臨床雑誌外科 63巻10号 (2001年10月)

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温存乳房に対して術後に放射線照射を行うことを前提とすれば,乳房温存手術の様々な手技の工夫が可能となる.腫瘤上の皮膚を切除しない横一方向の皮切,厚皮弁の作成と乳頭直下の横断,乳腺円状部分切除,温存乳腺の腋窩方向2分割,腋窩リンパ節郭清,切除断端のクリップによるマーク,乳腺欠損部の温存乳腺による充填と乳腺実質の縫縮,この一連の手順と工夫により,乳房の変形や乳頭の偏位をきたすことなく,より美しい乳房を残すことができる

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胸筋温存乳房切除術を完成するには,乳癌とそれを含む乳腺組織を全て切除し,腋窩リンパ節を郭清することが必要である.しかし,無作為比較試験の結果から,徹底した腋窩リンパ節郭清の必要性は低下し,術後障害を減らすためにも,大胸筋だけでなく小胸筋も切除しないで胸筋神経を温存する方法や肋間上腕神経を温存する工夫が必要である

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食道癌の2領域郭清,胸腔内吻合手術は,頸部リンパ節に転移を認めず,下部食道に癌が存在する症例で,低侵襲の手術を施行する際に選択される術式である.両側反回神経周囲リンパ節を含む上縦隔リンパ節郭清を併用することで,症例によっては根治手術を期待することができ,QOLの向上に貢献できる縮小手術と考える

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胸部食道癌手術において郭清の対象となる頸部リンパ節は頸部食道傍リンパ節(101),中深頸リンパ節(102-mid),鎖骨上リンパ節(104)であるが,101と102,104とでは転移率が異なり,転移陽性例の予後にも差があり腫瘍学的な位置づけが異なる.101Rは縦隔側から反回神経に沿って遡れば甲状腺下極迄の全域の郭清が可能で,上縦隔郭清の延長線上にある.頸・胸部2領域郭清,頸・胸・腹部3領域郭清の手技的な差異について,主として頸部郭清及び頸胸移行部を含む上縦隔郭清を中心に解説した

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癌の手術は根治を旗印に,可能な限り拡大切除・拡大郭清することがよいという理念の元に発展してきた.しかし,その努力が本当に正しい結果を生んでいるのか,科学的な検証が求められてきている.胃癌におけるD2郭清手術の手技の概略を紹介した

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自律神経温存直腸切除術では,交感神経(下腹神経,仙骨内臓神経)及び副交感神経(骨盤内臓神経)を共に温存する必要がある.下腹神経の損傷により射精機能障害,骨盤内臓神経の損傷により排尿障害・勃起障害を生ずる.又,骨盤神経叢から分枝する膀胱枝を損傷すると内尿道口の閉鎖不全を来たし逆行性射精現象を生じる.術後排尿・性機能温存のためには,局所解剖を熟知する必要がある

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直腸癌局所再発では仙骨や膀胱への浸潤が多く,骨盤壁の合併切除を伴う骨盤内臓全摘術を行うことが多い.腹部や骨盤内臓の剥離は載石位でできるだけ腹会陰式に行い,尿路再建を行った後にジャックナイフ位に変換する.最後に後方からの操作により仙骨と共に骨盤内臓を全摘する.出血量も多く長時間にわたる手術であるが,術前の画像診断で手術適応を正確に評価し,個々の手術操作のポイントを確実に遂行することにより,合併症の少ない安全な手術が行える

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幽門輪温存膵頭十二指腸切除術は幽門部と十二指腸球部が温存されることにより,術後の消化管ホルモン分泌は膵頭十二指腸切除より良好である.No.5,No.6リンパ節に転移の疑われない膵頭部領域癌に適応可能である.著者等は門脈合併切除や拡大リンパ節郭清も取り入れ,進行癌症例に対しても適応している.再建は膵管胃粘膜吻合を先行し,消化管再建には自動縫合器を積極的に取り入れ,術式の簡略化と安定した成績を達成している.膵管胃粘膜吻合は胃粘膜を確実に縫合することが術後遠隔期の狭窄予防に重要である

