胸部外科 66巻6号 (2013年6月)

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2009年1月~2010年6月に手術を行ったStanford A型急性大動脈解離51例を、体格指数により肥満群22例(O群)と非肥満群29例(N群)に分け臨床的に比較検討した。O群とN群の平均年齢はそれぞれ60.2歳・68.3歳、高血圧頻度は82%・55.2%とそれぞれ有意差を認めた。手術終了時の動脈血酸素分圧/吸入酸素濃度比はそれぞれ145・215、酸素化不良発生率は81.8%・53.6%と有意に0群で酸素化の悪化を認めた。0群22例とN群27例で人工呼吸器からの離脱が可能であったが、その管理期間はそれぞれ8.0日・3.7日、集中治療室滞在期間も13.7日・9.3日とO群は有意に長かった。肥満群は術後酸素化不良となる危険性が高いが、十分な周術期管理を行うことで合併症発生率は非肥満群と有意差を認めなかった。

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78歳男。転落による胸部打撲を主訴とした。血液検査では白血球の増加と貧血、総蛋白低値、凝固能異常を認め、胸部X線像では右第3~8肋骨骨折と右肺野透過性低下を認めた。意識レベルが急速に低下したため、人工呼吸管理下にて右胸腔のドレナージを開始したところ大量の血性排液が持続し、胸壁損傷に伴う動脈性出血を疑われた。右大腿動脈穿刺による鎖骨下動脈造影像で右内胸動脈末梢の前肋間動脈から造影剤の漏出を認めたため、血管塞栓用コイルを10個詰め、さらに多孔性ゼラチン粒を充填した結果、ドレーン排液は著明に減少した。術後CTで出血部位が第6肋骨腹側の肋軟骨移行部であることが判明し、血腫の残存を認めた右胸腔内にドレーンを追加留置し血腫を吸引除去した。第7病日に胸腔ドレーンを抜管し、第17病日に合併症なく退院した。

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上行大動脈の高度石灰化病変を有する弁膜症において右腋窩動脈に人工血管を吻合し、体外循環の送血ルートとして使用し手術を行った3例を報告した。症例1は66歳女で、大動脈弁圧較差105.9mmHg、大動脈弁閉鎖不全はII/IV度。症例2は72歳男で、大動脈弁圧較差76.89mmHg、大動脈弁閉鎖不全はIII/IV度。症例3は83歳男で、大動脈弁圧較差81.76mmHg、大動脈弁閉鎖不全はII/IV度。いずれも胸部CTにて上行大動脈に著明な石灰化を認めたが、頭頸部精査にて脳血管リスクは高くないと判断し、右腋窩動脈送血・上下大静脈脱血の体外循環により大動脈弁置換術と冠状動脈バイパス術を施行した。術後合併症なく経過し、21日~30日で自宅退院した。

まい・てくにっく

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症例1は44歳女、呼吸困難を主訴とした。胸部単純X線像で左肺気胸と診断した。症例2は67歳男、咳嗽を主訴とした。胸部単純X線像で右中下葉気胸と診断した。いずれも胸腔ドレナージにて症状は消失したが、2時間後に突然呼吸困難が出現し血中酸素飽和度の低下を認めた。X線像の再検で気胸肺は伸展していたが透過性が低下し、胸部CTではびまん性浸潤影を認め、再膨張性肺水腫と診断した。酸素吸入により11~12時間後までに酸素化の改善を確認した。症例1は酸素吸入終了後も気漏が停止しなかったため11日後に胸腔鏡手術を施行したが、術後に肺水腫は発生しなかった。

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64歳女。全身倦怠感、呼吸困難を主訴とした。C型肝硬変・肝細胞癌の既往があり、右肝性良性胸水による呼吸困難のため週1~2回3Lの穿刺吸引を繰り返していたが、最後の穿刺の4日後に呼吸困難が増悪した。単純X線とCTでは右胸腔に鏡面形成を認め、縦隔が左に偏位していたため大量胸水を伴う右緊張性気胸と診断した。ドレナージ術で中下葉が完全虚脱のままであり、胸水細胞診で悪性細胞は認めなかったため医原性気胸と診断したが、大量の気漏と胸水排液が持続したため第4病日に局所麻酔下に胸腔鏡術を施行した。中下葉はフィブリンにおおわれ再膨張が期待できなかったため、胸水を吸引後、上葉と横隔膜面にタルク噴霧を行った。術直後より気漏が消失したため術後第2病日に胸腔ドレーンを抜去し、その後数回の穿刺排液を要したが気胸の再発は認めず、第22病日に軽快退院した。

