臨牀透析 35巻4号 (2019年4月)

特集 透析患者の残腎機能

  • 文献概要を表示

残腎機能は透析患者にとって重要な機能といわれるが,明確な定義がないのが実情である.尿量を残腎機能の指標とすることが多いが,そこには末期腎不全状態の腎臓が示す糸球体濾過機能と尿細管機能を含んでいると考えるのが妥当である.近年,蛋白結合型尿毒素排泄としての残腎機能,とくに尿細管機能が注目されている.残腎機能が透析患者にとり重要であるのは,生命予後に関連しているからである.その理由は,残腎機能の維持が栄養状態,血圧,貧血,慢性炎症,感染症など透析患者の合併症管理の改善と密接な関連があるからである.

  • 文献概要を表示

腹膜透析(PD)における残腎機能(RRF)の測定法はよく知られているところだが,血液透析(HD)では一般的ではない.HD は断続的に溶質除去が行われ,RRF を透析量の設定に単純に組み入れるのは困難とされる.またHD 開始とともにRRF が急速に低下するため,それに伴いHD の透析量を調整することは実際的ではないと考えられてきたためである.しかし最近,RRF の重要性がうたわれるようになり,RRF を透析量へ組み入れる方法もいくつか報告されている.ここではその計算方法を紹介した.

  • 文献概要を表示

残腎機能は透析患者にとっては,溶質クリアランスのみならず,体液量,電解質および酸塩基バランス,血圧,骨ミネラル代謝ならびに貧血などに関連しているため,機能維持は重要である.透析導入後の残腎機能には,年齢,原疾患ならびに合併症が関連しているが,その他導入前の腎機能の推移も関連している可能性がある.これまでの報告では,観察研究が中心ではあるが,透析患者の残腎は,QOL ならびに生命予後と関わっているとしている.すなわち,残腎機能の維持がQOL ならびに生命予後を改善する可能性を示唆している.慢性腎臓病は保存期,透析導入期そして維持透析期と移行していくが,一連の病態として腎機能の推移にも注目する必要がある.

  • 文献概要を表示

残腎機能低下は,腹膜透析患者のみならず血液透析患者においても死亡リスクと関連することが明らかにされ,近年,残腎機能保持の重要性が唱えられている.残腎機能低下はさまざまな臓器障害,すなわち,心血管疾患やその関連病態(体液過剰,血管内皮機能障害,血管および心臓弁石灰化,頸動脈プラークや脈波伝播速度の上昇,心筋肥大,酸化・糖化ストレスマーカーやFGF23 などのバイオマーカー上昇),その他,栄養障害,貧血,勃起不全,腹膜炎,睡眠障害などとも有意に関連することが報告されている.しかし,ほとんどの報告が少数例の横断研究でありエビデンスレベルは低い.今後,大規模な前向き研究によるエビデンスの構築が望まれる.

  • 文献概要を表示

血液透析において体液量が短時間に大きく変動することにより,残腎機能の低下速度は加速する可能性がある.腹膜透析において,血液透析より残腎機能が長く保持されるのは,このためと考えられる.管理不良の高血圧,血液透析中の急な低血圧は残腎機能低下速度を速める.慢性的な炎症反応陽性は,腎組織の荒廃を進行させ残腎機能低下が促進される.血清リン濃度は残腎機能が保たれている患者において管理良好であった.残腎機能が保たれている患者においてESA 投与量が少なくヘモグロビン濃度が高いという報告がある一方,残腎機能がESA投与量の決定因子ではなかったとの報告もある.

6.透析modality と残腎機能 友 雅司
  • 文献概要を表示

維持透析症例において残腎機能の保持は重要であり,血液透析患者,腹膜透析患者の生命予後に影響する.腹膜透析患者において残腎機能は水分除去,溶質除去の増加に寄与する.血液透析患者において残腎機能は血清β2 ミクログロブリン濃度の上昇抑制,血液透析治療中の限外濾過量低下に有用となる.血液透析患者において,残腎機能を保持するためには急激な限外濾過の回避,生体適合性の高いダイアライザの使用,清浄化透析液使用による微細炎症の低減などが重要である.

  • 文献概要を表示

HD 導入後の患者において,浄化および除水の両面から,残腎機能が維持されることが望ましいが,HD 患者はCAPD 患者に比べて残腎機能は低下しやすいとされる.一般に,残腎機能維持のため,透析量の増加と適切な除水設定が必要である.とくに適正な体液管理のためにHD における除水は,緩やかに,かつ血圧変動の少なく行われることが重要であり,過剰な除水は避けられるべきである.そのため,循環血液量モニタリングを含めさまざまな方法で適切な体液量が評価される必要がある.さらに残腎機能維持のため,透析導入後にもNSAIDsの使用,造影剤,コレステリン塞栓症,感染症などにも注意が払われる必要がある.HD 患者の残腎機能について再考してみたい.

  • 文献概要を表示

残腎機能は透析導入後も腎不全患者に残存する腎機能であり,安定した腹膜透析は残腎機能が保持されることにより可能となる.残腎機能は腹膜透析患者の独立した生命予後規定因子であるため,その機能維持対策が重要な課題である.適切な体液量管理を行い,腎毒性物質を避けること,ACE 阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を使用することが機能維持のために有効である.

