臨床皮膚科 70巻13号 (2016年12月)

連載 Clinical Exercise・112

Q考えられる疾患は何か? 浅田 秀夫
  • 文献概要を表示

症例

患 者:62歳,男性

主 訴:下腿潰瘍

既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:約25年前に関節リウマチと診断され,整形外科にてメトトレキサート,非ステロイド系抗炎症薬による治療を受けている.初診の2か月前頃より左下腿に潰瘍が出現し,プロスタグランジン軟膏を外用したが拡大してきたため当科を紹介され受診した.

現 症:両下腿に網状皮斑がみられ,右下腿外側では血疱を伴い(図1a),左下腿外側には4×3cmおよび1×1cmの潰瘍を認めた(図1b).

  • 文献概要を表示

 2016年6月27日,日本専門医機構社員総会にて,22名の理事のうち理事長,副理事長を含む18名が退任,20名の新理事が誕生,機構が新しく生まれ変わりました.

 7月4日には吉村博邦新理事長が決まり,新たな体制として発足しました.このことはm3の記事などでご存知の方も多いことと思いますが,なぜこのような結果に至ったのか,盤石と思われた池田康夫理事長率いる機構がなぜ崩壊してしまったのかについては,疑問をお持ちの方々も多いと推察しますので,私見をご紹介したいと思います.

  • 文献概要を表示

要約 当科で1997〜2012年の間に,内臓悪性腫瘍の発症およびその増悪時に前後して生じた手足の角化性病変を5例経験した.症例は55〜77歳,男性3例,女性2例で,原病の内訳は食道癌2例,肺癌1例,肝癌1例,原発不明癌1例であった.いずれも両手両足に優位の角化,落屑が主症状で,原病の治療経過に伴って皮疹の消長がみられた.原病の診断に先行して皮疹を生じたのは4例で,そのうち2例は皮膚科を初診し,内臓悪性腫瘍を発見する契機となった.5例のうち皮疹の分布や形状からBazex症候群に該当するものは1例のみであったが,たとえ非典型な所見であっても,難治性の手足の角化性病変を見た際には内臓悪性腫瘍が存在する可能性も考慮すべきと思われた.

  • 文献概要を表示

要約 8歳,男児.3歳の夏頃に胸部正中に紅色の皮疹が出現した.虫刺による掻き傷と考え経過をみていたが,成長とともに遠心状に拡大し,手掌大の紫褐色斑になったため,当科を受診した.初診時,胸部正中に比較的境界明瞭な紫褐色斑を認め,同部に多数の脱色素斑を混じていた.固定薬疹を疑い,薬剤歴を聴取したところ,ツロブテロールもしくはカルボシステインが原因薬として疑われたため,貼布試験を施行した.貼布試験にてカルボシステインとその代謝産物であるチオジグリコール酸が皮疹部と無疹部で陽性であり,カルボシステインによる固定薬疹と診断した.カルボシステインによる固定薬疹では,カルボシステイン自体は貼布試験で陽性となりにくいとされてきたが,カルボシステイン自体でも感作が成立することがあると推測した.

  • 文献概要を表示

要約 症例1:28歳,女性.尋常性痤瘡に対して2.5%過酸化ベンゾイルゲルを開始し,当初は問題なく使用できていたものの11週で軽い刺激症状が出現したため自己中断していた.2週間後に再開したところ翌朝に顔面全体に滲出液を伴う強い紅斑が出現した.症例2:22歳,女性.尋常性痤瘡に対して2.5%過酸化ベンゾイルゲルを開始したところ数日後より顔面全体に滲出液を伴う紅斑が出現した.過去にプロアクティブ®の使用歴があった.尋常性痤瘡に対する2.5%過酸化ベンゾイルゲルの国内第III相臨床試験において接触皮膚炎の報告は5.6%であったが,当院の2.5%過酸化ベンゾイルゲル使用患者99例では軽度の一次刺激皮膚炎が36例(36.3%),中等度の一次刺激皮膚炎が15例(15.1%),アレルギー性接触皮膚炎の疑いが9例(9.1%)に認められた.また,海外の貼布試験では29,758例中2,316例(7.8%)が1%過酸化ベンゾイルに対して陽性であったとの報告もあり,やや高感作性の薬剤である可能性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要約 39歳,男性.初診3年前よりセメントを扱う建設業に従事しており,勤務中はゴム手袋を着用していた.初診6か月前より両手掌に瘙痒性角化局面が出現し,上肢や体幹にも紅斑がみられ,受診した.両手掌に角化を伴う紅斑と亀裂を認め,上肢や体幹には爪甲大程度の浮腫性紅斑と丘疹が散在していた.以上の臨床経過に加え,パッチテストで重クロム酸カリウム,塩化コバルト,ジチオカーバメイトミックス,チウラムミックスが陽性であり,セメント皮膚炎とゴム手袋による接触皮膚炎を合併していると考えた.セメント皮膚炎とゴム製品による二次的な感作の合併頻度は高く,自験例でも皮膚が障害されている状態でゴム手袋を装着したことで二次的にゴム成分にも感作されたと考えた.