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55歳男。胸部異常影を主訴とした。CTにより胸部大動脈瘤の診断で上行大動脈人工血管置換術を施行したが、術後6日目より胸痛と微熱が出現し、抜去した心外膜ペースメーカリードと血液からグラム陽性球菌が検出されたため、縦隔洞炎の診断で再開胸した。胸骨上部に大量の白色膿を認めメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出されたため、インターパルスシステムにより縦隔洗浄を行い、多孔性ポリウレタンスポンジを縦隔内から胸骨間、皮下組織に死腔ができないように充填しシリコンドレーンをスポンジ内に留置した。術後洗浄の際はV.A.C.ATS治療システムによる閉鎖を行い、積極的な歩行リハビリテーションを行った。再開胸後10日目に大網充填術を施行し、初回術後43日目に独歩退院した。

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46歳女。左手のしびれを主訴とした。両上肢とも高血圧を認め、聴診では左側肩甲骨部を最強点とする収縮期血管雑音を聴取した。3次元CTでは左鎖骨下動脈起始部の弓部動脈中枢側から狭窄性病変を認め、起始部の前後に動脈瘤を2ヶ所認めた。大動脈縮窄症の診断で、腕頭動脈と左総頸動脈間の弓部大動脈で遮断し下行大動脈送血・肺動脈脱血による部分体外循環に加え、左総頸動脈から送血して部分脳分離体外循環を併用して大動脈縮窄部の人工血管置換術を施行した。術中は浅側頭動脈圧および近赤外線組織酸素モニターを脳血流モニターとして脳灌流量をコントロールした。術後経過は良好で上下肢血圧差の改善を認め、2週間で退院し外来で降圧薬を中止することができた。

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67歳女。主訴は心電図検査で多発する心室性期外収縮の精査であった。経胸壁心臓超音波にて左室内心尖部に20mm大の可動性の高輝度腫瘤を認め、MRIのT1・T2像で高信号、T1強調脂肪抑制画像で強調が抑制された。原発性左室内脂肪腫と診断し、術中超音波検査を用いた左室切開アプローチで腫瘍摘出術を施行し、腫瘍付着部には凍結凝固療法を追加施行し、左室切開部両側にフェルトを用いて2層で線状閉鎖した。病理検査では成熟型脂肪腫と診断された。術後第7病日の経胸壁心臓超音波および胸部CTでは残存腫瘍を認めず、第13病日に退院した。術前に認めた単原性の心室性期外収縮は術後第5病日および4ヵ月のホルター心電図において発生頻度に大きな変化を認めなかった。

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58歳男。検診の胸部CTで右肺上葉に1cm大のスリガラス状陰影を指摘された。7年間にわたるCT所見で緩徐に中心部の充実成分の濃度が上昇し、辺縁の放射状の線状影とスリガラス状陰影が増強するのを認め、肺癌を疑い胸腔鏡下右肺上葉広範囲部分切除術を施行した。病理組織学的にはリンパ上皮性病変を認め、腫瘍は辺縁部の血管に沿って進展していた。免疫染色ではCD19、CD20陽性であったが、形質細胞はκ:λの偏位を認めず、染色体G-bandで(11:18)転座を認めたため、標記の診断とした。全身検索で他部位に病変を認めなかったため化学療法は行わず経過観察中である。

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81歳女。高血圧経過中に胸部X線検査にて左肺の異常陰影と内臓逆位を認めた。胸部CTでは内臓正位の鏡面像を呈し左S4と左S2にスリガラス状結節影を認め、気管支鏡下生検で腺癌と診断され、左中葉肺腺癌および左上葉肺癌と診断した。術前に3次元CTにより脈管の分枝形態をほぼ確実に把握し、術者の立ち位置や皮膚切開は内臓正位例における手術と同様に行い胸腔鏡下切除術を施行した。病理組織学的にどちらの腫瘤も乳頭状パターンと中小管状パターンが混在した高分化混合型腺癌であり、術後7日目に近医転院となった。

画像診断Q&A 小峰 啓史 , 大貫 恭正

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60歳男。2ヵ月前に心不全の診断で投薬されていたが、安静時の胸痛が出現した。造影CTおよび多列検出器(MD)CTでは傍左房に冠状動脈瘤を認め、動脈瘤内は半血栓化し2本の異常血管が動脈瘤に流入して肺動脈へ流出し、巨大冠状動脈瘤を伴う冠状動脈肺動脈瘻と診断した。人工心肺非使用下に流入血管を結紮する手技により、術中心外膜エコー検査で肺動脈への流出が途絶し、瘤内の血液が凝固していくことを確認した。術後10日目のMDCTにて冠状動脈瘻に遺残はなく冠状動脈瘤内は血栓化し、術後10ヵ月には瘤の退縮を認めた。

