臨牀透析 35巻3号 (2019年3月)

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看護師は,リフレクティブな実践者として実践から新たな知を生み出すことができる.リフレクティブな実践者は患者が理解してほしいことに気がつき,実践することができるため,それが新たな知を生み出すことにつながるのである.そのため,看護師自身がリフレクションを適切に理解し,実践から学ぶ方法を身につけることが求められる.患者の療養行動において,長年の療養生活のなかで生み出した知恵が患者にはたくさんある.半面,その経験が「閉じた学習法」となって患者を苦しめることがある.看護師が「本当にその方法でよいのか」という問いを投げかけることで,患者は自己の方法について内省を始める.長期にわたる療養生活を強いられる患者は,看護師同様に「リフレクティブな実践者」である.看護師は自分自身がリフレクティブな実践者として学びながら,患者がリフレクティブな実践者でいられるように支援する存在でもある.

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リフレクション研修は,看護師のさまざまな経験を実践知として積み上げていくための学習の場である.本稿ではリフレクション研修において,どのように学ぶのか,何を学ぶのか,について具体的な展開方法,リフレクション・シートの活用などを提示した.多くの透析施設が「経験から学ぶ」リフレクション研修に継続教育の一環として取り組み,学習する組織風土をつくることを期待したい.

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日常的によくみられる「患者からの質問を受けそれに答える」という対話から,腎臓病とともに生きる道のりを支える意味があったと学んだ実践を,Gibbs のリフレクティブ・サイクルに沿ってリフレクションした.リフレクションを通して,腎代替療法に関する意思決定支援の焦点はどの治療法を選ぶかではなくそのプロセスであり,腎臓病をもちながら生活していくことを支える支援であるという視点の転換を可能にした.また「生活を支える」という看護の専門性を自覚することとなった.これらの学びは患者が腎臓病をもちながら,どのように生きていくのかを医療者とともに考えていく双方向のやり取りであることを意識した今の実践につながっている.

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CKD 患者への支援では,患者が腎機能が低下していくことを受け止め,腎代替療法(RRT)を自己決定できることが重要となる.しかし,急速に腎機能が低下した場合は,その現状を受け止めきれない場合もある.今回,早急にRRTの自己決定が必要だが,疾患や治療の理解が十分できず,身近に相談できる人もいなかった患者が治療を選択できるように支援し,その過程をリフレクションした.療法選択の際には,とかく治療法の説明を行い,どの治療を選択するかに主眼がおかれることがあるが,RRT が必要になったことで患者が何に苦しんでいるかを関わりのなかから浮き彫りにし,その苦しみを軽減するように支援することが重要である.

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導入期の患者が透析を受容するには,透析とともにある生活をイメージできることが重要である.しかし,透析導入という危機的状況のなか,患者が未知の生活をイメージするのは容易ではない.患者が透析とともにある生活を受容するために,医療者は,顕在している課題への対応のみならず,顕在化されない,透析導入による患者の生活や価値観の揺らぎという不確かな体験を理解することが必要不可欠である.本事例のリフレクションを通し,患者の生活を捉え,不確かな体験に働きかけ,患者が透析とともにある身体を捉え直すことで透析することに意味を見出すことを助ける支援の重要性を認識することができた.

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CKD ステージG4~5 は,急激な病態進展の危険性が高く,療養継続の支援が重要である.また,壮年期患者は仕事や家庭での役割と療養を両立するうえで,生活の場でさまざまな困難に直面することが予測される.今回,壮年期の患者の1 事例への支援の振り返りから,働ける体力の喪失,社会的役割の変化,病状や治療を家族に理解されない辛さ,医療費の重圧,などの困難が明らかになった.外来において,患者が自身と個々の生活に合う療養の方略を行使して自己効力を知覚すること,生活者である患者の苦悩や価値観を傾聴しながら役割遂行による自尊感情を高めること,医療費負担を緩和することへの看護支援が,療養継続やより良い生活に向けた行動変容に繫がったと考える.

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透析患者は種々の原因による慢性的な運動不足やサルコペニアの状態にあり,その予防・改善を目指し,近年,腎臓リハビリテーションが注目されている.長期間,透析中の筋痙攣を呈する患者に対して,運動療法を行うことで筋痙攣の改善がみられた事例を経験した.透析の合併症である筋痙攣は除水過多,ドライウエイトが低く設定されすぎている,血圧低下などが要因となって起こりやすいが,筋力の低下が原因となって起こることも考えられる.下肢の筋痙攣は腎臓リハビリテーションの一環として運動療法を行うことで改善がみられることがある.

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小児期にIgA 腎症と診断され,進学,就職の後8 年間の受診中断をしていた30 歳代,男性.発熱での受診を機に末期腎不全と診断され腹膜透析導入となった.その導入期において,本人の透析導入拒否の背景に母親に受診中断をしていたことを話せずにいる苦悩があったため,家族と調整をはかり,家族関係の再構築を行った症例を振り返る.

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慢性疾患を管理するうえで患者は自分のことを伝えられない“言いづらさ”を抱えている.これは,慢性疾患に特有の症状が他者に伝わりにくいためともいわれる.またたとえ労力を使い,症状が他者に伝わったとしても“病者である自分”というアイデンティティをさらけ出すことになるのである.患者が疾患管理を自分らしく行うために医療者ができることは,初めて患者が管理するそのタイミングに患者理解を深めることや寄り添うケアをすることにあると考える.