  • 文献概要を表示

要約 抗ラミニンγ1類天疱瘡は,IgG自己抗体が真皮由来の200kDa蛋白に反応を示す自己免疫性水疱症である.今回,われわれは,抗Dsg3抗体,抗Dsg1抗体価の軽度上昇に始まり,真皮由来200kDa抗原に反応し,経過中に抗BP180抗体が陽性となった自己免疫性表皮下水疱症の1例を経験した.自験例は,ステロイド治療に反応したが,表皮下水疱の出現を繰り返し,血清解析の結果,抗BP180抗体と抗ラミニンγ1自己抗体の併存が示唆された.自己免疫水疱症において複数の自己抗体が検出される明確な機序についてはいまだ不明な点が多いが,複数の疾患の合併と捉えるかどうかという点については臨床症状,病理学的所見および免疫学的所見を総合的に判断する必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 岡山大学で2007〜2014年に加療された水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)患者43例中,抗BP180NC16a抗体(ELISA法)陰性例は8例あった.そのうちの6例について臨床的特徴を検討した.浮腫性の紅斑や大型緊満性水疱を呈した炎症型は1/6例(17%),vesicular typeの水疱を呈したのは3/6例(50%)であった.BP180C末端リコンビナント蛋白(ヒトCOL17 aa1192-1497)を用いたウエスタンブロット法では4/5例(80%)で陽性であった.また抗BP230抗体(ELISA法)は3/5例(60%)で陽性であった.症例1は潰瘍が深く治療に難渋し,症例2はDPP-4阻害剤内服歴のある結節性類天疱瘡であった.BP180NC16a抗体陰性のBPの臨床像は多彩であることより,NC16aドメイン以外の抗体エピトープの病因性に多様性があることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要約 19歳,女性.初診の約2か月前より膝関節痛があり,その後38℃の発熱と両下腿の有痛性の紅斑が出現したため受診した.皮膚生検にて結節性紅斑と診断された.結節性紅斑の先行から2週間で腹痛が出現し,下部消化管内視鏡を施行され,空腸,回腸に縦走潰瘍,敷石像を認め,Crohn病と診断された.メサラジン,アダリムマブ,プレドニゾロンにより腹部症状は軽快,同時に皮疹も速やかに消失した.結節性紅斑をCrohn病の初発症状とする症例も存在し,またCrohn病患者は近年増加傾向にあることから,結節性紅斑患者を診察する際にはCrohn病による可能性も念頭に置く必要があると思われる.

  • 文献概要を表示

要約 78歳,女性.50歳時に左人工股関節置換術を施行後,左下肢の短縮を認めていた.2011年より左下腿〜足背部にうっ滞性皮膚炎を合併し,その後足趾〜足背部に潰瘍病変が出現した.当院形成外科で外用療法,植皮術を施行されたが上皮化は得られず難治性皮膚潰瘍として精査・加療目的に当科紹介入院となった.潰瘍部の皮膚生検,臨床検査,各種培養検査,ABI検査,SPP検査で異常は認めず,CTA,DSAにて潰瘍形成部位に一致して動静脈の異常吻合を認め,微小動静脈瘻による難治性皮膚潰瘍と診断した.外科的治療の適応はないと判断し,下肢の安静・挙上を中心とした静脈うっ滞の改善を行ったところ潰瘍部は上皮化を認めた.微小動静脈瘻の原因は不明であることが多く,自験例も原因不明であったが,下肢短縮による歩行障害・筋力低下が静脈うっ滞を増悪させ,難治性皮膚潰瘍を生じたと考えた.

  • 文献概要を表示

要約 89歳,男性.眉間から前額部の帯状疱疹にて抗ウイルス薬内服で加療後,同部に紅色皮疹が出現し,同薬を再び内服したが改善せず,当科を紹介受診した.病理組織では真皮から皮下脂肪織にCD10,CD20陽性の腫瘍細胞がみられた.また,血清LDHの上昇,CT,PETにて副腎・上咽頭・左耳下腺に病変を認め帯状疱疹罹患部位に出現したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫,Ann Arbor分類Ⅳ期と診断した.エトポシド内服治療(50mg/日)を開始したが,11日後に永眠した.帯状疱疹罹患後の皮疹部に一致して二次的に皮疹が出現した際には,悪性腫瘍の出現も考慮することが重要と思われた.

