臨床皮膚科 68巻1号 (2014年1月)

連載 Clinical Exercise・77

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症例

患 者:24歳,女性

主 訴:顔面の皮疹

家族歴・既往歴:特記すべき事項なし.

現病歴:第1子妊娠3か月時に顔面に紅斑が出現した.

現 症:鼻根部から両頰部にかけて拇指頭大までの浸潤を伴う環状紅斑を多数認めた(図1a,b).皮疹以外の自覚症状はなかった.

マイオピニオン

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 皮膚科学という領域を専門にするということを決め,研修を始めてから,30年近くが過ぎようとしている.皮膚科医としては,まだまだ未熟であり,よりいっそうの精進を続ける必要があると痛感している毎日を送っているが,皮膚科学の領域で過ごしてきて,それなりに思うことはある.今回は,感じるままに,皮膚科の現状と未来について考えてみたい.

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要約 札幌皮膚病理診断科で病理診断した乳頭状汗管囊胞腺腫106例について臨床病理学的検討を加えた.性別は,男性49例,女性57例,切除時年齢は10~90歳の平均50.1±19.2歳.発生部位は,頭部が31例(31.3%),顔面27例(27.2%)の順であった.脂腺母斑合併例は,35例(33.0%)であり,男性18例,女性17例,切除時年齢は,15~85歳の平均49.4±18.9歳であった.その発生部位は,頭部が17例(53.1%),顔面7例(21.9%),であった.脂腺母斑非合併71例の合併腫瘍は,乳頭状管状腺腫10例,アポクリン腺囊腫4例など16例17腫瘍あった.脂腺母斑以外で,周辺表皮に疣贅様の表皮変化のある例が,29例(40.8%)あった.今回の検討では,乳頭状汗管囊胞腺腫は約2/3は脂腺母斑非合併例であり,そのような病変も,20%弱の例で乳頭状管状腺腫やアポクリン腺囊腫といったアポクリン腫瘍が合併していることが明らかになった.

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要約 51歳,男性.27歳時に尋常性乾癬と診断された.シクロスポリン内服,ウステキヌマブ等の治療歴があるが,十分な効果が得られなかったため,インフリキシマブによる治療を希望して当科を受診した.軀幹,四肢に鱗屑を付す紅斑性局面を認め,PASIは23.2だった.投与前の胸部X線および骨ガリウムシンチ,胸腹部CTでは異常はなかった.インフリキシマブ500mg(5mg/kg)を計5回(0,2,6,14,22週)投与後,皮疹は著明に改善し,PASIはほぼ0となった.4回目投与後に血便があり,その際の血中CEAは5.5ng/mlと軽度上昇していた.下部消化管内視鏡検査で,S状結腸に全周性の病変を認め,生検にて腺癌と診断された.CTで右肺と肝臓に転移が発見された.今後,シクロスポリンからインフリキシマブ,アダリムマブ,ウステキヌマブなどの生物学的製剤へと切り替える症例が増えることが予想されるが,このような治療歴が悪性腫瘍の発症リスクを上昇させる可能性が考えられる.

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要約 2歳,男児.2010年5月末頃から,陰茎先端の縫線上に,3mm大で透過性を有する常色小結節が出現した.病理組織学的に表皮と連続性のない単房性の囊腫構造を認め,単層立方および多列円柱上皮細胞で被覆された囊腫壁の一部に断頭分泌様所見を認め,陰茎縫線囊腫と診断した.陰茎縫線囊腫は,その発生部位や組織学的所見の類似から傍尿道口囊腫,アポクリン汗囊腫との鑑別が難しいとされる.免疫染色とムコ物質の糖鎖の染色を行った結果,GCDFP-15,CD15,SMAは陰性で,また,囊胞壁のムコ物質はシアル酸を含むシアロムチンが主体で,傍尿道口囊腫やアポクリン腺では硫酸基を有するスルフォムチンが優勢であることから,これらの染色の併用が,陰茎縫線囊腫の診断に有用であると考えた.

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要約 41歳,男性.15年程前に右こめかみに皮疹が出現したが,自覚症状なく放置していた.7年程前から疣状に隆起しはじめ,徐々に拡大傾向を認めたため,当院を受診した.右こめかみに13×10mm大の,辺緑が軽度隆起し中央がやや陥凹している局面を認めた.辺緑の隆起部には環状に配列する正常皮膚色からやや黄白色調の丘疹を伴っていた.ダーモスコピーでは色素性構造は認めず,コンマ状・樹枝状の血管とmillia-like cyst様の白色顆粒状構造物が散見された.病理組織像から,desmoplastic trichoepitheliomaと診断した.ダーモスコピーで樹枝状血管が認められた場合,基底細胞癌など悪性疾患が鑑別に挙がるが,多数のmillia-like cyst様の白色顆粒状構造物は,病理組織像の角質囊腫を反映しており,本疾患の病理組織像から本症の特徴の1つといえる.本症を疑った際は,ダーモスコピーでの観察が有用と考えられた.

