medicina 36巻1号 (1999年1月)

今月の主題 抗菌薬の適切な使い方

抗菌薬を適切に使うために知っておくべきポイント

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抗菌薬治療の重要な目標

 抗菌薬治療の重要な目標は,①最も適切な抗菌薬を選択して,最適な量を,最適の期間投与して,最も少ない副反応で,感染症を治癒させる(または予防する)ことである.また,②薬剤耐性菌をできる限り生じさせないようにすることである.

 各種薬剤耐性菌が問題になっている今日,②にももっと配慮すべきである.特に広域スペクトラムの第3,第4世代セファロスポリン,カルバペネムなどの長期使用により,常在菌叢を減らし,薬剤耐性菌の出現と定着,さらに二次感染のリスクを高める.したがって,これらの抗菌薬の使用は適応症に限って使用し,可能であれば短期間の使用を行い,より狭域スペクトラムの他剤が適応となれば変更する(特に院外感染症において,カルバペネムなどが適応となる例は少ない).また,MRSAが検出されても,感染を起こしていないcolonizationの症例に不要なバンコマイシンを投与することも控えるべきである.

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●抗菌薬を必要とする発熱は細菌感染によるものである.

●細菌感染の有無を判別する最も優れた手段は,詳細な病歴聴取と緻密な身体所見の把握である.

●顆粒球減少症患者の発熱といった敗血症的な全身状態や,急性細菌性髄膜炎による発熱を疑った場合は,躊躇なく経験的治療(empiric therapy)として抗菌薬投与を行う.

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●グラム染色では,その染色性(グラム陽性・陰性)および形態(球菌・桿菌など)をみることにより起因菌が推定できる.

●白血球に貧食されている細菌があれば,それが起因菌である可能性が高い.

●グラム染色で有意に見えなければ,培養結果でその細菌が陽性でも,それは起因菌ではなく定着菌や汚染菌であることが多い.

●遠心しない尿のスメアを強拡大(対物×100)で見て細菌が見えた場合は,尿路感染として有意な定量培養の105に相当する.

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●血液培養の採取が特に必要と考えられるのは,悪寒戦慄および悪寒を訴える者,入院を必要とする発熱患者,非経口的に抗菌薬を使用する者,入院中の発熱患者などである.

●血培採取に際し最も大切なことは,抗菌薬投与を始める前に採取することである.投与後では検出率が激減してしまう.また,2セットの採取を原則とする.

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 各種の感染症の患者を治療する際には,まずその感染症の起因菌を推定することが必要である.そしてその推定される起因菌(群)をカバーするような適切な抗菌薬を選択して,empiric therapyを開始する.特に重症感染症では,起因菌に抗菌力をもたない抗菌薬による初期治療が行われると,患者の予後に重大な不良な影響をもたらす.一方,過剰に広域のスペクトラムの抗菌薬(カルバペネム,第3,第4世代セファロスポリンなど)を頻回に用いると,薬剤耐性菌の出現と二次感染のリスクを高める.したがって各種感染症の起因菌について,一般的にはどのような起因菌の頻度が高く,それらの菌に対してどのような抗菌薬が有効であるか,ある程度の知識をもつことが必要である.そして,その患者についてはどの菌が起因菌として最も考えられるか検討したうえで,各症例ごとに適切な抗菌薬を初期治療薬として選択することが大切である.

 表1に,各種の主要感染症の起因菌(群)と,empiric therapyとして選択すべき抗菌薬を示す.なお,ここに示すガイドラインは聖路加国際病院で用いているものであるが,各施設によって各種感染症の起因菌の分離状況と薬剤感受性および採用薬は多少異なっており,すべての施設で適用されるものではない.基本的な考え方を参考にしていただき,各施設で各症例に応じた適切な初期治療を行うために役立てていただければ幸いである.

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 各種感染症の起因菌が判明した場合,その菌による感染に対して的確な抗菌薬を投与する必要がある.初期治療(empiric therapy)として投与されていた抗菌薬をより適切なもの,よりターゲットを絞った抗菌薬に変更すべき場合もある.各症例に応じた選択が必要である.

 表1に,各種の主要な起因菌に対して選択すべき抗菌薬を示す.

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●単なる発熱では患者に説明して,薬剤を使用せずに熱型をつけるように指導する.

