臨床皮膚科 62巻10号 (2008年9月)

連載 Clinical Exercise・13

Q考えられる疾患は何か? 西川 武二
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症例

患 者:46歳,女性

主 訴:軀幹の線状紅斑

既往歴・家族歴:特記すべきことなし.

生活歴:最近の海外旅行歴なし.

現病歴:2週間前より背部から左上腹部に及ぶかゆみのある線状の隆起性紅斑に気づいた.3日前にその発疹の先端部を切除されたが,さらに臍を超えて,右上腹部へ線状の発疹が延長した.よく訊いてみると寿司を食べて2日後から生じたとのことだった.

現 症:腹部全体にわたって淡紅色の浮腫性,線状隆起性紅斑が蛇行性に分布している.背部には左腰から上行,蛇行し左側胸へ廻る褪色しつつある扁平となった紅斑がある.新しい発疹には奇妙なピリッとする感じを訴えた.全身状態に異常はない.

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要約 42歳,女性.1か月前より顔面・頸部・両上肢に皮疹が出現した.初診時,体重29kgと著明なるい痩があり,顔面・頸部・両上肢に赤褐色調の紅斑を認めた.頸部の皮疹は首飾り様のCasal's necklaceを呈していた.その後,下肢に新生した皮疹はびらん・潰瘍を形成し,便秘・血圧低下・意識障害・下肢遠位筋の筋力低下による歩行困難を認めた.紅斑部の病理組織像では表皮および表皮化の裂隙がみられた.血中ニコチン酸値の低下があり,穀物類しか食べない極端な偏食があることが判明し,ニコチン酸の食餌性欠乏によるペラグラと診断した.ニコチン酸アミドの投与にて,皮疹は速やかに軽快した.

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要約 症例1:64歳,女性.マタタビの葉の油炒めを食べたところ,翌日から全身に固定疹に類似した多型滲出性紅斑が出現した.乾燥マタタビ(葉)がDLST陽性を示し,マタタビアレルギーと診断した.症例2:33歳,女性.マタタビの葉のテンプラやおひたしを食べた翌日に,左手背など以前に生じたときと同一部位に紅斑を生じた.症例3:57歳,女性.マタタビの葉のおひたしを食べた後で,右手関節など前回と同一部位に固定疹様の紅斑を生じた.マタタビは虫瘤の実がマタタビ酒として重用されるが,葉の食用は一部地域の食文化であるためか,今までアレルギーの報告はない.3例とも治癒後に色素沈着を残す固定疹様の臨床経過をたどっている.

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要約 48歳,男性.慢性炎症性脱髄性神経根炎に対し,γ-グロブリン大量療法(0.4g/kg/日,5日間)開始4日目より掌蹠に水疱が多発し,その後,全身に丘疹と紅斑が出現した.初診時,顔面ではびまん性の浮腫性紅斑を,軀幹では多くは毛孔一致性の紅色丘疹と紅斑を認め,掌蹠には小水疱と紅色丘疹が混在していた.病理組織像は,表皮内水疱,表皮内浮腫,真皮上層の血管周囲に炎症細胞浸潤と,肩の紅斑では汗管周囲と,毛包壁内およびその周囲にも炎症細胞浸潤を認めた.検査所見で肝酵素の上昇を伴った.γ-グロブリン大量療法に伴う薬疹と考え,ステロイド外用と抗ヒスタミン薬の内服を行い,皮疹は約2週間で略治した.再びγ-グロブリン大量療法(2,3回目)を行ったところ,同様の皮疹が全身に出現し,初回より強い反応を呈したため,略治までに約3か月を要した.4回目はプレドニゾロン30mg/日内服を併用したところ,軽症で経過した.