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80歳男。発熱、振戦を主訴とした。3年前にステントレス生体弁を用いた大動脈弁置換術が行われ、1年前には左内胸動脈による左前下行枝への冠状動脈バイパス術が行われていた。心臓超音波検査でFreestyle弁基部の遊離を認め、人工弁心内膜炎が疑われた。血液培養で原因菌は同定されなかったが、benzylpenicillinとgentamicinを2週間投与後、再弁置換術を施行した。Freestyle弁の左~無冠洞は遊離し同部位の大動脈壁は欠損し背側に仮性瘤を形成したため、大動脈基部を切除し弁輪部を一部郭清した後Freestyle弁を左室心筋と併せて左室流入路に縫着し、次いで右冠状動脈を再建しFreestyle弁末梢側と自己大動脈を吻合した。術後炎症所見は消退し、前医へ転院後39日目に軽快退院した。

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75歳男。2ヵ月前に急性心筋梗塞に対し経皮的冠状動脈形成術を施行したが、その1週間後より夜間呼吸苦が出現し、心エコーで乳頭筋断裂による高度僧帽弁閉鎖不全と中等度三尖弁閉鎖不全を認めた。開胸し右側左房切開で僧帽弁を観察すると乳頭筋断裂部左室壁が瘢痕化していたため断裂した乳頭筋および腱索を切除し、乳頭筋断裂部左壁より人工腱索を立て僧帽弁形成術を行い、また三尖弁の弁輪形成術を行った。術後第11病日の心エコーでは僧帽弁閉鎖不全は軽微であり、第25病日に独歩退院した。

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61歳男。胸背部痛を主訴とした。第6頸椎損傷による不完全麻痺の慢性期にあり、血圧治療や排泄管理指導を受けておらず排泄時には用手的に腹圧をかけて行っていたが、排便時に突然の胸痛を自覚し動けなくなった。心臓超音波検査で心嚢液貯留を認め、胸腹部単純CTでは上行大動脈の径の拡張と上行大動脈および下行大動脈に高輝度三日月像を認め、自律神経過反射による心タンポナーデ合併Stanford A型急性大動脈解離および小径腹部大動脈瘤と診断した。局所麻酔下で心窩部を切開し血性心嚢液を吸引後、全身麻酔下に上行大動脈人工血管置換術を行った。術直後は血圧変動が激しかったためカテコラミンとnicardipineの細かい調整が必要であったが経過は良好であり30日目に退院した。

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38歳男。検診で指摘された上縦隔拡大を主訴とした。腫瘍マーカーNSEが高値であり、胸部CTでは気管前に径50mmの腫瘤を認め、FDG-PETでは同部に高度なFDG異常集積増加を認めた。超音波気管支下リンパ節生検の組織診断で悪性腫瘍が疑われ、小開胸併用胸腔鏡補助下腫瘤摘出術およびND2a上縦隔リンパ節郭清を施行した。病理組織学的に腫瘍は腫大したリンパ節であり、異型性や核分裂像を認め、免疫組織学的にpan-keratin、vimentin、TTF-1、synaptophysin、CD56/N-CAM陽性であり、大細胞神経内分泌癌、神経内分泌分化を示す癌で原発不明肺癌のリンパ節転移を疑った。術後補助療法としてcisplatin+etoposideによる化学療法と縦隔への放射線療法の同時治療を実施し、1年経過して再発は認めていない。

肺の良性明細胞腫瘍の1例 早川 正宣
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59歳女。胸部異常陰影を主訴とした。陰影はX線上1年8ヵ月で径9mmから15mmに増大し、倍増時間は280日であった。胸部CTではS5に境界明瞭で内部均一な腫瘤を認めた。悪性が否定できなかったため胸腔鏡下部分切除により腫瘤を摘出した。病理組織学的所見では類洞様血管の間に胞体の淡明な紡錘形ないし多角形の腫瘍細胞が充実性に増殖し、異型性や核分裂像は認めなかった。免疫組織学ではHMB-45染色で細胞質が顆粒状に強く染まり、SMA染色に陽性を示したことから、標記の診断とした。術後10年経過して再発徴候は認めていない。

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35歳男。咳嗽、胸痛を主訴とした。胸部CTで前縦隔から左心外側窩縁にかけて巨大腫瘍を認め、その上方部分は軟部組織主体の不整分葉状腫瘤であり、CTガイド下生検にて肉腫または癌肉腫疑いの診断であった。胸骨正中切開で開胸し、腫瘍左腕頭静脈合併切除、肺部分切除、心膜部分切除および人工心膜再建、リンパ節郭清を施行した。病理組織所見では出血・壊死を伴う腫瘍で、抗酸性の筋原生胞体を思わせる細胞を多数交え、免疫染色ではHHF陽性、αSMA陽性、MIB-1陽性であり、横紋筋芽細胞への分化を伴う胸腺肉腫様癌疑いの悪性紡錘形細胞腫瘍の診断であった。術後19日目に退院したが、3ヵ月後に胸腔内播種再発、癌性心膜炎により死亡した。

基本情報

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胸部外科
66巻6号 (2013年6月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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