臨床放射線 62巻11号 (2017年10月)

特集 泌尿器の画像診断と放射線治療

画像診断 腎臓

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本稿では,①腎腫瘤をみた場合にまず評価すべき項目,②代表的な充実性腎腫瘍の画像所見,③画像所見からの良悪性鑑別および腎細胞癌(renalcell carcinoma:RCC)のサブタイプ診断について,CT とMRI を中心に述べる。なお本文中に小径腎腫瘍という用語がたびたび登場するが,これは一般に4 cm 未満で浸潤傾向のないものと定義される。小径腎腫瘍は良性の頻度が比較的高く,RCC であっても悪性度の低いものが多い。このため小径腎腫瘍のマネージメントについては,腎温存術やアブレーション治療などの低侵襲治療に加え,active surveillance も選択肢として提唱されており,画像や経皮的生検による良悪性鑑別,悪性腫瘍の組織型および組織学的異型度の診断が近年注目を集めている。

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嚢胞性腎腫瘤の多くは単純性嚢胞であり,超音波検査やCT,MRI で偶発的に発見され,容易に診断されることが多い。しかし中には嚢胞壁や隔壁の肥厚あるいは充実部があり,悪性腫瘍の除外が必要となる場合もある。本章では嚢胞性腎腫瘤の良悪性の鑑別の基本となるBosniak 分類を中心に解説し,さらに各論で成人の主要な嚢胞性病変についても触れる。

腎血管性病変 竹林 茂生 , 鳥本 いづみ
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腎血管性病変の診断や詳細な解剖学的評価には,空間分解能の優れた64 列以上の造影マルチディクターCT(multiple—dector computedtomography:MDCT)によって得られたvolumedata からの再構成画像の評価が極めて有用である。また,腎血管性病変にはインターベンショナル・ラジオロジー(interventional radiology:IVR)による治療が要求される疾患も多く,放射線科医にとっては,それぞれの病態を理解し,治療方針を検討するためのMDCT 画像情報を提供することは重要である。

透析腎と合併症 亀井 俊佑 , 田嶋 強
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慢性腎臓病終末期に対する治療として,血液透析が臨床に導入されたのは1960 年のことである。それから半世紀余りが経過し,当時と比べると透析技術や全身管理の進歩により予後の著明な改善がなされた。しかしながら,透析患者に生じる合併症は今もなお大きな問題である。画像診断を通して,腎疾患診療の一端を担う我々放射線科医も,局所臓器だけでなく全身合併症とその背景を理解することが重要と思われる。本稿では,透析腎に発生する全身の様々な合併症の画像所見について解説する。日常診療の役に立てば幸いである。

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尿路感染は,ほとんど下部尿路に限局し,臨床症状や血液・尿検査で診断され,画像検査を必要としない。急性腎盂腎炎は,通常,臨床的に診断され,抗菌薬に良好に反応するため画像検査を必要としない1—3)。急性腎盂腎炎が疑われ,適切に治療しても,72 時間以内に良好な反応がみられない場合,糖尿病やその他の免疫不全状態にあり,治療への反応が不良な場合,泌尿器疾患の既往・手術歴がある場合,腎盂腎炎を繰り返す場合には,画像検査が推奨される2)。

尿路外傷 昆 祐理 , 松本 純一
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外傷診療におけるCT 検査は,以前は死のトンネルといわれてきたが,撮像時間の短縮や得られる情報量の多さからその有用性は高まり,現在では広く行われるようになってきている。JATECガイドライン第4 版から高エネルギー外傷症例に対する全身CT の適応やその読影方法が記載され,初診時にCT を撮像される機会が増えてきている。そのため,本項ではCT の所見を中心に解説していきたいと思う。

