アレルギー・免疫 25巻11号 (2018年10月)

特集 川崎病アップデート ~病因・病態論の推移と展望~

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 川崎病は病理組織学的には系統的血管炎症候群の範疇に属し,中血管である冠状動脈に最も高頻度に冠動脈病変(CALs)を形成する原因不明の疾患である。これまで様々な病原体が川崎病の惹起因子として提唱されてきたが,本症における疫学・遺伝的背景・環境要因・病理学的側面・免疫学的側面のすべてを説明できうる病因は未だ同定されておらず,また冠動脈の拡張・瘤形成が高頻度でみられる病態も解明されていない。本特集では,川崎病の病因・病態研究の最前線から,本症の病因・病態の解明に極めて有用な研究内容が提示されている。

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 1970年から2年に1度の頻度で川崎病全国調査を実施し,わが国における川崎病の疫学像を明らかにしてきた。1990年代半ばより患者数/罹患率は上昇傾向にある。わが国では1月に患者が多く,夏場にも若干の増加があるが,諸外国では異なる時期に患者が多発している。乳児早期には罹患率は低く,6~11カ月齢にピークを持ち,以降は年齢と共に低下するという一峰性のカーブが観察される。これらの疫学像から,「感受性がある宿主に対して複数の微生物の1つがトリガーとなって働き,川崎病が発症する」という仮説が形成される。

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 川崎病は複数の遺伝要因と感染を含む環境要因が関与して発症する多因子疾患である。ゲノムワイド研究により川崎病の罹患感受性や重症化リスクに関連する遺伝子のバリアントが複数見出され,その情報から,これまで知られていなかった他の疾患との遺伝要因の共通性,病態におけるCa2+/NFAT経路の活性化の関与,B細胞の関与など,新たな洞察や治療法への手がかりが得られつつある。しかし依然未解明な部分も大きく,さらなる追究が望まれる。

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 日本全国,北半球の地球規模で川崎病の季節性があることより,川崎病の発症には広い地域に影響する環境要因が関与していると考えられる。さらに,年齢による季節性の違いが存在することより,川崎病のトリガーは複数存在することが推測される。日本の3大流行年(1979年,1982年および1986年)の気流の研究では,北西からの風のパターンと川崎病の発症との関連性が示された。川崎病トリガーの1つは,対流圏内の気流によって中国北東部から運ばれてくるという仮説が,疫学,気象の研究に基づいてたてられた。

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 川崎病の本態は全身性血管炎で,大動脈から小動脈まで広い範囲の血管に炎症が生じるが,大動脈から分岐する中型筋型動脈に好発し,冠動脈が最も高頻度に侵される。川崎病において冠動脈に血管炎が好発する理由は明らかでないが,冠動脈の解剖学的,血行力学的特殊性が関与している可能性がある。さらには冠動脈が他の大動脈分岐動脈とは発生が異なることも,臓器特異性を考える上で重要と考えられる。

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 川崎病は病態解析等から自然免疫系の活性化が重要な役割を果たしていると考えられている。我々はリピドミクス解析を行い,患児血清中に川崎病特異物質を高感度・高特異度で検出した。冠動脈異常と関連する川崎病特異的分子の構造解析により,その分子は動脈硬化の発症に関連する分子と共通のものであった。微生物由来の病原体関連分子パターン(PAMPs)と,PAMPsが宿主に作用することにより産生されるダメージ関連分子パターン(DAMPs)の両方がパターン認識受容体等を介し,主に血管組織と自然免疫細胞に作用し,川崎病を発症させると推定される。

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 川崎病(KD)の発症には流行や季節性があることなどの疫学的特徴から感染症の関与が考えられてきた。従来,咽頭ぬぐい液や便を用いての細菌培養により病原体を検出する方法が行われてきたが,未だ病原体は確定していない。近年,次世代シークエンサーなどを用いた分子生物学的手法の進歩により腸内細菌叢および上咽頭細菌叢の解析がすすんだ。特に腸内細菌叢について明らかになっており,炎症性腸疾患,アレルギー疾患,自閉症および糖尿病などでは腸内細菌叢の異常が疾患発症に関与すると報告されている。KDではStreptococcus属が検出されたとの報告があるが,これらがKDの病原体であるかはさらなる検証が必要である。

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 川崎病急性期患児の末梢血T細胞レセプターのレパートリー解析,また便中のDNAに存在するレンサ球菌由来スーパー抗原(SAg)遺伝子断片の分析から,川崎病発症のトリガーとして複数のレンサ球菌由来SAgの可能性について述べる。しかし,急性期患児からStreptococcus pyogenes(GAS)が通常分離されないことから,GAS由来SAgの遺伝子が他のレンサ球菌にhorizontal gene transferしている可能性があり,急性期患児の咽頭・口腔内常在菌(レンサ球菌)の中にGAS由来のSAg遺伝子を保有する菌の存在を証明する必要性についても述べさせていただく。