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要約 52歳,男性.既往歴や家族歴に特記すべきことはない.15歳頃より四肢に丘疹がみられたが,数年前から増加してきたため,当科を受診した.初診時,下肢を中心に常色から黄白色で扁平に隆起する丘疹が多発していたが,顔や頸部には認めなかった.病理組織学的には真皮浅層で線維性結合組織の増生がみられ,病変の辺縁には毛包を伴っていた.免疫組織学的には増生した線維性結合組織の中にCD34陽性の紡錘形細胞やfactor XIIIa陽性の樹状細胞が散在し,多発性の毛盤腫と診断した.Birt-Hogg-Dubé症候群との鑑別を要したが,CTで肺囊胞や腎腫瘍の所見はみられなかった.また,folliculinの遺伝子解析で変異は同定できなかった.発症年齢や発症部位も非典型的で,Birt-Hogg-Dubé症候群とは異なる疾患群の可能性も否定できないと考えた.下肢に生じた毛盤腫はウイルス性疣贅などとして見逃されている可能性もある.

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要約 53歳,女性.4か月前より右眉部内側に径15×9mm大,下床と可動性不良な淡紅色の硬結が生じた.病理組織像は典型的な皮膚線維腫と類似していたが,画像所見より前頭筋表面への浸潤が疑われたため,肉眼的境界より2mm離して前頭筋の一部を含めて切除した.真皮から皮下織にかけて異型性に乏しい紡錘形細胞が,花むしろ状・索状に増殖し,腫瘍巣を形成していた.辺縁の筋と脂肪織に炎症性細胞浸潤を伴いながら楔状に浸潤し,境界不明瞭であった.以上より皮膚線維腫の亜型で皮下織内に深く浸潤するdeep penetrating dermatofibromaと診断した.顔面に発生する皮膚線維腫は比較的稀であり,周囲組織へ強い浸潤傾向を示す症例では悪性疾患との鑑別に難渋する.また良性腫瘍であっても不十分な切除では局所再発の報告があり,本疾患では腫瘍の浸潤の程度と,整容面を考慮した切除範囲の検討が重要であると考えられた.

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要約 46歳,女性.2011年10月頃から左外陰部に腫瘤を自覚した.増大傾向のため,近医産婦人科受診したが,針生検で良性との診断で放置していた.2012年4月,他医産婦人科受診し,切除目的に当院産婦人科を受診し,皮膚科に紹介された.初診時,大陰唇に25×20mm大の有茎性で,弾性軟の腫瘤を認めた.臨床的に,軟性線維腫を疑い切除した.病理組織学的に,真皮に膠原線維増生を伴う線維芽細胞様細胞の増生や,拡張した脈管の増生を認めた.免疫組織学的に,増生している細胞は,ビメンチン陽性,デスミン陽性,エストロゲンレセプター陽性,プロゲステロンレセプター陽性であり,侵襲性血管粘液腫と診断した.侵襲性血管粘液腫は産婦人科からの報告が半分以上を占め,皮膚科からの報告は稀である.しかし,皮膚科を受診することもあり,注意を要する.また,再発率が高い腫瘍であり,十分な切除と慎重な経過観察が必要と考える.

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要約 67歳,男性.下口唇のしこりを主訴に来院した.既往歴は糖尿病,高血圧,高脂血症であった.約8か月前から左側下口唇に潰瘍を生じ,他院で治療を受けたが症状が改善しないために当科を紹介され受診した.左側下口唇に境界不明瞭なびらんと,一部表層の痂皮を認め,易出血性であった.硬結は触知しなかった.開口部形質細胞症を疑い,生検を施行したが,病理組織診断は扁平上皮癌であった.放射線外照射を施行し,腫瘍は消失し現在経過良好である.病理組織学的に形質細胞の著明な浸潤が認められたこと,潰瘍出現から経時的な変化が緩慢であることから開口部形質細胞症と扁平上皮癌との併存,もしくは周囲の扁平上皮細胞が慢性炎症を伴い癌化した可能性が示唆された.

