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巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)に対する画像診断の役割は診断の他,治療効果判定,予後予測,合併症評価など多岐にわたり,それぞれの目的に応じた適切な診断モダリティを選択することが重要である。特に眼症状を伴う場合,早期に専門医に紹介し,治療開始できるかが視力予後に関わり,適切な診断プロセスを押さえておくことが重要である。側頭動脈炎の診断にはカラードプラエコーや造影MRIの有用性が確立されており,例えば年齢,性別そして顎跛行や複視,側頭部痛などの特徴的所見から本症が疑われている場合には,これら検査が診断の決め手となる。ただし,初発症状としては非特異的な頭痛や,発熱などの全身症状で発症することも多く,必ずしも専門医を受診するとは限らない。初回の画像検査は頭痛精査,熱源検索のスクリーニング目的で撮像される場合があり,評価モダリティも頭部CT,頭部MRI,体幹部CTなど状況により様々である。治療の遅れは時に失明や心・大血管合併症で致死的であることから,本疾患が呈しうる画像所見を理解し,初診時からスムーズに診断,治療開始に結びつけること,またフォロー時に適切なモダリティで活動性を評価していくことが非常に重要である。ただし,診断基準やガイドラインは作成された時期や地域,目的により異なり,画像診断に関する具体的な記載は限定的である。例えば最も汎用される1990年の米国リウマチ学会(ACR)分類基準1),2016年のrevised ACR分類基準はGCAを他の血管炎症候群と区別し,診断する目的で作成され,MRI所見やCT所見は含まれない。2009年欧州リウマチ学会推奨から2018年のupdate2)では診断やフォローアップに関する12項目がまとまっており,まず参考にすべきと考える(表1)。また各国で独自のガイドラインが作成されており,我が国の血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)でも画像診断の項目は簡潔にまとまっている。ただし,前述のごとく,初診時の状況が症例により異なり,症例に応じた対応が必要である。またフォローアップに関してはあまりエビデンスがなく,どういった患者にどのモダリティでいつ評価すべきかについては明確に定まっていない。今後のさらなる研究や画像診断技術の進歩によりこれらは常にアップデートされていくべきである。本稿ではこれらガイドラインや最近のエビデンスを参考にしながら,実際の症例を提示して,各種モダリティの目的別の有用性と画像所見について解説する。
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