臨床家の遺伝学入門・7
常染色体性遺伝
大倉 興司
1
1医歯大人類遺伝学
pp.1210-1213
発行日 1971年7月10日
Published Date 1971/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203762
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優性遺伝
いまさらいうまでもないことだが,優性とか劣性ということは,知能指数が高いとか,音楽的才能があるとかいったように,表現された形質がいささか他の人より優れているとか,反対に,さまざまな異常や疾患があるとか,学業の成績が劣っているとかいった価値をさすものでは決してない.あくまでも,遺伝子のはたらきを示す言葉なのである.
遺伝子型と表現型の関係,すなわち優劣関係についての基本的な問題はすでに述べたとおりである(本誌Vol. 8, No. 3参照).しかしながら,メンデルの法則で教えられるような,すなわち教科書に書かれているような規則正しい分離segregationを示す場合だけでなく,実際に多くの家系調査をしてみると,しばしばこの法則では理解できないような例,いいかえれば不規則な場合に遭遇するのである.このような不規則性も,多くの詳細な観察と,実験的ならびに理論的な分析の結果,それらがメンデルの法則を否定するものでもなければ,特に新しい法則というのでもなく,メンデルの法則の中で十分理解できる現象であることが明らかにされている.この不規則性について述べることにするが,まず基礎となる問題を整理しておくことにする.
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