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文献紹介 Hopxの発現は幹細胞維持に重要なケラチン6陽性細胞の前駆細胞であり,かつ多分化能を有する毛包幹細胞でみられる
本田 治樹
1
1慶應義塾大学
pp.69
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103876
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毛包幹細胞は毛包の立毛筋付着部近傍のバルジ領域に存在することが知られている.よく知られているケラチン15をはじめとして,これまでいくつかの分子が毛包幹細胞のマーカーとして報告されてきた.本論文の著者らは,遺伝子改変マウスを用いてHopxが小腸陰窩に存在する幹細胞のマーカーであることを過去に発表している.本研究において,著者らは,マウスの休止期毛におけるバルジ領域の外毛根鞘基底層にHopx陽性細胞が存在し,それらの細胞群は毛包上皮のすべての細胞を供給する多分化能を持つ幹細胞の特性を有することを明らかにするとともに,これらの細胞が休止期毛においてバルジ幹細胞の維持に重要な役割を果たす毛包上皮内層に位置するケラチン6陽性細胞を生み出す細胞集団であることを示した.
著者らはまず,毛周期の任意の時期においてHopxを発現する細胞を特異的に蛍光標識できる遺伝子改変マウスを作成した.これを用いて,毛周期のさまざまな時期にHopx発現細胞を標識し,毛包のどの部分になるかを追跡したところ,あらゆる毛包上皮構成細胞に分化する能力を有することがわかった.さらに,Hopxを発現する細胞は毛包系の細胞のみならず表皮細胞へと分化し,創傷治癒にも寄与することも明らかとなった.これらの結果より,Hopx発現細胞が毛包幹細胞の特性を有することが示された.
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