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要約 58歳,女性.数十年来のキャベツを主体とした極端に偏った食生活による摂食障害があった.初診の8か月前より両下肢に中心退色傾向のある,鱗屑を付す環状から不整形の紅斑が出現した.病理組織学的に錯角化を伴う過角化と表皮細胞の空胞変性,好酸性壊死を認め,血液検査上,複数のアミノ酸と亜鉛値が低下していた.グルカゴン値は正常で,グルカゴノーマは否定的であった.摂食障害による低栄養に伴う壊死性遊走性紅斑と診断した.アミノ酸,亜鉛製剤を投与し,血中アミノ酸,亜鉛値は改善し,皮疹も消失した.本症例は,摂食障害による低栄養状態が壊死性遊走性紅斑の原因となることを示唆した.

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要約 84歳,女性.6年前に多発性脳梗塞を発症し,以降の食事は半消化態栄養剤であるテルミールソフト®が中心であった.当科受診の1か月前から顔・陰部・四肢先端の弛緩性水疱を伴う紅斑が出現し,徐々に増悪した.臨床的に典型的な皮疹と血中亜鉛値低下(18μg/dl),および亜鉛の投与により皮疹と低下していた意識レベルが速やかに改善したことから,本症例を亜鉛欠乏症と診断した.亜鉛欠乏は栄養摂取に極端な偏りがなければ通常は生じないとされるが,自験例は経腸栄養剤に栄養を頼らざるをえない状況で亜鉛含有が少ない製品を使用し,亜鉛摂取量が不足して発症した.経腸栄養剤は亜鉛をはじめとする微量元素に関し,製品により含有量のばらつきが比較的大きく,高齢者の皮膚炎を診察する際は,亜鉛含有量が低く設定された製品の偏った使用による本症を念頭に入れる必要がある.

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要約 26歳,男性.右耳垂後面の小豆大の灰青色斑を主訴に受診した.生検により直径0.8mm,長さ3.7mmの金属片が摘出された.病理組織では,表皮基底膜,真皮から脂肪織の血管周囲,毛包の基底層,膠原線維間に紐状から顆粒状の褐色沈着物を認めた.本人に確認したところ,10年前に同部にピアス孔を開け,孔の閉塞防止のためピアス軸のみ留置していたことを思い出した.金属分析では,金属片は銀95.8%,銅4.2%を含有していた.以上より,埋没したピアス軸による限局性銀皮症と診断した.ピアスによる限局性銀皮症の報告は,本邦では本例が第1例目である.

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要約 64歳,男性.四肢と体幹に多発し,激しいかゆみを伴う丘疹と結節に対してステロイド外用薬や抗アレルギー薬内服により治療を受けていたが,再発を繰り返した.今回,下腿の丘疹の増悪・増数とともに緊満性水疱も出現した.病理組織像は水疱部では表皮下水疱で好酸球浸潤を認め,丘疹部では軽度の表皮肥厚と真皮上層への好酸球浸潤を認めた.蛍光抗体直接法では水疱部および丘疹部いずれにおいても表皮真皮境界部にIgGとC3の線状の沈着が認められた.また,蛍光抗体間接法でもIgGとC3の沈着が認められた.以上により結節性類天疱瘡と診断した.

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要約 57歳,男性.約3か月前より前胸部に自覚症状のない小水疱が3個出現し,背部にも拡大した.ステロイド外用にて速やかに上皮化したが,出現,消退を繰り返した.初診時,全身各所に20個ほど爪甲大の紅斑とびらんが散在し,数か所に小水疱が存在した.粘膜疹はなかった.病理は角層直下の水疱で,棘融解細胞を認めた.蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgGとC3が沈着していた.抗デスモグレイン1抗体のインデックス値は116で,抗デスモグレイン3抗体は陰性であった.ステロイド外用療法のみで軽快した.

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要約 58歳,男性,エアコン取り付け工事業.寝たきりの高齢者の寝具の上に毛布を広げて,その上で作業を行った後,下肢から疥癬を発症した.孫との添い寝により,家族8人とそのうち1人の婚約者,計9人に感染が拡大した.疥癬トンネルは新生児では頰部に,その他の家族全員で指間に認められた.2名を除く全員に,鏡検あるいはダーモスコピーにて虫体・虫卵が確認された.授乳婦と乳幼児3人はペルメトリンクリームの外用で,その他の5人はイベルメクチン(ストロメクトール®)の内服で軽快した.ペルメトリンクリームは安全性,有効性ともに高く,乳幼児,授乳婦にも使える外用薬であり,本邦での認可が待たれる.

