消化器画像 7巻2号 (2005年3月)

特集 炎症性肝腫瘤―診断・病理と治療選択

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肝臓の腫瘤性病変の診断は,画像診断の日常診療の中で大きな比重を占める.その最も大きな理由は肝細胞癌,転移性肝癌の診断である.画像診断の進歩でその多くは比較的容易に正確な診断が可能である.しかしながら,まれに非典型的な組織像あるいは変性を伴うものでは診断が困難となる.この場合,鑑別としては良性腫瘍,過形成性結節,局所肝実質性変化(脂肪肝など),画像上の偽病変,炎症性腫瘤などが挙げられる.これらの中で,炎症性肝腫瘤は最終的に鑑別が困難とされることが多い.その理由は,炎症性肝腫瘤には多彩な病態が含まれ,またそれぞれの病期により多彩な画像を示すからである.わが国で,日常診療において,高い精度で画像による肝腫瘤の鑑別診断が可能である大きな理由の1つは,炎症性肝腫瘤が稀であることである.実際に炎症性肝腫瘤に遭遇した場合の正診率は現在でも決して高くはなく,最終的に肝切除で確認された例の報告が多くなされている.

 炎症性肝腫瘤には様々な病態が存在するが未だに十分に病理学的に整理されているとは言い難い.本特集にあたって主な内外の肝病理や画像診断の教科書を検索したが,炎症性肝腫瘤を的確に分類したものを見いだせなかった.本特集でも近藤福雄先生に病理学的解説をお願いしたが,病理学的立場からも包括的分類はなされていないのが現状と考えられる.これらの大きな理由は,細菌性肝膿瘍を除けば,症例は散発的であり,また他の疾患に合併するものが少なくないこと,地域性があること,病因が不明であること,などによると考えられる.したがって,本特集では,筆者の独断で,わが国の日常診療で遭遇する可能性のある炎症性肝腫瘤について記述をお願いした.また1つの施設で多数例の集積のない場合が多く,多くの施設に依頼してそれぞれの経験症例を記載させていただくという形式をとった.そのために,系統的な特集が組めなかったがご容赦いただきたい.

炎症性肝腫瘤の病理 近藤 福雄
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要旨 炎症性肝腫瘤の原因には,様々な病原体や非感染性炎症性疾患が含まれる.時には,真の腫瘍性病変に炎症が併存し,炎症性肝腫瘤に酷似することもある.さらに,炎症の病理像は,変性や壊死,炎症細胞浸潤,線維化など基本的に様々な病因に共通する像が多く,病期や標本の部位によって様々な像をとるため,確定診断が困難なことがある.しかし,①炎症性偽腫瘍とは,様々な原因による病態の総称であると銘記する,②病原体や特有な構造物の検出に努める,③病理,画像以外の様々な検査も併用する,④腫瘍の存在を否定する,などに留意し,確定診断まで原因検索の手を緩めないことが大切である.

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要旨 細菌性肝膿瘍は,通常38.5℃以上の高熱を伴い,CRPも高値を示す.胆道系の感染が多いため,上腹部痛や胆道系酵素の上昇も認める.超音波は,後方エコーの増強がない場合は,充実性腫瘤との鑑別が困難な場合があるが,造影CTを行う(単純CTのみでは診断困難)とdouble target sign,transient segmental enhancement,periportal collarなどの特徴的な所見が得られる.したがって,常に臨床所見と造影CTを含む画像により総合的に診断することを忘れないことが,心理的ピットフォールに陥らないポイントである.膿瘍の疑いがかなり高くなれば,PTADなどの治療に移行する.PTADは,安全かつ有効な治療法であるが,適応や禁忌,画像ガイド下の基本的手法に習熟し,合併症についても熟知しておくことが大切である.

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要旨 アメーバ性肝膿瘍は稀な疾患ではあるが,近年増加している.

