Editorial
腸管感染症の移り変わり
阿部 実
1
1元都立荏原病院
pp.1169
発行日 1971年7月10日
Published Date 1971/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203752
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わが国常在の代表的伝染病として,明治以来長い歴史をもつ腸チフスと赤痢が近年にわかに激減したことは,とりもなおさず腸管感染症の分野に大きい様相の変動をもたらしたことを意味する.
腸チフスの減少傾向は,昭和25年のクロラムフェニコール登場以前に兆しをみせ,長く50を越し続けた人口10万対罹患率は終戦翌年を最後として終わって,昭和22年以降は減少の一途をたどり,最近はそれが0.4に低下して遭遇の稀な疾患と化した.かくて現在はこれに遭遇することがあれば,とかくロイマと誤診されることの多い時代である.発生減少に伴っていわれることの多い腸チフス病像の変貌は,無計画的な治療が行なわれない限りは現在といえども当たらない表現である.
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