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要約 41歳,男性.26歳時に鞍上部神経膠腫に罹患し,腫瘍摘出術を施行された.33歳時に再発し,再度摘出術を受けた.その後,汎下垂体機能低下症を併発し,プレドニゾロンを内服していた.2005年12月,車いすより転倒し下肢に浅い外傷を負った.2006年1月より同部に結節が出現し,拡大したため当科を受診した.組織像は,真皮中層~脂肪織にびまん性の炎症性細胞浸潤を認め,一部は肉芽腫病変を示した.膿の培養ではMycobacterium chelonaeが同定された.皮膚病変に対して,セフォペラゾンナトリウム・スルバクタムナトリウム,エリスロマイシン,エチオナミドの投与と温熱療法を施行したところ,約2か月で治癒した.

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要約 47歳,女性.初診時,左頰部に表面粗糙で中央が軽度陥凹した直径3mm大の赤褐色の小結節が認められた.病理組織学的には,表皮は不全角化を伴う角栓を取り囲むようにカップ状に陥凹していた.陥凹底部および側方では,著しい裂隙を形成しながら,1層ないし2層の異型性に乏しい基底細胞様細胞が絨毛状に増殖する像がみられた.裂隙内には棘融解細胞や異常角化細胞が散見された.本症例をwarty dyskeratomaと診断した.連続切片にて,角栓側壁の表皮と毛包脂腺系との連続性が確認され,一部の基底細胞様細胞および裂隙内の細胞がperiodic acid Schiff染色陽性であったことから,本疾患は毛包由来であると考えた.

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要約 29歳,女性.上口唇の結節潰瘍型基底細胞癌に対し,腫瘍切除術を施行した.しかし,初回手術の5年後,10年後,15年後,17年後に局所再発を繰り返し,手術,化学療法,放射線治療,インターフェロン療法などの治療を行った.19年後には肺転移巣が出現し,外科的切除を3回行った.再度肺野に転移巣が出現したが,心臓に接する部位であり,手術を断念し,放射線治療および化学療法を施行したところ,転移巣は消失した.初診より25年後,療養型病院に入院中に敗血症により死亡した.このとき施行された胸部CTでは,肺野に腫瘤影は認めなかった.自験例では遠隔転移後約10年間生存し,後半の5年間はdisease freeであり,放射線治療を含めた集学的治療が有効であったと考えた.

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要約 70歳,女性.2歳時に熱湯により左前腕の熱傷を負い,その後瘢痕治癒した.1年半前より同部にびらんが出現し,他医で治療を行ったが上皮化が遷延した.初診時,以前存在した瘢痕に一致して表面紅色,径13mm大の一部びらんを呈する易出血性の紅斑が存在した.生検により,基底細胞癌と診断した.拡大切除術を施行,局所皮弁を用いて再建した.熱傷瘢痕に生ずる悪性腫瘍は有棘細胞癌がほとんどで,基底細胞癌は検索しえた限り本邦で過去20年に15例と比較的稀である.加えて自験例では,本邦では基底細胞癌の多くにみられる黒褐色調を呈しておらず,この点においても稀と思われた.

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要約 症例1:55歳,男性.罹病期間は不明の臀部慢性膿皮症に有棘細胞癌を併発した.センチネルリンパシンチグラフィで左鼠径リンパ節に集積がみられたが転移はなく,また画像上,遠隔転移は認めなかった.手術および化学療法を行った.症例2:57歳,男性.30年以上前よりあった臀部慢性膿皮症に有棘細胞癌を併発した.鼠径リンパ節転移,遠隔転移は認めなかった.手術および化学療法を行った.症例1は術後2年,症例2は術後1年半の時点で,再発や転移の所見はない.臀部慢性膿皮症が有棘細胞癌の発生母地になりうることは広く知られているが,実際に癌化した臀部慢性膿皮症の治療を経験する機会は決して多くはない.自験例を通して,臀部慢性膿皮症は早期に根治的手術療法を行うべきであると考えた.