●高齢者の市中感染肺炎の原因菌は,頻度の高い順に肺炎球菌,インフルエンザ球菌,グラム陰性桿菌である.

●高齢者の市中肺炎で入院を必要とする症例には,アンピシリン-スルバクタム(ユナシン®)を投与する.さらに重症例には,これにマクロライド系薬を加える.

●IVH挿入例の発熱では必ずカテーテル感染を考え,IVHの抜去とともにカテーテルの培養と血液培養を行う.また,薬剤熱を看過してはならない.

●抗菌薬投与の効果がみられない場合は,抗菌薬の変更よりもむしろ一時的に中止して,発熱の原因検索をやり直す.

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●抗菌薬の選択に際しては,起こりうる副作用を十分に理解したうえで使用していかなければならない.

●ペニシリン系で重度のアレルギーを起こしたことのある患者には,ペニシリン系はもちろんのこと,セファロスポリン系,カルバペネム系は原則として使用すべきでない.

●妊婦・授乳婦への投与が安全と考えられている抗菌薬はペニシリン系とセファロスポリン系で,これらが第一選択として使用される.

各種抗菌薬の特徴と使い方

ペニシリン系 松村 理司
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●ペニシリンGのような非常に狭域の抗菌薬を自家薬籠中のものにすることこそ,感染症治療の基本にほかならない.

●すべてのペニシリン系薬は,細菌の細胞壁合成を阻害するため,殺菌作用があり,細菌に対する選択毒性が強い.

●ペニシリンG系は,ペニシリナーゼによって分解されやすいという弱点はあるが,肺炎球菌や連鎖球菌や梅毒トレポネーマに対しては,今でも最も優れた抗菌力をもっている.

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●セファロスポリン系抗菌薬は多数存在するが,グラム陽性菌と陰性菌のどちらをよくカバーするか,嫌気性菌に対する抗菌力はどの程度か,Pseudomonas aeruginosaに有効か,などを中心に理解すると治療薬の選択に役立つ.

●第3・第4世代セファロスポリンの投与が必要な市中感染症はそう多くない.広域スペクトルを有し抗菌力の強い抗菌薬の使用は慎重にすべきである.

 ●セファロスポリンは,腸球菌Enterococcus spp.,MRSA(methicillin-resistant S. aureus)による感染症の治療には用いられない.

モノバクタム系 柴 孝也
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●好気性グラム陰性菌にのみ抗菌力を有する狭域の抗菌薬である.

●グラム陽性球菌による菌交代に注意.

●代謝されることがなく,腎排泄型である.

カルバペネム系 大西 健児
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●カルバペネム系薬剤は強い抗菌活性と広い抗菌域を有している.

●カルバペネム系薬剤に耐性を示す菌が増加傾向にある.

●軽症の感染症にはカルバペネム系薬剤を使用しない.

アミノグリコシド系 戸塚 恭一
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●アミノグリコシドは,グラム陽性菌では黄色ブドウ球菌,陰性菌では緑膿菌,および大腸菌,肺炎桿菌などの腸内細菌科に幅広く抗菌力を示すが,嫌気性菌に対する抗菌力はない.

●殺菌作用が強く,他剤に比しグラム陽性・陰性菌のいずれに対しても優れたpostantibiotic effectを示す.このため投与間隔の延長が可能である.

●副作用では特に腎毒性に注意を要する.投与回数を減らすことで軽減が可能である.

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●適切なempiric therapyを行うために,抗菌力や体内動態・薬力学などから本系薬を使い分ける.

●抗菌スペクトルは,一般細菌から非定型病原微生物(マイコプラズマ属,クラミジア属レジオネラ菌属)に及ぶ.

●MRSA,緑膿菌,肺炎球菌,Campylobacterなどはニューキノロン薬に耐性を獲得しやすい.

●中枢神経毒性,光線過敏症,横紋筋融解症,糖代謝異常などの副作用に注意を要する.

●NSAIDs,テオフィリン,インスリンなどとの薬物相互作用で副作用が増強されることを念頭に置く.

マクロライド系 二木 芳人
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●新しい誘導体(ニューマクロライド)は,吸収性が良好で高い血中濃度が得られる.

●グラム陽性菌では耐性菌も少なくないので,感受性を確認のうえ使用する.

●マイコプラズマ,レジオネラ属などの肺炎では,現在でも最も有効性が期待できる.

●安全性も高いが,薬物相互作用や注射薬では急速な注入による不整脈などに注意する.