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1981年,門脈カテーテルバイパス法を開発し,本バイパス法を用いたnon-touch isolation techniqueによる門脈合併膵頭十二指腸切除術,広範リンパ節郭清,今永法再建を膵頭部癌に対する基本術式としてきた.多くの臨床例の経験から門脈切除,膵外神経叢切除の適応を明らかにしてきた.更に門脈血管内超音波検査(IPEUS)等を用いた精確な術前,術中進展度診断で,切除範囲の決定と術式の立案選択をしている

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肝区域の境界は基本的には肝静脈であり,尾状葉を含む区域切除術を施行する場合,その区域境界の肝静脈と下大静脈前面を全て露出する形で肝切離がなされることが重要である.そのために,良好な視野を得ることのできる開創法の選択と,術中超音波を駆使した腫瘍と肝内脈管との立体的な脈管解剖の把握が重要である.拡大肝区域切除の形で尾状葉を合併切除するポイントは,肝静脈本幹を露出しながら肝実質を離断し,最終段階で腫瘍のsurgical marginを意識して尾状葉を確実に切除側に含めることである

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肝静脈側浸潤は,肝癌の主要な進展形式の一つである.肝静脈へ浸潤した肝癌に対して,これまで,グラフト移植6例,パッチ移植3例及び直接端端吻合1例の計10例に対して肝静脈切除再建を行った.1例を除き,いずれも肝機能は2週間以内に回復し,再建部は開存していた.また静脈再建に直接起因した合併症はなく,8例は術後4年以上生存した.肝静脈に浸潤した癌に対しては,静脈の再建を行うことにより,癌の根治性を損なうことなく,残肝機能も温存可能である.また肝静脈再建に際しては,手技が比較的簡略なことから直接端端吻合法が推奨される

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肝門部胆管癌に対する手術では,腫瘍の進展度と進展範囲及び肝機能を考慮して症例毎に最も適切な肝切除術式を決定する.したがって,いわゆる定型的手術というものはないが,右葉切除,右三区域切除,左葉切除,及び左三区域切除はよく行われる代表的な手術術式であり,この4つの術式について十分理解しておくことが重要である

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m,mp迄の胆嚢癌と術前判断される症例には胆嚢全層切除術を行い,術中迅速組織診にて深達度を判断した上でNo.12リンパ節郭清を行う.ss以上で術中Binf(-)と判断される胆嚢癌では,肝中央下区域+胆管胆嚢切除+胆管空腸吻合+D2及びNo16a2,b1郭清を選択する.ss以上で術中Binf(+)と判断される例では,肝拡大右葉+胆管切除+左肝管空腸吻合D2及びNo.16a2,b1郭清を施行する.また十二指腸第I部切除や膵頭十二指腸切除はその進展度に応じ追加する

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標記症例17例を生存群10例と遠隔期死亡群7例に分けて遠隔期予後及び周術期因子を比較検討した.術前因子のうち両群間で有意差がみられたのは年齢で,遠隔期死亡群が高齢であった.術中因子には特に有意差はみられなかった.術後因子に関しては入院中の術後合併症が遠隔期死亡群で有意に多かったが,術後合併症と死亡原因とは直接的に関連していなかった.遠隔期死亡群の死亡原因は,老衰3例,呼吸器疾患3例,脳血管障害1例であった.これらより,遠隔期死亡の危険因子は主に「高齢」である可能性が考えられ,破裂例であっても生存退院できれば長期予後は非破裂例と変わらないことが示唆された

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手術用手洗い水装置TU-AS(TOYODA)で作成した水の細菌培養を行った.その結果,Staphylococcus epidermidis,Flavobacterium sp.Pseudomonas aeruginosa,Acinetobacter calcoaceticus,Pseudomonas paucimobilis,Pseudomonas alcaligenes,Flavobacterium indologenesなど様々な細菌が検出された.この結果を受けて院内に滅菌水対策委員会を設置し多くの試みを行ったが,長期間継続して無菌状態とすることは困難であった.諸外国では手術時の手洗いに水道水を用いていることから,今後水道水で良しとするか否かの検討が必要と思われるが,医療法との関連もあり個々の病院で対応するには限界がある為,学会など公的機関によるガイドライン作成が望まれる