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要約 76歳,女性.約半年前から,左大陰唇の徐々に増大する結節を自覚した.初診時,2cm大のびらんを伴う紅色結節を認め,子宮頸癌の既往と血中SCC高値から,転移性皮膚腫瘍を疑った.生検標本では腫瘍細胞は核異型,核分裂像を認める基底細胞様細胞と明るい胞体をもつ泡沫状細胞からなり,泡沫状細胞は脂肪染色陽性,免疫組織化学染色ではEMA,HMFG-2が陽性,S-100蛋白は陰性であった.さらに,電子顕微鏡所見で大小さまざまな脂肪滴や脂胞の存在を認め,脂腺癌と診断した.腫瘍辺縁から5mm離して全切除し,術後1年で再発は認めない.子宮頸癌の既往があり,Muir-Torre症候群の可能性を検討した.

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要約 55歳,男性.HIV陽性.初診の約4年前から両足底を中心に有痛性紫紅色斑が出現した.皮疹の拡大と疼痛の増強があり,受診した.初診時,両足底から内側縁および右第3趾に境界明瞭な浸潤を伴う紫褐色の局面を認めた.両下腿から足背は腫脹し,熱感を伴っていた.病理組織像では,膠原線維間に赤血球を容れた多数の不規則な裂隙の形成がみられた.他臓器病変なく,皮膚に限局したAIDS関連Kaposi肉腫と診断した.疼痛としびれのために歩行困難となったため,多剤併用抗HIV療法に加え,病変に対してX線を30Gy照射した.照射終了後2週間で自覚症状は改善し,歩行可能になった.1か月後には,局面は淡い紫褐色の色素沈着を認めるのみで,速やかな治療効果が得られた.

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要約 86歳,男性.初診の約4か月前より背部に紅色皮疹が出現した.ステロイドの外用に反応せず,皮膚生検の結果,悪性リンパ腫と診断された.病理組織学的に真皮にリンパ芽球様形態を示す中型の異型リンパ球が,血管と付属器周囲に集簇し大小の胞巣を形成していた.異型リンパ球はCD4,CD56,CD123が陽性であることから,CD4+CD56+hematodermic neoplasmと診断した.全身検索で皮膚以外に病変を認めなかった.本人,家族が治療を希望せず,無治療で経過を観察している.初診の約4か月後より顔面,頭部にも皮疹が出現したが,いまだ皮膚以外に病変を認めない.

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要約 38歳,男性.再発性陰部ヘルペスにて近医に通院中,ほぼ全身に皮疹が生じてきたため,当科へ紹介となった.初診時,ほぼ全身に小豆大までのびらん,痂皮を伴う紅色丘疹が多発し,陰部潰瘍,口腔内の白苔,全身倦怠感も伴っていた.問診にて同性愛者であることが判明した.精査にてHIV抗体および梅毒血清反応が陽性,皮膚生検にてWarthin-Starry染色陽性の菌体を認め,HIV感染に伴う第2期梅毒と診断した.アモキシシリン3,000mg/日とプロベネシド1,000mg/日を併用して2週間投与したところ,発熱が持続したため,ペニシリンアレルギーを疑った.塩酸ドキシサイクリン200mg/日に変更し,さらに2週間投与して,皮疹は色素沈着を残して消退した.