尿路結石 髙橋 哲
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尿路結石の典型例では臨床的に診断が容易であるが,保存的あるいは積極的治療か,再発防止も含めた治療方針の決定には,さらなる情報を得る必要がある。尿路結石の古典的画像診断は超音波,腹部単純写真,排泄性尿路造影であった。現在の被曝低減技術の進歩したCT や化学的組成を評価するdual energy CT,あるいはMRI によりどのような情報を提供すべきか,尿路結石症診療ガイドラインを参照しながら,治療方針決定にかかわる画像診断の現在について概説する。

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腎盂・尿管病変で頻度が高いのは結石であるが,こちらは他稿を参照頂くこととし,本稿では,腎盂・尿管腫瘍の90%以上を占める腎盂・尿管癌(尿路上皮癌)を中心に述べる。最近の腎盂・尿管癌の画像診断で,第一選択となったCT urographyや,MRI の撮影法,診断の手順について記載する。泌尿器科医の治療方針決定のための画像診断への要望と,現時点で画像診断の評価可能なレベル,および限界についても言及する。

画像診断 後腹膜

後腹膜 山田 隆之
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後腹膜は腹膜,腎筋膜,腹横筋膜により,前腎傍腔・後腎傍腔・腎周囲腔の3 つのコンパートメントに分けられている。Meyers のモデルにおける前腎傍腔は膵,十二指腸,結腸など臓器を含み,腎周囲腔は腎臓・副腎を含む。後腎傍腔内には特に臓器は存在しない。泌尿器領域ということで,ここでは腎周囲腔の解剖について少し詳しく触れたい。

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副腎は皮質と髄質からなり,発生学的に副腎皮質は中胚葉に由来する内分泌器官であるが,副腎髄質は外胚葉神経堤由来であり節後線維の欠落した交感神経節である。皮質は球状層,束状層,網状層の三層から構成される。球状層からは電解質コルチコイド(アルドステロン)が分泌され,束状層からは糖質コルチコイド(コルチゾール)が,そして網状層からはアンドロゲン(デヒドロエピアンドロステロン:DHEA)が分泌される。本稿ではその中で代表的な機能性副腎疾患ついて,画像診断における特徴や画像診断の果たすべき役割について概説する。

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副腎は,小さな臓器ではあるがホルモン産生を行う重要な内分泌臓器であり,また種々の腫瘍も生じうる。内分泌異常に起因する症状を有する患者に対して行われる副腎をターゲットとした画像検査には核医学検査が中心に行われている。しかしながら近年,超音波やCT,MRI,PET などの画像診断の発達・普及に伴い偶然発見される副腎腫瘤(偶発腫)の頻度が増加している。その頻度はCT において約5%1—2)であるが,剖検における発見率はその約4 倍にも及ぶ3)。したがって,今後,副腎偶発腫を画像的に診断する機会が必然的に増加すると考えられる。また,副腎は,肺癌・乳癌・腎癌・肝臓癌・悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の転移が多くみられる臓器でもあり,副腎偶発腫の画像的特徴や診断手順を熟知することは非常に重要である。本稿では,偶発腫として発見されることの多い非機能性副腎腺腫と転移性腫瘍の鑑別および,その他の代表的な非機能性副腎疾患の画像所見について述べる(表1)。

画像診断 膀胱・前立腺・精巣

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膀胱癌は尿路系腫瘍として日常よく遭遇する腫瘍で,近年増加傾向にある。40 歳以上・喫煙などでリスクが上昇する。膀胱癌の診断には膀胱鏡検査が必須であるが,画像検査による病期診断が必要となることが多い。近年,膀胱癌に対する画像診断の分野では進歩がみられ,CT やMRI が画像診断の第一選択となっている。膀胱癌診療ガイドライン2015 を参照すると1),T1 以下の症例でも他所見もしくは経過に応じて治療の選択肢が異なっており,膀胱癌におけるT staging は治療方針の決定上重要である。本稿では,膀胱癌の画像所見として,CT・MRI・FDG-PET‏/CT に関して,膀胱癌におけるそれぞれの役割と画像所見を説明していく。また膀胱癌と鑑別を要する疾患についても取り上げる。

