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肝臓の腫瘤性病変の診断は,画像診断の日常診療の中で大きな比重を占める.その最も大きな理由は肝細胞癌,転移性肝癌の診断である.画像診断の進歩でその多くは比較的容易に正確な診断が可能である.しかしながら,まれに非典型的な組織像あるいは変性を伴うものでは診断が困難となる.この場合,鑑別としては良性腫瘍,過形成性結節,局所肝実質性変化(脂肪肝など),画像上の偽病変,炎症性腫瘤などが挙げられる.これらの中で,炎症性肝腫瘤は最終的に鑑別が困難とされることが多い.その理由は,炎症性肝腫瘤には多彩な病態が含まれ,またそれぞれの病期により多彩な画像を示すからである.わが国で,日常診療において,高い精度で画像による肝腫瘤の鑑別診断が可能である大きな理由の1つは,炎症性肝腫瘤が稀であることである.実際に炎症性肝腫瘤に遭遇した場合の正診率は現在でも決して高くはなく,最終的に肝切除で確認された例の報告が多くなされている.
炎症性肝腫瘤には様々な病態が存在するが未だに十分に病理学的に整理されているとは言い難い.本特集にあたって主な内外の肝病理や画像診断の教科書を検索したが,炎症性肝腫瘤を的確に分類したものを見いだせなかった.本特集でも近藤福雄先生に病理学的解説をお願いしたが,病理学的立場からも包括的分類はなされていないのが現状と考えられる.これらの大きな理由は,細菌性肝膿瘍を除けば,症例は散発的であり,また他の疾患に合併するものが少なくないこと,地域性があること,病因が不明であること,などによると考えられる.したがって,本特集では,筆者の独断で,わが国の日常診療で遭遇する可能性のある炎症性肝腫瘤について記述をお願いした.また1つの施設で多数例の集積のない場合が多く,多くの施設に依頼してそれぞれの経験症例を記載させていただくという形式をとった.そのために,系統的な特集が組めなかったがご容赦いただきたい.
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