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要約 症例1:64歳,女性.右下眼瞼の黒色結節を主訴に当科を受診した.病理組織学的検査にて基底細胞癌と診断した.腫瘍より5mm離して切除し,lateral orbital flapにて再建した.症例2:70歳,女性.右下眼瞼の黒色斑を主訴に当科を受診した.切除生検にてlentigo malignaと診断した.腫瘍周囲より5mm離して切除し,lateral orbital flapにて再建した.症例3:58歳,女性.左下眼瞼の黒色結節を主訴に当科を受診した.病理組織学的検査にて基底細胞癌と診断した.腫瘍周囲より5mm離して切除し,lateral orbital flapにて再建した.いずれの症例も下眼瞼の外反などを起こさず,術後の経過は良好である.本法を用いることにより,従来の下眼瞼の再建で用いられる皮弁と比較して,皮膚の剝離範囲を狭くすることができる.これにより術後の侵襲を軽減させることができるため,高齢者での再建方法としても有用であると考える.

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 前回,フランスで開催された4thGeorg Rajka International Symposium on Atopic Dermatitis(ISAD)の印象記を書かせていただいた.自分の講演の後は,大御所たちの講演を聞いて頷くことと,海辺のレストランでワインと海の幸に舌鼓をうつことが仕事で,実に気楽な旅であった.しかし,一転して今回は学会の開催者側としてこの印象記を書くことになってしまったのである.

 今回は,ブラジルのDr. Robert Takaokaの発案で,学会前日に特別なpreliminary meetingが開催された.これはイギリス,アメリカ,ブラジルなどの患者支援団体および医師,コメディカルを集めて,いろいろな立場からアトピー性皮膚炎(AD)のケアを考えようという目的で開かれた20名程度の小さな会であった.代表者のショートトークの後に,その内容について車座になって議論し合ったが,思いのほか楽しかったし,勉強になった.どの国においても,AD患者に対する教育を今後の課題としているのが興味深かった.また,日本においても,患者支援組織の設立が重要であると再認識した次第である.

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 Japanese Association for Cutaneous Lymphoma(JACL)とInternational Society for Cutaneous Lymphoma(ISCL),European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)-Cutaneous Lymphoma Task Forceの合同研究会が,International Investigative Dermatology(IID)2008のサテライトワークショップとして,2008年5月13日に京都国際会議場において浜松医大の瀧川教授を会頭として開催されました(写真1,2)

 ISCLは皮膚のリンパ腫およびその関連疾患の研究の促進,研究者の交流の促進,診断や治療に関するコンセンサスを得ることを目的として1992年に設立された世界規模の団体で,これまでに紅皮症型皮膚T細胞リンパ腫,初期菌状息肉症の診断,菌状息肉症以外の皮膚T細胞リンパ腫の病気分類,皮膚B細胞リンパ腫の治療についての提案を発表しています.ヨーロッパの皮膚リンパ腫の研究者を中心としたEORTC-Cutaneous Lymphoma Task Forceと共同で毎年研究会を開催しているのですが,IID2008が京都で開催されるのに合わせて,今年はJACLと共催の形で日本で開催されました.当科の岩月教授が研究会のVice President and Secretaryをされていた関係もあり,私も当日の朝のBoard meetingから雑用係兼聴衆として参加させていただきました.

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 さわやかな秋の風に運ばれて,この本は私の前にやってきた.正直,書評はあまり気乗りする仕事ではなかったが,読み始めるうちにぐいぐい引き込まれた.本書はタイトルに『がん医療におけるコミュニケーションスキル』とあるが,その内容はがん医療の枠にとどまらずコミュニケーションの基本にも触れられており,わが国独自の,根拠に基づいたコミュニケーションの実践書であるということができよう.

 付属しているDVDを参照しながら本書を読破すると,編者でいらっしゃる国立がんセンター東病院臨床開発センターの内富庸介先生,藤森麻衣子先生が臨床研究をもとに開発されたSHAREプロトコールを用いたがん医療におけるコミュニケーションの基本と実際を臨場感を伴って学習することが可能である.巻頭には悪い知らせを伝える際のコミュニケーションに関する今までの知見や,欧米のコミュニケーションスキルトレーニングのプロトコールとSHAREの比較がまとめられ,evidence-basedな構成となっている.筆者が担当している日本緩和医療学会の教育プログラムEPEC-0では現在,悪い知らせを伝える際のコミュニケーション・スキルとしてSPIKESを紹介しているが,来年度からカリキュラムの改訂にあたり,今後このSHAREプロトコールに基づいたものに変更することを検討している.また,第一線で働くがん治療医,精神腫瘍医,緩和ケア医が,難しいケースへの対応や終末期がんへの対応について執筆されており,さまざまな臨床場面の応用が可能で,まさにかゆいところに手が届く配慮がなされている.

