地域リハビリテーション 13巻9号 (2018年9月)

特集 健康寿命を延ばす予防活動

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 健康的に日常生活を送れる「健康寿命」を長く保ち,延ばすことがQOLの向上や医療・介護費の削減にもつながることから,国は予防活動を推進しています。本特集では,官民協働の取り組みから住民主体の活動まで,地域特性とニーズを活かしたさまざまな予防活動を紹介します。

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はじめに

 1995年に世界長寿地域宣言を行った沖縄は,2003年に発表された都道府県別生命表において,女性の平均寿命は1位を保っていた。しかし,男性の平均寿命順位がこれまでの4位から26位に大きく後退した。当時これは「26ショック」と呼ばれ,沖縄の健康長寿の状況が変化しつつあることを実感させる出来事であった。その後,健康長寿県の復活を試みるも平均寿命の伸び率の低下が続き,2010年にはこれまで首位にあった女性の平均寿命も3位に陥落,男性の順位は30位まで低下した。これは「330ショック」と呼ばれ,県民に大きな衝撃を与えた。その原因として,特に青・壮年期における循環器疾患の危険因子である生活習慣病の急増,肝疾患や高血圧性疾患の年齢調整死亡率が全国よりも高いことなどが挙げられている。沖縄の健康長寿を巡る状況の変化について,食習慣の変化や,運動量の減少,喫煙率の高さや健診受診率の低さ,社会経済的な格差の拡大,ソーシャルキャピタル(地域の絆)の希薄化など,さまざまな要因の検討と対策がなされている。2012年度から2017年度にかけて沖縄県内で行われた健康行動実践モデル実証本事業(琉球大学ゆい健康プロジェクト:以下,ゆい健康プロジェクト)(図1)は,食育とソーシャルキャピタルを活用した健康づくりを展開してきた。今回,ゆい健康プロジェクトの概要についてまとめる。

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はじめに

 熊本市(以下,本市)は,平成24年4月に全国で20番目の政令指定都市になった。九州の中央に位置し,人口約74万人,高齢化率24.8%,出生数6,797人,出生率9.2で平均寿命は全国の中で高い水準にある。また,大学・医療機関の集積度が高く,上水道源を100%地下水でまかなっている緑豊かな都市である。

 保健活動の特徴は,5つの区役所を拠点に小学校区を単位として地域の校区自治協議会を始め,各種組織や団体との市民協働による健康まちづくりを推進している。

 本市は,人工透析者数の割合が,全国と比べ高い水準にあり,平成21年度から慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)対策を開始し,CKDとその原因となる生活習慣病などの対策を推進している。

 そこで今回,CKD対策の取り組み概要,対策の中心となるネットワーク構築および最近の取り組みについて紹介する。

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公園からの健康づくりとは

 日本の平均寿命は男性79.55年,女性86.30年に達する一方で,不健康な期間が男性で9.13年,女性では12.68年あると言われ1),いまや,日本の国民医療費は年間40兆円を超えた。

 厚生労働省は2025年を目途に,可能な限り住み慣れた地域で生活を継続できる住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となった地域包括ケアシステムの構築を目指している。これは「介護」「医療」「予防」という専門的なサービスと,その前提としての「住まい」と「生活支援・福祉サービス」が連携しながら在宅の生活を支えるものとされる。これは主として高齢者を想定したサービス体系であるが,メタボドミノで例えられる生活習慣からの重篤な病への移行は,若い頃の生活習慣が高齢になるにつれて影響を及ぼすと言い換えられる。若い世代の正しい生活習慣は,将来の元気な高齢者をつくることにつながる。病気を予防し,健康で生き生きとした生活を送るための改善として,運動を習慣化することが重要である。

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はじめに

 現在,わが国では急速な高齢化が進んでいる。内閣府が発表した平成29年度版高齢社会白書(全体版)では65歳以上の高齢者人口は,3,459万人となり,総人口に占める割合(高齢化率)も27.3%と上昇を続け今後も高齢化が進んでいく見通しとなっている。鳥取県においても高齢化は喫緊の課題であり,高齢者の認知症予防も含めて丸ごとわが町のイメージで「住み慣れた地域において,高齢者,障がい児・者及び児童等の誰もが集い,多様なサービスや活動で支え合う拠点」1)となる「鳥取ふれあい共生ホーム」(図1)の全県展開を全国に先駆けて試みている。

 さて,鳥取ふれあい共生ホーム照陽の家(以下,照陽の家)は平成23年4月に「小規模多機能型居宅介護と届出保育所を併せ持つ施設」として開設した(図2)。住み慣れた地域全体で支えていく仕組みの構築を地域・事業所・行政が連携しながら小規模ならではのご利用者様一人ひとりに合わせた支援を行っている。その後,地域ニーズ・ご利用者様のニーズに合わせ平成25年度より小規模多機能型居宅介護施設と訪問看護ステーションを合わせた複合型サービスへと移行。平成27年4月の介護保険制度改正により名称を看護小規模多機能型居宅介護と改称した。一方,届出保育所は平成28年度より「米子市認可地域型小規模保育所」へと移行していく。

