臨床放射線 70巻2号 (2025年3月発行)

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脳アミロイドPET 石井　一成 70巻2号 , 2025年3月 , pp.177-188

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認知症の最大原因であるアルツハイマー病（Alzheimer’s disease：AD）においてAD脳に蓄積するアミロイドβ（Aβ）に対する疾患修飾薬（disease-modifying therapy：DMT）として抗Aβ抗体薬レカネマブ（レケンビ^®），ドナネマブ（ケサンラ^®）が薬機法承認，保険適用となり，その投与条件である脳内Aβ蓄積の確認のためアミロイドPETが保険適用になった。本稿ではアミロイドPET用放射性薬剤ごとの読影方法，ソフトウェアについて解説し，また最近注目を浴びている頭部専用PET装置について解説する。

フルシクロビンPET：開発から最近の報告まで南本　亮吾 , 加藤　克彦 , 東　真理奈 , 長縄　慎二 70巻2号 , 2025年3月 , pp.189-200

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MRI検査では脳腫瘍の境界を決定することが難しい例があり，腫瘍摘出範囲の確定に影響する場合がある。種々の悪性腫瘍の病期診断に用いられているFDG（¹⁸F-fluorodeoxyglucose）は，正常脳への高い生理的集積のため腫瘍辺縁の評価に限界がある。腫瘍イメージングとして，アミノ酸代謝を反映した数々のPET薬剤が長年開発され，脳腫瘍の存在する領域を明確に可視化し，その活動性を予測することが可能となった。その代表的なPET薬剤としてメチオニンPET（¹¹C-MET）があるが，短半減期核種（約20分）の¹¹C標識であるため，利用はサイクロトロンと特定のPET薬剤合成装置を備えた施設に限られる。米国エモリー大学は，腫瘍診断を主な目的とした非天然型アミノ酸を骨格としたフルシクロビンPET（trans-1-アミノ-3-［¹⁸F］フルオロシクロブタンカルボン酸：anti-［¹⁸F］-FACBC）を開発した^1）。我が国では診断用放射性医薬品としてフルシクロビンPETの保険適用を目的とした計画が進み，2021年3月に「初発の悪性神経膠腫が疑われる患者における腫瘍の可視化。ただし，磁気共鳴コンピューター断層撮影検査による腫瘍摘出計画時における腫瘍摘出範囲の決定の補助に用いる」を効能または効果とする製品名「アキュミン^®静注」の医薬品製造販売が承認され，2024年7月よりフルシクロビンPETをデリバリー形式で利用できる状態となった^2）。アキュミン^®静注の利用が開始されてまもない2024年8月には，日本核医学会より「フルシクロビン（¹⁸F）診療ガイドライン2024」が公表された。また2025年1月には市販直後調査の結果，アキュミン^®静注に対する副作用の報告はなかったと報告されている。現在はアキュミン^®静注を利用する施設が徐々に増加してきている。本稿ではアキュミン^®静注の保険適用と有用性について日本核医学会の診療ガイドラインの内容を含めて紹介する。なお，本稿で使用されるフルシクロビンとアキュミン^®静注は同一の構造式を有するPET薬剤である。

¹²³I-MIBGシンチグラフィ：レヴィー小体病と心不全への応用中嶋　憲一 70巻2号 , 2025年3月 , pp.201-209

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¹²³I-メタヨードベンジルグアニジン（¹²³I-MIBG，以下本文中ではMIBGと表記）は1992年に我が国で世界に先駆けて利用が可能になった放射性医薬品であり，読者の中で利用している施設も多いであろう。当初は心臓疾患が主な適応であり様々な交感神経機能が関与する疾患に利用されたため，広範な知見が日本から報告されてきた（表1）。神経疾患への応用については神経変性疾患，特にレヴィー小体病（主にパーキンソン病とレヴィー小体型認知症）への適用が標準的になり，認知症や神経変性疾患の診断に重要な役割を果たしている。また，循環器病学会の診療ガイドラインにおいては心不全が主な対象となっているが，有用性に関する報告がある一方で，日常臨床での最適な利用方法については未確立で依然検討が進められている。本稿では，この2つの適応について最近の知見を概説する。

