INTESTINE 22巻6号 (2018年11月)

特集 大腸内視鏡の話題─機器と挿入法

序 説 工藤 進英
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大腸は回盲部から肛門に至る約150cmの管腔 臓器であり,大腸検査には注腸造影検査,直腸鏡,内視鏡検査,3D-colonography,大腸カプセル内視鏡などがある.そのなかで大腸すべて を観察し,治療まで行うことができる検査法とし ては大腸内視鏡検査しかない.大腸癌は 2003年以降の部位別癌死亡数で,女性では1位であり,男性でも2016年時点で3位となっている.数年以内に胃癌を上回ることが予想されており,いかに大腸癌が多く,大腸内視鏡検査が大切で必要な検査かはすでに周知のことである.

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軸保持短縮法は大腸内視鏡挿入における基本手技であり,とくに太径スコープにおいてはこの挿入法の習得が必須である.初学者は「場を作る」ことの重要性を理解し,「S-top」を正しく見極めることが求められる.さらに「3S Inser- tion Technique」と「S-top をとらえるテクニック(hooking the“S-top”)」は軸保持短縮法の根幹をなす手技であるため,理論を十分に理解し,なおかつ繰り返し体に覚え込ませることが大切である.また補助手段をうまく活用することで腸管に負担をかけずに挿入することが可能となり,これらの手技やコツを習得することが軸保持短縮法上達への近道である.

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大腸内視鏡検査に使用されているスコープは,通常径(太径),細径,極細径の3型に大別される.細径スコープは,太径スコープに比しS状結腸過長症例,癒着例,やせ型の患者で苦痛が少なく挿入も容易である.一方,太った患者や深 部挿入では太径のスコープに比し挿入性が劣る.細径スコープ使用に当たってはスコープの特性を理解し,デメリットを補うため用手圧迫や体位変換などの補助手段を加えて挿入性を上げることが大切である.

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オリンパス社製のPCF-PQ260は,シャフト径9.2mmという極細の内視鏡だが,細いシャフトの長所を活かしたうえで,その欠点を補うために装備された受動湾曲と高伝達挿入部の機能により,深部大腸への挿入を可能にした.その 特徴を簡単に紹介した.大腸内視鏡挿入は,挿入の基本事項に従い,挿入の補助手段を用いて行う.挿入の基本事項には,送気をできるかぎり避ける,ひだは内視鏡先端でかきわけて進む,腸管を過伸展させるプッシュはできるかぎり避ける,内視鏡シャフトの特 性を利用する,内視鏡のたわみを認識し対処する,内視鏡操作はゆっくり行う,そして,危険を避ける挿入がある.挿入の補助手段には用手圧迫,体位変換,被検者の呼吸,潤滑剤などが挙げられる.PCF-PQ260の挿入の基本も他の大腸内視鏡を用いる場合と同じであるが,より上手にPCF-PQ260 を使いこなすた めのコツを含めて解説した.

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□大腸内視鏡挿入を単純化すると屈曲部の越え方とスコープの推進力と考える.

□受動湾曲機能は屈曲部での力のベクトルを分散することで挿入性を向上させている.

□スコープのもつ長所・短所を理解し,使いこなすことが術者の力量である.

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□軸保持短縮操作で大腸内視鏡を挿入する場合に,高伝達挿入部は有用な機能である.

□硬度可変機能は,個人の挿入法やスコープの好みに対応可能であるとともに,癒着症例など被検者の状態に応じて使い分けが可能で有用な機能である.

□受動湾曲はプッシュ法で屈曲を越えるときに有用なだけで,軸保持短縮操作の障害になる(スコープ直線化の腰砕け)ことが多く,初学者のプッシュ法多用を誘導するリスクをもっており推奨できない.

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□大腸内視鏡挿入における体位変換・用手圧迫・呼吸調節は,やみくもに行っても無効である.