 好発部位は肝右葉後区域であるが,多発性のことも多い.画像上は細菌性肝膿瘍との鑑別が難しいが,X線CTで,周囲との境界が明瞭で,厚い被膜を有し,その周囲に正常肝実質よりも低吸収域を持つ腫瘤性病変を見た場合,肝膿瘍を考えてその原因について検索すべきである.

 一般的には,超音波検査がまず,スクリーニングとして行われることが多いが,膿瘍内腔は内容液の性状によって様々なechogenicityを示し,転移性肝腫瘍などの充実性腫瘍との鑑別が超音波画像のみでは難しいことが多い.鑑別には臨床症状が極めて重要であり,発熱などの炎症所見がある場合は積極的にX線CTなどを行ったほうがよい.

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要旨 多包虫症は,わが国に見られる寄生虫疾患である.多包条虫の幼虫が肝臓に寄生することにより,肝臓に病変を作る.血清学的検査も有効であるが,画像で疑わなければ,正確な診断に至ることは困難である.今回,筆者らは,肝多包虫症の画像所見を中心に述べる.画像所見は比較的特徴的であり,CTでの診断も可能であるが,MRIが最も病態を理解するうえで重要である.肝多包虫症の典型的な画像所見は,ほとんど濃染されない充実部分と,小囊胞の混在である.小囊胞の同定は,MRIでより容易であるため,MRIが確定診断にはもっとも有用である.

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要旨 肝・胆道の代表的な寄生虫性疾患として肝蛭症,日本住血吸虫症,肝吸虫症,回虫症,エキノコッカス症などがある.肝蛭症は管状,房状,小結節状病変の集簇像を認め,肝病変の一端が肝被膜周囲に位置する.日本住血吸虫は線状,網目状の隔壁や被膜の石灰化と増強効果が特徴的で,しばしば辺縁凹凸像や偽葉形成を伴う.肝吸虫は肝外胆管の拡張は認めないが,中小肝内胆管がび漫性に拡張して壁肥厚を認める.回虫は胆道に迷入することもあり,拡張した胆管内に管状,コイル状の虫体を認め,虫体内に消化管と思われる薄く縦長の管状構造物を認める.本稿では,肝蛭症,日本住血吸虫症,肝吸虫症,回虫症について概説する.

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要旨 肝結核の画像所見は非特異的であると言われている.粟粒結核では,びまん性の変化を時に認める程度である.腫瘤形成型の肝結核では,急性期は通常の膿瘍と同じ画像所見を呈し,陳旧化するに従い超音波では高エコー部や石灰化が出現する.CTではリング状の濃染を呈し,時として石灰化が生じるために全体の吸収値が上昇したり,弧状や斑状の石灰化を認める.MRIではT1強調像では低信号,T2強調像では様々な信号パターンを呈することとなる.これは,病期により,乾酪壊死,液化壊死,線維性増生,石灰化などの混在程度が異なるためと思われる.いくつかの腫瘤性病変と鑑別が難しい肝結核であるが,T2強調像で低信号を呈したり,石灰化が認められたり,病変が比較的限局した区域に集簇していたり融合傾向にあった場合には,肝結核を鑑別に挙げ得ると思われる.

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要旨 肝サルコイドーシスの基本的特徴は肝表面に多彩な白色斑(いわゆるサルコイド結節)が観察される点にある.門脈域を中心に,硝子化の軽度な肉芽腫は小黄白色斑として,硝子化の高度な肉芽腫は白色斑として観察され,その浸潤程度により円形,類円形,斑状,粟粒大,地図状と,多彩な形をとる.脾サルコイドーシスにおいても脾表面に多数の白色斑ないし小黄白色斑が観察されるが,無数の白色斑の癒合による白色調の強い結節病変や,一部陥凹形成を伴った暗紫色の病変として認められることもある.サルコイドーシスの肝および脾病変の進展程度を把握するうえで腹腔鏡は実に有用な情報を提供してくれるが,確定診断を得るためには肝生検,脾生検が必要となる.