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本邦では近年,食生活の洋風化,超高齢社会の到来および前立腺腫瘍抗原(prostate specificantigen:PSA)を用いたスクリーニングの普及などの影響で前立腺癌患者が急激に増加し,2016 年のがん統計予測によると男性の癌罹患数で第一位となっている(92,600 人/年)1)。一方,画像診断に関しては,高PSA 血症例に対する前立腺癌の腫瘍検出,悪性度の評価および局所の病期診断において,前立腺MRI の有用性を示唆する臨床研究が多数報告され,現在日常臨床の多岐にわたる場面で前立腺MRI が活用されている。このような状況を背景に,2012 年には前立腺MRI の撮像法や読影方法の標準化を示した診断基準(prostateimaging reporting and data system:PI—RADS)のversion 1 が,2015 年にはversion 2 が発表され2),前立腺MRI 診断法の国際的な統一が進んでいる。また最近では,PI—RADS の情報をもとにMRI 画像と超音波画像の癒合画像をガイドとした標的生検の臨床応用も進められ,前立腺癌患者のマネージメントにおいて欠かせないツールとなりつつある。本稿では,前立腺癌に対する前立腺マルチパラメトリックMRI の有用性,PI—RADSv2 の概略およびMRI—US 融合画像ガイド下前立腺標的生検(MRI—US fusion—targeted prostatebiopsy)の臨床応用について解説する。

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精巣・尿道・陰茎疾患の診断には,病歴や症状,視触診の占める割合が多く,画像診断を行う機会は多くはない。まず正常解剖を概説し,特に画像診断が重要と思われる疾患を取り上げ概説する。

画像診断 小児尿路

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尿路の先天異常は,腎臓から尿道まで多数の疾患を含み,様々な遺伝子疾患や局所の先天異常である生殖器奇形や直腸肛門奇形に合併することが知られている。これらの先天異常の中で,尿管,尿道の数の異常,走行の異常について述べる。

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救急診療の現場において,小児の尿路疾患として考慮すべき比較的頻度が高い疾患は,尿路感染症,閉塞性尿路疾患,尿路結石,急性腎不全,腫瘍性疾患などである。発熱,血尿,蛋白尿,腹痛,腹部腫瘤触知などが主訴である。画像診断検査の目的は,外科的処置を必要とする疾患をスクリーニングすることであり,第1 選択は,超音波検査(US)である。腹痛を主訴とする場合は,虫垂炎などの消化管疾患が念頭に置かれて精査されることが多いが,腎臓,膀胱を含め腹部全体をスクリーニングすることが肝要である。そのUS 所見と臨床症状を加味しながら,次なる検査の適応を考慮する。特に,乳幼児に対する尿路感染症の初期診断,治療方針については,2007 年に発表された英国のNICE(National Instistution for Healthand Care Excellence)のガイドライン1)と2011 年に報告されたアメリカ小児科学会(Americanacademy of Pediatrics:AAP)からのガイドライン2)で,大きな見直しがされた。放射線被曝を伴う排尿時膀胱尿道造影(voiding cystourethrogram:VCUG)や核医学検査の適応が見直され,US で異常所見を認めたもの,臨床的に非典型的または再発例とされているものか,適応とされた。本稿では,代表的な非外傷性小児尿路疾患について解説する。

小児の腫瘍 桑島 成子
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腎芽腫は神経芽腫,肝芽腫とならび我が国の3大小児固形腫瘍の1 つである。我が国では年間,小児腎悪性腫瘍は50例前後の発症と推測され,そのうち腎芽腫が全体の約90%を占める。小児腎腫瘍を画像診断するときは発症年齢を軸に画像所見を読影し腎芽腫か,腎芽腫の可能性は低いかを判断する。今回,腎芽腫と,鑑別すべき思春期前の小児腎腫瘍について概説する。