 「宅幼老所」とも言われる共生ホームという場に集う認知症高齢者,園児たちがそれぞれ自然な形で互いを気遣い支え合うことによる認知症ケアの予防と,高齢者といることが園児たちにもたらす「支え愛の心を育む教育」をコンセプトとして運営した活動に対して平成28年度の厚生労働省主催「健康寿命をのばそう!アワード」にて企業部門の優良賞を受賞した。その取り組みを事例として報告する。

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活動の概要(図1)

 ① サービス開始時期…平成23年11月〜

 ② サービス対象者…60歳以上の生活を送る中でちょっとした不便さや困りごとがある方(介護保険を利用中の方も利用可能)

 ③ サービス提供地域…長崎県佐世保市(離島除く)佐々町

 ④ サービスの内容(平成30年8月現在)…買い物代行・生活支援・草刈り・剪定・シニア向けエステの提供・墓掃除・お元気訪問・灯油配達(以上,有料),健康ノルディックウォーク推進活動

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静岡県在宅保健師の会「つつじ会」の概要

 平成5年1月に発足した静岡県在宅保健師の会「つつじ会」〔会長:鈴木富士子,現会員数:44名,事務局は静岡県国民健康保険団体連合会(以下,国保連合会)〕は,市町村の行政保健師を退職した者を中心に構成しており,退職するまでに培ってきた保健師としての職能を生かし,家庭訪問や病類別疾病統計インプット票記入事務など,健康課題に着目した国民健康保険(以下,国保)の保健事業に対して積極的に取り組んできた。

 特に家庭訪問は,つつじ会の最重要事業として大切に受け継がれており,寝たきり予防訪問活動事業や重複・頻回受診者訪問事業など,24年間で延べ1万4,712名の方に家庭訪問を行っている。

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はじめに

 本稿では,健康寿命の延伸を目指して,東郷町の第三セクターをハブに産学官連携で取り組んだ,介護予防事業における運動継続のしくみづくりについて報告する。

 愛知郡東郷町は,愛知県のほぼ中央,名古屋市と豊田市の間に位置する緑豊かな住宅都市である。人口は4万3,569人,高齢化率22.2%,年少人口15.9%,生産年齢人口62%で,人口も年々増加している(平成30年6月末現在)。平均寿命のランキングでは県内市区町村トップクラスの長寿のまちではあるが,健康寿命の延伸が主要な課題である。

 東郷町施設サービス株式会社(以下,TIS)は,東郷町の100%出資する,第三セクターである。町内公共施設の管理運営を目的に,平成3年4月に東郷町公共施設管理協会として発足。平成16年2月に株式会社化され現在の社名となり,平成21年4月より新たに健康づくり事業をスタートさせた。

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活動の目的と背景

 健康長寿を目指して大正琴を長年続けてきたグループに宇部市高齢福祉課から「認知症予防プログラム」の提案(2008年11月)があった。

 当時は認知症に対する世間の理解も薄いときであったが,認知症の勉強会でわが身のことと気づき,取り組むことになった。認知症予防プログラムのアイデア料理コース,旅行プラン作成など実践するうちに,継続したケアの重要性に気づいた。

巻頭言

仲間をもとめて 森脇 美早
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 リハとは再び人間らしく生きるためのあらゆる介入のことである。およそ20年前,私は大学のリハ医学の講義で初めてそれを学んだ。小学生の頃,いじめを受けた経験から人と接することが怖くなり殻に閉じこもっていた私は,中学生,高校生になり友だちを作るという「普通」の生活に憧れ,それを実現すべく試行錯誤をした。完全にトラウマは解消できないものの,しだいに友だちができ,楽しい高校生活を送ることができた。それはささやかだが自分なりのリハだった。人間的復権を学問として,一生の仕事として,かかわることができればどんなにすばらしいだろうと思い,リハ科医師になる決意をした。

 リハという言葉は誤解を受けやすいようだ。しばしば機能訓練のことだと思われていたり,体操やマッサージのことと勘違いされたりすることもある。しかし本来は,再び人間らしく生きるためのあらゆる介入という意味なので,多角的で包括的な介入のことを指す。リハ科の診察では疾患や障害や栄養状態をみて,生活をみて,個人がどのように生きて何を大切にしてきたかをみて,全人的な視点でみていく。そうして現状の把握をし,どんな目標(ゴール設定)を立てれば良いのかを考える。そのうえで2種類の介入を意識してリハ計画を立てる。1つ目は伸びしろを見つけ,機能改善を目指して「治療的介入」を行うこと,2つ目は福祉用具や食形態,姿勢や環境などを整えるといった「代償的介入」を行うことである。さらに,本人のモチベーションを高めることや学習効果を高める計画も忘れてはならない。

Free communication

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 これは,歌のタイトルである。『生きている!殺すな』という本の付録CDに入っている。殺すな,というタイトルで有名な本としては横塚晃一著『母よ!殺すな』(生活書院,2007再刊)がある。障害をもった子供を苦にしてエプロンのひもで殺してしまった母の裁判に,減刑嘆願運動が起きた。その時,横塚氏ら脳性まひ者たちが異議申し立てをした。1970年のことだ。殺される側として当事者たちが声をあげた,初めてのことだった。

