臨床皮膚科 70巻12号 (2016年11月)

連載 Clinical Exercise・111

Q考えられる疾患は何か? 杉浦 丹
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症例

患 者:29歳,女性

主 訴:両下腿の皮疹

既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の4か月前に発熱,両側肺門リンパ節腫脹,ぶどう膜炎が出現,サルコイドーシスと診断され経過観察中.1月前より両下腿に淡紅色斑(図1)が出現した.

現症および経過:両下腿に圧痛のない皮下浸潤を触れる爪甲大の淡紅色斑を認めた.初診の数週後,嚥下困難と第Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ脳神経障害が出現,髄液細胞数増加により神経サルコイドーシスと診断し,プレドニゾロン(PSL)40mg/日開始し,神経症状は改善,両下腿の皮疹は消退した.初診の3月後PSL減量中に38℃台の発熱とともに,下腿に角化性紅斑が出現した.下腿前面に爪甲大〜鶏卵大の淡褐色,葉状の鱗屑を伴った角化性紅斑が敷石状に集簇し局面を形成,魚鱗癬様外観(図2)を呈した.

マイオピニオン

光老化啓発の重要性 川島 眞
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 1. 啓発活動の背景としてのサンスクリーン剤の新規効能取得の失敗

 現在私が理事長を務めている日本香粧品学会は,化粧品研究開発者,皮膚科医,薬学者,そして行政OBから成る学会で,化粧品の安全性と機能の向上を目指し,さらには化粧を通して国民のQOLを改善することにより社会に貢献することを目的として活動している.前理事長の原田昭太郎先生(元日本皮膚科学会理事長)の発案で2006年に「化粧品機能評価法ガイドライン」を策定し,しみ,しわ,および化粧品の安全性に関する試験法に関して,業界内での統一ルールを構築した.その際に,「SPF15,PA+のサンスクリーン剤を日常的に使用することにより,光老化を予防できる」ことを過去の文献検討から導き出し1),新たな効能として承認を受けるべく,業界団体である日本化粧品工業連合会とも連動して行政に働きかけた.通例ではそのまま承認につながる,パブリックコメントを求める段階まで行ったものの最後の最後で非承認となった.その理由に,「光老化の言葉の認知度が低く,生理的老化と誤認される」,「SPF,PAの社会の理解が十分ではない」などが挙げられた.

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要約 41歳,男性.初診の7年前に転倒し左示指の挫創を縫合されたが,局所の感染を繰り返し,次第に小結節および膿疱が出現し増数した.数か所の医療機関を受診し,切開排膿や皮膚生検を施行され,加療されたが軽快せず,2008年1月当科を紹介受診した.左示指外側を中心に小膿疱・びらん・痂皮を伴う境界不明瞭な紅斑と皮下硬結を認めた.初回生検時の細菌・抗酸菌・真菌培養では皮膚常在菌以外検出されず,再生検した.病理組織像では真皮内で好中球からなる膿瘍が多発し,膿瘍内部で好酸性に染色される微細な顆粒を認めた.再度培養を行い,16S rRNA遺伝子の解析に基づき原因菌をNocardia brasiliensisと同定した.他臓器に病変を認めず,菌腫型の原発性皮膚ノカルジア症と診断し,塩酸ミノサイクリン内服の後ST合剤内服に変更し治癒した.菌腫型のPCNは1990〜2015年本邦報告例に自験例を含め13例あり,原因菌種はN. brasiliensisが過半数を占め,4例で1年以内に再発がみられた.

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要約 42歳,女性.当科初診の3年前,眼周囲に皮疹が出現した.その後,頰部や頸部に瘙痒性皮疹が拡大.近医にて化粧品による接触皮膚炎が疑われ,ステロイド外用剤で加療されたが難治のため当科へ紹介された.初診時,顔面および頸部に紅斑を認めた.貼布試験では,ニッケル・金・フラジオマイシンに陽性で,化粧品はすべて陰性であった.再度問診で,皮疹が出現した頃から痩身効果を謳う金属ローラーを使用していたことが判明した.ニッケルの定性法であるジメチルグリオキシム検査で,ローラー部に陽性反応が得られた.これより,金属ローラーに含まれたニッケルによる接触皮膚炎と診断し,金属ローラーの使用を中止したところ皮疹は消退した.難治性皮膚炎で接触皮膚炎を疑った場合,詳細な問診と貼布試験を行い原因検索に努めることが重要である.