核医学

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腎臓核医学検査は腎臓の形態的および機能的障害を定性的かつ定量的に把握できる唯一の診断法で,特に個別腎機能の定量的評価については様々な画像診断の中で最も優れた方法とされている1)。現在日常臨床で利用されている腎臓シンチグラフィ用放射性医薬品(以下,医薬品)は3 種類(99mTc—diethylene—triamine—pentaacetic acid:99mTc—DTPA,99mTc—mercaptoacetyl—triglycine:99mTc—MAG3,99mTc—dimercaptosuccinicacid;99mTc—DMSA)でいずれも99mTc が標識放射性核種として用いられている。DTPA およびMAG3 は腎臓に集積した後,尿中に排泄される性質があり,静注後から連続した画像撮影が施行されることから,これらの放射性医薬品を用いた検査は腎動態シンチグラフィ(以下,動態シンチ)と呼ばれている(図1)。一方,DMSA は静注後徐々に腎実質に集積する性質があり,画像撮影は一定時間後に行われることから腎静態シンチグラフィ(以下,静態シンチ)と呼ばれている(図1)。動態シンチでは腎・尿路疾患の鑑別診断に薬剤負荷検査が選択される場合があるが,いずれの検査も方法論としては確立した検査である。本稿では検査法の特長に関して記載する。

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骨は,癌の転移巣の中で肺,肝についで転移しやすい部位で,前立腺癌,乳癌,肺癌,腎癌,甲状腺癌,あるいはリンパ腫,多発性骨髄腫に起因することが多い1—3)。骨転移は,転移発生後の平均生存期間が長く,直接生命を脅かすことはまれであるが,激しい骨痛,病的骨折,神経圧迫症状などの重大な合併症を引き起こし患者のQOL(qualityof life)を著しく低下させるだけでなく,抗癌剤などの治療にもしばしば抵抗性を示すため,定期的な画像診断による治療効果判定,経過観察が必要になる。骨転移の画像診断法として用いられているものに単純X 線,骨シンチグラフィ,CT,MRI,FDG-PET‏/CT があるが各検査には長所,短所がある。骨シンチグラフィはCT,MRI などと異なり造骨活性をみることで病勢評価や治療効果判定に用いることが可能で,骨転移の一般的なスクリーニング方法として普及している。実際の診療では骨シンチグラフィを行い異常があれば単純X 線,CT やMRI で精査を行っている。しかし,MDCT(multi—detector row CT),多チャンネルコイル搭載のMRI では全身撮影が可能になっており,骨転移の診断樹形図が変化してきている。1997 年,New York Memorial Sloan—KetteringCancer Center から報告された骨シンチグラフィから骨転移の広がりを算出する指標BSI(bone scan index:全身の骨量に占める高集積部位の割合(%))が発表されたが4)5),当初は手作業で行っていたため普及していなかった。2011 年から運用され始めたCAD(computer—assisteddiagnosis)のBONENAVI は日本人の骨シンチグラフィのデータベースを搭載しており,自動でBSI の算出が可能で,骨転移の治療効果判定が使用され始めている6)。本稿では前立腺癌の骨転移検索,治療効果判定について日本で使用されているBONENAVI から得られるBSI,ANN(artificialneural network)値などの指標を用いた骨転移診断と治療効果判定について述べる。

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近年の技術的進歩によりSPECT/CT の定量性が向上している。GI-BONE(AZE Co., Ltd.)は2015 年に日本で薬機法の認証を取得した骨SPECT 定量解析ソフトウェアであり,様々な汎用型SPECT/CT 装置のSPECT 画像をstandardizeduptake value(SUV)という半定量的指標に基づいて表示することが可能である。個々の画像データからSUV を導き出すためには,CT 吸収補正,散乱補正,およびコリメータ開口補正などを組み込んだ新しい画像再構成技術を必要とする。よって,従来は各SPECT/CT メーカーの専用ワークステーションにより画像再構成を行いSUV を算出していたが,SUV 算出の過程には各メーカーの特殊性が現れており,メーカー間でのSUV のばらつきが問題となりうる。