  • 文献概要を表示

要約 76歳,女性.18年前に発症した関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に対し10年前よりメトトレキサート(MTX),1年前よりアバタセプト(ABT)で加療していた.初診3週間程前から両下腿に皮疹を認め,当院を受診した.四肢に一部表面に痂皮を付着した,浸潤を触れる暗赤色結節が多発散在していた.組織はCD20,bcl-2,EBER陽性の異型細胞が皮下織中心に増殖し,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に一致し,MTX関連リンパ増殖性疾患と診断した.ABTの投与を延期し,MTXを中止後,結節は完全に消退した.現在ABTを継続投与中だが再燃していない.過去の文献を調べえた限り,その発症には,原病の免疫異常および長期にわたる罹病期間,MTXを介したEpstein-Barrウイルスの再活性化などが複合的に関連した可能性があると推察された.

  • 文献概要を表示

要約 20歳,男性.初診の約1年前より左背部に自覚症状を伴わない黒色の結節を自覚した.初診時左背部に15×12mmのドーム状に隆起し,表面に光沢のある弾性軟の黒色結節を認めた.病理組織学的に表皮直下から真皮下層にかけて腫瘍細胞が胞巣を形成し,胞巣内には赤血球を容れた裂隙とヘモジデリンの沈着がみられた.腫瘍を構成する細胞は紡錘形の線維芽細胞であり,明らかな異型性は認めなかった.免疫染色ではビメンチン陽性,デスミン,CD34,α-SMA,S100蛋白陰性で,以上よりaneurysmal fibrous histiocytoma(AFH)と診断した.AFHは非常に稀な疾患であるが,急速に増大する黒色調を呈する腫瘍を見た場合,鑑別疾患の1つとして念頭におく必要がある.病理組織学的に診断がつきにくい症例では免疫染色を用いての検討が有用である.

  • 文献概要を表示

要約 7か月,男児.生後2か月より軀幹,四肢に皮疹が出現した.ヒドロコルチゾン酪酸エステルを外用したが改善しないため受診した.初診時,全身に米粒大の淡紅色〜淡褐色調の丘疹や淡褐色斑が播種状に多発していた.粘膜病変や頸部リンパ節腫脹はなかった.病理組織学的に真皮乳頭層を中心に組織球様細胞の密な浸潤がみられ,リンパ球,わずかに肥満細胞を混じた.泡沫細胞,巨細胞,肉芽腫形成はなかった.免疫組織学的に組織球様細胞はCD68陽性,CD1a陰性で,S100蛋白は一部にのみ陽性だった.以上よりgeneralized eruptive histiocytomaと診断した.無治療で初診から3か月後に消退傾向を示した.Generalized eruptive histiocytomaは報告例が少ない稀な疾患である.多くは自然消退するものの,そのほかの組織球症へ移行するケースもあるため,臨床像の変化や内臓疾患の合併に注意しつつ慎重に経過を追う必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 54歳,男性.若年時に頸髄損傷を受傷した.以後,坐骨部に褥瘡を繰り返していたが,創傷被覆材の貼付でその都度改善していた.受診時38℃台の発熱があり,左坐骨部に熱感,発赤,腫脹を伴う褥瘡を認めた.MRIでは坐骨部に骨髄炎を疑う異常信号を認め,創部浸出液からはEdwardsiella tardaが検出された.第5病日目に簡易的な壊死組織除去術を行い,創部壊死組織の培養でも同様にE. tardaを認めた.第15病日目に骨髄炎の起炎菌を同定するため,抗生剤を2日前から中止した状態で2回目の壊死組織除去術および骨生検を施行した.坐骨骨髄,褥瘡底の肉芽からの培養は陰性であったが,画像診断の結果からE. tardaによる骨髄炎と診断した.第140病日目でのMRIの画像上,異常陰影は消失しており骨髄炎は改善を認めた.外科的に骨切除することなく抗生剤投与の保存的加療で褥瘡も治癒した.E. tardaによる骨髄炎は稀であり腸管以外の感染症例では致死率が高く,早期の治療介入が必要と考える.