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要約 43歳,女性.初診の2週間前から顔面,両前腕に境界明瞭な浮腫性紅斑,水疱が出現した.紅斑が露光部に一致していたため光線過敏症と診断し皮膚生検を施行したところ,真皮全層の好酸球浸潤と,flame figureが多発していた.最少紅斑量(minimal erythema dose:MED)測定にて,UVBが9mJ/cm2と低値を示した.光線過敏の原因として,大腸癌に対して投与された,光線過敏の副作用報告のあるカペシタビンやエソメプラゾールによるpersistent light reactionを疑った.診断後は遮光のみで再発を認めなかったが,初診より8か月後のMEDでも低下は持続,1年後の8月に,遮光を怠った両足背の露出部に一致して発赤・腫脹が出現し,光線過敏が持続していると考えられた.Wells症候群は稀に日光曝露が原因となることが報告されているが,自験例は表皮の変化が強くみられたWells症候群と考えることも可能であり,同様症例の集積を期待して報告する.

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要約 68歳,女性.2011年より気管支喘息にてステロイド吸入加療中であった.2012年7月に両下肢に紅斑が出現し,抗生剤内服,ステロイド外用の加療を行うが治療に反応せず,精査加療目的にて当科を受診した.診察時は両下肢に環状紅斑または馬蹄状の紅斑が多発しており,下腿には紫斑や大水疱も混在していた.血液検査でCRP,MPO-ANCA高値,尿検査にて蛋白・潜血が陽性であった.皮膚生検にて血管周囲,皮下脂肪織にリンパ球,組織球,好酸球の浸潤を認めた.血管炎や肉芽腫の所見はみられなかった.以上より好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)と診断し全身検索を行った.腎生検では急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis:RPGN)と診断された.さらに喉頭ファイバースコープにて副鼻腔炎,胸部X線にて肺の血管病変を示唆された.ステロイドパルス療法後PSL 35mg内服にて皮疹,尿所見ともに改善した.PRGNを合併したEGPAの本邦での報告例は17例と少ない.EGPAで腎障害をきたす症例はMPO-ANCA高値の場合が多く,全身検索を施行し,早期診断,治療が必要と考える.

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要約 73歳,男性.当科初診の半年前から全身に皮疹が出現し,近医で尋常性乾癬と診断され,シクロスポリン,エトレチナート内服,ステロイド外用で加療されていたが,改善せず前医を受診し,当科へ紹介された.初診時,顔面の脂漏部位と体幹を中心に厚い鱗屑が付着する紅斑が多発し,一部でびらん,浮腫性紅斑,膿疱を伴っていた.病理組織像で表皮浅層に裂隙形成と棘融解を認めた.直接蛍光抗体法では表皮細胞間にIgGが沈着し,血清中から抗デスモグレイン1抗体が検出され,落葉状天疱瘡と診断した.入院時には紅皮症化し,ステロイド内服治療に抵抗性であったが,ステロイドパルス療法,血漿交換,免疫グロブリン大量静注療法の併用によって病勢を制御できた.落葉状天疱瘡は多彩な皮疹を呈し,初診時に診断が困難なこともある.病理組織学的,免疫学的に診断を確定して早期に治療を開始することが重要である.

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要約 生後8日男児.生後1日より臀部から仙骨部に瘢痕を残さない水疱が出現し,徐々に手足に拡大した.家族内に同症なし.臨床像,病理組織像,蛍光抗体法より単純型表皮水疱症と診断し,遺伝子解析を施行した結果,ケラチン5遺伝子のエクソン2に既知の変異c. 556G>T(p. Val186Leu)がヘテロで同定された.ケラチン5遺伝子変異による単純型表皮水疱症は常染色体優性遺伝性疾患であるが,患者の両親には同変異が同定されなかったことからde novoで生じた変異と考えられた.さらに,培養細胞を用いた解析で,変異型ケラチン5蛋白の発現パターンの異常が認められた.本解析によって,日本人における本疾患の遺伝的背景がさらにアップデートされた.また,変異型ケラチン5蛋白の培養細胞内での動態を明らかにしたことは,重症度と遺伝子型との相関関係を検討する上でも有用な知見と考えられる.