□スコープ先端の位置,大腸の形状を正しくイメージし,理論的に戦略を立てながら実施する.

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□大腸内視鏡検査の挿入,観察,および治療の補助としてキャップ(先端アタッ チメント,フード)が用いられる.

□透明フードによる挿入時間の短縮,ポリープ発見割合の上昇が報告されている.

□治療内視鏡(とくに ESD)において透明フードは必須である.

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□小腸のみならず挿入困難な大腸に対してもシングルバルーン内視鏡は有用である.

□深部大腸での ESD等用のため,通常大腸内視鏡対応のオーバーチューブもある.

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□ダブルバルーン内視鏡(DBE)は,スコープ先端とオーバーチューブ先端のバルーンを専用のバルーンコントローラーで拡張・収縮を繰り返しながらスコープを進めていく.スコープの先端にもバルーンが付いているので挿入効率がよい.

□DBEは,非熟練者においても確実な盲腸挿入を果たすことができる.

□DBE は,癒着などが原因で挿入困難な症例に対して挿入を容易にするだけでなく,苦痛の少ない検査を実現することができる.

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□大腸スライディングチューブは,直線化された腸管における S 状結腸再伸展 の防止に,とくに肥満体型の被検者に対して有用である.

□腸管穿孔やチューブの腸管内迷入をきたすことがあるため,慎重な操作が必要である.

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□water jet を利用した挿入法では,左手で脱気・足元で送水しながら,送水方向を次の管腔方向に合わせるイメージで,無送気で視野展開が可能である.

□この動作で自由腸管であるS状結腸を無送気で短縮・直線化することが可能になる.

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□炭酸ガス送気の使用により,患者の大腸内視鏡検査時や検査後の腹部膨満感や 腹痛は軽減する.

□慢性閉塞性肺疾患や重度の心不全患者には禁忌.

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挿入困難例には大きく二つのパターンがある.高度癒着や複雑腸管走行のために,誰が何度行っても非常に難しい絶対困難例と,工夫やテクニック次第で,難易度を下げられる可能性がある相対困難例である.このいずれかによって,対応は変わってくる.初心者にとっては,困難例の多くは絶対困難例と思えるであろう.一方上級者は,絶対困難例は少ないものである,と知っており,さらに近年減少してきていることに気づいている.

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当センターでは以前より,挿入困難は術者間の技量の相違や,同一術者でもその時々の調子の良し悪しに関係するような相対的挿入困難と,解剖学的・物理的な問題による絶対的挿入困難に分けられると考えている.それぞれ対処法が異なり,前者は個々の技量を高めること,後者は早期に見極め,工夫・対策を講じることが重要である.

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大腸内視鏡(CS)の挿入困難は,10%近くの被検者に認めるとされる.挿入困難の原因として,大腸の過長,強い屈曲,憩室,癒着,挿入時の疼痛,送気過多,肥満,腸管の緊張低下や痙縮,腹 直筋や腸腰筋などの筋力低下,内臓下垂,腸間膜遺残症による腸管の固定不良等がある.自験例の検討でも,大腸の過長や癒着,強い屈曲等が,挿入困難のおもな原因であった.CSの挿入困難に対する対策として,事前に個々の被検者に関する情報収集を行い,適切な内視鏡機種を選択す ることを重要視している.そこで本稿では,挿入困難の原因に応じた具体的な対策と,検査前情報 収集の重要性について述べる.

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挿入困難例を苦痛なく盲腸まで挿入するためには,S状結腸のさまざまな形状を理解しながら,送気を最小限に抑え,体位変換や腹壁圧迫,症例に応じた内視鏡機種の選択などが大切である.とくに全大腸内視鏡検査(TCS)が未情報の初回検査例では,すべてを挿入困難例として対処すること,2回目以降のリピーターにおける挿入困難例については,過去の検査情報を把握したうえで,慎重な挿入を心がけることにある.そのためにもTCSの情報記録をカルテ内に残すことは,次の検査に向けた対策として必要不可欠である.その情報とは,内視鏡の挿入形状や挿入時間,苦痛度,挿入困難な理由・原因などであり,これらの情報をカルテに記録しておくことも挿入困難例の対策としてルーチン化しておく必要がある.

