臨牀透析 33巻13号 (2017年12月)

特集 透析スタッフにとっての腎移植―直面する臨床的課題

Editorial 西 慎一
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本邦では年間1,600 例程度の腎移植が実施され,一方新規透析導入患者は年間4 万人弱である.腎移植も腎代替療法の一つであるが,腎移植症例の比率はわずか約4 %程度でしかない.したがって,透析スタッフにとって,腎移植患者に遭遇する機会は決して多いとはいえない.そのため,腎移植に関して学ぶ機会がどうしても少ないのが現状である.しかし,腎移植も患者が希望する腎代替療法の一つである.腎移植のことを透析スタッフが正しく理解していないことは問題である.ぜひとも積極的に腎移植に関する情報に目を向けて欲しい.

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腎代替療法として完全に腎機能を代替できるのは腎移植である.慢性透析患者は32 万人を超えているが,年間の腎移植症例数は1,600 例程度で,このうち80 %以上が生体腎移植である.現在,移植腎5 年生着率は生体腎で94.5 %,献腎移植で87.3 %ときわめて良好な成績を得ている.生体腎移植では,ABO血液型不適合が33 %,夫婦間での腎移植が43 %で,親子間の41 %を超えている.維持透析を受けずに腎移植に至る症例が34 %となった.しかし,臓器移植は本来,亡くなった人からの提供で行うべきものであるが,臓器移植法制定から20 年,改正から8 年経過しているが,一向に臓器提供者は増えておらず,逆に献腎移植を希望して登録している患者の移植の機会は減少している.

[用語解説]献腎移植

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「腎移植医と透析医・透析スタッフとの接点」について,北陸地区(石川県)の取り組みをモデルとして紹介した.とくに,腎移植医と透析医・透析スタッフとが毎年接する重要な事柄として,(公社)日本臓器移植ネットワークから各献腎移植施設に求められている,献腎移植希望登録者に対する年1 度以上の適切な評価がある.透析施設からの必要な情報提供として,原疾患,腎生検の病理結果,透析状況,輸血記録,服薬状況並びに合併症の加療歴および患者の社会的背景(住所,勤務場所,緊急時の連絡先など)などについて事例を提示した.さらに,献腎移植における先行的腎移植の登録基準や透析スタッフ,患者と家族への腎移植学習会についても解説した.

[用語解説]5 類型病院

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腎移植は,第三者より提供される腎臓が移植される.その公平性の担保や円滑な腎移植を行うための連絡・調整,また患者や家族,さらに透析施設からの相談・調整などのために,移植コーディネーターは欠くことのできない存在である.移植コーディネーターは,ドナー移植コーディネーターとレシピエント移植コーディネーターに大別される.透析施設との連携では,とくにレシピエント移植コーディネーターの役割が大きい.本稿ではレシピエント移植コーディネーターと透析スタッフとの連携の一端を紹介する.

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腎移植待機患者は良好な全身状態を維持する必要がある.腎移植待機患者における長期管理として重要なのは,感染症の評価・予防・治療,悪性腫瘍の早期発見・治療,心血管病の発症予防である.透析施設においては,通常の感染予防対策に加え,ワクチン接種や無症候性感染症の治療,悪性腫瘍のスクリーニング,体液過剰・高血圧・貧血・血糖・CKD―MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)・肥満に対する治療,禁煙指導が重要である.腎移植が円滑に行われるように,腎移植待機患者は移植登録施設での受診が義務づけられた.今後,腎移植待機患者の医療情報を移植施設と透析施設で共有できる連携体制の構築が必要である.

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透析患者および腎移植患者におけるC 型肝炎ウイルス(HCV)陽性率は高く,長期的にはC 型慢性肝炎(CHC)から肝硬変や肝癌を併発し生命予後や移植腎生着率を悪化させる重大な要因となる.CHC に対する治療としては以前からインターフェロンやペグインターフェロンを用いた治療が行われてきたが,低いHCV 排除率や合併症などで治療は限定的であった.近年,直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals;DAA)が開発され治療成績は飛躍的に向上したが,透析患者や腎移植患者においては腎機能や薬剤の相互作用に留意してDAA を選択する必要がある.腎移植を希望するHCV 陽性透析患者に対しては積極的にDAA 治療を行うことが患者の生命予後改善につながるものと思われる.

[用語解説]先行的腎移植

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糖尿病性腎症は末期腎不全の最多の要因の一つである.糖尿病性腎症による末期腎不全では透析患者と比較して,腎移植患者の生命予後,その後のQOLは維持されており,糖尿病性腎症においても移植は推奨されるべき治療の一つである.糖尿病性腎症に対して腎移植を施行した患者の死因の第一位は,冠動脈疾患であり,細菌感染や真菌感染のリスクも高いといわれている.これらのリスク軽減は必要であり,術前評価また術後の評価も重要である.また,本稿では糖尿病の透析患者における血糖管理の概要にも言及する.

[用語解説]pack year

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近年,腎移植患者の数は増加してきており,医学の進歩に伴い,とくにハイリスク患者の数が増えてきている.透析患者と同様に,移植患者の死亡原因の第一位が心血管疾患であることが知られており,移植前後でとくにこれらに関して注意する必要がある.移植患者となりうる末期腎不全患者では,高頻度に心血管疾患を有している.したがって,スクリーニングが重要となるが,現在ある多くのガイドラインでは移植を受ける患者の特殊性が考慮されていない.これらの患者の特徴をよく理解し,適切なスクリーニングおよび治療を行い,予後改善に努めるべきである.

