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背景:吸入ステロイド薬(ICS)の普及により気管支喘息のコントロールが向上してきたが,より良好なコントロールの実現にはアドヒアランスの向上が重要な課題となっている。また,アドヒアランスの向上には,患者自身に加えて吸入指導に関わる薬剤師の役割が重要である。しかし,アドヒアランスに影響を及ぼす患者や薬剤師の要因の実態は,十分には明らかになっていない。 目的:気管支喘息患者のアドヒアランスの実態と,アドヒアランスに影響を及ぼす要因について調査し,その向上における障壁,課題を明らかにする。 方法:20歳以上で現在ICSもしくはICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合剤(ICS/LABA)を使用中の喘息患者559例,および吸入指導を少なくとも1カ月に5人以上実施している薬剤師246例を対象に,インターネットを利用した調査によりアドヒアランスに関するデータを収集した。 結果:喘息患者559例中,吸入薬の吸い忘れや中断/中止経験がないと回答したのは127例(22.7%)であった。それらの患者をアドヒアランスが高い患者(H群)と定義したところ,H群以外のアドヒアランスの低い患者(L群)との年齢分布に違いが認められ,20~39歳は60歳以上に比べアドヒアランスが低かった(オッズ比:0.43,95%CI:0.25~0.74)。一方,薬剤師は吸入指導を重視する年齢層として60歳以上を挙げた割合が高く,アドヒアランスが低い60歳未満とのずれが認められた。 喘息による睡眠への影響については,過去1カ月に睡眠を妨げられた経験があった患者の割合は30.6%であった。また,患者の54.4%が経済的負担を感じており,喘息治療費における妥当と考える月あたりの自己負担額は,78.5%が3,000円未満と回答した。理想的な吸入薬の1日あたりの吸入回数に関する患者への質問では,1日1回との回答が74.4%であり,1回あたりの吸入回数は1回1吸入との回答が85.3%であった。 薬剤師への質問において,吸入指導は1人あたり5分未満が72.3%であったが,理想的と考える吸入指導はより長い時間が必要と薬剤師は考えていた。一方,薬剤師による再指導の実施率は44.7%にとどまった。また,処方元医師と薬剤師(薬局)間で情報交換をしていない薬剤師は63.0%であった。 結論:喘息患者のアドヒアランス向上において,操作が簡便で,1日1回投与,1回1吸入の 吸入薬が好ましく,また治療継続の観点から,経済的負担が少ないことが重要と考えられた。 吸入指導については,高齢者への吸入指導の重要性とともに若い年齢層への積極的な指導と再指導を推進する必要性が示唆された。また,医師と薬剤師(薬局)間のコミュニケーションを高めるために,病院-薬局連携の仕組みづくりが必要であると考えられた。