INTESTINE 24巻1号 (2020年4月)

特集 ここまで来たde novo cancer

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元号が平成から令和に変わり,新しい時代の幕が開けた.大腸Ⅱc 研究会を基盤とし,大腸Ⅱc病変の重要性を広く啓蒙する雑誌として本誌の前身である『早期大腸癌』が創刊されたのが1997年9 月,今から23 年前のことである.創刊号のテーマは「いかにして大腸Ⅱc を見つけるか」であり,当初は淡い発赤などわずかな色調の変化を捉えいかにⅡc を発見し治療するかが肝要であった.その後,Ⅱc は決して幻ではなく悪性度,転移率の高さをはじめ,さまざまな研究が積み重ねられようやく海外にも周知されるようになってきた.二十余年にわたって早期大腸癌の診断,治療を中心に企画を重ねてきたが,本号では大腸癌の発育進展においてもっとも重要な位置づけを担う「de novo cancer」に改めて焦点を絞り,最新の知見も含めさまざまな観点から論じていただく.まさに,新しい時代の幕開けにふさわしい内容となっている.

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大腸癌の組織発生には,① adneoma-carcinoma sequence,② de novo発癌,③ 鋸歯状ポリープの癌化,④ 炎症性発癌の四つの経路がある.代表的な経路としては,腺腫を前駆病変として発生するadenoma-carcinoma sequenceと,腺腫を介さずに正常の大腸粘膜から直接発癌するde novo cancerが考えられている.国際的にはadenoma-carcinoma sequence が一般的には認められているが,本邦では表面陥凹型癌が多く発見され,それらの癌には腺腫を伴わない病変が多いことから,de novo cancer もある一定数存在している,と認識されるようになってきている.しかしながら現状の問題点としては,病理医間での腺腫や癌の病理診断基準の違いや病理形態学的にde novo cancerの診断は不可能であることなどが挙げられる.

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当院で施行した2 回以上のTCS 検査2,622 症例中post-colonoscopycolorectal cancer (PCCRC)は8 例に認め,そのほとんどはLST-NG や陥凹型由来の見逃し癌と考えられる病変であった.PCCRC として欧米が注目するsessile serrated lesion(SSL)由来と思われる病変は認めなかった.これらの表面型癌を見逃さず,早期の段階で誰もが発見できる内視鏡観察法が期待されている.現状では,WLI 観察,色素観察,NBI 観察があるなかで,正面視可能な盲腸の部位をモデルに,どの観察法が優れているかを検討したところ,色素>NBI>WLI 観察であった.しかしながら,色素観察法で全大腸のスクリーニングを行ううえでは,欠点として色素貯留部位での表面型腫瘍の拾い上げ診断に課題を有している.全大腸の内視鏡スクリーニングにおいて,色素観察以外のWLIとNBI 観察を比較検討した結果,LST-NG やⅡc の発見にはNBI 観察の有用性が示された.さらに,NBI 観察によるⅡc は,陥凹辺縁の反応性隆起部がリング状のbrownish に見え,そのリング中央の陥凹面は正~褪色調に見える特徴像があり,これをO-ring sign と呼んでいる.全大腸に対する内視鏡観察は,NBI観察が表面型腫瘍発見に有用であり,とくにⅡc の発見にはO-ring sign を意識した観察が重要と考えられた.しかし,将来に向けてはNBI や色素観察を超える画像強調観察や,人工知能(AI)によるⅡc 発見に向けた開発が期待される.

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De novo cancer の由来とされる表面陥凹型腫瘍の担癌率・粘膜下層高度浸潤率,およびNBI 拡大観察所見 (JNET 分類)とpit pattern 診断について当科のデータを示し考察を加えた.表面陥凹型腫瘍は表面隆起型腫瘍,隆起型腫瘍と比べて担癌率・粘膜下層浸潤率が有意に高く,径10 mm 以下の病変においても粘膜下層浸潤率が有意に高かった.拡大観察所見は,径10 mm 以下の病変を対象にした場合,JNET 分類ではType 2B,3 の割合が表面隆起型腫瘍,隆起型腫瘍と比較し有意に高かった.Pit pattern 診断ではⅢS 型,ⅤI 型,ⅤN 型pitpattern の割合が,表面隆起型腫瘍,隆起型腫瘍と比較し有意に高かった.

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De novo 発育を呈する陥凹型早期大腸癌は,腫瘍径が小さくとも粘膜下層に浸潤し,転移するリスクをもつ臨床的に重要な病変である.しかし,その発見・診断においては内視鏡操作技術だけではなく,診断能を向上させる必要がある.近年医療でも注目を集めている人工知能(AI)は,十分な学習サンプルを与えることでエキスパートと同程度の診断能を獲得できるとされている.本稿では本邦で薬事承認された内視鏡 A(I EndoBRAIN®)をはじめとした,内視鏡 AI の概況について述べる.

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陥凹型大腸癌の大半はde novo pathway 由来のde novo 癌と考えられ,adenoma-carcinoma sequence 由来の大腸癌と比較すると,小型病変であっても粘膜下層(SM)浸潤傾向が強く,リンパ節転移のリスクが高いことが特徴とされる.今回,過去の文献や当院のT1 癌のデータを中心とし,de novopathway 由来を疑う陥凹型大腸癌(de novo 型癌)を対象としたSM 浸潤・転移・再発リスクに関する検討を行った.De novo 癌の定義が確立していないことが課題であるが,adenoma-carcinoma sequence 由来癌に比べてde novo 型癌の生物学的悪性度の高さがうかがえる結果となった.エビデンスレベルのより高い今後の研究結果を踏まえ,治療選択を大きく左右しうるde novo 癌の生物学的特徴について詳細に解明されることを期待したい.