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要約 34歳,女性.3歳時1型糖尿病を発症.HbA1c 10%と高値であり,2年前に当院糖尿病内科でインスリンポンプを導入した.その後HbA1c 7.0%と血糖コントロールは良好であった.当科初診2週間前より瘙痒感と皮疹を自覚した.初診時,上肢・軀幹に中央に痂皮を付着する紅色丘疹が多発・散在していた.病理組織学的に膠原線維の変性と経表皮排泄像が認められた.Matrix metalloproteinase-9の免疫染色では,主に真皮の間質細胞,炎症性細胞,排泄された膠原線維に一致して陽性所見がみられたが,穿孔部の表皮細胞も一部で陽性を示した.以上の所見より,後天性反応性穿孔性膠原線維症と診断した.妊娠を希望しており,クロベタゾールプロピオン酸エステル外用療法のみで加療した.本症の発症には,瘙痒による搔破と病歴の長い糖尿病に起因するadvanced glycation end productsの蓄積が関与していると推察された.

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要約 76歳,男性.悪性リンパ腫(節性濾胞辺縁帯リンパ腫)に対してCHOP療法が施行され寛解したが再発し,放射線治療,リツキシマブによる治療が行われた.初回治療の9年後頃から体幹四肢に紅色小結節が複数出現し,切除したところいずれもエクリン汗孔腫であった.近年,悪性リンパ腫,白血病など造血器悪性腫瘍治療後に多発性エクリン汗孔腫を生じた報告が散見される.エクリン汗孔腫発症の機序は明らかでなく,原疾患の治療法との間に一定の傾向は認められていない.

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要約 72歳,男性.初診の半年前より左鼻翼の皮疹が徐々に拡大した.淡紅色から一部黒褐色の,痂皮を付着する13×11mm大の半球状に隆起する小結節がみられた.ダーモスコピーでは血痂と白色鱗屑が目立った.白色網目構造と,糸球体状血管,線状血管,ループ状血管があり,中心部と辺縁部ではわずかに青灰色構造がみられたが,基底細胞癌に典型的な所見を欠いていた.病理組織学的所見では一部表皮と連続して好塩基性の腫瘍細胞が胞巣を形成して増殖していた.胞巣の周囲には裂隙とムチン沈着あり.基底細胞癌と診断し,初診2か月後に全摘した.全摘時のダーモスコピーでは痂皮や白色鱗屑が減少し,青灰色構造が明瞭化した.痂皮や白色鱗屑によりダーモスコピー診断が困難な症例では,被覆材の使用や軟膏処置により掻破行動などが抑制され,二次的な修飾が減少しダーモスコピー像が明瞭になる可能性がある.

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要約 68歳,男性.初診1年半前より頸部腫瘤を自覚していたが放置していた.初診時前頸部に懸垂した巨大腫瘤を認めた.腫瘤の病理組織学的検査により悪性黒色腫と診断した.術前PET/CT検査では,頸部リンパ節への集積はないが,胆囊に腫瘍が確認された.頸部の悪性黒色腫を全切除し,リンパ節郭清および再建術を施行した.その後,胆囊摘出術を施行したところ,胆囊腫瘍も悪性黒色腫であり,最終的にT4bN0M1 Stage Ⅳと診断した.術後化学療法としてダカルバジン単独療法とインターフェロンβの局所投与を6クール行い,その後インターフェロンβの投与を継続したが,経過中に心不全が出現したため投与を中止し経過観察とした.術後2年間は再発なく経過したが,肺・咽頭に転移が出現増大し,初診2年8か月後に永眠された.自験例は路上生活者という社会的な背景より巨大腫瘤で発見され,また胆囊転移のみを認めたことより,稀な症例であると考えられた.