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FDG-PET は,癌細胞で亢進しているブドウ糖の取り込みをその類似体であるフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いて可視化する,機能を評価できる画像診断法である。解剖学的位置情報がわかるCT と一体になったPET‏/CT 装置の出現により,より直接的なツールとなり,悪性腫瘍の病期診断,viability の評価,治療効果判定,治療後の再発診断など様々な場面で有用で,今や癌患者さんのマネージメントに欠かすことのできない診断ツールとして不動の地位を確立した。本稿では,泌尿器科腫瘍(特に腎癌,前立腺癌を中心に,副腎腫瘍,腎盂尿管癌,膀胱癌,精巣腫瘍についても)における,FDG-PET(PET‏/CT)の臨床的有用性と課題について概説する。

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メタストロン(Sr—89)が本邦に上梓されて10年あまりになる。しかし固形腫瘍骨転移に伴う疼痛緩和剤であるSr—89 の位置づけは,製造用原子炉の故障に伴う供給停止や販売ルートの縮小,さらにはRa—223 の登場によりいまだその位置づけは明確になっていない。Ra—223 時代におけるSr—89 の位置づけを改めて述べたい。

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前立腺癌では,癌組織が原発巣から骨組織に移行し,二次的に肺や肝臓に転移すると考えられている1)。そのため骨転移を早期に制御できるかどうかがQOL の維持および予後延長の鍵であり,骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌(castration—resistant prostate cancer:CRPC)の治療に対する注目が集まっている。その中で,2016 年6 月より塩化ラジウム(Ra—223:ゾーフィゴ®)による日本で初めてのα線放出核種による内用療法が開始され,治療効果が期待されている。

放射線治療

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腎癌は,従来放射線抵抗性の代表的腫瘍とみなされ,原発巣の治療に放射線を用いることはまれであった。しかし,1 回線量を多くした寡分割照射法(hypofractionation)を用いることにより,高い効果が得られるとする報告もみられるようになり,転移巣に対する治療に加えて適応の拡大が図られている1)2)。転移巣に対する治療としては,腎癌からのオリゴ転移に対する治療として肺,リンパ節,副腎,肝,骨,対側腎などの病巣に対する治療が報告されている。主に強度変調照射法や定位放射線照射法を用いた短期小分割ないしは1回照射の治療が行われており,短期的には高い局所効果が報告されている3)。これらの経験が,1 回線量を高くした寡分割照射法を用いれば,抵抗性とされていた腎癌に対しても高い効果が得られることを示す証拠として,原発巣の治療へと適応拡大する根拠となっている。

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膀胱癌は膀胱の尿路上皮粘膜から発生する悪性腫瘍であり,組織学的にはその90%以上が尿路上皮癌である。その他,扁平上皮癌や腺癌,小細胞癌が数%に認められる1)。膀胱癌の年齢階級別罹患率は男女とも60 歳以降で増加し,年齢調整罹患率は男性が女性の約4 倍である2)。

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前立腺永久挿入密封小線源治療は,会陰からシード線源を前立腺に永久挿入する放射線治療(以下,シード治療)を総称し,多くの国ではIodine—125 が一般的な放射能線源であり,Ir—192を用いる高線量率(high—dose—rate:HDR)と対比し,低線量率(low—dose—rate:LDR)と呼ぶことも多い。シード治療は経直腸超音波装置(TRUS)ガイド下に会陰テンプレートを用いて線源挿入されるようになった1980 年代後半から急速に進歩し,米国では1990 年代から,日本では2003 年から限局前立腺癌の主たる治療選択肢となった。シード治療は極めて短い1,2 時間で治療が完了し,患者の回復がただちに得られ,長期的に良好な成績が臨床的に広く証明されている。低中リスク前立腺癌に対しては手術,外照射と同等の効果がある。毒性や生活の質(QOL)は他の治療に比べ優位な点が示されている。高リスクに対しては外照射併用による線量増加とホルモン治療(ADT)併用により,外照射に比べ治療成績の向上が示されている。この章では,最近の治療基準,外照射併用療法の進歩,内分泌併用療法の今後,最新ガイドライン,有害事象,救済治療について述べる。