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 言うまでもないことだが,著者の斎田俊明先生は本邦におけるダーモスコピーのパイオニアであり第一人者である.ダーモスコピーがあまり注目を集めなかった時代からすでに世界に向けて多くの研究成果を発信するとともに,この革新的な皮膚科診断手法をわが国で普及させるために心を砕かれてきた.その普及への着実な努力の過程で,節目となる2つの出来事があった.1つは,斎田先生が中心に編集された『カラーアトラス ダーモスコピー』(金原出版)の出版であり,これにより,われわれは本邦において共通の言語と所見認識をもつことができるようになった.そしてもう1つは,その有用性が認められ,少額ながらも保険適用が認められたことである.

 こういった背景のもとに,現在では多くの皮膚科医がダーモスコピーを日常診療に取り入れるようになり,診断精度の向上,ひいては皮膚科診療の専門性の向上に大いに貢献することが期待されている.

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あとがき 瀧川 雅浩
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 去る5月11~13日,京都国際会館で第5回アトピー性皮膚炎国際シンポジウム(ISAD)を主催いたしました.2005年Bordeauxでの第4回ISAD(Alan Taieb教授主催)のさい,会場でJohannes Ring教授に突如として,“次回はHiro, You!”と何のネゴシエーションもなく指名され,慌てふためいてから約2年半,なんとか開催にこぎつけました.開催場所に関しては,ちょうど直後に国際研究皮膚科学会(IID)が同じ京都国際会館で開催されるということで,京都に決めました.結果的には参加者が約250人(招待者も含む)と予想を上回る数でした.ISADは1970年代初めに,Georg Rajka教授がクローズドのアトピー性皮膚炎研究会を開催したことが嚆矢で,その後,数回Rajka教授が主催したのち国際学会となり,Davos,Rome,Oregon,Bordeauxで2年に1回開催されました.特にOregon 開催時は,帰国予定日の朝,New Yorkの同時多発テロでSan Franciscoに島田教授と足止めになり,大変でした.私自身も何回かはISADに参加したのですが,まさか自分で主催するとは夢にも思いませんでした.

   今回は初のアジア開催ということで,Hanifin教授のsuggestionもあり,太藤,上原両名誉教授にもお越しいただきました.太藤,上原両先生は,日本いや世界のアトピー性皮膚炎研究を牽引してきた研究者です.atopic skinの毛包性丘疹は組織的に明らかなspongiosisがみられ,アトピー性皮膚炎そのものである,とArchives of Dermatologyに報告されました.さて,会はまずThomas Bieber教授の“Atopic Dermatitis;One or Several Diseases?”という演題でスタートしました.その後,かゆみのメカニズム,感染症の問題,治療,Psychodermatology,Evidence-based dermatology,患者教育の重要性など,さまざまなテーマについて発表がありました.発表を聞いていて少々気になったのが,病因についてです.今のトレンドは,アレルギー機序プラス皮膚構成蛋白(特にバリアーに関連した)遺伝子の異常を組み合わせてストーリーを作るというものです.その中でも,フィラグリン遺伝子の変異が問題になっており,これを呪文のように唱える発表者が多くみられました.しかし,バリアーに関連する分子は無数にあり,今はフィラグリンでも来年は別の蛋白になるのではないか,といった冷めた意見もありました.研究に旬があるかどうかわかりませんが,流行を追うといった最近の研究の流れを否が応でも感じました.いずれにしても,シンポジウムは和気藹々のうちに2日間の予定を無事終了しました.教室からは,瀧川,橋爪,八木,伊藤が外人相手に奮闘しました.

基本情報

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臨床皮膚科
62巻10号 (2008年9月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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