連載 記憶に残る症例(42)
悪性腫瘍との鑑別を要した気管支粘液栓合併気管支喘息の1例
大串文隆
1
Fumitaka Ogushi
1
1国立病院機構高知病院院長 呼吸器アレルギー科
pp.1472-1476
発行日 2018年10月15日
Published Date 2018/10/15
DOI https://doi.org/10.20837/32018111472
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画像上,腫瘤状陰影を呈し,carcinoembryonic antigen(CEA)が高値のため肺癌を疑い気管支鏡検査を実施し,粘液栓による陰影と診断した症例の報告である。症例は,54歳,女性,気管支喘息があり,好酸球性中耳炎で近医通院中に胸部異常影を指摘され,当院(国立病院機構高知病院)紹介となった。胸部CTで右下肺野に結節影を認め,CEAが19.5 ng/mLと高値で肺癌を疑い気管支鏡検査を施行したが,悪性所見を得られず,その後もCEAの上昇を認めたため再検した。組織像では悪性像はなく,大量の好酸球と,一部Charcot-Leyden結晶様の好酸性結晶構造を含む粘液栓を認めた。プレドニゾロン(PSL)を開始し,胸部異常影の改善とCEAの低下を認めた。気管支喘息の既往があり,胸部異常影やCEA高値を認める症例では,悪性腫瘍のほか,気管支粘液栓の可能性を考慮する必要がある。