臨牀透析 33巻12号 (2017年11月)

特集 透析患者向け治療食の最先端

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透析患者の高齢化と多様化に伴い,単に年齢のみで区切って栄養管理を考えることは困難である.そこで,① 就労透析患者の栄養管理,② 低栄養状態のない元気な高齢透析患者の栄養管理,③ 低栄養状態のある高齢透析患者の栄養管理という分類で栄養管理を実施することを提案する.dry weight の経時的変動,透析間体重増加量,患者個々の食事摂取量や摂取方法の変化,臨床データの変動,栄養評価の実施,さらに精神的・社会的側面にも鑑みながら,栄養管理を行うことが必要である.

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三大栄養素はいずれも腸管内で消化酵素により消化を受けた後,小腸上皮細胞の刷子縁膜上に存在する酵素により,より単純な構造に分解され,輸送体・細胞間隙の受動輸送で吸収される.体内での代謝では,糖質はエネルギーを産生するほか,グリコーゲン,脂肪酸の合成も行われる.長鎖脂肪酸はカルニチンとともにミトコンドリア内に移動し,β酸化を受ける.アミノ酸は蛋白合成に用いられるほか,炭素骨格はエネルギー産生に関与する.消耗状態では,こうした筋蛋白の崩壊が生じる.ビタミンは水溶性・脂溶性に分類されるが,腎不全患者では脂溶性ビタミンの過剰症に注意する必要がある.

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培養・単離を介さない手法によるヒト腸内常在菌多様性解析はその生活特性との関連を明らかにする手段として用いられ,生活特性(年齢,性別,BMI,食生活,運動習慣など)との関係も解明されるようになった.さらに,腸内常在菌の改善のための特殊成分,とくにプロバイオティクスやプレバイオティクスについて言及する.

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透析患者の栄養管理において,最重要なことは食塩・水分・カリウム管理である.食塩や水分の過剰摂取による溢水,カリウムの過剰摂取による高カリウム血症は生命にかかわる大きな問題である.この点は十分に患者へ伝えるべき点で,これは高齢者であっても外せない点である. 「高齢者」といっても,日常生活活動量や病態はさまざまであり,高齢者として十把一絡げにするには抵抗がある.すなわち,個々の活動量や食欲,身体能力,精神能力,社会環境,生き方の倫理観など,細かな配慮がなされた対応が求められるのではないだろうか.「高齢者」というと,一般にネガティブなイメージが先行しがちであるが,その生き方は千差万別で,ゴルフを楽しむ,社交ダンスを楽しむ,旅行を楽しむといった,活動的な高齢者も存在している.一方,活動性が低下し介助が必要な患者,義歯で食事が食べにくい患者,嚥下や咀嚼の機能が低下している患者,認知症を発症する患者など状態はさまざまである.

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尿毒素物質は,腎機能の低下とともに体内に蓄積し臓器障害を引き起こす.慢性腎臓病患者で尿毒素物質濃度を低下させるには,その産生を減少させるのが効率的である.インドキシル硫酸,p―クレシル硫酸などは腸内細菌により産生される.健康状態では,腸内細菌叢は個体の恒常性維持に重要な役割を果たす.慢性腎臓病は腸内細菌叢組成を変化させ,腸管粘膜バリア機能を障害する.これらは尿毒素物質の血中濃度上昇に関与している.また,腸内環境の変化は慢性腎臓病をさらに悪化させる要因となる.腎不全で悪化した腸内環境の改善が,今後の慢性腎臓病の新規治療ターゲットとなる.

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正常に摂食可能な透析患者では,40 年以上の長期生存例が存在することから,通常の蛋白・アミノ酸摂取内容で問題はないと考える.

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必要エネルギーの50〜65 %は糖質から摂取する必要がある.たんぱく質制限を行うとさらに糖質の摂取比率が増し,その重要性も増す.インスリンによる蛋白質の分解抑制や合成促進効果があるため,糖質の蛋白質節約作用も期待できる.たんぱく質制限時の糖質源として低たんぱく米・低たんぱく小麦・デンプン製品とともに,「粉飴」(マルトデキストリン)がよく使われる.粉飴はたんぱく質を含まず,甘さもほとんどなく,水によく溶け,粘度も上げないのでいろいろなものに加えることができる.糖質の有効な活用法とは,「粉飴」を活用することと考える.

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腎臓病患者にとって,脂質をエネルギーとして過不足なく適切量摂取することは重要である.脂質の過剰な摂取は脂質異常症を介して慢性腎臓病の発症や進行のリスクを高める.一方,エネルギー不足は,蛋白質の異化を亢進させ,サルコペニア発症の要因や,骨格筋減少に伴う耐糖能異常,運動不足の原因となるため,腎機能保護の観点からマイナスである.最近,注目されている中鎖脂肪酸油(MCT)は,ほぼ無味・無臭であり,低蓄積性で消化・吸収に優れる特徴をもち,低栄養やサルコペニアの改善効果が期待されている.その意味でも,MCT は今後,大きな可能性を秘めている.

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高齢化が進む透析患者の食欲低下には透析治療そのものが関与し,食欲低下を「摂食意欲の減少」と単純化して捉えることが難しい場合が多い.ここでは以下の三点について述べる.

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血液透析の受療者は便秘の頻度が高いといわれている.腎臓病者は食物繊維を1 日当り5.9 g しか摂取できていないとの報告もあり,便秘との関連性が推察されている.最近,精製度が高い食物繊維素材を食事に取り入れることで,カリウムを抑えて食物繊維量を多く摂取できるようになってきた.食物繊維は,不溶性と水溶性に大別される.不溶性食物繊維は,便量を増加させ,腸の蠕動運動を促進させる機能をもつ.水溶性食物繊維は,血糖値や血中中性脂肪の上昇を抑える効果がある.寒天は不溶性と水溶性のどちらの性質ももつ.寒天による透析患者の排便コントロールが実践され,排便に問題がある被験者の割合が低下したことが報告されている.

