瀬教授は京大在任中より循環器,神経系統を中心に研究を続けてこられ,広く学会に貢献されてきた.岐阜大学ご着任以来も早速両系統の疾患及び第2内科の伝統的課題である糖・脂質代謝の研究体制を精力的に整えてこられた.教授は単に机の上,理論の上での学者ではなく実験的・体験的学問を非常に重要視される.この1つのあらわれとして,同教授は各実験グループの現場へしばしば顔を出され気さくに討論に加わり,若い医局員の素朴な質問にも納得のいくまで指導される.また時として実験が行きづまりかけたような時には,たとえ日曜日であっても"よっしゃ"と自から実験室へ足を運ばれることもある.このような早瀬教授の学問への情熱は臨床においても研究においても教室員の大きな励みであり,また,これ自体私たちが師と仰ぐべき点の1っであると考える.

 早瀬教授は学問においてエネルギッシュであると同様,私生活においても常にactivityに富んだ活動家である.通勤には自からセドリックのハンドルを握りシーズンにはスキーを楽しみ,多忙な日々に暇をみつけては医局員を率いてスタミナ料理に舌つづみをうち,或いはネオンまたたく柳ケ瀬にグラスを傾けるrこんな時,早瀬教授は青年時代の思い出話,或いは貴重な体験談からはじまり,やがて話題は世界を論じ,さらには大宇宙の原則にまで及ぶ.歓談の中にも医師というものは学問としての医学のみを理解すれば良いのではなく,広く人間を,自然を理解するべきであることを身をもって私たちに教えておられるようである.

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 —循環器・高血圧クリニックを標榜されてどのくらいになりますでしょうか.

 森杉 13,4年になりますかね.ですから昭和32年頃です.最初は内科小児科をやっておりました.

新薬の紹介

抗凝固剤・血栓溶解剤 安永 幸二郎
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 血栓形式に対する治療薬剤はかなり多いが,その有効性が確立され,実用に供せられているものは必ずしも多くない.この目的に用いられる薬剤には,1)抗凝固剤と,2)血栓溶解剤が代表的であるが,3)線溶低下是正剤や,4)血小板機能抑制剤なども含まれる.今回抗凝固剤を広義に解釈して,血栓に対する治療薬の現況にふれたいと思う.

各科のトピックス 産婦人科から

産科医療の危機と転回点 品川 信良
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 産婦人科領域での最大の"今日的"課題は,いわゆる郡部や地方での産婦人科的医療,なかんずく産科関係の医療を,このさきどうして遂行していったらよいのか,ということである.

 戦後,わが国の産科医療には,昭和24-25年ごろをピークにして,昭和20年代に大きな変革が1度もたらされた.すなわち,国内の至るところに群小病院が設立され,それらには争うように産婦人科が設置された.幸い,それらに見合うだけの数の若手医師が産婦人科医を志望してくれたし,他科から産婦人科に転向してくれる方もあったのでよかった.おかげで,産科関係の医療は,このころから急速に向上した.

今月の表紙

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 19世紀の半ばにドイツ医学が世界に冠たる隆盛を示すが,その基礎をすえた功労者としてヨハンネス・ミユラー Johannes Müller(1801-1858)とシェンラインJohann Lukas Schönlein(1793-1864)の両人があげられる.ともにベルリン大学の教授であり,多数のすぐれた弟子たちを育てあげた.前者は生理学,解剖学において傑出した大学者として有名だが,後者は著述がごく少ないためか,わりあい知られていない.

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学問の楽天主楽

フユーチュアトピアの夢

 宇宙ロケットとコンピューターに象徴されるような未来学が流行している.好むと好まざるとにかかわりなく,われわれはこのようなフユーチュアトピアの夢の流れの中に自己を発見するだろう。そこにあるのは医学もふくめて学問の進歩という楽天主義である.悪夢のような第2次大戦の非人間性と暴虐と狂気さえも,勝利の栄光物語のかなたに押しのけられ,もはやわれわれは真に戦慄をもって二十数年前を思い出すことさえできなくなってしまった.われわれの眼は前の方へ,遠くへ,フユーチュアトピアの方へむけられ,そうしなければ現代を生きることができなくなっている.

 Alvin Toffler著「Future Shock」(1970)などもまたこのような楽天主義を根本にもった未来学の書である一たとえそれが未来のショックを警告していようとも!

診療相談室

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質問 トレーニング不十分でプールに入って泳いだとき,または山登りなど比較的激しい運動をしたときに,しばしばM. gastrocunemiusのspasm(俗にこむらがえり,またはこぶらがえりという)を起こすことがありますが,このspasmの病態生理,並びに応急の治療法をお教えいただきたい. (兵庫県・I生)

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質問 咽頭側索炎を内科医として診た場合の考え方についてお教えください.その場合,耳鼻科に転医ということも考慮に入れてください.(高岡市・W生)

病理夜話

乳房(その1) 金子 仁
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 外科から出る材料で多いものの代表に乳房腫瘍がある.

 通常,同部にシコリがある患者は手術室でその一部または全部を摘出し,病理検査室に送られる.病理では大体10分以内で組織学的に診断し,外科医に報告せねばならぬ.癌の場合は乳房を切断し,同時に腋窩部リンパ節をなるべく多く摘出せねばならぬからである.一方癌でない場合はそのシコリのみ摘出して患者を帰す.外科医は病理医の診断がつくまで待っているのである.従って病理医の責任は極めて重大で,もし病理医が間違えれば,癌でない乳房の全摘を行なってしまったり,癌の患者をシコリのみ摘出して帰し,後になって転移が起こりアタラ生命を失う場合も起こってくるのである.

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Current Abstracts 浦田 卓
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抗痘瘡経口ワクチン成功か

 ドイツの科学者たちの主張によると,クスリの粉末を入れたカプセルの形の経口抗痘瘡ワクチンを開発したとのことである.ババリア州立ワクチン研究所長・ヘルムート・シックル教授によると,3年間テストしてみたという.しかし,詳細な点についての情報は,まだ手に入っていない.

(GP(英),May 1,1970)

基本情報

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medicina
8巻8号 (1971年7月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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