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文献紹介 瘙痒感に特異的に関与する神経受容体系
入來 景悟
1
1慶應義塾大学
pp.79
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103877
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近年,疼痛感覚と独立した瘙痒特異的な神経の存在の有無につき,さまざまな研究がなされてきたがその存在は明らかにされていない.今回,疼痛および瘙痒の感覚神経として知られる短径後根神経節神経に発現する蛋白であるMrgprファミリーに注目し,MrgprA3陽性ニューロンを解析することで,同ニューロンが瘙痒特異的な神経である可能性が示された.遺伝子改変マウスで同ニューロンを蛍光標識し,観察することで,このニューロンが表皮にのみ終末すること,また,GRPR陽性の中枢神経(瘙痒刺激に関するとして知られる中枢神経)に接続することがわかった.また,各種瘙痒刺激を加えると,同ニューロンが発火することが確認された.さらに,瘙痒に関わっていることを確認するためにいくつかの実験が行われた.ジフテリア毒素投与にて,MrgprA3陽性ニューロンが特異的に破壊されるマウスを用いた実験では,同ニューロンが破壊されることで急性疼痛や温度刺激に対する反応は変化しないまま,複数の瘙痒刺激に対しての掻爬行為が減少した.加えて,本来さまざまな神経に発現しているTRPV1(カプサイシン受容体)を,TRPV1ノックアウト下でMgrprA3陽性ニューロンにのみ発現させた際に,疼痛刺激であるはずのカプサイシン刺激によって,疼痛反応ではなく瘙痒反応が引き起こされるようになることもわかった.このような結果からMrgprA3陽性ニューロンは瘙痒に特異的に関わるニューロンであることが示唆され,更にはこのニューロンに着目することで,瘙痒メカニズムの解明や,瘙痒症に対する新規治療の開発につながる可能性が考えられた.
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