心アミロイドーシスシンチグラフィ工藤　崇 70巻2号 , 2025年3月 , pp.211-221

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筆者が医学生・研修医であった時期においても，心アミロイドーシスにおいて骨シンチグラフィで病的集積が生じることは知られていたが，心アミロイドーシス自体がまれな病態であると考えられていたこともあり，心筋異所性集積の「まれな」原因と考えられていた。Gamutsにおいても “rare” に分類されている^1）。しかし，近年多くの研究からATTR心アミロイドーシスが “rare” ではなく，むしろ “common” な病態であることがわかってきた。これに伴って，骨シンチグラフィにおける異所性心筋集積が，ATTR心アミロイドーシスの診断において極めて有用であることが多くの論文で証明され，注目されている。さらに，ATTRアミロイドーシスの治療薬が開発されたこともあり，疫学・診断・治療の3要素で大きな変化が生じ，高齢者の心不全における大きなゲームチェンジが生じている。

心筋BMIPPシンチグラフィ：中性脂肪蓄積心筋血管症（TGCV）での臨床使用宮内　秀行 70巻2号 , 2025年3月 , pp.223-231

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脂肪酸の放射性アナログとして開発された15-（4-ヨードフェニル）-3（R,S）-メチルペンタデカン酸（¹²³I）（¹²³I-BMIPP，以下BMIPP）の臨床使用開始から30年が経過した。

心臓サルコイドーシスにおける¹⁸F-FDG PETの現状と課題矢﨑　善一 , 市川　聡裕 70巻2号 , 2025年3月 , pp.233-243

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サルコイドーシス（以下，サ症）は全身諸臓器に非乾酪性類上皮肉芽腫を形成する原因不明の炎症性疾患で，心病変の存在は本症の予後を左右する。心臓サルコイドーシス（以下，心サ症）は心電図異常のみの軽症例から致死的不整脈で突然死をきたし，治療抵抗性心不全を呈する重症例まで非常に幅広い臨床像を呈する。しばしば診断が難しく^1）2）），¹⁸F-FDG（fluorodeoxyglucose）PET（positron emission tomography）は本症の診断に極めて重要である。日本心臓核医学会により2012年に「心臓サルコイドーシスに対する¹⁸F-FDG PET検査の手引き」が作成され，2018年に改訂された^3）。本稿では，心サ症の診断指針の概要，¹⁸F-FDG PETによる診断方法，ステロイド治療後の評価における¹⁸F-FDG PETの現状と問題点や今後の課題を示したい。

ソマトスタチン受容体イメージングと核医学治療中島　良太 , 飯塚　裕介 , 田中　寛彬 , 三宅　可奈江 70巻2号 , 2025年3月 , pp.245-255

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神経内分泌腫瘍（neuroendocrine neoplasms：NEN）は神経内分泌細胞に由来する腫瘍であり，高分化の神経内分泌腫瘍（neuroendocrine tumors：NET）と低分化の神経内分泌癌（neuroendocrine carcinomas：NEC）に分類される。NETは膵，消化管，肺，縦隔などの様々な臓器に発生し，その原発部位によって細分類が異なるが，膵・消化管NETの場合，Ki-67指数が3％未満であればNET G1，3～20％であればNET G2，20％より大きければNET G3と分類する^1）。NETに多く発現しているソマトスタチン受容体（somatostatin receptor：SSTR）を標的とした核医学検査，すなわちソマトスタチン受容体イメージング（somatostatin receptor imaging：SRI）は，病変の検出や質的診断に活用されている。局所領域に限局するNETは，原則として外科切除が第一選択であるが，切除不能例や遠隔転移例に対しては，ソマトスタチンアナログ製剤（SSA），mTOR阻害薬であるエベロリムス，化学療法などの全身療法が検討される。加えて，SSTRに結合するペプチドにベータ線放出放射性同位元素で標識した薬剤である¹⁷⁷Lu-DOTATATE（ルタテラ^®静注）が2021年に薬価収載され，我が国でも保険診療で使用が可能になった。このような核医学治療はペプチド受容体放射性核種療法（peptide receptor radionuclide therapy：PRRT）と呼ばれている。PRRTが普及する中，SRIはPRRTのコンパニオン診断としての役割が一層重要になっている。本稿では，SRIや，PRRT治療薬の1つである¹⁷⁷Lu-DOTATATEについて，エビデンスや当院の症例を交えながら解説を行う。

