臨床雑誌整形外科 68巻10号 (2017年9月)

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頸椎全域の手術例73例(男性44例、女性29例、平均年齢62.1歳)を対象に、椎骨動脈の骨外・骨外走行異常を評価した。その結果、椎骨動脈の骨外・骨内走行異常は全体で35例(48%)に認められ、責任病巣が上位頸椎に存在する症例(上位群)では61%(20/33例)、中下位頸椎に存在する症例(中下位群)では38%(15/40例)に認められた。特に上位群では骨内走行異常が52%と高頻度であり、実際に頸椎後方インストゥルメンテーション手術でC2に椎弓根スクリューを安全に刺入できない頻度が高く、術前に三次元的評価を行ってVA損傷を防ぐ対策を講じる必要性があると考えられた。中下位群でも骨内走行異常を25%に認めたため、C2を固定範囲に含む場合は術前評価を行い、至適なアンカーの設置を検討する必要があると考えられた。また、骨内走行異常は骨変化を先天的にきたすKlippel-Feil症候群で50%(1/2例)、後天的にきたすRA、化膿性脊椎炎では57%(8/17例)と高率にみられた。その他疾患における頻度は32%(18/57例)で、その中で最も多かった循環器疾患で39%(11/28例)、糖尿病にも32%(6/19例)に骨内走行異常がみられた。

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単一施設でBalloon kyphoplasty(BKP)を施行した椎体骨折患者41例(平均年齢79.6歳)を対象に、術後の隣接椎体骨折(AVF)と全脊椎矢状面アライメントとの関連について検討した。その結果、術後3ヵ月以内にAVFを認めたものは9例(22.0%)であり、有意差はなかったものの骨盤の代償が大きい症例、矢状面アライメントの悪い症例でAVFをきたす傾向がみられた。ロジスティック回帰分析では、術後AVF発症に最も関与する危険因子は骨髄傾斜(PT)と正常PTとの比率(PTR)であることが明らかになった。

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当院で転移性脊椎腫瘍に対し最小侵襲脊椎安定術(MISt)を行った15例(男性7例、女性8例、手術時平均年齢62.2歳)の治療成績について検討した。平均術後観察期間は12.0ヵ月、責任病巣は胸椎が10例、腰椎が4例、胸椎+腰椎が1例であった。その結果、固定椎間数は平均4.1椎間で、4例に除圧術を併用した。平均手術時間は111.8分、平均術中出血量は26.4mlであった。6例は術前にFrankel分類grade D以上の麻痺があり、術後に麻痺が改善したものは2例であった。一方、9例は術前に麻痺を認めず、うち8例は術後も麻痺を生じることなく経過し、麻痺が出現した1例は原疾患の増悪に伴うものであった。合併症は創部表層感染を1例で認めたが、片側のみインストゥルメントを抜去して治癒した。術後放射線治療は9例に施行され、照射開始までの術後平均期間は17.2日であった。

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当科で経験したIschiofemoral impingement(IFI)5例6股(全例女性、平均年齢58.8歳)について検討した。疼痛部位は全例臀部で、3股で鼠径部痛を合併し、2股で大腿背側への放散痛を認めた。徒手筋力検査ではPatrickテスト、前方インピンジメントテストは全例陰性であった。また、Paceテストも全例陰性で、Fribergテストは1股のみ陽性であった。股関節伸展0°での内・外旋で全例に疼痛が生じた。関節正面X線ではIFSの軽度狭小化を1例、IFSの石灰化を1例で認めた。MRIでは全例でIFSにT2強調像とSTIRで高信号があり、IFS距離は平均11.9mmであった。全例3ヵ月以上の保存的治療を行い、2股では疼痛の改善がみられた。一方、保存的治療が無効であった4股に対しては小転子切除術を行い、全例、翌日には歩行時の疼痛が消失し、JOAスコアは術前平均40.2点から術後1ヵ月で平均77.5点に改善した。