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大腸内視鏡の挿入の基本は,軸保持短縮法である.しかし,挿入困難例とは,軸保持短縮法ができないときの挿入だと考えられる.軸保持短縮法では,新谷先生のhooking the foldのテクニッ クが重要である.そこで,挿入困難例において,hooking the foldのテクニックを筆者なりに工夫した.

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挿入困難の定義は難しい.盲腸まで到達できない患者は挿入困難であることは間違いないが,術 者の経験,挿入法,使用内視鏡の種類等で挿入困難は異なると考える.たとえば軸保持短縮法にて 挿入している検査医にとって,ループ法で挿入に なった場合は挿入困難例と判断するが,ループ法で挿入している検査医にとっては挿入困難例ではない.筆者らは,「sedation なしでも痛みのない挿入を」を心がけ,軸保持短縮法を基本に挿入している.本稿では軸保持短縮法で挿入できない例を挿入困難例と定義し,どのように対処しているかに関して,その流れを述べる.

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筆者らの施設は,富士フイルム社およびオリンパス社のいずれもの内視鏡システムを三つずつ有し,双方を大腸内視鏡検査に用いている.自験例においてはループ形成せずに挿入できる症例は30%程度にとどまるため,多くの症例でなんらかのループが形成されることとなる.太径スコープはループ形成時にはやや屈曲を越えにくく,腸管への負担も強いため,より汎用性の高いスコープ として当院では細径スコープを主として用いている.基本的に拡大機能付き内視鏡を原則として用 いており,オリンパス社の内視鏡ではPCF-H290Z(先端部外径11.7mm)を,富士フイルム社ではEC-L600ZP(7先端部外径11.7mm)を用いている.両者とも内視鏡の硬度を変化させる機能が搭載されているが,われわれの挿入法においては,ループ時や強い屈曲を越える際などの操作は軟らかい設定を用いて,たわみを防止する際には硬い設定 に変えるようにしている.

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色素拡大内視鏡を用いたpit pattern観察は,早期大腸癌の深達度診断に有用な方法として一般的に知られている.一方,Narrow Band Imag- ing(NBI)の開発により,簡易にvascularおよびsurface patternといった拡大所見が得られるようになった.拡大NBIについても,深達度診断における有用性が複数報告されるようになり,その診断精度をみるとpit pattern診断による成績に遜色ないものと推測された.しかしながら,pit patternとNBI拡大観察の深達度診断能を直接的に比較した研究はなかった.本研究は,両者の診断能を直接比較し,深達度診断における各々の位置づけについて検討することを目的とした.

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大腸T1癌は約10%にリンパ節転移を認めるため,それらに対しては内視鏡治療に加え,リンパ節郭清を伴う外科手術が根治条件となる.そこで,どの症例に外科手術を行うかという判断が 必要となる.現行の「大腸癌治療ガイドライン(2016年版)」では,内視鏡治療された病変の病 理学的検索において,1粘膜下層浸潤度1,000μm以上,2脈管侵襲陽性,3低分化腺癌,印環細胞癌,粘液癌,4浸潤先進部の簇出grade 2 or 3,がリンパ節転移のリスク因子であり,いずれか一因子以上を認めるものは追加で外科手術を考慮す べきとされている3).いずれも認めないものはリンパ節転移のリスクは低く,内視鏡治療にて根治と判断される.

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目次

編集後記

次号予告

第22巻総目次

著者索引

Key word索引

基本情報

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INTESTINE
22巻6号 (2018年11月)
電子版ISSN:2433-250X 印刷版ISSN:1883-2342 日本メディカルセンター

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