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要約 77歳,女性.2007年11月頃より右第III指背側に常色の小結節が出現し,2008年10月頃より赤色調となり増大傾向を示した.11月近医初診時には,19×16mmの隆起した淡紅色結節があり,中央に11×11mm大の皮膚潰瘍を認めた.皮膚生検を受けMerkel細胞癌と診断された.血中NSE値の上昇は認めなかった.さらにPET-CT検査で肝S4領域に腫瘍が認められた.2009年1月に皮膚悪性腫瘍切除術および外科にて肝腫瘍切除術が行われた.病理組織学的所見ではいずれも小型の類円系の腫瘍細胞が増生していた.腫瘍細胞の免疫染色は,皮膚ではシナプトフィシン,CD56,AE1/AE3,CK20,CAM5.2が陽性であり,肝ではシナプトフィシン,CD56,CK20,CAM5.2,クロモグラニン,ニューロフィラメントが陽性であった.肝腫瘍はMerkel細胞癌の転移であったため,AJCC 2009の分類で,T1N0M1,stage Ⅳであった.術後,EP療法(エトポシド,シスプラチン併用療法)を3クール施行した.初診から4年経過しているが,再発や新たな転移を認めていない.遠隔転移がある程度限局し病状の進行が緩徐である場合は,転移巣の外科的切除とアジュバント療法としての化学療法による集学的治療が有効であると考えた.

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要約 43歳,女性.20歳頃より明らかな誘因なく右上腕に皮疹を自覚,徐々に拡大傾向にあった.当院初診1か月前に近医にて右上腕の色素病変を指摘され紹介受診した.ダーモスコピーでhomogeneous blue pigmentationの所見を呈し,青色母斑を疑い切除生検を行った.病理組織像では花むしろ状に増殖する紡錘形細胞を認め,メラニンを含む細胞を散見した.免疫染色にてCD34陽性,Factor XIIIa陰性にてBednar腫瘍と診断し,後日拡大切除を施行した.ダーモスコピーでhomogeneous blue pigmentationの所見を呈した場合,Bednar腫瘍を鑑別に挙げる必要があると考えた.

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要約 79歳,男性.2012年2月より両大腿内側に紫斑が出現し,血液疾患が疑われ当院内科を紹介された.表在リンパ節腫脹はなく,血算,一般生化学検査で異常はなかった.初診時,両大腿内側を中心に左側腹部,左下腿外側に浸潤の触れない紫斑が局面を形成していた.生検では真皮上層の小血管腔に好酸性物質による塞栓像があった.Ⅰ型クリオグロブリン血症を疑い精査し,血清M蛋白,クリオグロブリン(IgG-κ型)が陽性であった.基礎疾患検索を行い,PET-CTで全身骨と腹部傍大動脈リンパ節に集積を認めた.骨髄生検で核不整の小型リンパ球様細胞が増殖し,CD20,CD79a陽性で,濾胞性リンパ腫と診断された.R-CHOP療法開始後,皮疹は速やかに消退し,再生検では血管内腔の閉塞像は消失していた.皮疹の分布は非特異的で臨床的にはクリオグロブリンの存在を疑えなかったが,血液悪性疾患の発見に至り皮膚生検の重要性を改めて認識した.

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要約 38歳,男性.2011年1月頃,咽頭痛のスクリーニング検査にてHIV感染が判明した.同年3月中旬,当院感染制御部を受診し,Western Blot法陽性,HIV-RNA 7.6×104コピー/ml,CD4 35/μlであった.当科初診の8日前より両側臀部に皮疹が出現し,左側には鱗屑・痂皮を付着するびらんが散在性に出現した.血液検査所見では単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)血清抗体はHSV IgG(EIA)8.8(<2.0),HSV IgM(EIA)0.47と既感染,梅毒はTPHA 2,560倍,RPR 128倍と未治療であった.びらん部の病理組織所見は,辺縁部で核が腫大し,細胞質が淡明・均質・大型化した表皮細胞がみられた.同細胞はHSV抗原に対する免疫染色陽性であった.生検後より,バラシクロビル3,000mg/日を投与し,4日目には皮疹の軽快を認めた.HIV感染に伴ってHSV感染症が生じる場合,臨床症状は多様であり,局所の病原診断が重要となる.

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要約 65歳,女性.初診2か月前より四肢遠位部の硬化と掻痒が出現し膠原病内科で精査を受けた.血清学的異常がみられず当科へ紹介され受診した.末梢血好酸球が軽度上昇し,前腕の皮膚硬化局面の病理組織像で皮下に強い線維化を認め,線維性に肥厚した筋膜部分に好酸球が散見されたことから,好酸球性筋膜炎と診断した.線維化が強いことからペニシラミン200mg/日の内服を開始したところ,皮膚硬化は速やかに改善した.しかし,皮膚硬化の改善に反して,末梢好酸球数が上昇したため,プレドニゾロン全身投与を併用し,好酸球数も正常化するに至った.さらに,経過中にペニシラミンによる苔癬型薬疹を併発し,ペニシラミンを中止したところ皮膚硬化のみが再燃した.自験例において,ペニシラミンは皮膚硬化に有効であることが示唆された.線維化が強く,硬化が完成している症例に対しては,ペニシラミンの有効性が期待される.