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要旨 炎症性偽腫瘍(Inflammatory pseudotumor;以下IPT)は,原因不明の肉芽組織からなる腫瘤性病変であり,原発臓器としては肺が最も多く,眼窩,口腔内,耳下腺,胸膜,肝,胃,卵巣,後腹膜などの多臓器に及ぶことが知られている.肝IPTは,1953年にPackらによって初めて報告され,線維化の強い悪性腫瘍との鑑別がしばしば問題となる稀な疾患である.

 Post-inflammatory tumorやplasma cell granulomaはIPTの同義語と解釈されているが,肉芽腫性肝膿瘍も臨床症状,病理組織および画像所見としては共通している部分が多く,共通の疾患群であるという説もあり,少なくとも臨床の取り扱い上は同一であることから,1つの疾患群と考えて良いと思われる.また,最近ではIPTはinflammatory myofibroblastic tumor(IMT)と呼称されることもあるが,IMTはIPTの一病型であるとの考え方もあり,肝の文献では未だIPTとされているもののほうが多いため,本稿ではそれぞれの文献に基づきIPTやIMTと記載させていただくこととした.

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要旨 急性胆管炎では診断そのものより,胆管閉塞の原因やその部位,肝膿瘍の合併の有無などの評価が治療戦略に重要であるが,胆管炎に伴って造影CTで胆管壁の肥厚を描出できることがある.また,ダイナミックCTでは高頻度に肝実質の不均一濃染を早期相でのみ認め,診断の助けとなる.重症例での胆管炎性肝膿瘍は,直接胆道造影では胆管周囲の造影剤の貯留像として,造影CTでは胆管周囲の不整な低吸収域として描出できる.原発性硬化性胆管炎では,非連続性の数珠状の胆管拡張と狭窄が診断価値の高い所見であり,直接胆道造影(ERCPなど),造影CT,MRCP,超音波で描出できる.

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患者 74歳,男性.

主訴 発熱,右季肋部痛.

現病歴 2002年6月に発熱,右季肋部痛が出現.5日後近医にて急性胆囊炎と診断され当科入院となった.

入院時現症 体温38.3℃腹部平坦,右季肋部圧痛あり.黄疸あり.貧血は認めず.

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患者 49歳,男性.

主訴 発熱.

既往歴 C型慢性肝炎,梅毒.

現病歴 遷延する感冒症状,発熱を認め受診される.血液生化学検査ではAST 82 IU/l,ALT 66 IU/lと肝機能異常を認め,腹部超音波検査で肝腫瘤性病変を認めたため精査加療を目的に入院となる.

入院時現症 眼瞼結膜に軽度の貧血を認めた.眼球結膜に黄疸は認めなかった.腹部正中に肝を三横指触知した.

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[症例1]

患者 34歳,男性.

主訴 発熱,嘔吐,右下腹部痛.

既往歴 特になし.

現病歴 6日前から発熱,3日前から嘔吐あり近医受診するも改善せず.前日より右下腹部痛増強したため,虫垂炎疑いにて緊急入院となった.

入院時現症 身長174 cm,体重62 kg,血圧116/44 mmHg,体温39.3℃,右下腹部に圧痛,反跳痛を認めた.

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患者 63歳,女性.

主訴 腹痛,腹部膨満感.

家族歴,既往歴 特記すべきことなし.

現病歴 2003年8月より腹部膨満感が出現したため近医を受診した.その際CTで肺野および肝内に異常陰影と胸腹水を指摘され,精査加療目的で当院紹介された.

入院時現症 上腹部に軽度の圧痛が認められた.

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患者 43歳,男性.

主訴 右季肋部痛.

既往歴 25歳,十二指腸潰瘍内服治療.

家族歴 父が肝臓癌.

現病歴 近医で痔の手術予定であったが,2002年7月下旬ころより右季肋部痛を自覚,血液検査で白血球増多を認めた.腹部CT検査と超音波検査を施行したところ肝占拠性病変を指摘されたため,痔の手術を中止し,精査加療目的で8月1日当センターに紹介入院となった.