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要約 ステロイド剤の外用,内服に反応しない激痒を伴った痒疹様丘疹を契機に発見された全身型CD30陽性未分化大細胞リンパ腫の1例を経験した.瘙痒および丘疹は化学療法開始後間もなく消退し,リンパ腫の再燃に伴い再燃した.慢性痒疹がHodgkin病のデルマドロームとなることは知られているが,non-Hodgkinリンパ腫に痒疹/丘疹が合併した例は少ない.さらに全身型CD30陽性未分化大細胞リンパ腫に非特異疹が出現した例も少なく,自験例は稀な症例と考える.過去の報告では痒疹/丘疹を伴ったnon-Hodgkinリンパ腫では皮疹の持続は長期にわたることが多く,CD30陽性未分化大細胞リンパ腫の非特異疹は紅皮症と皮膚潰瘍が多かった.さらに難治性の痒疹様の小型丘疹という特徴がデルマドロームを疑うポイントと考えられた.

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要約 85歳,男性.初診の3日前より左前胸部から左上背部,および右腹部から右腰部にかけて皮疹が出現した.初診時,同部に紅暈を伴う小水疱が散在しており,水疱部スメアより水痘帯状疱疹ウイルス抗原を検出した.臨床症状と合わせて両側性非対称性の複発性帯状疱疹と診断した.また,誤嚥性肺炎を併発していたため,入院のうえ,アシクロビルおよびピペラシリンナトリウムの投与を開始した.CTでは肺癌も疑われたが,高齢であることもありそれ以上の精査はしなかった.加療により帯状疱疹は軽快したが,1か月半後に誤嚥性肺炎の悪化のため永眠した.通常の帯状疱疹と複発性帯状疱疹の本邦報告例を比較すると,基礎疾患の合併頻度は複発性帯状疱疹のほうが高いと考えられ,特に生命予後に関わる悪性腫瘍の検索が重要であると考えた.

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要約 66歳,男性.初診の1か月前より発熱,両下腿の有痛性紅色結節が出現し,徐々に大腿部・前腕に拡大した.下腿の結節の病理組織像では,真皮中層の静脈血栓の多発と周囲のリンパ球,好中球の浸潤,膿瘍形成を認め,脂肪組織にも壊死像を伴っていた.細菌,真菌,抗酸菌培養は陰性であった.当院内科にて,神経内分泌腫瘍で精査中だった.悪性腫瘍に伴う多発血栓症と考え,Trousseau症候群と診断し,脂肪壊死症の合併も疑った.血栓に対して抗凝固療法や原病の治療が検討されたが,患者の希望がなく無治療の方針であり,貧血も伴い,いずれの治療法も選択できなかった.ステロイド投与を試みたところ,結節の新生はなくなり,自覚症状も改善した.悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進による血栓症で,他の血栓傾向を呈する疾患が除外されたものをTrousseau症候群という.皮膚科領域での報告は少なく,担癌患者の皮膚症状の鑑別疾患となりうる.

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欧文目次

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 キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)は抗原特異的なモノクローナル抗体の可変領域を組み替えた単鎖抗体をN末端側に,T細胞受容体ζ鎖,共刺激分子をC末端側に有するキメラ蛋白であり,これを導入されたT細胞は高い抗原特異性と細胞傷害活性を有する.近年,CD19を標的抗原としたCART細胞を用いた臨床試験で,血液腫瘍において高い奏効率が得られている.本研究では,CARを応用して抗Dsg3抗体を標的抗原としたchimeric autoantibody receptor(CAAR)を作製し,尋常性天疱瘡治療へ用いようと試みた.単鎖抗体の代わりにDsg3を構成する細胞外カドヘリンを用いて,T細胞受容体ζ鎖,共刺激分子CD137と組み合わせ,抗Dsg3抗体特異的CAARが作製された.まず,in vitroでCAART細胞は抗Dsg3抗体産生hybridomaに対して細胞障害活性を示し,また,遊離したポリクローナル抗体存在下においても細胞障害活性は保たれた.次に,抗Dsg3抗体産生hybridomaを用いて作製された尋常性天疱瘡モデルマウスにおいてCAART細胞の効果を確かめた.CAART細胞を注入されたマウスでは抗Dsg3抗体産生hybridomaが消失し,表皮細胞間のIgG沈着や表皮の棘融解を認めなかったことから,尋常性天疱瘡に対する治療効果が示された.一方で,標的細胞以外のケラチノサイトやFcγ受容体発現細胞,骨髄B細胞に対する細胞障害活性を示さなかった.以上の実験結果から,今回作製されたCAART細胞は抗Dsg3抗体産生B細胞を特異的に障害し,尋常性天疱瘡に対して効果的であると同時に免疫抑制を起こさない治療となりうることが示唆された.現在の尋常性天疱瘡治療はステロイドや抗CD20抗体が主体であり,治療に伴う免疫抑制状態が必発である.本研究で作製されたCAART細胞は免疫抑制を伴わずに治療効果を得られる特異的治療となる可能性を示しており,尋常性天疱瘡および他の自己免疫疾患に対する治療の新たな一歩となることが期待される.