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大腸におけるde novo cancer の病理診断について,陥凹型腺腫との異同を含めて検討した.陥凹型成分を含む大腸腫瘍自験例21 例の見直しでは,denovo cancer 14 例,腺腫4 例,腺腫を伴う癌3 例であった.癌と腺腫との鑑別には,腺管の形状,表層から深部に向かう分化傾向,核クロマチン,核小体,核形状,核密度,核極性,等の所見を総合して判断していた.代表的病変8 例の組織像を提示し,考察を加えた.

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日本では1970 年代後半から,陥凹型大腸癌が報告されるようになり,それらはde novo 発癌と考えられるようになった.しかし,欧米においては陥凹型大腸癌の報告は皆無であった.それが1990 年代に入り,日本の若き大腸内視鏡医が欧米に渡り,欧米人にも陥凹型大腸癌が存在することを実証した.その後,2000 年代には日本の診断学を学んだ海外の内視鏡医から,陥凹型大腸腫瘍に関する質の高い報告が複数なされた.また,国際的なコンセンサス会議で,日本の内視鏡形態分類,平坦陥凹型大腸腫瘍の知見が世界の共通言語となった.しかし,大腸癌発生経路として,de novo 発癌はまだ十分に認知されてはいない.今後,国際的に認知されるためには,発癌に関与する遺伝子変異の解明が必要不可欠である.

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便潜血検査陽性精査の大腸内視鏡で発見された,下行結腸病変の1 例を提示する.8 mm 大の小病変にもかかわらず,NBI 併用/色素拡大内視鏡で浸潤癌を示唆する所見を認め,初回治療として外科手術を施行した.郭清リンパ節に転移を認め,ステージⅢA の大腸癌と診断した.比較的境界明瞭な陥凹型病変で,病理学的にnon-polypoid growth の形態を呈したことから,de novo 様の発育進展を経た病変と考えた.de novo cancer はサイズが小さいうちに浸潤をきたす,とされるため,10 mm 未満の小型非有茎性pT1 大腸癌には,de novocancer を多く含む可能性があるが,その臨床病理学的,分子生物学的特徴は明らかではない.

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陥凹型腫瘍に対するEndocyto(EC)診断は腺腔の形態に加えて核の腫大,重層化所見に着目して診断することが重要である.またEC における微細顆粒構造所見は癌の線維芽細胞の増生と相関する可能性もあり,今後のさらなる研究が期待される.さらにEC 診断は実際には病変とスコープ先端を接触させながら診断するため,病変の肉眼形態が診断精度に影響を及ぼす可能性が考えられる.われわれの検討では陥凹型腫瘍はpit pattern 診断とEC 診断で正診率における差は認めなかった.しかし隆起型とLST-NG でそれぞれ結果に違いを認めており,臨床においてはEC の特性をよく理解しながら有効にpit pattern 診断と併用することが求められる.

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家族性大腸腺腫症(FAP)に発生しde novo cancer 様の発育が示唆された陥凹型SM 癌の1 例を報告する.症例は40 歳代,男性.非密生型のFAP と診断されたが,予防的大腸全摘を拒否し,4~ 6 カ月ごとの密なサーベイランス大腸内視鏡検査とポリープ切除術で経過観察されていた.横行結腸に6 mm 大の陥凹型病変を認め,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した.病理組織学的所見は中~ 低分化腺癌,5×5 mm,T1b(SM 3,200μm),LyX,V1,HM0,VM±であった.追加で大腸全摘術を施行し,EMR 後瘢痕部位に癌の残存は認められず,リンパ節転移も認められなかった(pT1bN0M0).また,大腸全域にわたり約1,000 個の大腸ポリープが確認された.大腸全摘術を行わずに内視鏡的に経過観察を考慮する場合には,表現型や遺伝子型,癌の早期発見のための密なサーベイランス検査間隔,陥凹型病変の発生リスクなどを総合的に考慮して慎重に決定する必要がある.

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カプセル内視鏡は,低侵襲でとくに小腸検索に有用である.特徴として消化管画像の自動撮像が挙げられる.1 症例当り約5~6 万枚の内視鏡画像を撮像できるが,その読影には30~60 分程度を要し読影者にとっては負担が大きい.また,粗大病変でも少数枚の画像にしか写らないこともあり,読影において病変の見逃しも危惧される.コンピュータによる病変自動検出システムがあれば,読影者の負担や見逃しを軽減できる可能性がある.

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潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis;UC)の治療目標として粘膜治癒(mucosal healing;MH)が重要視されている.これまで,MH はMayo 内視鏡score(Mayo endoscopic score;MES) 0,1 の症例と定義されてきたが,MES 1 はMES 0 よりも再燃率が高いことが多く報告され,MES 0 と1は分けて考えるべきであるとされている.それに伴い,近年は粘膜治癒の定義も変化し,MES 1は内視鏡的に寛解としない意見も多い.MES 1は内視鏡的には軽症に分類されるが,多くの患者は臨床的に寛解である.こういった「臨床症状は安定しているが,内視鏡的に軽度の炎症が残存する症例」に対して治療介入することの有効性は明らかではない.本研究は,臨床的寛解ながらMES 1 の内視鏡的活動性を有する潰瘍性大腸炎患者に対して,治療介入が再燃予防に寄与するかを検証する目的で行われた.

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次号予告

編集後記

目次

基本情報

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INTESTINE
24巻1号 (2020年4月)
電子版ISSN:2433-250X 印刷版ISSN:1883-2342 日本メディカルセンター

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