習慣,嗜好 犬を飼っている.牛レバーなど動物肉の生食を好む.

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症例 70歳,男性.

主訴 腹痛.

既往歴 8年前に胆石症で胆囊摘出,胆管空腸吻合,Roux-Y再建を施行した.

現病歴 腹痛にて近医を受診し,肝腫瘍が疑われ当院受診となった.

血液検査 WBC 9,000/mm3,HBs抗原,HCV抗体陰性.各種腫瘍マーカーは正常範囲内.

腹部CT所見 単純CT(図1a)で肝S5/6に径6 cmの分葉状腫瘤を認めた.ダイナミックCT動脈相(図1b)で腫瘤は肝実質よりも強く造影され,門脈相(図1c)で等吸収,平衡相(図1d)で軽度低吸収を呈した.腫瘤周囲には厚さ6 mmの低吸収域を認め,平衡相でその内側部分が強く造影された.腫瘤内には一部壊死を疑う造影されない領域を認め,門脈に沿って周囲に低吸収域を認めた(図2).

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患者 52歳,女性.

現病歴 1993年10月,検診にて肺門部のリンパ節腫脹を指摘され,当院呼吸器内科で精査したが確定診断には至らなかった.1998年10月,呼吸器科で施行した胸部CT検査にて肝,脾内に不均一な濃染像を認め,当科紹介となった.

現症 腹部は平坦,軟.眼球結膜に貧血,黄疸は認めず.表在リンパ節の腫脹なし.

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[症例1]

患者 61歳,男性.

主訴 発熱,全身倦怠感.

既往歴,家族歴 特記事項なし.

現病歴 1999年2月,1週間ほど続く37℃前後の微熱と全身倦怠感を主訴に当院受診.血液検査にて白血球12,300/mm3,CRP 4.5 mg/dl,ALP 432 U/ml,AST 66 U/mlと炎症反応高値,肝胆道系酵素の上昇を認め,入院となった.

腹部超音波検査 肝左葉外側区に低エコーと高エコーの混在した約5 cm大の腫瘤が認められた(図1).ドプラ検査では腫瘤の辺縁にわずかに血流シグナルが認められたが,腫瘤内部には血流シグナルはみられなかった.

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はじめに

 筆者らが経験した,偶然発見された原因不明の肝の肉芽腫の症例を呈示する.

患者 40歳,男性.

現病歴 人間ドックで受診した腹部超音波検査で肝左葉に径3 cmの腫瘤を指摘され,当施設に紹介受診した.自覚症状はなく,理学的所見にも異常を認めず.

既往歴 特になし.

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患者 70歳,男性.

主訴 肝腫瘤の精査.

既往歴 肝外胆管癌にて膵頭十二指腸切除術施行(66歳時).

現病歴 肝外胆管癌術後経過観察中に肝腫瘍を疑われ,肝腫瘍精査目的で当院当科入院.

入院時現症 自覚症状・発熱は認めない.触診所見にて腹部腫瘤は触知せず,圧痛も認めない.血液検査で明らかな異常所見を認めない.肝炎ウイルスマーカーは陰性.

腹部CT 単純CT(図1a)では,肝左葉内側区(S4)に20 mm大の境界不明瞭な低吸収腫瘤を認める.造影CTでは,門脈相(図1b)で境界不明瞭な淡い増強効果を,平衡相(図1c)にて均一な中等度の増強効果を認めた.

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[症例1]

患者 60歳,女性.

主訴 全身倦怠感,肝機能障害の精査.

現病歴 “原因不明の高度肝機能障害”の診断で近医にて加療されていたが,治癒しないため,精査目的で紹介を受けた.

検査成績(紹介時) GOT 99,GPT 76,総ビリルビン1.3,ヘパプラスチンテスト72,g―グロブリン1.80<2.5 g/dl,IgG 2492<2500 mg/dl,抗核抗体強陽性(×1280),LE細胞現象,LE testいずれも陰性.

