書評
―編:内富庸介,藤森麻衣子―がん医療におけるコミュニケーション・スキル悪い知らせをどう伝えるか[DVD付]
木澤 義之
1
1筑波大学大学院・人間総合科学研究科
pp.711
発行日 2008年9月1日
Published Date 2008/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412102102
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さわやかな秋の風に運ばれて,この本は私の前にやってきた.正直,書評はあまり気乗りする仕事ではなかったが,読み始めるうちにぐいぐい引き込まれた.本書はタイトルに『がん医療におけるコミュニケーションスキル』とあるが,その内容はがん医療の枠にとどまらずコミュニケーションの基本にも触れられており,わが国独自の,根拠に基づいたコミュニケーションの実践書であるということができよう.
付属しているDVDを参照しながら本書を読破すると,編者でいらっしゃる国立がんセンター東病院臨床開発センターの内富庸介先生,藤森麻衣子先生が臨床研究をもとに開発されたSHAREプロトコールを用いたがん医療におけるコミュニケーションの基本と実際を臨場感を伴って学習することが可能である.巻頭には悪い知らせを伝える際のコミュニケーションに関する今までの知見や,欧米のコミュニケーションスキルトレーニングのプロトコールとSHAREの比較がまとめられ,evidence-basedな構成となっている.筆者が担当している日本緩和医療学会の教育プログラムEPEC-0では現在,悪い知らせを伝える際のコミュニケーション・スキルとしてSPIKESを紹介しているが,来年度からカリキュラムの改訂にあたり,今後このSHAREプロトコールに基づいたものに変更することを検討している.また,第一線で働くがん治療医,精神腫瘍医,緩和ケア医が,難しいケースへの対応や終末期がんへの対応について執筆されており,さまざまな臨床場面の応用が可能で,まさにかゆいところに手が届く配慮がなされている.
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