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二次性副甲状腺機能亢進症(二次性HPT)は腎不全をきっかけとして発症し,保存期・透析期・移植後すべてにわたって電解質異常,骨病変,血管石灰化などの骨ミネラル代謝異常を引き起こす.しかし移植後に腎機能が改善しても必ずしもHPT が改善するわけではなく,遷延する症例が存在する.腎移植前の二次性HPT は移植後遷延性HPT のリスクであり,移植前のHPT 治療が重要である.遷延性HPT は移植レシピエントの生命予後悪化,グラフト予後悪化と関連することが報告されている.PTH 値を低下させ,骨ミネラル代謝異常を改善し,ひいては生命予後を改善するためにも副甲状腺摘出やカルシミメティクスといった治療を考慮する必要がある.

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慢性腎臓病および末期腎不全はそれ自体が発癌の危険因子であり,腎代替療法の管理において,悪性腫瘍の早期発見と治療は,感染症のコントロールと並び重要なポイントである.腎移植患者における悪性腫瘍の発生頻度は,健常者のおよそ2.5〜5 倍という報告がある.腎移植に際しては,提供腎の長期にわたる機能保持や移植腎生着中癌死の回避,移植後の免疫抑制薬による発癌リスクの増加等の観点から,術前の入念なスクリーニングはもちろん,術後の定期的な検診や画像評価は必須である.腎移植後患者に対する悪性腫瘍のスクリーニングとして確立した方法はないが,高リスクであることを念頭に,年齢や性別等を考慮した計画的な検診や画像検索を勧めるべきである.

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腎不全患者の高齢化に伴い,高齢者で移植を受ける患者も増えてきている.高齢者における腎移植の成績は若年者と遜色なく,生命予後,QOL 改善の点から移植は高齢腎不全患者に対しても腎代替療法の選択肢として考慮されるべきである.

[用語解説]death with functioning graft

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腎移植は末期腎不全に対する腎代替療法としてすでに定着し,その成績はきわめて良好である.今後,腎移植患者がさらに増加することが予想され,腎臓内科医の積極的な関与が求められるが,わが国の腎臓内科医のほとんどは腎移植を直接学べない環境にある.最大の理由は腎移植がごく一部の施設で行われ,移植後の患者もその施設か関連の医療機関でフォローされていることであり,腎移植患者と接することができるのは移植施設の腎臓内科医に限られる.このギャップを埋める有効な手段は現在のところなく,非移植施設の腎臓内科医は腎移植のオプション提示を行い,移植希望者を移植施設に紹介することから始めるのがよいと思われる.先行的生体腎移植の紹介ができるようになることが初期の目標で,その過程で腎臓内科医には腎移植そのものに関心をもっていただきたい.

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移植技術の向上・適応の拡大・免疫抑制薬の応用と移植後合併症に対する治療の進歩により移植件数も増え,生着率・生存率も大きく向上してきた.

OPINION

これからの透析医療 岡田 浩一
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わが国において末期腎不全患者にHD が導入されるようになって50 年が過ぎ,透析患者数は30 万人を超えるに至った.初期には延命の意味が強かったHD は,いつしか患者のQOL が問われる治療へと進歩し,その技術的なレベルは完成の域に達しているといっても過言ではない.その一つの証拠は,日本の維持HD 患者の寿命が世界第1 位にあるという事実である.ただ,現在のHD を取り巻く状況は,HD 患者の高齢化と合併症の多様化で特徴づけられる.HD 患者の高齢化は維持HD 患者の寿命が延長したのみならず,CKD 診療が向上した結果,保存期腎不全の期間が延長してHD 導入期の高齢化をきたしている点も関与している.またHD 導入基準は示されているものの非導入や中止の基準はないという状況や,患者負担が実質的にゼロである保険制度もその傾向に拍車をかけている.その結果,透析関連の医療費は年間1 兆5 千億円を超えるという膨大な額に達しており,数年来の傾向から診療・介護報酬のダブル改定の年となる2018 年には,医療者や企業にとってかなりの逆風が想定される.

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急性腎不全(acute kidney injury;AKI)のなかでも,腎後性腎不全は画像所見による診断がきわめて有用である.今回,糖尿病治療歴が不詳で尿毒症症候を呈し急性血液浄化療法を開始するも,画像診断で腎後性による急性腎不全と診断し,透析を離脱しえた症例を経験したので報告する.

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現病歴:8 年前より高血圧を指摘され,近医にて通院加療中であった.4 年前より腎機能障害を指摘された.血清Cr 2.0 mg/dL 程度で推移していたが,2.8 mg/dL まで上昇したため,腎機能障害の精査・加療目的に当院当科へ紹介となった.紹介時の腹部CT 検査では,左右ともに長径15 cm ほどの腎腫大を認めたが,常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease;ADPKD)に合致する皮質囊胞は指摘されなかった.慢性的な腎機能低下を認める症例ではあったが,両側腎腫大と比較的急速な腎機能低下の原因精査のため,経皮的腎生検目的に入院となった.

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臨牀透析
33巻13号 (2017年12月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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