Clinical Challenge―この画像から何が読めるか?

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患者 55歳,男性.

現病歴 腹部超音波にて肝腫瘤を指摘され,精査目的にて当院入院.

既往歴 糖尿病,SLEのため15年来加療を受けている.

30歳時,胆石のため胆囊摘出.

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患者 77歳,女性.主訴 左胸部痛.

既往歴 1994年3月左鼠径部腫瘤にて近医受診し,生検にて悪性リンパ腫と診断される.同年5月から当院血液内科にて化学療法を施行し,1997年4月にCRと判定され化学療法終了.

現病歴 2003年7月左胸部痛を自覚し,近医受診.腹部US/CTで肝S8に35 mm大のSOLを指摘され精査加療目的にて当院消化器内科受診.

問 病歴とこれらの画像からもっとも考えられる疾患は何か?

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画像診断に際しては見落としがないように心がけるとともに,何らかの所見が発見されたときは臨床情報を参考に,適切な順に最小限の検査を追加し確定診断に導くことが患者の利益につながる.しかしながら,臨床情報から先入観に捉われると,思わぬ誤診に陥ることがある.

■症例提示

44歳,男性.

主訴 背部痛.

既往歴 35歳,肛門周囲膿瘍,40歳,胃潰瘍.

家族歴 特記事項なし.

嗜好歴 飲酒歴なし,喫煙歴30本×20年.

現病歴 2003年2月頃より背部痛を自覚.同年3月に近医を受診,膵酵素上昇を指摘され5月に精査目的で当院へ紹介された.外来にて腹部US,MRCPを施行.膵癌との鑑別要と診断され同年6月に当科入院となった.

現症 身長164.0 cm,体重62.3 kg,体温36.7 ℃,脈拍60/分,血圧110/60 mmHg,眼瞼結膜貧血なく,眼球結膜黄染もなかった.上腹部に鶏卵大の腫瘤を触知し,同部に圧痛を認めた.

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患者 70歳,男性.

主訴 なし(精査加療目的).

現病歴 下腹部痛を訴え近医を受診.腹部CT検査にて肝内に囊胞性病変が指摘され,胆囊が不明瞭であった.精査加療目的で当科紹介となった.

入院時現症 右季肋部に弾性硬の表面平滑な腫瘤を触知する.自発痛,圧痛は認めない.

技術講座 超音波内視鏡(コンベックス走査式)による膵・胆道領域の描出法

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●はじめに

 みなさん,こんにちは.この連載も第4回目となりましたが,今回は十二指腸球部からのコンベックス型超音波内視鏡の走査法の解説をします.私は常々,コンベックス型超音波内視鏡検査の真骨頂の一つは真に今回解説する十二指腸球部からの走査ではないかと思っています.その理由を以下に述べます.

 その第一は,既に超音波内視鏡下穿刺(EUS―FNAB)を行っておられる先生は理解していただけるかと思いますが,膵頭部病変に対してEUS―FNABを行う際に十二指腸下行脚からの穿刺では針が滑ったり,曲がったりして結構大変です.このような時には少し視点を変えて十二指腸球部に内視鏡先端を位置させて穿刺を行うと意外にスムーズにやれることがあります.

 第二点目は,私たちは乳頭部に癌が浸潤して内視鏡的に胆道ドレナージができず,また肝内胆管の拡張がほとんどなくて経皮経肝胆道ドレナージが難しい時に,EUS―FNABの要領で十二指腸球部から直接肝外胆管を穿刺し,胆管ドレナージを行う方法を開発しました.EUS―FNABの技術を利用して胆道ドレナージを行う際の穿刺場所に関しては幾つかのルートが提案されていますが,私たちの経験では内視鏡を十二指腸球部内に挿入し,その先端を肝門部に向け胆管を描出した時がベストと考えています(図1,2).