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 本書は,爪診療の巨匠である東禹彦先生が2004年に執筆した「爪—基礎から臨床まで」を,今回十年ぶりに改訂されたものである.それに際し,僭越ながら書評を書かせていただく機会をいただいた.

 いうまでもなく,著者の東先生は長年爪疾患をご自身のライフワークとされてこられた.本書は,爪の解剖学や生理学的なデータも網羅されており,辞典のようにしても長年重宝されてきた.今年の日本皮膚科学会総会の教育講演,爪の見方・治し方のセッションで総論を話された安木良博先生(前 都立大塚病院皮膚科部長)にも,世界に誇る成書であると絶賛されていた.基礎的なデータとともに,ご自身の臨床経験から得られた膨大な臨床写真は,見るものに訴えかけてくる.また,本書を見ると,初めて聞く病名も多数あり,爪疾患の病名がこんなにもたくさんあるのかと感じさせられる.本書を通読するだけで,自分たちも爪の見方が一段階も二段階も向上したかのような錯覚さえ起こしてしまいそうである.

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 確かに救急外来では実にバラエティ豊かな訴えの患者が行き来する.専門分化が進んだ昨今であればこそ,「専門以外の疾患を見て訴えられたらどうしよう」という当直医の不安はよくわかる.でもね,患者も条件は同じなんですよ.救急となれば背に腹は変えられず,患者も医者を選べない.相思相愛といかない条件下での診療こそ,「患者の期待に応える医療」であって,自分の好きなものしか診ない「選り好みの医療」ではないのだ.当直で頑張っている先生方は本当に偉い!

 一方,「困ったらいつでも呼んでもらっていいですよ」というオフィシャルな他科コンサルトルールはあっても,いざコンサルトすると「マジ? この程度で呼びつけたの?」といったように,各科から見れば初歩中の初歩の処置で済んでしまうということも少なくない.そんな時に強い味方が本書なのだ.

次号予告

あとがき 渡辺 晋一
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 海外では専門医と非専門医では診療報酬がかなり異なるため,医師は努力して専門医になろうとする.しかし日本では,医師免許さえあれば,どの医師も資質は同じだという前提に立っているため,誰が診ても診療報酬は同じである.その結果わが国では,優秀な医師ほど収入が減少するという不思議な現象が起こる.なぜならば未熟な医師のほうが正確な診断を下すことができないため,多くの血液検査をし,不適切な治療を行う.そのため患者は治らず,何回も病院に足を運ばなければならないが,出来高払い制度下の日本では,病院の収入は増える.

 このような日本の現状を変える目的もあり,日本専門医機構が生まれたが,いくつかの学会の反対もあり,日本医師会の役員が専門医機構のメンバーに加えられた.そのせいか,専門医と非専門医間で保険の点数に差をつけないということが,声高々に叫ばれるようになった.眼科や耳鼻科など多くの診療科では,専門医以外の先生が診断・治療をすることはきわめて稀である.しかし皮膚科以外の先生が皮膚病治療をしていることは多い.実際に皮膚科の外用薬の半分以上は皮膚科以外の先生が処方している.したがって保険点数に反映しない専門医制度で,一番困るのは皮膚科医である.

基本情報

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臨床皮膚科
70巻12号 (2016年11月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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