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 川崎病の病因研究の歴史を振り返ると,その時々の話題の病原体をその時々の先端の技術を使って追及してきたことが実感される。未知の病原微生物を探す研究でも,PCR(polymerase chain reaction)法,次世代シーケンサー,高精度質量分析法など最先端のテクノロジーが駆使されてきた。特定の病原体に的を絞った研究も必要であるが,新しいゲノム解析技術や光学機器を使った研究が新規の微生物(群)と川崎病との関連を明らかにする可能性も十分考えられる。基礎医学,臨床医学,情報科学における知恵を結集して病因研究をすすめることが求められている。

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 川崎病は小児科医にとって今日最もよく遭遇する疾患の1つである。全身の血管炎に基づく炎症性の症候群であり,冠動脈病変の合併が最も大きな問題として挙げられる。様々な戦略のもと冠動脈病変の合併率は概ね2%台まで減少しているが,未だ後天性心疾患で最も多い疾患であり,合併率減少のためのさらなる戦略が求められている。バイオマーカーを用いた戦力もその1つである。現時点では確定された川崎病バイオマーカーはなく,その探索に向けた研究が続けられている。本稿では,「免疫グロブリン静注不応予測有用なバイオマーカー」,「冠動脈合併予測に有用なバイオマーカー」,「川崎病の診断に有用なバイオマーカー」に分けて川崎病バイオマーカーの現状を概説する。

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 川崎病と全身型若年性特発性関節炎(s-JIA)はともに,発熱,発疹,リンパ節腫脹,高度の炎症所見,肝機能障害など共通する臨床像を呈することから,その鑑別が非常に困難な場合がある。適切な治療介入が遅れた場合には,川崎病では冠動脈瘤,s-JIAではマクロファージ活性化症候群といった重篤な合併症を呈することから,臨床現場においてしばしば問題となっている。両疾患の鑑別に血清サイトカインプロファイルが有用であり,川崎病ではインターロイキン(IL)-6優位の,s-JIA症例ではIL-18優位の特徴的なパターンを呈する。

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 質量分析装置を用いたプロテオーム解析により,典型的な川崎病患者急性期(発熱時)と回復期(解熱時)の血清中で発現量が変動するタンパク質を網羅的に探索した。その結果,血清中において,急性期で発現が有意に増加する3種類のタンパク質(LBP,LRG1,AGT)と,逆に発現が減少する1種類のタンパク質(RBP4)を見出し,これらが川崎病の病態変化に伴い発現変動するタンパク質であることを明らかにした。また,これらタンパク質は発熱を伴う類似疾患との鑑別にも有効なバイオマーカーとなる可能性がある。

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 ルパタジンは血小板活性化因子受容体拮抗作用を併せもつ第二世代抗ヒスタミン薬である。本研究では,前年の第二世代抗ヒスタミン薬治療に不満のあったスギ花粉症患者を対象に,患者の治療満足度を指標としてルパタジンの有用性を検討した。ルパタジン10 mgを100例の患者に投与し,治療6日目に満足しなかった患者に対しては投与量を20 mgに増量した。その結果,増量45例を含む治療11日目の治療満足(満足している,やや満足している)率は76.0%(95%信頼区間:67.6~84.4)であり,鼻症状,夜間鼻閉及びquality of life(QOL)の有意な改善が認められた。主な有害事象として傾眠が報告されたものの,治療満足に対するその影響は小さく,治療満足率には鼻症状及びQOLスコアの変化量が関連することが示された。

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 神経成長因子存在下,PC12細胞の神経突起伸長に対するプロスタグランジンD2(PGD2)単独刺激およびPGD2/ヒスタミン併用刺激の影響,およびこれら刺激に対するエピナスチンの効果を検討した。PGD2は神経突起伸長細胞率の有意な増加を示したが,ヒスタミンでは作用を認めなかった。PGD2/ヒスタミン併用ではPGD2単独よりも神経突起伸長細胞率の更なる増加を認めた。PGD2あるいはPGD2/ヒスタミン併用による神経突起伸長細胞率の増加はいずれもエピナスチンにより有意に抑制された。

連載 記憶に残る症例(42)

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 画像上,腫瘤状陰影を呈し,carcinoembryonic antigen(CEA)が高値のため肺癌を疑い気管支鏡検査を実施し,粘液栓による陰影と診断した症例の報告である。症例は,54歳,女性,気管支喘息があり,好酸球性中耳炎で近医通院中に胸部異常影を指摘され,当院(国立病院機構高知病院)紹介となった。胸部CTで右下肺野に結節影を認め,CEAが19.5 ng/mLと高値で肺癌を疑い気管支鏡検査を施行したが,悪性所見を得られず,その後もCEAの上昇を認めたため再検した。組織像では悪性像はなく,大量の好酸球と,一部Charcot-Leyden結晶様の好酸性結晶構造を含む粘液栓を認めた。プレドニゾロン(PSL)を開始し,胸部異常影の改善とCEAの低下を認めた。気管支喘息の既往があり,胸部異常影やCEA高値を認める症例では,悪性腫瘍のほか,気管支粘液栓の可能性を考慮する必要がある。

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アレルギー・免疫
25巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1344-6932 医薬ジャーナル社

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