前立腺癌の高線量率組織内照射 吉田 謙
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前立腺癌における小線源治療の歴史は古く,1910 年代にまでさかのぼる1)。しかし,安定して良好な成績が得られるようになったのは1980 年代に経直腸超音波診断に基づく経会陰式刺入をするようになってからである。その後,キール大学にて1980 年代より本稿のテーマである高線量率組織内照射が開始され(外部照射併用)2),1995 年に大阪大学が高線量率組織内照射単独療法を開始した3)。

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前立腺癌に対する前立腺全摘除術後患者の約20〜30%に再発が認められ,その多くはPSA の持続的な上昇のみで画像診断や組織学的検査で明らかな再発,転移病巣を認めないPSA 再発である1)。

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外部照射を含めた放射線治療は近年めざましい進歩をとげ,副作用を抑えて,多くの線量を投与できるようになっている。従来の三次元原体放射線治療(three—dimensional conformal radiotherapy:3DCRT)に加えて,強度変調放射線治療(intensity—modulated radiotherapy:IMRT)や画像誘導放射線治療(image—guided radiotherapy:IGRT)が普及している。さらに,前立腺癌に対して体幹部定位放射線治療(stereotacticbody radiotherapy:SBRT)が平成28 年度より保険適応となった。これらの高精度放射線治療技術は寡分割照射として前立腺癌の根治照射に用いられるだけでなく,海外では予後改善を目指して,転移を有する前立腺癌にも用いられており,前立腺癌の放射線治療は新たな段階に入りつつあるといえよう。

前立腺癌のIMRT 白石 憲史郎
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近年の放射線治療は医用工学や物理工学的技術革新が大きく貢献し飛躍的発展を遂げている。特に注目すべきは本邦で一貫して罹患数が増加し続けている前立腺癌に対する根治治療の高精度化であり,本領域における放射線腫瘍医の役割は一層重要度を増している。

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陽子線治療は1954 年に米国で,本邦では1979年に放射線医学総合研究所(以下,放医研)で臨床応用が開始された。当初は眼球など体表近くに存在する限られた腫瘍に対して治療が行われていたが,1983 年に筑波大学で高エネルギーの陽子線を用いることと,当時の放射線治療ではまだ普及していなかったCT 画像を用いた3 次元治療計画を導入することで,前立腺癌など深部腫瘍に対する治療が開始された1)。さらに,陽子線や重粒子線といった荷電粒子線による治療では,体内での飛程を調節できることで線量集中性が維持される反面,毎回の照射で正確な位置の確認が重要となるため,画像を用いた位置照合,すなわち画像誘導放射線治療の先駆け的なセットアップ技術をも導入し,高精度な照射法を早くから実現した。90年代に入り,国内外から良好な治療成績が報告されるようになると2—4),2000 年前後には,国立がん研究センター東病院,静岡県立静岡がんセンター,兵庫県立粒子線医療センターなどで陽子線治療が開始された。

前立腺癌の重粒子線治療 河村 英将
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重粒子とは炭素やネオン,アルゴンなどの原子番号が大きな原子のイオンをいう。これらのイオンを加速器で加速して治療に用いることを重粒子線治療という。粒子線治療についてのParticleTherapy Co—Operative Group(PTCOG)のまとめによると2015 年末までに粒子線を用いた治療を受けた患者の総数はおよそ15 万人に達する1)。使用された粒子としては陽子線が最も多く,全体の85%を占めるが,次いで多いのが炭素線で全体の12%強を占め,この2 種類以外の荷電粒子線は現在ほとんど治療に用いられていない。すなわち,重粒子線として治療に用いられているのは実質的には炭素線のみであり,現在のところ重粒子線治療と炭素線治療はほぼ同義に使われている。

奥付

目次

序文

画像診断 扉

放射線治療 扉

基本情報

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臨床放射線
62巻11号 (2017年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0009-9252 金原出版

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