  • 文献概要を表示

要約 43歳,男性.アトピー性皮膚炎で顔にタクロリムス軟膏を外用していた.猫を3匹飼育中.1か月前より右下顎部に膿疱,滲出性痂皮,脱毛を伴う紅色局面が出現した.須毛の直接鏡検で真菌要素を認め,真菌学的検査でMicrosporum canisを同定し,ネコからの感染を疑った.皮疹はテルビナフィンの内服で軽快した.白癬性毛瘡は浅在性白癬からの移行例が多いが,動物からの感染例も報告されており感染経路に注意が必要である.またステロイド外用剤の誤用が誘因となるとされるが,自験例ではタクロリムス軟膏による局所免疫低下が誘因になった可能性が考えられた.1909年からの過去の本症の報告200例のうち,M. canisによる症例は自験例が3例目と非常に稀と思われた.須毛部の脱毛局面では本症を疑い,感染原同定のため積極的に真菌培養を行うことが重要である.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 「老化」という概念において,個体の老化のほかに,近年では臓器や組織,そして細胞の老化について研究が進んできている.これまで,個体の老化や幹細胞の老化については研究がされてきたが,組織レベルでの老化のメカニズムの解明はされてきていなかった.

 個体や毛髪という臓器では老化の過程で,脱毛を生じ,生えている毛そのものも細くなる.著者らは加齢により脱毛をきたす毛包の老化について,17型コラーゲンに着目して研究した.

  • 文献概要を表示

 近年,転移性悪性黒色腫において,腫瘍組織に浸潤するT細胞(tumor infiltrating lymphocyte:TIL)中に腫瘍特異的なCD8T細胞が多いことが注目され,TILを培養・増殖させた後に患者に戻すTIL療法が行われている.これまでの報告で,実際にその有用性が示されており,加えて,TILの中でもPD-1CD8T細胞に特に腫瘍特異的なものが多いことがわかっている.今回の論文の趣旨は,転移性悪性黒色腫患者において,末梢血中のPD-1CD8T細胞にも変異抗原特異的T細胞が存在することを確認し,そのT細胞から変異抗原特異的TCR導入T細胞を作製したということである.

 著者らは,まず患者の腫瘍組織から変異遺伝子を解析・同定し,この変異遺伝子をつなげたtandem minigene(TMG)を作製することで,効率的に変異抗原特異的T細胞の検索を行った.実際には,TMGもしくは個別の変異抗原遺伝子を導入した樹状細胞と共培養した際に,活性化するCD8T細胞を変異抗原特異的T細胞として同定した.結果として,4患者検体中の3検体で末梢血CD8T細胞中に変異抗原特異的T細胞が確認され,それらはPD-1細胞中のみに存在した.さらに,著者らは,同定した変異抗原特異的T細胞に最も優位に発現するTCR遺伝子を用いてTCR導入T細胞を作製し,それらが変異抗原に反応することを確認した.

次号予告

「臨床皮膚科」歴代編集委員

あとがき 戸倉 新樹
  • 文献概要を表示

 再生医学の興隆と相まって,毛髪の分野の研究は盛んである.私がEditor-in-Chiefを務めるJournal of Dermatological Scienceにも多数の毛髪に関する論文が投稿されてくる.毛髪再生を見据えた優秀な論文もあるが,天然素材の育毛に関する論文も相変わらず多い.ナチュラルプロダクトを正当に評価するためには,少なくとも1つの成分が性格付けされており,その効果が研究されていることが必要である.これが不明瞭な論文は,申し訳ないのであるが,不採用としている.もっとも判断に困る例もあり,その場合は本誌の編集委員の一人でもある大山学先生にSection Editorとしての判断を仰いでいる.ナチュラルプロダクトから見つかった抗菌薬や免疫抑制薬は多く,一方では,天然素材を成分不詳という理由で軽視することはできないという気持ちも働く.

 なぜこういう話をするかというと,その雑誌の性格を考慮しつつ論文の価値を判断することは必ずしも容易ではない,という例を挙げたいからである.本誌の場合,すでに知られた情報を1症例の供覧とともに紹介するタイプの論文が多い.読者の皮膚科的知識を呼び戻しブーストさせることは意味があると考えるが,あまりにもよく知られている内容であって価値が希薄な場合もある.また皮膚疾患を論ずるべきところが,背景となっている内科的疾患の論述が膨らんでしまい,皮膚疾患が霞んでしまう場合もある.こうした論文の価値はそうした偏重の程度で決まるのであろう.既知のことであっても読者の知識の整理に役立つ論文や,内科的知識が開陳されていても皮膚疾患の深い理解に役立つ論文は,本誌にとって掲載価値があろう.もし投稿者がこの問題に直面したら,許容程度から逸脱していないかどうか,読者の気持ちを慮って,内容を取捨選択することである.

基本情報

00214973.70.13.jpg
臨床皮膚科
70巻13号 (2016年12月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月10日~6月16日
)