前立腺癌の核医学診断と治療（PSMA theranostics）森　博史 , 萱野　大樹 70巻2号 , 2025年3月 , pp.257-263

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PSMAは前立腺特異的膜抗原といわれ，前立腺癌細胞で高発現しており，診断と治療を一体化した「セラノスティクス」の鍵とされる。前立腺癌の核医学検査・治療法に⁶⁸Ga-PSMA-11 PETや¹⁷⁷Lu-PSMA治療があり，⁶⁸Ga-PSMA-11 PETの従来検査に対する診断能の優位性，¹⁷⁷Lu-PSMA治療の従来治療に対する優位性（無増悪生存率や全生存率の向上）が報告されており，現在は去勢抵抗性前立腺癌に対する国際共同治験（第Ⅲ相試験）が行われている。本稿ではPSMAの基本，⁶⁸Ga-PSMA-11，¹⁷⁷Lu-PSMA，今後の展望について解説を行う。

診療

脳主幹動脈急性閉塞に対し3mmステントリトリーバーを用いて機械的血栓回収療法を行った63例の検討木村　尚平 , 郭　樟吾 , 園田　章太 , 村山　雄一 70巻2号 , 2025年3月 , pp.265-270

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急性期主幹動脈閉塞において機械的血栓回収療法（mechanical thrombectomy：MT）は2015年に発表された複数のランダム化比較試験（RCT）の結果から，内科的治療と比較して良好な転帰改善効果が示された^1）。現在では発症から24時間までの有効性が示され^2），我が国のMT実施件数は年々増加傾向にある。また現在，様々なstent retriever（SR）やaspiration catheter（AC）が承認を受けて使用可能である。使用方法に関しても，SRのみを使用するsimple technique，ACのみを使用するa direct aspiration first-pass technique（ADAPT）^3），これらを組み合わせて使用するcombined technique（ASAP techniqueやCAPTIVE technique^4）5））など，施設・術者により様々である。また，これまで一般的に脳主幹動脈急性閉塞（large vessel occlusion：LVO）に対しては4～6.5mm SRが一般的に使用されてきた経緯がある。血栓を回収するという目的を達成するためにはこれらいずれの方法，いずれのデバイスでもよいと思われるが，最も重要なことは機能予後，生命予後を悪化させる出血性合併症をいかに減らすかということである。そこで我々は，出血性合併症を減らすべくLVOにおいて，より血管に愛護性のある3mm SRを使用し，安全に有効再開通が得られるかの検討を自験例63例に対して行った。

痛風結節の画像所見：主にMRI 本南　研人 , 奥田　実穂 , 奥村　秀生 , 藤田　健央 , 小林　聡 70巻2号 , 2025年3月 , pp.271-278

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痛風は，高尿酸血症を背景として結晶化した尿酸が関節に蓄積し炎症を惹起する病態としてよく知られている。典型例は単純X線で容易に診断されるため，それ以上の画像的精査が行われることは少ない。このためCTやMRIの読影を主としている画像診断医にとっては比較的馴染みの薄い疾患であると思われる。

限局型小細胞肺癌に対するinvolved-field radiation therapyによる化学放射線療法光田　浩二 , 小宮山　貴史 , 村松　樹里亜 , 萬利乃　寛 , 青木　真一 , 大栗　実彦 , 山田　貴志 , 齋藤　正英 , 平鍋　邦洋 , 根本　光 , 大西　洋 70巻2号 , 2025年3月 , pp.279-285

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限局型小細胞肺癌（limited disease small cell lung carcinoma：LD-SCLC）に対する根治的化学放射線療法は，従来は予防的リンパ節領域照射（elective nodal irradiation：ENI）による治療が広く行われていた^1）が，2020年のASTROガイドラインではFDG-PET評価を行ったうえでの病巣部照射（involved-field radiation therapy：IFRT）が推奨されている^2）。当院では有害事象軽減の目的からCT baseの治療計画を導入した2000年以降，肺癌の根治的放射線治療を原則IFRTにて行っている。今回我々は，LD-SCLCに対するIFRTを用いた化学放射線療法の治療成績を後ろ向きに評価し，過去の治療報告との比較を行い安全性，有効性を検討した。

筋腫分娩様の形態を呈する腫瘤に関する検討檜井　恵利菜 , 豊田　尚之 , 松浦　範明 , 古本　大典 , 梶原　賢司 , 植田　真智 , 熊谷　正俊 , 倉岡　和也 , 粟井　和夫 70巻2号 , 2025年3月 , pp.287-293

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筋腫分娩様の形態を呈する腫瘤といえば平滑筋腫が代表的であるが，実際には腺筋腫や悪性腫瘍など様々な腫瘤が報告されている^1-10）。これらの多くは各組織型ごとに報告されており，筋腫分娩という形態に着目して検討が行われた報告はほとんどみられない。今回我々は，当院で経験した筋腫分娩様の形態を呈する腫瘤に関して，その実態を明らかにし，判別可能なものに関してはその判別方法をretrospectiveに検討したので報告する。