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要約 42歳,女性.初診の3か月前に眼囲,口囲を中心に発疹が出現した.近医で膿疱性痤瘡の診断の下,各種抗生剤の内服や外用が試みられたが,効果に乏しいため,当科紹介受診した.初診時,眼瞼周囲,口囲を中心に紅色丘疹が多発しており,一部は癒合していた.組織所見では乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認め,顔面播種状粟粒性狼瘡(lupus miliaris disseminatus faciei:LMDF)と診断した.自験例では,アダパレンとクリンダマイシン外用に加えて,CO2レーザーによる治療を施行するも効果が乏しく,ミノサイクリンの内服も無効であった.そこでステロイド内服を開始したところ,丘疹はほぼ平坦化したため,漸減し終了した.内服終了12か月目の現在も再発は認められない.種々の治療に抵抗性のLMDFでは,発症早期のステロイド内服が治療の選択肢になりうると考えた.

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要約 47歳,男性.22年前より潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)にて加療中であった.右下腿に犬咬傷を受傷し,同部が有痛性で周囲が堤防状に隆起する7×6.5cm大の潰瘍となった.辺縁部からの病理組織所見では,真皮から皮下組織にかけて好中球を主体とした炎症細胞浸潤を認め,UCを合併した壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum:PG)と診断した.プレドニゾロン40mg/日内服にて著明に改善し,約3か月後に潰瘍は瘢痕治癒した.症状は安定していたが約1年後にUCが急速に悪化し,頭部,後頸部,胸部,上肢に紅暈を伴う有痛性膿疱が多発した.病理組織検査で角層下膿疱,毛包を中心とした好中球の浸潤が認められ,細菌培養は陰性であり膿疱型PGと診断した.皮疹は約3週間で消退したがUCはコントロール不良であり,多量の下血とともに呼吸器感染症を発症し死の転帰をたどった.膿疱型PGはまれであり,今後症例の蓄積が期待される.

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要約 83歳,女性.基礎疾患に関節リウマチを合併しており,両下腿の難治性下腿潰瘍の治療とその後の遊離植皮に際して,VAC療法を施行した.左下腿に全層植皮術,右下腿に極薄分層植皮術を行い,術直後から右下腿植皮部にタイオーバーとしてVAC療法を併用した.植皮片は両下腿とも生着良好で,潰瘍面は速やかに上皮化した.VAC療法は,余分な滲出液を除去し,創面を湿潤環境に保ち,局所の血流増加と肉芽形成の促進を促すなどの効果が期待され,従来の難治性潰瘍の治療だけでなく,遊離植皮のタイオーバーとしても有用であると考える.

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欧文目次

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 今般医学書院から,アメリカでベストセラー作家といわれてきたJerome Groopman医師とPamela Hartzband医師合作の“Your Medical Mind:How to decide what is right for you”という著書が,札幌医科大学卒業後米国留学の経験をもつ堀内志奈医師によって日本語に訳され,『決められない患者たち』という邦題で出版された.

 これはハーバード大学医学部教授と,ベス・イスラエル病院に勤務する医師の二人が,患者とその主治医に密着して得た情報を行動分析して,一般読者にわかりやすく書かれた本である.

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 毛包幹細胞は毛包の立毛筋付着部近傍のバルジ領域に存在することが知られている.よく知られているケラチン15をはじめとして,これまでいくつかの分子が毛包幹細胞のマーカーとして報告されてきた.本論文の著者らは,遺伝子改変マウスを用いてHopxが小腸陰窩に存在する幹細胞のマーカーであることを過去に発表している.本研究において,著者らは,マウスの休止期毛におけるバルジ領域の外毛根鞘基底層にHopx陽性細胞が存在し,それらの細胞群は毛包上皮のすべての細胞を供給する多分化能を持つ幹細胞の特性を有することを明らかにするとともに,これらの細胞が休止期毛においてバルジ幹細胞の維持に重要な役割を果たす毛包上皮内層に位置するケラチン6陽性細胞を生み出す細胞集団であることを示した.