  • 文献概要を表示

透析患者における残腎機能低下のリスクファクターとして,糖尿病や高血圧,肥満,脂質異常症,動脈硬化などの生活習慣病,脱水や透析終了時低血圧など生活習慣の注意点にも関与する因子,慢性炎症性疾患の存在が挙げられる.これらは保存期腎不全における腎機能悪化のリスクファクターにも共通しており,保存期腎不全からの生活習慣病管理や慢性炎症性疾患の発症予防ならびに進展防止が,透析導入後の残腎機能の保持につながることが確認された.

  • 文献概要を表示

腎移植後の自己腎の残腎機能は,透析を経ない未透析移植(先行的腎移植:preemptivekidney transplantation;PKT)の場合に問題となる.近年,わが国からも長期透析後の腎移植と比較してPKT は移植後の生存率を向上させることが報告された.PKT は,アクセス手術が不要である点や長期透析の合併症のない点でも有用である.

  • 文献概要を表示

透析患者に降圧薬を使用するうえで,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),Ca 拮抗薬,利尿薬が必須となる.ACEI/ARB においては腎糸球体の輸出細動脈に作用して糸球体内圧を低下させることで糸球体への負担が軽減されるが,その反面,糸球体内圧の低下により尿量の減少が起き,クレアチニンおよび電解質の除去が悪化する場合がある.一方のCa 拮抗薬においては,その作用部位の違いにより輸入細動脈や輸出細動脈の収縮を抑制するため薬剤により腎臓への影響が異なる.また,利尿薬においても同様に作用部位により腎臓への影響が異なるため,それぞれの特性を生かし,患者にあった選択が重要となる.

  • 文献概要を表示

ヨード造影剤を使用した画像診断は,日常臨床において必須の検査項目であり,多くの有益な情報をもたらす.しかし造影剤を使用することにより,造影剤腎症(contrast induced nephropathy;CIN)を起こし腎機能が低下するリスクがある.CIN のリスクは腎機能が低下した患者ほど高いため,尿量が保たれている透析患者に対しては,代替検査により同様の診療情報が得られるのであれば,造影検査は避けることが望ましい.一方で,透析患者において残腎機能を保つために,本来は必要な造影検査を行わないことは好ましくない.個別の症例において,造影検査により得られる診療情報などのメリットとCIN のリスクを考慮して,CIN のリスクを減らす予防対策を講じ,適切に造影検査を行う必要がある.本コラムでは,造影剤を使用する側の専門家である日本医学放射線学会と日本循環器学会,腎障害を診療する専門家である日本腎臓学会の3 学会より共同で発行され,最近改訂された「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」を中心に透析患者を含む腎機能障害患者に対するヨード造影剤を使用した検査についてまとめる.

OPINION

大丈夫か「Made in Japan」? 竜崎 崇和
  • 文献概要を表示

免震・制振オイルダンパーの製作会社KYB のデータ改ざん事件が昨年(2018 年)大きな事件となったが,数年前にも同じような事件があったのを思い出す.東洋ゴム工業の免震ゴム装置のデータ改ざんである.ともに安全性を担保するはずの免震・制振装置への信頼を大きく損なう不祥事で,国民の不安は大きかった.その不安を打ち消すためか? いずれの装置も,改ざんが明らかになった後に国交省が実施した調査で,「震度7 程度の地震でも倒壊するおそれはなく,安全性に問題はない」と結論づけられた.しかし,企業モラルに対する批判は免れられない.「国民を欺き,不安をあおった.決して許される行為ではない」と専門家も指摘しているが,そのとおりである.

研究会報告

  • 文献概要を表示

去る2018 年11 月10 日,11 日に,滋賀県大津市の県立県民交流センターピアザ淡海において第21 回在宅血液透析研究会を開催いたしました.約500 名の医師・看護師・臨床工学技士,そして患者および家族の参加があり,各セッションで大いに盛り上がった討議を展開していただきました.ここに改めて参加された方はじめ発表いただいた方や開催にご協力いただいた関係者の皆様に感謝申し上げます.

  • 文献概要を表示

現病歴:膀胱癌,S 状結腸癌および食道癌のため当院で外来加療が行われていた.X年9 月より肉眼的血尿が出現,泌尿器科受診し尿路感染症が疑われ,レボフロキサシン(LVFX)およびカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物にて加療開始された.その後も肉眼的血尿は持続したため,抗菌薬をスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤に変更した.肉眼的血尿の発症前sCr 1.06 mg/dL であったが,発症後sCr2.36 mg/dL まで増悪したため,当科紹介受診し,急性腎障害精査加療目的に当科入院した.

  • 文献概要を表示

後天性多発囊胞腎(ACDK)は長期透析患者にみられ,腎癌の発生や囊胞の破裂が問題となる.透析患者における腎細胞癌自然破裂の報告は,その多くがACDK に関連するものであるが,今回,透析歴が短く,ACDK に関連のない腎細胞癌の自然破裂の1例を経験したので報告する.

------------

目次

前号ご案内・次号予告・頻出略語一覧

編集後記

基本情報

cd35-4_cover.jpg
臨牀透析
35巻4号 (2019年4月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

文献閲覧数ランキング(
10月7日~10月13日
)