症例

神経型・内臓型トキソカラ症の1例加藤　拓実 , 下野　太郎 , 大森　文子 , 佐藤　佳奈子 , 石山　福道 , 松崎　修一郎 , 三木　幸雄 70巻2号 , 2025年3月 , pp.295-299

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トキソカラ症は線虫による寄生虫感染症の1つであり，ペット（犬，猫）との接触や砂場に放置された糞中の虫卵の誤飲，感染した家畜の生食を介して感染することが知られている。診断には，組織からの虫体の検出が理想ではあるが，実際に検出することは難しく，生食の既往，抗原・抗体検査，血液検査や髄液検査における好酸球増多，画像所見などにより診断される^1）。本稿では，肝臓，肺，さらに非常にまれなことに脳に病変を示したトキソカラ症の症例を経験したため，脳トキソカラ症を中心に文献的考察を加え報告する。

頭蓋内顔面神経由来混成神経鞘腫瘍（hybrid nerve sheath tumor）の1例馬場　玲亜 , 下野　太郎 , 大畑　建治 , 田中　さやか , 茂木　祥子 , 田代　茜子 , 植田　大樹 , 三木　幸雄 70巻2号 , 2025年3月 , pp.301-304

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混成神経鞘腫瘍（hybrid nerve sheath tumor：HNST）は，schwannoma，neurofibroma，perineuriomaのうち2つ以上の病理学的特徴をもつ良性神経鞘腫瘍である^1）。好発部位は皮膚軟部組織であるが，眼窩，口腔内，消化管，脳神経などで報告されている^2）。今回我々は，非常にまれな頭蓋内顔面神経由来のHNSTを経験したため報告する。

肉腫と類似した像を呈した子宮腺筋腫の1例秋田　光祐 , 黒川　弘晶 , 森勢　里美 , 南舘　祐介 , 寺田　圭那 , 前防　克也 , 大西　功祐 , 谷川　昇 70巻2号 , 2025年3月 , pp.305-309

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子宮腺筋腫（adenomyoma）は腺筋症病巣が子宮筋層内に腫瘤を形成した状態であり，病巣の形態もポリープ状や漿膜下に進展した場合には卵巣腫瘤に類似するものなど多彩である^1-4）。今回我々は，MRIで子宮に肉腫に類似した腫瘤を認め術後早期に再増大をきたした子宮腺筋腫を経験したので報告する。

肝臓solitary fibrous tumor（SFT）の1例濵田　凌 , 岩佐　瞳 , 尾崎　マリナ , 吉松　梨香 , 岩田　純 , 岩村　伸一 , 山上　卓士 70巻2号 , 2025年3月 , pp.311-316

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孤立性線維性腫瘍（solitary fibrous tumor：SFT）は，比較的まれな腫瘍であり，当初は主に胸腔内での発生が多く報告されていた。近年では疾患概念の確立に伴い，胸腔外での発生も報告されるようになったが，肝臓原発のSFTは依然として極めてまれである。今回我々は，肝臓原発SFTの病理学的特徴を反映した画像所見を示す1例を経験したため，若干の文献的考察を加え報告する。

ロボット支援下腎部分切除術後に生じた孤立性腎杯に対して経カテーテル的動脈塞栓術が有効であった1例竹下　春香 , 鈴木　秀明 , 石田　勝 , 荒井　将至 , 妹尾　聡美 , 佐藤　浩三 70巻2号 , 2025年3月 , pp.317-321

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孤立性腎杯（isolated calyxまたはexcluded calyx）とは感染や外傷などにより特定の腎杯が腎盂から孤立してしまう病態であり，腎部分切除術のまれな合併症としても知られている^1）2）。今回我々は，小径腎細胞癌に対するロボット支援下腎部分切除後に難治性尿瘻をきたした孤立性腎杯に対し，選択的経カテーテル的動脈塞栓術による部分腎機能廃絶術が有効であった1例を経験したので報告する。

線維性骨異形成に類似した嗅神経芽細胞腫の1例馬場　亮 , 山内　英臣 , 松島　理士 , 窪前　沙恵子 , 舘洞　慎之介 , 大村　和弘 , 海老原　央 , 尾尻　博也 70巻2号 , 2025年3月 , pp.323-326

