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去る5月11~13日,京都国際会館で第5回アトピー性皮膚炎国際シンポジウム(ISAD)を主催いたしました.2005年Bordeauxでの第4回ISAD(Alan Taieb教授主催)のさい,会場でJohannes Ring教授に突如として,“次回はHiro, You!”と何のネゴシエーションもなく指名され,慌てふためいてから約2年半,なんとか開催にこぎつけました.開催場所に関しては,ちょうど直後に国際研究皮膚科学会(IID)が同じ京都国際会館で開催されるということで,京都に決めました.結果的には参加者が約250人(招待者も含む)と予想を上回る数でした.ISADは1970年代初めに,Georg Rajka教授がクローズドのアトピー性皮膚炎研究会を開催したことが嚆矢で,その後,数回Rajka教授が主催したのち国際学会となり,Davos,Rome,Oregon,Bordeauxで2年に1回開催されました.特にOregon 開催時は,帰国予定日の朝,New Yorkの同時多発テロでSan Franciscoに島田教授と足止めになり,大変でした.私自身も何回かはISADに参加したのですが,まさか自分で主催するとは夢にも思いませんでした.
今回は初のアジア開催ということで,Hanifin教授のsuggestionもあり,太藤,上原両名誉教授にもお越しいただきました.太藤,上原両先生は,日本いや世界のアトピー性皮膚炎研究を牽引してきた研究者です.atopic skinの毛包性丘疹は組織的に明らかなspongiosisがみられ,アトピー性皮膚炎そのものである,とArchives of Dermatologyに報告されました.さて,会はまずThomas Bieber教授の“Atopic Dermatitis;One or Several Diseases?”という演題でスタートしました.その後,かゆみのメカニズム,感染症の問題,治療,Psychodermatology,Evidence-based dermatology,患者教育の重要性など,さまざまなテーマについて発表がありました.発表を聞いていて少々気になったのが,病因についてです.今のトレンドは,アレルギー機序プラス皮膚構成蛋白(特にバリアーに関連した)遺伝子の異常を組み合わせてストーリーを作るというものです.その中でも,フィラグリン遺伝子の変異が問題になっており,これを呪文のように唱える発表者が多くみられました.しかし,バリアーに関連する分子は無数にあり,今はフィラグリンでも来年は別の蛋白になるのではないか,といった冷めた意見もありました.研究に旬があるかどうかわかりませんが,流行を追うといった最近の研究の流れを否が応でも感じました.いずれにしても,シンポジウムは和気藹々のうちに2日間の予定を無事終了しました.教室からは,瀧川,橋爪,八木,伊藤が外人相手に奮闘しました.
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