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当院で治療を行った65歳以上の脆弱性大腿骨近位部骨折両側例のうち、新たに骨折を生じた15例(男性2例、女性13例)について検討した。初回骨折、対側骨折、三次骨折のそれぞれの受傷時平均年齢は84.3歳、86.7歳、88.1歳であった。三次骨折の部位は骨盤骨折が40%、大腿骨骨折が26.7%、脊椎圧迫骨折が13.3%、橈骨遠位端骨折が13.3%、上腕骨近位部骨折が6.7%であった。対側骨折から三次骨折までの期間は2年以内が93.4%を占めた。森本らの分類による歩行能力では、三次骨折受傷前はgrade Iが26.6%、grade IIが6.7%、grade IIIが13.4%、grade IVが53.3%であったが、三次骨折後はgrade Iが20.0%、grade IVが66.6%となった。生活場所は三次骨折前が自宅46.6%、施設33.4%、病院13.3%であり、三次骨折後は自宅40.0%、施設33.4%、病院13.3%、死亡退院13.3%であった。三次骨折前の骨粗鬆症治療率は40.0%であった。

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Marfan症候群4例の長期成績について検討した。症例1は15歳女児で、股関節脱臼に対し股関節固定術を施行した。症例2は17歳男児で、脊柱側彎症に対しTh11~L4前方固定術を施行し、術後2年でロッドの破損がみられたため、後方固定術を追加した。症例3は9歳女児で、脊柱側彎症に対しTh8~L4 Harrington-Luqueワイヤリング手術を施行し、術後3年でRisser-Cotrelギプス矯正を行った。症例4は11歳女児で、生後6ヵ月時に先天性内反足に対し両側後内方解離術を行い、今回、左習慣性膝蓋骨脱臼を生じたため外側解離術、内側縫縮術、Campbell手術を施行し、12歳時に左足に内側解離術、Evans手術、前脛骨筋腱外方移行術を行った。症例1は20歳時に突然死したが、他の3例は20年以上経過観察が可能で、いずれも術後経過良好である。

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88歳女性。1ヵ月前に屋内で転倒し、徐々に両手指巧緻運動障害、歩行障害が出現したため受診となった。初診時、四肢の徒手筋力テスト(MMT)は4程度で杖歩行であった。入院精査をすすめるも希望せず帰宅し、初診10日後に四肢麻痺が悪化したため即日入院となった。神経学的所見および画像所見より、頸椎症性脊髄症の急性増悪と診断され、早期手術を計画した。しかし、入院時の血液検査でBUN、Crの異常高値を認め、腹部CTを撮影したところ、直径9cmの腹部大動脈瘤を認めたため、準緊急的に人工血管置換術を施行した。術直後より意識障害が持続し、術後3週に頭部MRIを施行したところ、両側の慢性硬膜下血腫が明らかとなり、血腫洗浄除去術を行った。手術直後に意識障害は速やかに改善し、四肢麻痺も徐々に改善した。術後半年経過で杖歩行可能となった。

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68歳女性。草むしり後に左下肢痛が出現したため受診となった。MRI矢状断像ではL4/L5レベルで椎間板の左後方に軽度膨隆、左椎間関節の変性・肥厚、および左L4神経根の横走化・肥大がみられ、L5/S1レベルで左椎間関節の変性・肥厚による椎間孔の狭小化が著明であった。冠状断像では左L4神経根の尾側分岐、L4-L5硬膜外吻合枝、右L5-S1 conjoined nerve rootがみられた。以上より、Neidre分類type IIIの腰仙部神経根奇形と診断され、顕微鏡下に左L4/5・L5/S1椎間を片側開窓し、L4/L5の内側椎間関節を切除し、硬膜とL4・L5神経根および吻合枝間からヘルニアを摘出した。術後、疼痛、しびれは速やかに消失し、JOAスコアは術前の9点から術後1ヵ月で29点に改善した。