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食生活の欧米化に伴い,先進国ではMg 摂取不足が蔓延している.たとえば米国人の約半数はMg の摂取量が推定平均必要量に達していない1).Mg は緑黄色野菜,海藻・海産物,豆・ナッツ類に豊富に含まれている.したがって,カリウム(K)制限を必要とする透析患者ではMg 摂取不足の傾向はさらに顕著となる.血液透析患者91 例を調査したスペインからの報告では,Mg 摂取推奨量を満たした症例はわずか2 %にすぎなかった2).血液透析患者では,透析液Mg 濃度が一定であれば,血中Mg 濃度とMg 摂取量には強い相関があり,Mg 摂取不足は血中Mg 濃度の低下につながる3).血中Mg 濃度低値は透析患者の死亡リスク上昇と関連するため4),K 制限を踏まえたうえで,Mg を不足させない栄養学的アプローチが求められる.

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腎臓病透析患者はカリウム摂取量が制限されており,カリウム含有量の多い野菜の摂取が制限されている.その結果,野菜成分に含まれる栄養素を摂取することができないことによる問題があった.その問題を解決するために,通常のものに比べてカリウム含有量の少ない「低カリウム含有量野菜」の栽培方法を確立した.その結果,従来の栽培法に比較して1/4〜1/7 のカリウム含有量にまで削減することができた.低カリウム含有量野菜は透析患者の生活の質(QOL)の改善に貢献できる可能性が示唆されている.本稿では,低カリウム含有量野菜の栽培方法の確立に関する研究過程から,実用化の現状,医学的知見,今後の問題点などについて解説する.

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リン摂取量はたんぱく質摂取量と強く相関するため,透析患者ではたんぱく質栄養状態を良好に保ちながらリンの摂取量を管理することが求められる.リン/たんぱく質比の低い良質なたんぱく質を摂取するなどの工夫が必要となり,低リン食品の使用が有用である.一方で,食事摂取量が低下している低栄養の人には,低リン血症への配慮も必要となる.血清リン濃度が低い場合は,一定程度のリンが配合されたリン調整食品を利用し,透析による除去量とのバランスを図る.個々の患者の栄養管理に合わせて適切な低リン食品を選択する.

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野菜や果物を気にせずに食べたい.乳製品を摂りたい.食事量が減ってエネルギー・たんぱく質不足によりフレイルやPEW(protein energy wasting)に陥るのを防ぐためにはどうしたらよいのか,最近話題の低カリウム野菜,栄養補助食品を利用し透析患者の毎日の食事をどのようにアレンジできるか,献立例を作成し,制限のある食事療法を行っている患者の精神的負担を軽減できるように考えてみた.

OPINION

最近,人材育成で思うこと 石田 陽一
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私は1979 年に医学部を卒業して内科の教室に入局しました.当時は入院患者の検査は主治医が手作業で行うことが多く,メランジュールで血算を行いストリッヒを引いて血液像を見て白血球分画をカウントしていました.ゴミか血小板かよくわからないものをカウントしてDIC の患者を診ていました.腎臓内科医になる前に受け持った急性腎不全の患者には毎回,腹膜穿刺してテンコフカテを腹腔内に挿入し,透析が終わると抜去して腹壁を閉じていました.回数が増えてくるとスタイレットの方向やテンコフカテを入れるときの傾け具合,力加減などを工夫していたものです.今から思えば原始的な医療をしていたものだと思いますが,そういう手作業と自分なりの工夫をすることに慣れていたことが後日役に立ったようです.最初にcontinuousarteriovenous hemofi ltration(CAVH)を始めた頃がそうでした.1984 年の第9 回国際腎臓学会でドイツ人の医師が面白い治療法に取り組んでいると教えてくれたのがCAVH でした.振り返ってみると1985 年から論文が多くなっていたようです.専用のデバイスもありませんでしたし,しばらく忘れていましたが1987 年に肺水腫の患者で最終手段としてCAVH をやってみようということになり,ASAHI PAN―50P で通常の血液透析回路の動静脈側を50cm で切断してエアーチャンバなしで接続し,大腿動静脈に各々エラスター針を留置してポンプなしで動静脈圧格差のみで体外循環させました.84 時間で濾過量は22 L,除水量は5.2 L でした.患者の状態は安定して大成功でした.以後,急性血液浄化にはまってICU に寝泊まりしていました.また,CAPD も現在の病院に赴任してきたときに肝硬変で大量腹水のある腎不全患者に試してみたところ腹水もコントロールでき非常に安定しました.以後,CAPD を継続し,最近はCKD 地域連携に取り組んでいます.

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現病歴:入院6 日前より両眼の視力低下と両手指のピリピリとした感覚障害が出現.徐々に視力低下が増悪し入院2 日前に近医眼科受診したところ網膜剝離と診断され,入院前日に総合病院の眼科を紹介受診した際,血圧230/130 mmHg と高値を指摘され当科紹介となった.

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骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;MDS)は造血細胞の異常な増殖とアポトーシスによって特徴づけられる単クローン性の疾患で,高齢者に多く発症し,近年患者数が増加している重要な疾患である.MDS に対する赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の有効性は,エビデンスが示され確立しており,日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」にて推奨グレード2A で推奨されている1).それを受けて本邦では,2014 年12月末よりMDS における健康保険適用の追加承認があり,ダルベポエチンアルファ(DA)240 μg/week 皮下注射での使用が可能となった.

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目次

次号予告 小池 隆夫

編集後記

基本情報

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臨牀透析
33巻12号 (2017年11月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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