 著者らはまず,毛周期の任意の時期においてHopxを発現する細胞を特異的に蛍光標識できる遺伝子改変マウスを作成した.これを用いて,毛周期のさまざまな時期にHopx発現細胞を標識し,毛包のどの部分になるかを追跡したところ,あらゆる毛包上皮構成細胞に分化する能力を有することがわかった.さらに,Hopxを発現する細胞は毛包系の細胞のみならず表皮細胞へと分化し,創傷治癒にも寄与することも明らかとなった.これらの結果より,Hopx発現細胞が毛包幹細胞の特性を有することが示された.

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 近年,疼痛感覚と独立した瘙痒特異的な神経の存在の有無につき,さまざまな研究がなされてきたがその存在は明らかにされていない.今回,疼痛および瘙痒の感覚神経として知られる短径後根神経節神経に発現する蛋白であるMrgprファミリーに注目し,MrgprA3陽性ニューロンを解析することで,同ニューロンが瘙痒特異的な神経である可能性が示された.遺伝子改変マウスで同ニューロンを蛍光標識し,観察することで,このニューロンが表皮にのみ終末すること,また,GRPR陽性の中枢神経(瘙痒刺激に関するとして知られる中枢神経)に接続することがわかった.また,各種瘙痒刺激を加えると,同ニューロンが発火することが確認された.さらに,瘙痒に関わっていることを確認するためにいくつかの実験が行われた.ジフテリア毒素投与にて,MrgprA3陽性ニューロンが特異的に破壊されるマウスを用いた実験では,同ニューロンが破壊されることで急性疼痛や温度刺激に対する反応は変化しないまま,複数の瘙痒刺激に対しての掻爬行為が減少した.加えて,本来さまざまな神経に発現しているTRPV1(カプサイシン受容体)を,TRPV1ノックアウト下でMgrprA3陽性ニューロンにのみ発現させた際に,疼痛刺激であるはずのカプサイシン刺激によって,疼痛反応ではなく瘙痒反応が引き起こされるようになることもわかった.このような結果からMrgprA3陽性ニューロンは瘙痒に特異的に関わるニューロンであることが示唆され,更にはこのニューロンに着目することで,瘙痒メカニズムの解明や,瘙痒症に対する新規治療の開発につながる可能性が考えられた.

次号予告

投稿規定

あとがき 石河 晃
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 2014年を迎え読者の皆様方にはそれぞれ新たな気持ちでスタートを切られたことと存じます.時間は一定の速度で過ぎ去る一方ですが,季節は循環していて,カレンダーが新しくなり,1月に戻ることで気分はずいぶんと変わるのは不思議なものです.

 私事ですが昨年父が86歳で他界しました.病理医であり,つい数年前まで標本を見ていました.顕微鏡は老眼でもピントがよく合うので頭の老化防止にはうってつけで,あまり病気にもなったことがない,という頭も体も丈夫な男でしたが,75歳時急性胆囊炎で胆囊摘出術中に敗血症性ショックになってから,前立腺癌(ホルモン療法),不安定狭心症(冠動脈バイパス術),腎盂尿管癌(左腎・尿管切除),膀胱癌(膀胱切除・尿管瘻造設),肝細胞癌(肝右葉部分切除)と晩年は癌のデパートのようでした.いつも絶妙のタイミングで発見され,その都度根治切除ができ完全復活しておりました.腹腔臓器が減ってゆき,満身創痍でしたが昨年の春に5つめの癌である肺癌が見つかり(これもなんと原発性),ついに手術適応なしとなりました.悪いところを切り取ることで平均寿命より長生きしたことは間違いありません.癌の遺伝子学的背景が解明されるにつれ,内科的治療で癌を克服できる日が来るのではないかという憶測があるなか,外科的治療は依然として癌治療の根幹をなしていることを再認識しました.早期発見,早期切除に勝る癌の根治療法はありません.総合診療医が日本の専門医制度の一領域となることが決まっていますが,将来,ファーストアクセスを担う科として世の中に浸透してゆくと,皮膚悪性腫瘍の早期病変をかぎ分け専門医へ紹介する力の如何によって皮膚癌患者の予後が左右されることとなります.ある程度のことを総合診療医に要求あるいは期待するようにしなければならない日が来るのでしょうか.オーストラリアで開かれた世界ダーモスコピー会議では多数の地元のホームドクターがダーモスコピーの勉強に集まっていました.悪性黒色腫ががん死亡のトップの国であるにもかかわらず,人員的にも地理的にも皮膚科医へのアクセスが容易ではないためなのでしょう.しかし,日本では将来的にも皮膚科医が担うべき部分であると思いますが,考え方が古いでしょうか.

著作財産権譲渡同意書

基本情報

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臨床皮膚科
68巻1号 (2014年1月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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