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直腸癌に対して低位前方切除術を受けた75歳以上の患者21例の周術期危険因子(術前合併症,術前心肺機能,術中出血量,術後合併症など)を65~74歳の患者36例と比較検討した.その結果,術前合併症として循環器疾患を有する者が75歳以上群で多かった以外には各因子とも両群間に有意差はみられなかった.又,75歳以上で重篤な術前合併症を有する者でも的確な治療を行うことで耐術可能となっていた.これらのことから,高齢者であっても術前に十分な評価を行い,必要に応じて投薬治療などを施せば根治手術の適応になり得ると考えられた

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肝硬変合併肝癌に対する肝部分切除後,孤立性の腹腔内転移という稀な再発様式を呈した78歳男.転移形式は血行性転移が推察された.本例を含めこれ迄に報告された孤立性腹腔内転移11例(26~78歳,平均51.1歳)について検討したところ,,再発迄の期間は3ヵ月~2年6ヵ月(平均1年2ヵ月)で,肝外性発育があり細胞異型度の低いものが多かった.又,α-fetoproteinの上昇が発見の契機となるものが多かった

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慢性膵炎に膵仮性嚢胞と大量の膵性胸水を伴い,はじめ保存的治療を行ったが効果なく,嚢胞空腸吻合により改善の得られた42歳男の症例を報告した

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結核性胸膜炎の既往をもつ93歳女.腹痛と嘔気を主訴とした.腹部単純写真で小腸の拡張像とniveauを認め,腸閉塞と診断したが,病変部の同定はできなかった.イレウスチューブ挿入後6日目の腹部単純写真でも小腸の拡張像,niveauが消失していなかった為緊急手術を行った.手術所見から回腸終末部が腸閉塞の原因部位と判明し,切除標本のPCR検査で腸結核と診断した

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74歳男.慢性呼吸不全の経過観察中に便潜血反応陽性を示し,画像所見から最大径4cmの横行結腸癌と診断した.治療にあたっては,腫瘍の浸潤が粘膜下層迄と判断されたことや,呼吸不全以外に腹部大動脈瘤も有していたことを考慮し内視鏡下でのpiecemealによる腫瘍切除を選択した.内視鏡下治療時ならびに組織学的検索で腫瘍の遺残は明らかであったが,本人の希望もあり経過観察としていたところ,4ヵ月後の定期検査で腫瘍の増大を認めた為開腹術を行った

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65歳女.同時性両側乳腺転移をきたしたにも拘わらず経過中癌死に至るまで肺,骨,皮膚など通常好発する血行転移の着床先には転移巣を認めず,死亡時まで残肝再発と脳転移のみであった.Batsonは,腎癌や骨盤内臓器癌,乳癌等が肺を介さずに甲状腺への転移をきたす経路としてvertebral venous systemの存在を挙げており,本例における胆嚢から肺をバイパスする形での両側乳腺と脳への転移経路に関してBatsonの説は一考に価すると思われた

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肝細胞癌切除後4年と6年に左副腎転移をきたし,転移巣に対する手術は2回とも後方アプローチによる切除を行い,初回手術より約8年生存中の50歳男例を報告した

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64歳女.右乳房腫瘤を主訴とした.診察時右乳房のECA領域に境界明瞭,表面平滑,弾性硬,可動域良好の3.2×3cmの腫瘤を触知し,マンモグラフィーで楕円形,境界明瞭,均一な腫瘤陰影を認めた.超音波所見は境界明瞭,楕円形,内部が均一な低エコーの腫瘤で,後方エコーの増強とlateral shadowが認められた.穿刺吸引細胞診では大小不同のリンパ球様細胞が多数みられ,これらの細胞には核の軽度不整と核小体の増大を認め,悪性リンパ腫が疑われた.全身のガリウムシンチグラフィーを行うと,右乳房腫瘤に一致してガリウムの異常集積が認められた.これらの所見から乳腺原発悪性リンパ腫を考えて胸筋温存乳房切除術を行い,切除標本の病理所見からB細胞型悪性リンパ腫と診断した.術後に化学療法と局所放射線療法を行い,現在経過観察中である

基本情報

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臨床雑誌外科
63巻10号 (2001年10月)
電子版ISSN:2432-9428 印刷版ISSN:0016-593X 南江堂

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