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60歳女性。左手握力低下、左小指のしびれを主訴に近医を受診し、保存的治療を受けるも改善せず、手術目的で初診から3ヵ月後に当院へ紹介となった。精査の結果、先天性橈骨頭脱臼の経過より生じた変形性肘関節症に尺骨神経麻痺を合併したものと診断し、尺骨神経剥離と皮下前方移動術を施行した。術後1.5年の時点で左手握力はほぼ健側と同等まで改善し、また感覚は左小指指尖部に軽度の違和感と感覚鈍麻を残すのみで良好に回復した。また、PREEスコアは術前60点が術後52点、DASHスコアは術前61点が術後31点、JOAスコアは術前60点が術後66点となった。

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20歳男子。大学のラグビー選手で、高校時代に左前十字靱帯(ACL)、内側側副靱帯(MCL)損傷に対してBTB(骨付き膝蓋腱)とST(半腱様筋)を用いたACL再建術およびアンカーを用いたMCL修復術を他院にて施行されていた。今回、ラグビー練習中に左膝を捻って受傷した際、左膝痛、不安定感が出現し、他院にて左ACL再断裂、左MCL損傷を指摘され、当院へ紹介となった。受診時の単純X線およびMRI所見より左ACL再断裂とIII度左MCL損傷と診断され、大腿四頭筋腱を用いたACL再建および人工靱帯を用いたMCL再建の同時手術を行った。術後半年でラグビーへの部分復帰、約10ヵ月で試合復帰することができた。術後1年経過で膝関節の不安定性はなく、ラグビーにも完全復帰し、Lysholmスコアは100点と良好であった。

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68歳男性。変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術の目的で入院となった。既往歴として心筋梗塞に対し薬剤溶出性ステント(DES)を留置していた。術前検査では陳旧性下壁心筋梗塞所見のみで手術可能な状態であると診断され、術前にアスピリンおよびワルファリンカリウムを休薬の上で、ヘパリン置換を施行した。人工膝関節置換術中・帰室時のバイタルサインに異常はみられなかったが、帰室後約3時間で突然、意識低下と心停止をきたした。緊急の冠動脈造影所見よりステント内血栓症による心停止と診断され、緊急経皮的冠動脈インターベンションを施行したところ、心機能や全身状態は回復し、その後の経過は良好であった。術後6ヵ月現在、可動域は-10°~110°で、疼痛なく歩行可能である。

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67歳男性。頸椎症性頸髄症に対する前方固定術後より右上肢の脱力が出現した。徒手筋力テスト(MMT)では右肩関節屈曲2・外転2、肘関節屈曲2の筋力低下を認め、術後C5麻痺による下垂腕が疑われた。確定診断目的で術後6週に大菱形筋を中心とした右上肢筋の針筋電図検査を行った。今回、超音波ガイドを用いて聴診三角を同定し、針電極を挿入する方法で検査を試みたところ、大菱形筋の安静時電位で明らかな脱神経電位が確認された。また、右大菱形筋以外に右僧帽筋、棘上筋、棘下筋、上腕二頭筋でも脱神経電位がみられた。検査結果よりC5麻痺の診断が確定し、診断後は筋力増強訓練が行われた。発症後9ヵ月にはMMTで肩関節屈曲・外転筋力は3、肘関節屈曲筋力は4まで回復した。

解剖頸骨折と肩関節後方脱臼 三笠 元彦
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上腕骨の骨折は外科頸に多く、解剖頸は稀である。肩関節後方脱臼を呈している解剖頸骨折について検討した。解剖頸骨折と肩関節後方脱臼骨折との関係を論じているRobinsonの文献によると、6肩の解剖頸骨折は全例が後方脱臼を呈していた。また、本邦報告例の検討を行ったところ、狭義の2-part解剖頸骨折は15件あり、全例が後方脱臼を合併していた。解剖頸骨折が後方脱臼をするのであれば、解剖頸骨折の受傷機転は後方脱臼と同じであると考えてよいと思われた。

Vocabulary

ロボットスーツHAL 俣木 優輝

X線診断Q&A 橋爪 洋

基本情報

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臨床雑誌整形外科
68巻10号 (2017年9月)
電子版ISSN:2432-9444 印刷版ISSN:0030-5901 南江堂

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