 第三の理由は,通常のラジアル型超音波内視鏡で十二指腸球部付近からの走査が意外と難しいことです.その原因に関しては真口先生の技術講座―「超音波内視鏡(ラジアル走査式)による膵・胆道領域の描出法」の連載第5回,第6回に詳しく解説されていますが,スコープの位置や先端の向きの違いによって胆囊,胆管,膵臓の描出のされ方が大きく異なるからです.また,十二指腸球部では描出される管腔構造が結構多く存在し,それが胆管,膵管,血管のいずれなのか,血管なら何動脈か,何静脈か迷ってしまったことはありませんか? 特に病変により側副血行路が発達していたり,囊胞性病変が多発している時にはお手上げ状態になります.最近開発された電子ラジアル型超音波内視鏡を用いてドプラを使用すれば,血管か,胆管か,膵管か等の区別は一目瞭然です.しかし,これを用いてもラジアル式超音波内視鏡による十二指腸球部内での詳細な血管解剖は難しく,今後検討されなければならない課題ではないでしょうか.

 それではラジアル式超音波内視鏡より一足先に十二指腸球部内での血管解剖も含めた走査の解説を始めたいと思います.

連載 早期膵癌診断へのアプローチ―画像と病理 7

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糖尿病と膵腫瘤

[症例1]

患者 63歳,男性.

主訴 なし.

病歴 糖尿病で近医通院中,超音波検査で膵頭部に1 cmの腫瘤を指摘された。手術目的で当科入院となった。

既往歴 63歳時,盲腸癌で右半結腸切除術,60歳時より糖尿病を指摘され,食事療法を開始し,3か月前よりグリミクロン(20 mg/日)を内服開始。

生活歴 飲酒歴:なし,喫煙20本/日×20年.

家族歴 特記事項なし.

入院時現症 腹部に手術瘢痕以外,頸部や腹部に異常所見なし.

入院時血液検査 血算,血液生化学:異常なし,耐糖能:糖尿病型,120分値301 mg/dl,1日尿糖量4~5 g,HbA1c:5.9%,CA19-9:10.8 IU/ml,CEA:1.5 ng/ml.

講座 症候からみた腹部エコー検査のこつ

鑑別のポイントと描出のテクニック

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はじめに

 浮腫とは,臨床的に細胞外液が間質の結合組織内や体腔内に過剰に貯留した状態をいう.体腔内への貯留は高度な場合に見られ,胸水は胸腔内,腹水は腹腔内への過剰な液体貯留を意味している.皮下組織に水分の貯留した状態となることより,浮腫の有無は,顔面(眼瞼)や下肢のむくみ(腫大),指圧痕などの身体所見により判定される.極軽度のときには身体所見に乏しく,体重増加のみ見られるため,患者が肥満と誤っていることがある.

 浮腫が見られた場合には,それが全身性のものであるか,局所に限局したものであるかをまず鑑別する.図1に症候からみた浮腫を来たす代表的な疾患を示す.全身性の浮腫は,心臓,腎臓,肝臓などの重要臓器の高度な障害や代謝障害により引き起こされることが多く,限局性の浮腫は,静脈やリンパ流の局所還流障害により生じることが多い.

講座 肝胆膵のMRI(3)

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M教授 K先生,前回は急用でお休みしてしまい,ごめんなさい.第2回の続きをやりましょう.第3回目の今回はT1強調像での白黒をテーマにする予定だったね?

K先生 そうです.さっそくお願いします.といいたいのですが,年末年始の慌ただしさもあって,前回までの内容のみならずMRIそのものがかなり記憶から遠のいているような気がして…

M教授 MRIそのもの? 了解.それじゃ,学生時代に戻って「NMRとは」から,やりましょう.急がば廻れというように,T1強調像を理解するには,もう一度基本に立ち返った方がよさそうだ.今日は時間にゆとりがあるので,ちょうどいい.こんなストーリーだったはずだ…

基本情報

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消化器画像
7巻2号 (2005年3月)
電子版ISSN:1882-1227 印刷版ISSN:1344-3399 医学書院

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