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●グラム陽性および陰性菌に対し幅広く抗菌スペクトルを有している.

●特にレジオネラ菌を含むブドウ糖非発酵菌やマイコプラズマ,クラミジア,リケッチアになどに優れた抗菌力を示す.

●半減期が長く1日1回投与が可能であり,体液や組織への移行性に優れている.

●近年,抗病原因子作用も注目されている.

バンコマイシン 青木 泰子
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●MRSAをはじめとするβ-ラクタム耐性グラム陽性菌感染症に用いる.

●副作用として腎障害に注意し,腎機能に応じた量を血中濃度を測定しながら投与する.

●厳密な適応と,適切な使用法を守り,耐性菌の出現・増加を防ぐ.

クリンダマイシン 後藤 元
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●クリンダマイシン(CLDM)の特徴は抗菌スペクトルにあり,グラム陽性球菌と嫌気性菌をカバーする一方,グラム陰性桿菌に対する抗菌力は乏しい.

●嫌気性菌に対する活性にはみるべきものがあり,ペプトストレプトコッカス,バクテロイデスなど主要な嫌気性菌に対して,いずれもすぐれた抗菌力を示す.

●CLDMについては,嚥下性肺炎,肺膿瘍,膿胸など嫌気性菌の関与が大きい疾患が最も良い適応となる.

ST合剤 菅野 治重
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●ST合剤は組織移行性にすぐれた抗菌薬である.

●ST合剤には副作用が多い.

●ST合剤は二次的に用いるべき抗菌薬である.

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●カンジダ属の一部の菌種(Candida glabrata,Candida kruseiなど)はもともとフルコナゾールに対し低感受性の菌種であり,原因真菌の同定ののち,抗真菌薬の変更が必要な場合がある.

●イトラコナゾールは他剤との併用時,特にテルフェナジン(トリルダン®)などの抗ヒスタミン剤との併用時には,QT延長やtorsades de pointesといった重篤な心室性不整脈を誘発することがあるので併用は禁忌である.また,H2遮断薬との併用により吸収阻害による血中濃度の低下が認められることがある.

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●アムホテリシンBは,アゾール系抗真菌薬が無効なアスペルギルス症では第一選択薬である.

●多くの副作用を有するため,投与に際しては十分な注意が必要となる.

●副作用のなかで最も注意すべきものは腎機能障害であり,さらに腎尿細管障害による低K血症を認める.

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●アシクロビルはヘルペスウイルス(HSV,VZV)のチミジンキナーゼ(TK)によって特異的にリン酸化される.

●ガンシクロビルはCMV感染細胞内でウイルスプロテインキナーゼによってリン酸化される.

●ガンシクロビルの最もよくみられる副作用は骨髄抑制である.

抗HIV薬 安岡 彰 , 岡 慎一
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●HIVの治療薬には核酸系逆転写酵素阻害剤,非核酸系逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤の3系統がある.

●早期に強力な治療を開始することを原則とするが,個々の症例の状況を十分加味する必要がある.

●十分な効果とウイルスの耐性化を防止するために3剤の併用が原則である.

●薬剤の副作用は多彩で高頻度にみられるため,十分な経過観察が必要である.

各種の主要感染症と抗菌薬の使い方

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●敗血症では血液中に起因菌を証明するか,菌陰性でも細菌が産生する毒素を血中に証明する必要がある.

●TNFαは発熱,頻脈,過呼吸,白血球増加,筋肉痛および傾眠などの臨床症状を惹起する.

●サイトカインネットワークが,高熱あるいは急激な体温低下,血圧の低下,頻脈,呼吸促進,意識障害,乏尿および血液凝固異常などとなって認められる.

●Empiric therapyとしてはカルバペネム系抗生物質を投与するが,可能な限り起因菌別に選択するのが望ましい.

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●急性細菌性扁桃腺炎の起因菌としてはA群β溶連菌が最多であり,治療の基本はペニシリン系抗生物質である.

●扁桃周囲膿瘍の起因菌は嫌気性を含めた口腔内常在菌であり,内科的治療に加えて切開排膿などの外科的治療を必要とすることが多い.

●伝染性単核球症は時として急性細菌性扁桃腺炎との鑑別が困難であるが,患者の状態によっては急性細菌性扁桃腺炎としてempiric therapyを開始することも必要である.

