原著
ヒスタミンH1受容体のヒスタミン非依存的活性化による細胞内Ca2+濃度の上昇に対するエピナスチンの抑制作用
貞方久人
1
,
水口博之
2
,
福井裕行
3
Hisato Sadakata
1
,
Hiroyuki Mizuguchi
2
,
Hiroyuki Fukui
3
1株式会社タイムラプスビジョン
2徳島大学大学院医歯薬学研究部分子情報薬理学分野
3徳島大学大学院医歯薬学研究部分子難病学分野
pp.1396-1400
発行日 2017年9月15日
Published Date 2017/9/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201710122
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インバースアゴニストはヒスタミン非存在下でも不活性型のヒスタミンH1受容体(H1R)を安定化させることでシグナル伝達を減少させる。これまでインバースアゴニストによってイノシトールリン酸の産生が減ることがわかっていたが,今回その下流の細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度を指標にすることでインバースアゴニストの作用を可視化した。 H1Rを強制発現したCHO細胞を用いて,ヒスタミン非存在下でエピナスチンまたはオロパタジンを作用させ,カルシウム検出試薬を使って細胞内Ca2+濃度を蛍光強度として観察した。エピナスチンでは細胞内Ca2+濃度の低下とカルシウムオシレーションの減少が観察された。一方,オロパタジンでは細胞内Ca2+濃度に変化は見られなかった。 細胞内Ca2+濃度を指標にすることにより,エピナスチンのインバースアゴニスト作用を可視化することが可能であることが明らかになった。エピナスチンはヒスタミン拮抗作用に加えて,この作用によりH1Rのシグナル伝達を減少させることでH1R自身のmRNAの発現に影響し,アレルギー症状を緩和すると考えられた。 今回用いた手法は抗ヒスタミン薬のインバースアゴニスト活性の有無を簡便に評価でき,新規抗ヒスタミン薬の開発に有用であると考えられる。