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嗅神経芽細胞腫（olfactory neuroblastoma）はまれな神経外胚葉性の悪性腫瘍である^1）。副鼻腔腫瘍全体の約2～3％を占め，発生率は人口100万人あたり約0.4人である^1）2）。組織学的には神経内分泌腫瘍に分類され，その発生学的起源は鼻腔上部を覆う嗅神経上皮細胞であると考えられている^1）。嗅神経芽細胞腫は放射線学的には比較的特異的な局在や悪性腫瘍として典型的な形態を呈することが多く，著明な骨増殖性変化により線維性骨異形成に放射線学的に類似した嗅神経芽細胞腫の報告は少ない。本稿では，線維性骨異形成に類似のまれな画像所見を呈した嗅神経芽細胞腫症例に関して文献的考察を交えて報告する。

若年者に発生した子宮頸部ブドウ状肉腫の1例丸山　拓士 , 何澤　信礼 , 谷川　昇 70巻2号 , 2025年3月 , pp.327-331

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子宮頸部に発生するブドウ状肉腫（sarcoma botryoides of the cervix uteri）は，子宮悪性腫瘍全体の0.2％を占めるのみである。乳児期から幼児期が好発年齢であり，妊娠可能年齢では少ない^1）。今回我々は，20歳の女性に発生した子宮頸部ブドウ状肉腫を経験したので，画像所見とともに報告する。

くも膜下出血により発症した膠芽腫尾関　涼泉 , 河村　洋介 , 藤井　晶子 , 中館　雅志 , 野崎　美和子 , 久保田　一徳 70巻2号 , 2025年3月 , pp.333-337

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くも膜下出血をきたす原因としては外傷や動脈瘤破裂，脳動静脈奇形，もやもや病などがある。その中でも1～3％ではあるが脳腫瘍が原因となることがある^1）。膠芽腫が原因となるのは非常にまれであり，我々の調べた限りではCTにて診断可能なくも膜下出血を発症した膠芽腫は本例を含めて3例のみである^2）3）。今回我々は，くも膜下出血にて発症し，MRIが診断に有用であったと考えられる膠芽腫の症例を経験したので文献的考察を含めて報告する。

膿瘍形成性虫垂炎との鑑別に苦慮した原発性虫垂癌の3例前田　智郷 , 廣延　綾子 , 中山　宏文 , 伊達　秀二 70巻2号 , 2025年3月 , pp.339-344

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膿瘍形成を伴う虫垂炎は従来，緊急手術の適応とされていたが，近年では保存的治療後に待機的虫垂切除術（interval appendectomy：IA）を行う報告が増えており，術後合併症や拡大手術の回避，腹腔鏡手術実施の観点から有用であることが報告されている^1）2）。一方，原発性虫垂癌は術前の画像診断で虫垂炎や回盲部膿瘍とされることが多く，早期診断が困難なことで知られており^3），原発性虫垂癌と膿瘍形成性虫垂炎の鑑別は重要である。今回，初診時に膿瘍形成性虫垂炎と診断しIAの方針としたが，結果的に虫垂粘液性腫瘍であった3症例を経験したので，画像診断の観点からこれらを報告する。

連載

今月の症例久保　優子 , 森　泰昌 , 吉本　世一 , 楠本　昌彦 70巻2号 , 2025年3月 , pp.345-348

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画像所見　経鼻内視鏡検査（図1）では気管膜様部に粘膜下腫瘍を認める。造影CT（図2）では第2～4気管軟骨レベルの気管膜様部に気管内に突出する3cm大の腫瘤性病変を認める（図2⇨）。病変内部は筋肉とほぼ等濃度で石灰化や脂肪はない。MRI（図3）にて，腫瘤は薄い被膜様構造を伴う腫瘍で，腫瘍内部はT2強調像で淡い高信号域を呈し，線状・索状の小さな低信号域を有している。T1強調像では低信号域を呈し，明らかな嚢胞変性や出血，脂肪の含有はない。造影後脂肪抑制T1強調像にて不均一な造影増強効果を示している。FDG-PET（図4）では腫瘍に一致して，FDG集積（SUVmax＝3.3）を認める（甲状腺右葉は腺腫が疑われた）。

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目次 70巻2号 , 2025年3月

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英文目次 70巻2号 , 2025年3月

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読者アンケート 70巻2号 , 2025年3月 , pp.264-264

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次号予告 70巻2号 , 2025年3月 , pp.294-294

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バックナンバー 70巻2号 , 2025年3月 , pp.349-349

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投稿規程 70巻2号 , 2025年3月 , pp.350-351

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編集後記 70巻2号 , 2025年3月 , pp.352-352

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臨床放射線
70巻2号
(2025年3月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0009-9252 金原出版

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