院外肺炎 武田 裕子 , 大塚 盛男
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●肺炎を疑ったら,抗菌薬処方の前に喀痰や胸水の塗抹・培養検査を必ず提出する.

●塗抹で明瞭であっても培養で陰性となる菌もあり,グラム染色は必ず実施すべきである.

●入院が必要な肺炎患者には,血液培養も2セット実施する.

●院外肺炎の起因菌は患者の背景・病態によって異なる.患者の臨床像と検査データから起因菌を予測し,抗菌薬を選択する必要がある.

院内肺炎 稲松 孝思
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●院内発症肺炎(院内肺炎)は,各種疾患の入院加療経過中に,宿主条件の悪化(原疾患による場合と医原性のものとがある)とともに発症してくる肺炎であり,①基礎疾患が複雑なこと,②院内での交叉感染による各種耐性菌による肺炎が多いこと,③極度のcompromised hostでは,弱毒菌による日和見感染が多いことなどが特徴的である.

●誤嚥性肺炎例では,好気培養所見に加えて嫌気性菌が混合感染を起こしていることを念頭に置いて薬剤を選択する.

●喀痰からMRSAが検出される例のなかで,それが起炎菌になっているものは,多く見積もっても10%未満である.

尿路感染症 星 哲哉
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●尿路感染症は非複雑性と複雑性に分類される.

●非複雑性の起因菌としては腸内細菌(グラム陰性桿菌)が多く,抗生物質も比較的狭域のものが選択される.

●複雑性の起因菌には腸内細菌のほかに緑膿菌,腸球菌,MRSAその他の耐性菌の頻度が増してくるため,抗生剤も広域のものが選択されることが多い.

●尿のグラム染色は治療薬の選択のうえでも今なお重要である.

細菌性髄膜炎 喜舎場 朝和
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●細菌性髄膜炎は,medical emergencyとして迅速に診断・治療しなければならない.

●起炎菌種は年齢,基礎疾患,院外・院内感染,脳外科術後などの条件により異なる.

●腰椎穿刺,髄液所見,とりわけその沈渣のグラム染色所見に注目する.

●これらの情報に基づき,速やかに髄液移行性の良好な抗菌薬のなかから選択し,副作用に気をつけながら,“最大”用量を投与する.

●1〜3日のうちに,臨床経過,髄液・血液培養の結果により,起炎菌の同定,薬剤感受性試験に従って,できるだけ髄液移行性の良好な狭域スペクトル抗菌薬に変更する.

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●基礎に心内膜疾患があり敗血症が疑われたときは,必ず本症の発症に注意する.

●活動期であっても抗菌薬無効例では外科適応を考慮する.

●アミノグリコシド薬(ゲンタマイシンなど)とバンコマイシンを投与するときは,腎障害,聴覚器障害に注意し治療薬物モニタリング(TDM)を行う.

細菌性腸炎 相楽 裕子
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●起因菌のうち,重症度と合併症の面からサルモネラ,腸管出血性大腸菌(EHEC),ボツリヌス菌が要注意である.

●起因菌が不明時のempiric therapyでは,患者背景と症状の重症度から抗菌薬の適応を判断する.

●Empiric therapyの選択薬はニューキノロン薬かホスホマイシンである.

抗菌薬投与時の腸炎 申 貞雄
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●抗菌薬投与時の下痢または腸炎は,起炎菌不明の下痢とClostridium difficile(C. difficile)感染に大別される.

●起炎菌不明の下痢が大半であり,C. difficile感染は全体の15〜20%に過ぎない.

●C. difficile感染の診断にラテックス凝集反応は役立たない.

●C. difficile感染治療の第一選択はメトロニダゾールである.

胆道系感染症 長主 直子 , 上野 文昭
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●胆道感染症の原因菌のほとんどが腸内細菌であり,最近では2種以上の菌の混合感染も多いことが知られている.

●抗菌薬を用いる目的は,胆道感染症からの敗血症,多臓器不全を予防することである.

●実際の臨床では,起因菌が確認されることはむしろ稀である.したがって,empiric therapyに終始することが決して少なくない.

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●起因菌は,続発性腹膜炎の大部分は混合感染であり,下部消化管由来の場合にはグラム陰性菌や嫌気性菌が多い.