 その後も障害者は何人も殺された。家で,精神病院で,施設で。『生きている!殺すな』は,2016年7月26日の津久井やまゆり園で起きた大量殺人事件の1年後に,障害者,難病者,支援者ら,21人が暮らしのこと,やまゆり園事件のことをつづった本だ。

連載 脳卒中慢性期のリハビリテーションメソッド 起き上がり編・第3回

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 臨床場面では,ベッドから起き上がりを行う際に麻痺側の上肢がベッド上に投げ出されたまま,または上半身がのけ反った状態で動く場面を見かけることは少なくない。この動作は非効率であり,また形成された運動パターン(シナジー)は他の動作にも悪影響を及ぼす可能性がある。

 この動作は主に運動麻痺,動作パターンの障害,高次脳機能障害の3つの原因が挙げられ,前回は起き上がり動作の際に肩が引けてしまう場合の運動系(運動麻痺,動作パターンの障害)からの評価と介入について紹介した。寝返る際の上肢と体幹の間のレバーアームとして働く胸郭と肩甲帯に着目し,肩甲骨と肋骨のアライメントや動きの評価と周囲筋の賦活を行うことによって起き上がる際に肩が追従してくる運動パターンを形成していくことができる。

連載 高次脳機能障害者のための脳機能アッププログラム・第9回

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 今回は,「スポーツ吹矢」を講師のゆきちゃんに,「体操」を職員のきんちゃんと講師のまりちゃんに解説いただきます。

連載 在宅生活を豊かにするシーティング技術・第6回

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はじめに

 2016年度の診療報酬改定1)により,回復期リハ入院料に実績指数が組み込まれている。2018年の診療報酬改定2)では,回復期リハ入院料1・2をとるためには実績指数で37を超える必要があり,よりリハの質が求められている。同時に活動と参加に焦点を当てたリハが重要視されている。例えば,予後予測から実用性歩行が困難と思われるケースに対して車椅子シーティングを行い,環境をマッチングさせられれば,自宅内での主体的な活動や社会参加活動の確保につながるといったことである。

 リハ医の初診時の座位保持不良群では,6週間の入院期間で歩行やADLに一部介助や見守りが必要となることが多いと予測すると報告がある3)。今回,延髄内側を中心とした多発脳梗塞により,両片麻痺,重度な体幹失調を呈し初診時座位保持不良なケースを担当した。自宅退院は困難と思われたが,車椅子シーティングの対応,住宅改修を経て,最終的に自宅退院へ至ったケースについて,回復期リハ病棟での自宅退院に向けて行った車椅子シーティングに焦点を当てて報告する。

連載 そうだったのか!地域リハビリテーション活動支援事業・第9回

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表:住民運営の通いの場には,専門職としてではなく,まずは住民と同じ目線で,どのような取り組みが行われているか,そこに参加する住民の皆さんの気持ちを知ることから始めることが大切なんですね。

安:専門職として通いの場にかかわることも大切だけど,自らが年齢を重ねたときに「行ってみたい」と感じられるような場を,住民とともにどう作り上げていくのか。住民主体よりも先に住民目線で,感じてもらいたい。

連載 介護期から終をみすえたリハビリテーションの実践・第3回

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はじめに

 関節拘縮(以下,拘縮)は関節が不動状態に曝されることが原因で発生するが1),その存在は単なる関節の問題ではなく,それまでの生活において身体的な活動が十分に行われていなかったことを示す。介護期にある対象者の生活には介護者の介入が不可欠であるが,そのような状況下で生活全体の活動性を保つことは容易ではなく,結果として拘縮が発生・進行してしまうことも少なくない。症状が軽度であれば生活に支障はないが,複数箇所の発生や重篤化は本人や家族にさまざまな局面で苦痛を与えることになるため,早い段階で予防的な対策を講じておく必要がある。

 本稿では青梅慶友病院と長崎大学による拘縮に関する共同研究の内容をベースに,介護・終末期における拘縮予防対策の必要性について述べる。

連載 神奈川県立特別支援学校での内部専門家としての専門職の活用・第3回

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はじめに

 筆者は,神奈川県(以下,本県)の特別支援学校(旧称:養護学校)に,OTでありながら「自立活動教諭(専門職)」という名称で勤務している,常勤の教諭である。特別支援教育は,狭義の意味では「地域リハ」には当たらないであろう。しかし,この分野には,多くの障害児が関連しており,地域リハとの連携や支援を必要としている。

 筆者はもともと,身体障害領域で,脳血管疾患を中心とした亜急性期,回復期の患者のリハを担当するOTであった。医療から教育へ“転職”したのは,日本作業療法士協会が,「第一次作業療法5カ年戦略(2008-2012)」の中で,OTの勤務先を医療:地域=5:5にしていこうとする(5・5プラン)半ばの年であった。今回はこの場を借りて,本県の県立特別支援学校で働くOTの業務紹介を通して,いまだ認知度の低い“特別支援教育における地域リハ”の一端をお伝えできればと思う。

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地域リハビリテーション
13巻9号 (2018年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1880-5523 三輪書店

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