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公害防止における医師の役割
大橋 邦和
1
1名大公衆衛生学
pp.1154-1155
発行日 1971年7月10日
Published Date 1971/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203749
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人間の健康を破壊する企業は断じて許されないと主張する医師は,1960年代わが国においてごく少数ではあったが存在した.彼らの果敢な闘いの結果,徐々にその主張が世間に広まるにつれ,企業の側から反論が起こって来た.「経済活動を停止して原始の世界に帰れというのか,電気,水道を停めてもいいのか」という主張である.
この主張には多くの医師も惑わされた.多くの開業医は,「医師は人間の健康を守るたあに存在しており,公害問題の解決の社会的責任は重く,当然その先頭にたつべきである」という考え方に賛成されたにもかかわらず,現実のなかで公害問題の当事者の立場に立たされた場合,企業と行政の束になった前述の主張のまえには,具体的な解決策を提示し得ず,もろくも崩れてしまった医師が数多くある.この理想と現実のくい違いをどのように解決すべきであろうか.
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