●SBPでは,続発性腹膜炎と異なりE.coliやKlebsiellaによる単独菌感染のことが多いが,グラム陽性菌であるStreptococcusが30%と少なくないことに注意する.

●続発性腹膜炎の治療としては,嫌気性菌を含む混合感染を想定し,アンピシリン,アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン,トブラマイシン)に加え,クリンダマイシンまたはメトロニダゾールの三者併用療法が一般的である.

●SBPでは,第3世代セフェム(セフォタキシムなど)の経静脈投与,CAPDの腹膜炎にはセファゾリンとアミノグリコシド系抗菌薬の併用投与が一般的である.

好中球減少症の発熱 菊池 隆秀
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●近年の化学療法の進歩に伴い,日常診療でも好中球減少症の発熱を目にする機会が増えている.従来,グラム陰性菌感染が死亡の原因菌の多くを占めることが示されていたが,グラム陽性菌感染の頻度が増加している.

●これらをもとに提唱した新たなガイドラインおよび管理のポイントを述べる.

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●局所病変として,壊死性・化膿性筋膜炎および筋炎(ガス壊疽)は致命的疾患である.

●全身疾患として,劇症型A群レンサ球菌感染症は突発的な敗血症性ショック病態であり,急速に多臓器不全に陥る.救命には初発時のショックへの対応が重要.

結核 河原 伸
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●結核の治療法は,治療の既往の有無により大きく異なる.

●初回治療における標準治療法としては3つの方法が定められており,喀痰塗抹陽性例には治療法1)または2)(本文参照),その他の症例には病状により1)〜3)(本文参照)から適切なものを選択する.

梅毒 喜舎場 朝和
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●第1期,第2期梅毒(早期梅毒)の症状は自然軽快し潜伏梅毒に移行するものなので,治療後症状が消退したからといって治癒とみなすわけにはいかない.

●早期梅毒,潜伏梅毒の治療は5〜30年後に第3期,とりわけ神経梅毒に移行しないことを保証するものでありたい.

●神経梅毒の治療は適当な抗菌薬(ペニシリン,アンピシリンなど)を,髄液移行性を配慮して比較的大量に,梅毒菌の長い世代時間を配慮して比較的長期に投与する.

●このような条件を満たす治療法について,特に本邦ではコンセンサスは得られていないように思われる.

●治癒判定には,治療後カルジオリピン法(ガラス板法など)の定量試験の長期追跡を要する.

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●マラリア診断の基本は,ギムザ染色した血液塗抹標本の顕微鏡検査である.

●わが国では,主要なマラリア予防薬は認可されておらず,医師の予防投薬は現行の医師法により法的根拠がない.

●熱帯熱マラリアの治療には種々の選択があり,適切な治療を行わないと致死的である.

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●術中・術後の抗菌薬の予防的投与では,汚染される時点で十分な抗菌薬の組織内濃度を維持することが大切であり,麻酔導入直後より投与を行う.

●投与方法としては,予防的抗菌薬の投与期間は3〜4日として,その時点で感染徴候があれば治療薬に切り換えるという考え方が主流となってきた.

●消化器術後感染症の分離菌は一次感染症と比較し,大腸菌,肺炎桿菌,嫌気性菌は低率で,腸球菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,エンテロバクターなどが高率となる.

最近問題になっている細菌感染症

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●ペニシリン耐性肺炎球菌は,肺炎球菌のペニシリン結合蛋白が変異することにより,β-ラクタム系薬に対する親和性が低下して耐性化した菌で,本邦における分離頻度は約40%である.

●その病原性はペニシリン感性菌と変わらないため,MRSAとは異なり市中感染症として問題になる.特に中耳炎,化膿性髄膜炎の場合には難治化しやすい.

●β-ラクタム系のカルバペネム系薬とペネム系薬,およびバンコマイシンが有効.

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●VRSAの耐性メカニズムは,細胞壁合成の過剰亢進と細胞壁中でのバンコマイシンのトラップに起因する.

●Hetero耐性菌とは,少数の耐性菌を含む細胞集団である.これに抗菌薬を投与し続ければ,患者の体内で高度耐性菌を作ってしまう可能性がある.

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●バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は患者と患者の直接接触,一時的に汚染された人の手または汚染された環境や医療器具の表面から間接的に伝播する.

●対策としては,VRE陽性患者を個室に移すか,あるいは同室に集める.