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腹膜透析と血液透析の併用療法を受ける患者は,腹膜透析とともにある生活から,併用療法とともにある生活を新たに創造していく必要がある.しかし併用療法とともにある生活を確立することは容易ではない.併用療法を受ける患者への看護支援を検討する際,まず腹膜透析とともに生きてきた患者の病気体験を知ることが重要である.看護師が患者の病気体験を聴取することで,患者の置かれた状況や患者固有の関心のありようを知ることができる.さらに患者が抱く自らの身体への気づかいを看護師自身が大切にしていく看護支援に繫げることができる.また看護支援を検討する際には,患者とともに検討することや,必要に応じて他部門との協働も重要である.

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単独世帯の高齢透析患者が増加している.患者はフレイルや認知症の発症により,独居生活が困難になる.本事例は,独居高齢透析患者がフレイル状態となり生活が困難になったため,新たな生活を再決定した事例である.フレイル状態となった患者は,ケアマネジャーにケアマンションの退去を勧められ,転居の話が進んでいた.看護師は患者が転居に納得できていないことを知り,多職種カンファレンスを設けた.各専門職の立場から患者を分析し,最善の方法を提示した.家族・本人も納得し転居に同意した.看護師は,早い段階から患者に残された時間をどのように過ごしたいかを確認し,関係者と連携し患者が望む過ごし方ができるように支援することが重要である.

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わが国の認知症有病者は2012 年時点で約462 万人,2025 年には約700 万人に上るといわれている.透析患者の高齢化も進むなかで,透析患者のなかでも認知症が増加していくと推察される.これらのことからも,認知症患者への透析看護は必要不可欠になるものである.今回,透析導入後に認知症を発症し,入院を機に重症化した事例のリフレクションを行った.入院中に重症化する認知症状を改善させるためには,生活環境の場が大切であることを再認識し,リフレクションを行い分析することで,認知症を患う透析患者への看護として新たな知見や知識を得て,今後の看護への足掛かりとすることができた.

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透析困難症により維持血液透析を見合わせることになった事例について,リフレクションを行った.患者には状況を受け止める力があるととらえ,最期の時間をどのように過ごすかについて,家族と話し合い,決められるよう支援した.その結果,患者と家族は透析を見合わせ,自宅で療養することを決めることができた.この事例をリフレクションすることにより,本人の意向を尊重し,関連する医療者で話し合いを重ね,最善の治療やケアの方向性を見出すことが大切であると学んだ.

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透析導入患者の平均年齢は高齢化しており,その家族も高齢化している.そのため,腎代替療法の意思決定は,単に患者だけの問題ではなく,家族の問題でもある.つまり,意思決定支援では患者だけでなく家族支援も重要である.そのためには,家族がどのような悩みや問題を抱えているのかを把握する必要がある.そこで,看護師にはケアマネジャーや地域支援者と協働で患者・家族を支える視点をもつことが求められる.家族への支援体制の整備は,患者・家族双方にとって幸せな決断に繫がると考える.高齢透析導入患者の介護体制の整備は,意思決定のためだけに行うのではなく,治療選択後の患者・家族が歩む人生を見据えることが重要である.

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最近,精緻医療(precision medicine)や個別化医療という言葉を耳にする機会が増えてきました.Precisionmedicine に関しては,とくに癌領域で個人の遺伝情報などに基づきより個人の特性に合った精緻な医療を提供できるように精力的に研究が進められています.先頃,開催されたアメリカ腎臓学会でもprecision medicine に関連したプログラムが多くみられました.腎臓の分野でも特定の遺伝子が腎障害の進展に関わっていることがいくつか報告されているものの,日常診療の場で幅広く応用されるまでには至っていません.しかし,実際,個々の患者の特徴に目を向けると,同じ原疾患病名でも腎障害の進展に関わる病態(炎症,糸球体高血圧や虚血などの血行動態異常など)が異なっていることに気づきます.したがって腎障害進展に関連する病態を介入可能な形として因数分解し“見える化”することで,個人の病態に合った最適な個別化医療を提供できると考えられます.

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現病歴:糖尿病性腎症による末期腎不全(ESRD)でX-2 年に血液透析導入.X 年2月上旬より下肢の関節痛が出現し徐々に悪化.その後,38.5 ℃以上の発熱が出現し,関節痛が上肢(両手首・両肘・両肩)にも広がり,歩行・体動困難となり,X 年3 月1 日に救急要請となり,同日,腎臓内科入院となる.

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非閉塞性腸管虚血症(nonocclusive mesenteric ischemia;NOMI)は腸間膜の血管に器質的な閉塞を伴わないにもかかわらず,腸管に虚血が起こり,壊死を生じる疾患である.診断において造影CT で腸管・腸間膜,腸間膜動脈,静脈を診断することが重要である.NOMI では著しい血流低下にて腸管の造影不良や虚血による腸管壁の肥厚がみられることがあるが,典型的な画像所見はない.また,CT で虚血病変がみられるのは60 %前後との報告もあり,画像診断で否定できない.NOMI 症例の死亡率は高いが,特徴的な症状や画像所見が乏しいために診断の困難性と治療開始のタイミングが難しい.治療としては,血管拡張薬の動注療法(塩酸パパべリン,プロスタグランジンE1,ニトログリセリン)を行い手術療法の適応があるか判断する.今回,NOMI の1 症例を経験したので報告する.

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目次

お詫びと訂正

次号予告・頻出略語一覧

編集後記

基本情報

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臨牀透析
35巻3号 (2019年3月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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