理解のための35題

カラーグラフ 内科医が知っておきたい眼所見・4

白内障 谷口 重雄
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 近年の高齢者人口の増加に伴い,眼科外来を訪れる白内障患者は増加しつつあり,眼科診療のなかでも主要な部分を占めている.白内障は水晶体が混濁する病気であるが,混濁を吸収させることができるような点眼薬,あるいは内服薬がないため,根本的な治療は外科的手術に頼ることになる.

 最近の白内障手術は,点眼麻酔により手術時間も短時間で行われ患者の負担の少ないものとなっている.本稿では,白内障の症状,手術時期,現在行われている手術方法について述べてみたい.

連載

目でみるトレーニング

図解・病態のメカニズム 胆道疾患・3

胆石のマネジメント 田妻 進
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 胆石症の病態は結石の存在部位や結石の種類によって異なり,それに応じて臨床症状や選択すべき治療法も異なるため,画像による存在診断や質的診断,さらには合併症などの的確な診断がその予後を左右する重要な鍵となる.本稿では,胆石症の診断手順および治療方針について概説し,胆石のマネジメントに際してのコンセプトについても触れてみたい.

症例によるリハ医療—内科医のために・8

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 老年者のリハビリテーションにおいては原疾患や合併症の存在といった様々な要因のため,スムーズにリハビリテーションが進まず,十分な成果が得られない症例を経験することも多い.そこで今回は,当科で経験した多発性脳梗塞症例のリハビリテーションを通して,老年者におけるリハビリテーションの進展を阻害する要因・問題点について検討してみたい.

続・アメリカの医学教育 スタンフォード大学病院レジデント生活・10

骨髄移植科 赤津 晴子
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個性あぶれる病室

 3年間のスタンフォード内科レジデントのローテーションには,毎年6カ月間ほど行う一般内科病棟ローテーションのほかに,年に1カ月ないし2カ月ずつ行う心臓内科病棟,集中治療室のローテーション,そして3年間の間に通常1カ月ずつ行う血液内科,癌科,骨髄移植科のローテーションがある.私は3年次に1カ月間骨髄移植科を担当した.このローテーションでは,骨髄移植科病棟で患者を受け持つと同時に,骨髄移植外来でも患者を診る.骨髄移植科のチームは内科レジデント1人,血液内科フェロー1人,骨髄移植内科フェロー2人,そして骨髄移植内科アテンディングによって構成される.当直はレジデントとフェローが交代で4日に1回受け持ち,当直の晩は1人で骨髄移植内科病棟中を担当することになる.もちろん何かあればアテンディングと電話連絡がつき,また緊急であれば真夜中でもアテンディングは病院に駆けつけてくれる.

 平均入院日数が1週間以内という一般内科に対して,骨髄移植科は入院期間が数週間に及ぶ長期入院病棟である.それを反映してか,個室である各病室は,その住人の個性豊かな生活空間となる.

医道そぞろ歩き—医学史の視点から・45

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 スシュルタは釈迦が生きたころの医者で,インドの叙事詩の一つ『マハーバーラタ』にもその名が出てくる.

 古代インドの代表的な医学史料である『スシュルタ・サムヒター』の「サムヒター」とは,サンスクリット語で「集成」を意味する.この『スシュルタ集成』を編集したナーガールジュナは,前4世紀後半の人である.したがって,この集成のもとになる『スシュルタ古本』(ヴリドダ・スシュルタ)が成立したのは恐らく前6世紀以前ではないかと推測される.古代ギリシヤでヒポクラテス全集が集成されたのと同様に,何百年もかけた編集過程でアーユルヴェーダ医学のさまざまな医学史料が集成されてできたものであろうか.

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 樋野 1997年に京都で開催された第56回日本癌学会総会のパネルディスカッション「癌研究におけるScienceとPactice」で,北川先生は「発がんの動物モデルとヒト発がん」というタイトルでお話しされました.それは動物モデルによるヒト発がん研究や治療研究への貢献は,広い視野から理解し,評価する必要があるという内容でした.近年,「ヒトと動物はやはり異なるから動物モデルはあまり役立たないのではないか」とか,「ヒトでの遺伝子解析が進んでいるのに,今さら動物モデルは必要なのか」といった意見も散見します.そこで本日は,「ヒト発がん研究における動物モデルの意義」をじっくり話し合ってみたいと思います.

基本情報

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medicina
36巻1号 (1999年1月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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